『医療は国民のために』344 柔整の「健保組合単位での償還払い変更」議論は必ず再燃するだろう
2022.06.10
6月からの柔整療養費の令和4年度料金改定では、保険者、特に健保組合が強い不満を持っているようだ。今年に入って何度も開催された柔整療養費検討専門委員会での健保連委員の発言を聞けば明らかだが、6月開始の「患者ごとの償還払いに変更できる」仕組みで「長期・頻回の患者」が対象から除外されたからだ。 (さらに…)
『医療は国民のために』344 柔整の「健保組合単位での償還払い変更」議論は必ず再燃するだろう
『医療は国民のために』344 柔整の「健保組合単位での償還払い変更」議論は必ず再燃するだろう
2022.06.10
6月からの柔整療養費の令和4年度料金改定では、保険者、特に健保組合が強い不満を持っているようだ。今年に入って何度も開催された柔整療養費検討専門委員会での健保連委員の発言を聞けば明らかだが、6月開始の「患者ごとの償還払いに変更できる」仕組みで「長期・頻回の患者」が対象から除外されたからだ。 (さらに…)
『医療は国民のために』343 柔整療養費の「明細書発行の義務化」に思うこと
『医療は国民のために』343 柔整療養費の「明細書発行の義務化」に思うこと
2022.05.25
5月6日の「第22回柔整療養費検討専門委員会」において、医科と同様に「明細書発行体制加算」という名目で新たな加算項目が設けられることが決まったようだ。算定するためには、明細書を無償で発行する体制であることをあらかじめ地方厚生(支)局に届け出る必要があり、その準備期間を考慮して本年10月からの実施となっている。 (さらに…)
『医療は国民のために』342 柔整療養費のオンライン申請は請求代行業者や外部委託点検業者の命運も分ける?
『医療は国民のために』342 柔整療養費のオンライン申請は請求代行業者や外部委託点検業者の命運も分ける?
2022.05.10
柔整療養費を「確実に施術管理者に支払うための仕組み」を作るため、オンライン請求の導入が議論されているのは、周知の通りだろう。激しく議論が交わされている「柔整療養費検討専門委員会」の中で、オンライン請求の審査・支払業務の受け皿と目されている社会保険診療報酬支払基金も様々な意見を述べているので、確認しておきたい。
(さらに…)
『医療は国民のために』341 マッサージ療養費の料金包括化は同意書の簡素化とセットではなかったの?
『医療は国民のために』341 マッサージ療養費の料金包括化は同意書の簡素化とセットではなかったの?
2022.04.25
6月1日から適用される令和4年度のあはき療養費料金改定は、まさに社保審の検討専門委員会で議論の真っ最中だ。中でも、施術料よりも往療料の占める割合が多いと指摘された点を見直す議論が主体となっている。議題に上がっている「往療料の距離加算を廃止して一本化」と「離島・中山間地等への特別加算の新設」は問題なく改定に反映されると思うが、マッサージ及び変形徒手矯正術の「料金包括化」がどうなるか注目している。 (さらに…)
『医療は国民のために』340 「復委任是非」の議論はファクタリング問題抜きには語れない
『医療は国民のために』340 「復委任是非」の議論はファクタリング問題抜きには語れない
2022.04.10
長年、私は「療養費にはファクタリングは認められない」旨の論調を本欄で積極的に展開してきたが、ここに来てこの話題が再熱するのではと感じている。
ファクタリングは、医科の診療報酬で実施されて久しく、それを手掛ける専門業者も多数存在する。「将来的に支給される診療報酬を債権譲渡し、金融機関から資金の融通を受ける」ことで、診療報酬は保険医に帰属する債権であるから全く問題はない。一方、療養費はあくまで被保険者(国保は世帯主)が帰属主体である。よって、施術管理者は単に療養費の受取代理人に過ぎず、療養費の支給を求める裁判提訴や審査請求という不服申し立てができないのだ。つまり、「当事者適格がない」とされているのだ。
とはいえ、施術者団体の一部で、将来施術者が実質的に受け取れる療養費を当て込んで、これを金融機関から現金化し「早期支払い」という形で、保険者からの入金を待たずに所属会員に現金化する実務処理が行われているのは周知のことだろう。 (さらに…)
『医療は国民のために』339 柔整療養費の新たな仕組み構築は社会保険診療報酬支払基金の参入次第?
『医療は国民のために』339 柔整療養費の新たな仕組み構築は社会保険診療報酬支払基金の参入次第?
2022.03.25
現在、柔整療養費の新たな請求・審査・支払い手続きの構築に向けて、柔整療養費検討専門委員会がほぼ毎月1回のペースで開催されている。「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」を作るため、不正対策のみならず、オンライン請求を導入して施術所・保険者の事務の効率化を図る点もセットとして議論を重ねている。 (さらに…)
『医療は国民のために』338 柔整療養費の「オンライン請求」の議論はどうなっているのか?
『医療は国民のために』338 柔整療養費の「オンライン請求」の議論はどうなっているのか?
2022.03.10
昨年来から、厚労省が柔整療養費の適正化方策として「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」を作り上げようとしている。その重要事項の一つに「オンライン請求の導入」が含まれているのはご存じだろう。これは国の「規制改革推進会議」で推進するよう求められていることから、厚労省としても実現に向け、必死になって取り組んでいるようだが、時間だけが過ぎて何ら具体的な展開がなされていないように思えるのは私だけであろうか。
まず、柔整療養費をオンラインの請求にのせるには、 (さらに…)
『医療は国民のために』337 柔整受領委任の歴史を今一度振り返りたい(その2)
『医療は国民のために』337 柔整受領委任の歴史を今一度振り返りたい(その2)
2022.02.25
前回、柔整療養費の受領委任払いについて、「1点単価」の標準が定められた戦前頃までの変遷を振り返った。続きを見ていきたいと思う。
昭和21年以降は、医科の診療報酬単価と連動する形でその改訂のたびに施術単価も改められ、同年1月には17~20銭、さらに同年4月には50~80銭と医科のだいたい2割引で設定され、同年12月には柔整独自の料金表も作成された。その後、地元の柔道整復師会と県知事との間で料金契約をしてきたが、昭和27年6月からは、現在の公益社団法人日本柔道整復師会(日整)の前身にあたる中央組織の柔道整復師会と厚生省との事前協議による統一的取扱いをすることになった。 (さらに…)
『医療は国民のために』336 柔整受領委任の歴史を今一度振り返りたい(その1)
『医療は国民のために』336 柔整受領委任の歴史を今一度振り返りたい(その1)
2022.02.10
「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」という柔整療養費の受領委任の運用を根本的に見直す議論が、厚労省の審議会で始まっているのは周知の通りだろう。これを良い機会に受領委任払いの歴史的な経緯を改めて確認したいと思う。
労働者のための健康保険は戦前の昭和2年に健康保険法施行に伴い始まった。当初、治療の費用は支払側と診療側の話し合いによる人頭請負式であった。 (さらに…)
『医療は国民のために』335 療養費では審査請求制度を活用して泣き寝入りしないこと
『医療は国民のために』335 療養費では審査請求制度を活用して泣き寝入りしないこと
2022.01.25
公的医療保険制度の保険給付において、請求が認められなかった場合に救済措置として「審査請求制度」で不服申し立てができる。療養費は、診療報酬(医科等)と異なり、請求権者が被保険者(国保の場合は世帯主)なので、被保険者が当事者として審査請求人になることから、納得できない「不支給処分」の場合、泣き寝入りしないためにも患者に十分な説明を行う必要がある。まず注意すべき点としては、時間制限がある。保険者が不支給決定通知書を発出し、患者が通知内容を知った日の翌日から「3カ月以内」に審査請求を行わなければならない。これは法律条項なので融通が利かない。 (さらに…)
『医療は国民のために』334 外部点検業者が牛耳る返戻行為は納得できない
『医療は国民のために』334 外部点検業者が牛耳る返戻行為は納得できない
2022.01.10
柔整療養費の不備返戻理由に、何だか訳の分からないものが非常に増えてきている。健保組合から業務委託を受ける「外部点検業者」が実質的に仕切っているのは疑う余地もないので、「外部業者が返戻案件を判断するのは許せない」と抗議しても、「健保組合が判断している」とあくまで保険者判断を主張するから埒が明かない。
返戻内容も「健康保険法第87条の規定から認められない」、「外的要因外である」、「外傷性でない」、「協定外施術である」、「慢性である」などが多くなっている。これは外部点検業者の中で、平成30年6月以降の「急性・亜急性の削除」の運用変更に着目した職員が得意げになって返戻を繰り返しているものだと推察する。つまり、療養費の支給対象が、従来の急性・亜急性から「外傷性の明らかな」負傷に変わったからだ。 (さらに…)
『医療は国民のために』333 令和4年度療養費料金改定に関して 早期の議論を求める(その2)
『医療は国民のために』333 令和4年度療養費料金改定に関して 早期の議論を求める(その2)
2021.12.24
前回、診療報酬(医科・薬価等)の料金改定の行方に絡めて、柔整・あはき療養費の料金改定議論の問題点などを指摘した。療養費の次回改定の時期となるだろう令和4年6月が迫ってきている中、これまでと同様の慣習に従い、「医科の改定率の半分ルール」を頼りに「なあなあ」な改定議論を重ねていって、本当に斯界はそれでよいのだろうかと感じるところだ。
たしかに、昔は議論する場自体がなかったことから、何の改定議論も行わずに決めてきたのも致し方ないことであろう。しかし、2012年以降は、民主党政権の中で柔整・あはき療養費の適正な運用・あり方を議論する場として、社会保障審議会傘下の医療保険部会に「柔道整復」「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう」の両療養費検討専門委員会が置かれ、医科本体が中央社会保険医療協議会(中医協)で診療行為等の価格について議論するのと同様に、これら専門委員会の場で料金改定議論を十分に行える環境は整っているのである。ところが、既に専門委員会が設けられてから10年近くになるが、相変わらず、 (さらに…)
『医療は国民のために』332 令和4年度療養費料金改定に関して早期の議論を求める(その1)
『医療は国民のために』332 令和4年度療養費料金改定に関して早期の議論を求める(その1)
2021.12.10
医科・薬科等では、次期診療報酬改定に向けて、早速、厚労省が動きを見せている。当然のことながら、新型コロナウイルス感染症への対策を最優先の重点課題に位置付けており、併せて看護師の収入の引き上げや不妊治療関連のほか、初回診療を含めたオンライン診療を評価することを盛り込んだ改定基本方針が示された。今後、この方針を下にして、中央社会保険医療協議会(中医協)で医療保険の適用範囲・個別の診療行為等の価格について活発な議論が展開されていくこととなる。 (さらに…)
『医療は国民のために』331 「面接確認」の公正・公平な運用を求めたい!
『医療は国民のために』331 「面接確認」の公正・公平な運用を求めたい!
2021.11.25
柔整療養費の請求で不正または著しい不当がないかどうかを確認するため、厚労省の発出文書(平成30年12月17日付事務連絡)に基づき、数年前より柔整審査会で「面接確認」が実施されているが、恣意的な運用が行われてないか心配だ。
まず、面接確認に呼ばれる施術管理者についていえば、当然ながら接骨院を閉めて呼び出しに応じることから、その日の収入は得られない。交通費も自己負担であり、柔整師の経済的及び精神的負担の大きさを考えれば、適切な運用でなければならないのは言うまでもない。よって、面接確認の対象者をどう選定しているかは重大な問題となる。事務連絡では、▽施術管理者等が柔整審査会の審査により、当月の請求状況及び当月以前の審査実績からみて、請求内容が作為的であると認められる場合、▽当月の請求状況及び当月以前の審査実績からみて、不正及び著しい不当であると認められる場合、などの五つの要件が示されているが、どの要件に該当して呼び出されたのか明確にされないケースが散見しているようだ。まずはこの点を明らかにするよう求めていく必要があろう。
そんな中でも、私がもっとも懸念しているのは、事務連絡の「別添4」で示された「柔道整復療養費審査委員会面接確認実施要領」だ。第4条の2には、「面接確認委員会の委員の構成状況に応じて、面接する委員は、所属している団体に属する施術管理者等の面接確認を行わないなど公平性の確保に努めるものとする」との記載がある。これに沿えば、柔整審査会の施術者側委員の全員が「社団」(公益社団法人○○県柔道整復師会)に所属する柔整師という都道府県があるとすれば、そこの社団会員は自動的に面接確認対象者から除外されることになる。 (さらに…)
『医療は国民のために』330 コロナで減少に転じた医療費の実態から次期料金改定を思う
『医療は国民のために』330 コロナで減少に転じた医療費の実態から次期料金改定を思う
2021.11.10
新型コロナウイルスのパンデミック後の日本医療の現状をうかがい知る数値として、厚労省がこのほど令和2年度の概算医療費(労災と自費を除いた速報値)を公表した。これまで毎年1兆円規模で医療費が膨れ上がっていた中、一転して1.4兆円も大幅に減少となった。前年度と比べて3.2%減の約42.2兆円で、当然ながらコロナの影響であり、受診控えが主な原因であったことは容易に想像できる。
一方、厚労省が財務省に提出した令和4年度予算の概算要求によれば、健保組合への助成がわずか885億円であり、対前年度当初予算の5.4億円の増額。この程度の増額で健保組合が納得するとは到底思えない。 (さらに…)
『医療は国民のために』329 「マッサージは意味がない」との週刊誌記事になぜ業界は反論しないのか?
『医療は国民のために』329 「マッサージは意味がない」との週刊誌記事になぜ業界は反論しないのか?
2021.10.25
もう20年近くも前の2002年5月に、岡山県で開催された「第75回日本整形外科学会」にパネリストとして呼ばれ、柔道整復の施術について話をさせてもらったことがあった。その学会終了後、参加の整形外科医とお話しする機会があり、マッサージにも話題が上った際、何人かの医師から「マッサージは意味がない行為だ」とか、「マッサージは百害あって一利なし」とか、「頻繁にマッサージを受けると癖になってしまってとんでもない」との悪態に近い言葉を耳にした。私はマッサージ師でもなければ、特にマッサージ施術に造詣が深いわけでもないので、議論することもなくその場をやり過ごしたと記憶している。“保健あん摩”であれば、気持ちの良い慰安行為であろうから医科学的効能・効果はないのかもしれないという程度の認識であったが、その後、この業界に身を置くことになり、随分と勉強させてもらった。医療マッサージという用語が認知され、医科本体でも「消炎鎮痛処置」という診療報酬の算定項目も認められていることから、今考えてみると議論を吹っかけても良かったのかもしれない。
というのも、最近発売された女性週刊誌に、前述のことを彷彿とさせる記事が載っていたのだ。その記事の中で、新潟大学名誉教授の医師は、
①肩や筋肉には「こり」という症状は無いから肩や筋肉が「こった」ということは医学界では無い
②MRI検査をしても変化は認められない
③こりは単に「活性酸素」という疲労物質が溜まっただけ
④こりは自分の意思で筋肉を収縮させ、血行を良くしなければ解消されない
と批判・指摘をしている。 (さらに…)
『医療は国民のために』328 亜急性負傷が廃止された今、自費メニューの「導入」が必要!
『医療は国民のために』328 亜急性負傷が廃止された今、自費メニューの「導入」が必要!
2021.10.10
平成30年6月以降、柔整療養費の支給対象から「亜急性」が削除され、柔整師にとって厳しい保険請求の実態となっているのは、改めて言うまでもないだろう。
保険者は負傷原因の確認に当たって、課長通知上の「外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すもの」をことさら振りかざし、こちらの主張する「反復性・蓄積性・オーバーユース(酷使、使い過ぎ)に起因する請求」の正当性もほとんど聞き入れなくなってきている。具体的には、「捻れがない」「関節可動域を超えたとは言えない」「外力の発生機序がない」「身体組織が損傷を受けたとは言えない」といったことで不支給処分または不備返戻とされてしまう。私としては「人は寝ている間でも頸椎捻挫する」も正当な主張だと思っているが、保険者からすれば、「人は単に寝ている間に捻挫などしない」と考えているようで、これも前述の「外傷性の定義」を論拠にしているのである。 (さらに…)
『医療は国民のために』327 あまりにもハードルが高い支払基金の療養費参入
『医療は国民のために』327 あまりにもハードルが高い支払基金の療養費参入
2021.09.24
8月6日の柔整療養費検討専門委員会では、復委任を認めないとする主張が影を潜め、「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」と言い方を変えた議題が出された。国が「協定と契約に差を設けるつもりはない」との方針では、個人契約団体の縮小を狙っていた日本柔道整復師会も自分たちに不利益が及ぶ恐れがあると感じたのか、論難の矛を収めて行政側の意見を受け入れたものと私は考えている。
さて、この議論では「法的な関与の下に、請求・審査・支払が行われる仕組み」が今後検討されるとあるが、これは「社会保険診療報酬支払基金」と「国民健康保険団体連合会」の関与・参画を指しているに違いないだろう。国保保険者や後期高齢者医療広域連合では、業務委託の形で審査及び支払い事務を国保連が実施している。一方、被用者保険の協会けんぽと健保組合のため、同等・同様の受け皿として都道府県社会保険診療報酬支払基金が考えられるが、どうやら支払基金自体が積極的に受け入れる考えはなさそうだ。 (さらに…)
『医療は国民のために』326 コロナ禍に東洋医療は何ができるのか?
『医療は国民のために』326 コロナ禍に東洋医療は何ができるのか?
2021.09.10
未曽有の混乱に陥っている「コロナ禍」。これまでに外出自粛に伴い接骨院や鍼灸院への「通院控え」なども起こり、これを書いている8月末現在においても緊急事態宣言の再延長や適用範囲の拡大と、依然として我慢を強いられる状況だ。他の業種に目を移せば、国会議員を抱えていない飲食関連は、まさに「目の敵」とされ、迫害されている感もある。美食家であり無類の酒好きの私にとっては心痛の思いだ。
さて、この長期化するコロナ禍において、私たちの東洋医療はどのような立ち位置で、この事態に接したのかを、今のタイミングで考えてみたい。
(さらに…)
『医療は国民のために』325 全ては“整体”に結集するのか!?
『医療は国民のために』325 全ては“整体”に結集するのか!?
2021.08.25
身体の不調を起こしたので「揉んでもらった」とか、「体の歪みを治してもらった」といった患者側の声をよく耳にすることがある。肩こりや腰痛に伴う疼痛・機能障害に対し、「体を整える」ということで、単に「整体」を選択し、自費メニューにもかかわらず、整体院の門戸を叩く者が後を絶たない状態が随分続いている。
そもそも整骨と整体、またはカイロプラクティックの違いについては、施術者側からすれば、それぞれ別の施術であることは理解・認識されているが、受け手である患者・利用者にとってはこれらを区別し、明確な相違点を見出すことは難しい。もっとも患者にしてみれば、「とにかく痛みを取ってもらいたい」ので、楽になればそれで良いのだ。
「整体院」といえば、理学療法士(PT)がその資格を隠して看板を掲げて手技施術を行っている現状にあることから、柔整師やあはき師からは、あまり歓迎されていない。また、カイロプラクターもどちらかと言えば否定的見方をしている者が多い(カイロ自体は、アメリカではドクターに準じた位置づけから、国内で不当に扱われていると主張する者もいる)。では、法令的にはどう規定されているのかだが、ご承知の通り、柔整師やあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師は国家資格である一方、整体師やカイロプラクターには国家資格がなく、各業界内で民間の認定資格制度はあるものの、公的なお墨付きは得られてはいない。
ただし、整体やカイロプラクティックという手技療法自体は、「指圧」の中に法律上含まれている。整体は人の健康を目的とした「保健」を行うのであるから、カイロプラクティックなども含め、国の免許制度の立ち位置としては、現行法上では「あん摩・マッサージ・指圧師」の免許を取得して正々堂々と施術をすれば問題ないのである。つまり、カイロや整体等の手技療法は全て「指圧」と総称されているのだ。これについては、著名な先生が過去の法令的変遷をひも解きながら、柔整・あはきの免許制についての位置づけをきちんと発信されているが、業界団体自体がこれを受け入れず、認めてない悲しい現状にある。行政にいたってはこれを全く理解できず、このことから実際の法令的な仕切りに乗らず、現在に至っているといえる。
「無資格だ」と一括りにして、整体の悪口を寄ってたかって言っているようだが、整体やカイロは法令的には「指圧業」であって、正しくは「無免許の指圧業」ということになる。このことから、あん摩・マッサージ以外の手技療法は、あくまで「全ては指圧に結集する」というのが正解で、「全ては整体に結集する」のではない。業界人や行政のみならず、多くの国民がこれを理解できていない(知らない)現況を認識すべきだろう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。