『医療は国民のために』242 鍼灸とマッサージの往療料取扱いの相違
2018.02.25
1月31日の第18回あはき療養費検討専門委員会で、保険者から「鍼灸の同意書にも、マッサージと同様に、医師が“往療の必要性”の必要性を記載する項目を入れてほしい」との要望が上がったということを耳にした。
ここで、往療料加算の取り扱いをまず整理したいが、鍼灸(柔整も同様)の施術に係る往療料加算の必要性はあくまで施術者が判断することになっている。 (さらに…)
『医療は国民のために』242 鍼灸とマッサージの往療料取扱いの相違
『医療は国民のために』242 鍼灸とマッサージの往療料取扱いの相違
2018.02.25
1月31日の第18回あはき療養費検討専門委員会で、保険者から「鍼灸の同意書にも、マッサージと同様に、医師が“往療の必要性”の必要性を記載する項目を入れてほしい」との要望が上がったということを耳にした。
ここで、往療料加算の取り扱いをまず整理したいが、鍼灸(柔整も同様)の施術に係る往療料加算の必要性はあくまで施術者が判断することになっている。 (さらに…)
『医療は国民のために』241 医療保険財政基盤としてのマクロ的到達点の受け皿は「民間保険」だ
『医療は国民のために』241 医療保険財政基盤としてのマクロ的到達点の受け皿は「民間保険」だ
2018.02.10
我が国の今後の医療保険における財政政策をマクロ(巨視)的な視点で見た場合、到達点目標を達成するための方向性は、大きく二つに分けることができる。 (さらに…)
柔整療養費 施術管理者の要件追加、厚労省が通知 実務経験と研修受講、4月より
柔整療養費 施術管理者の要件追加、厚労省が通知 実務経験と研修受講、4月より
2018.01.25
新卒者は特例あり、既卒者は扱い示されず
柔整師が療養費の受領委任を取り扱う施術管理者になる場合の要件として、4月1日以降、実務経験と研修の受講が義務付けられることになった。1月16日付の厚労省通知で協定・契約が一部改正された。 (さらに…)
『医療は国民のために』240 「施術管理者」にならなくとも柔整療養費を代理受領?
『医療は国民のために』240 「施術管理者」にならなくとも柔整療養費を代理受領?
2018.01.25
柔整療養費の適正化と銘打って、保険請求できる柔整師を大幅に抑制するために、「実務経験」と「研修の受講」を施術管理者になるための要件に加えるとする厚労省通知が発出された。当然、この2つの新要件をクリアできなければ受領委任の取り扱いができず、私から見れば、単に柔整療養費の抑制を狙った方策としか考えられない。しかし、受領委任の取り扱いについて詳細に検討してみると、必ずしも施術管理者にならなくとも「代理受領」で従来通り保険請求できると考えられなくもない。 (さらに…)
『医療は国民のために』239 医師との連携が困難であることを痛感する
『医療は国民のために』239 医師との連携が困難であることを痛感する
2018.01.10
鍼灸療養費での医師の同意に関して、初療の日から3月を経過した後の申請では、医師からの同意を得ていれば同意書の添付は省略してもいいし、確認は口頭でも電話でも良く、施術者が得ても患者が得てもいいといった取り扱いで進んできた。そのためか、地方の医師会などが会員医師に対して「同意はしないように」との指導を行っているのは周知の事実である。 (さらに…)
『医療は国民のために』238 柔整業界はビジョンを明確にしなければ保険者の理解は得られない
『医療は国民のために』238 柔整業界はビジョンを明確にしなければ保険者の理解は得られない
2017.12.25
保険者経験の長い私には保険者の友人も多く、総合健保組合の集まり等にも呼ばれることがある。その際、柔整療養費が話題に上ると、決まって私に向けた攻撃的意見が相次ぐ。せっかくの和気あいあいの雰囲気も一変してしまう彼らの指摘というのが、
①現在、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの発生機序が明らかな負傷は外科・整形外科が担当するので、柔整師はお呼びでない
②高齢者や認知症対応の者はデイサービスを主体にして介護保険を利用できる環境が整っているので、整骨院には行かない
③機能訓練や機能回復に当たっては理学療法士や作業療法士が保険医療機関内で対応し、そのリハビリ実施の結果、疼痛除去や機能障害の改善に効果があるので理学療法士と作業療法士がいれば外傷性の事後処理は問題なく対処できる
といった具合に手厳しい。柔整師はもはや「終わった資格」ととらえられ、療養費での保険給付としての活躍の場は一切無いと言われているようで、議論の応酬となってしまう。
柔整業界は「保険を守る」というが、何をどう守るのか。また、「柔整の業務・業権拡大」についても、どの分野でどの業務を勝ち取っていくのかもはっきりしないのが実情だ。
保険財源がますます厳しくなる中、保険者は、柔整業界側が「単に保険適用を慢性疾患に広げる」とか、「外傷性にとらわれない保険範囲の拡大」と言っても取り合わないだろう。可能であれば「本来の健康保険法第87条が求めている原則論」、すなわち、①被保険者証を提示できなかったことから後日、償還払いで請求すること、②治療を受けた所が保険医でなかったことから後日、償還払いで請求すること、の2点に限局したいのではないか。しかも、保険者は、「本来の柔整師が診るべき患者はもう整骨院には行かない」との認識の下、徹底的に患者調査をすれば、必ず患者から「私は外傷性の負傷ではありません」という言葉を引き出せると考えているらしい。
今、3,800億円の柔整療養費を医科に移行する考えがひそかに進行している。その証拠として、療養費検討専門委員会で療養費のあり方が議論されればされるほど厳しさが増している。そんな中、柔整師のうち、わずか0・1%程度しか取り扱われていない骨折や脱臼を専門学校等の養成施設で熱心に勉強している点や、学術レベルを高め、柔整の運動療法を確立すべき大学が何をやっているのかといった点に対する指摘や疑問が保険者から聞かれたりする。整骨院への来院者ニーズと柔整師の技能・能力の関係、保険請求の実態の不整合性、そして学術的な制度設計――これらを解決できなければ、柔整業界の先行きは自ずと知れたものになるだろう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
『医療は国民のために』237 自費メニューへの「逃げ」は保険適用を消滅させる第一歩
『医療は国民のために』237 自費メニューへの「逃げ」は保険適用を消滅させる第一歩
2017.12.10
柔整の保険適用が厳しくなってきている中、自費に移行する流れが止まらない。『あなたも自費で大いに稼げる』と喧伝するセミナーも散見され、それに大枚をはたいて参加する柔整師も見受けられる。実情としては、療養費で請求しても払ってもらえず、保険者からの支給申請書の返戻の束を目の前に、「もう保険請求をやめて、自費でやっていく!」といった具合だろう。しかも、最近よく目にするのが、保険よりも自費施術を勧める内容をにおわせる掲示ポスターなどの広告だ。これなどは、かねてから歯科でよく使われた手法で、医科本体でも同様のケースが見られ、「保険は低レベルの必要最低限の治療で、自費は高額だが素晴らしい優れた治療」と謳っていることがほとんどだ。 (さらに…)
『医療は国民のために』216 全く議論になっていないあはき療養費検討専門委員会
『医療は国民のために』216 全く議論になっていないあはき療養費検討専門委員会
2017.07.25
1月18日に開かれた『第10回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会』を傍聴した。驚くべき低レベルの議論で、なんら建設的な話し合いになっていなかったのが残念でならない。あはき療養費に受領委任を導入するか否かについては、「平成28年度中に明確な方向性を示すもの」と、昨年示された工程表(スケジュール案)で整理されているため、この2カ月程度の間で結論を出さなければならない。今後、年度末の3月までに、柔整よりも多くの専門委員会の開催が予定されていることからも明らかだ。仮に、受領委任を導入するか否かという議論が来年度に持ち越しとなった場合、すなわち「あはきの受領委任の導入にあたっては、引き続き検討を要する」となった場合は、保険者側の全面的な「負け」といえる。なぜなら、来年度以降も「受領委任の導入」が議論の最優先事項となり、実質的な適正化の議論に入っていけなくなるからである。 (さらに…)
『医療は国民のために』218 柔整・あはきへの電子カルテ導入の必要性
『医療は国民のために』218 柔整・あはきへの電子カルテ導入の必要性
2017.02.25
医科での診療録(カルテ)の電子化が確実に進んできている。社会保険診療報酬明細書(レセプト)の電子申請化はほぼ完了し、カルテとレセプトとの作成が連動するシステムの普及が背景にあるようだ。ただ意外なことに、レセプトの電子申請化が90%を超える中、電子カルテの普及率は400床以上の一般病棟で82.5%であり、一般診療所においては36.2%(平成27年度調査実績)だという。とはいえ、今後も大いに進捗していくことは期待される。その電子カルテの有用・有益さとしては、
①患者への病状説明に当たり貴重な説明ツールとして武器となることから、患者の信頼獲得に直結する
②見やすい画面構成により他院との差別化が図れる
③医療スタッフのカルテ整備に係る事務処理作業の軽減につながる
の3点が挙げられる。そして、カルテとは、まさに「治療行為の事実の根拠」であり、治療を行う者はその整備をしなければならない。これをこの業界に置き換えて考えてみよう。
療養費という医療保険はもちろん、労災、生活保護、また交通事故に対する自賠責でも、当然カルテの整備は求められている。具体的に、柔整療養費では「受領委任の取扱規程20」や「算定基準の実施上の留意事項第6」によって、カルテの作成と5年間の保存期間を求めている。あはき療養費でも、柔整ほど明確な規定はないが、課長通知による留意事項に施術録の記載事例が示されている。
ただ、柔整師や鍼灸マッサージ師には文書作成が苦手な者も少なくないであろう。だからこそ、電子カルテの導入だ。「文書が書けない、書きたくない」という施術者にとっては、カルテ作成に当たっての必須のアイテムになることは間違いない。さらに今後、確実に普及が見込まれる理由が、柔整・あはきの両療養費検討専門委員会での議論の中に明快に見いだせる。昨秋に示された「療養費検討専門委員会における議論の整理に係る対応スケジュール」によれば、柔整審査会の権限を強化し、不正請求の疑いが強い施術所に資料の提出や説明を求める仕組みを、早ければ平成29年度から実施を目指したいとされていることに着目すべきだ。ここでいう「資料の提出」の「資料」とは、具体的には「カルテ」と「問診票」であることは言うまでもない。すなわち、カルテを作成していない者は、今後、保険請求から「撤退」させられるといった環境が整いつつあると見るべきだ。
医科では既にe―文書法により、一定の評価を得ているが、療養費ではまだまだ認知されてはおらず、あくまで保険請求の証拠・証明は「紙媒体」で保管となっているのが現状だ。しかし、医科・歯科・調剤と同様に、今後必ず電子カルテの認知が進んでいくことになるだろう。柔整とあはきの業界は、療養費の取扱い高の拡大を目指すのであれば、早急に電子カルテを導入し、事業展開すべきであり、このことを行政・保険者に対して積極的にアピールしていかねばならない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
『医療は国民のために』217 柔整業界は総力をあげて「亜急性論争」を後押しだ
『医療は国民のために』217 柔整業界は総力をあげて「亜急性論争」を後押しだ
2017.02.10
1月18日の第9回柔整療養費検討専門委員会では、全国柔道整復師連合会(全整連)所属の業界側委員が「亜急性」に関する重要な意見を述べていた。世界の約17言語に翻訳され、長年診断と治療のスタンダードとして活用されている医学情報『メルクマニュアル(The Merck Manual)』を持ち出し、その中の「スポーツ損傷」の箇所で解説されている「酷使(Overuse injuries)」が柔整師の保険対象としての負傷であることを懸命に主張したのである。 (さらに…)
『医療は国民のために』215 保険適用枠は時代の変化に応じて変容するものだ
『医療は国民のために』215 保険適用枠は時代の変化に応じて変容するものだ
2017.01.10
健康保険給付の原則は疾病・負傷の治療であり、本来、病気の予防は保険適用外であったことは言うまでもない。しかし近年、給付のテリトリーに予防的な側面が入り込んできており、禁煙や出産等も認められる傾向にある。
病状が悪化して重篤な状態になった場合の医療費の高騰を危惧し、軽度な状態で治療を開始したり、病気にならないため未然に疾病への罹患を避けたりすることで、医療費を抑制したいとの考えなのだろう。ただ、病気にならないようにあらかじめ方策を講じることは、東洋医学の「未病」の概念といえ、東洋医療の得意なところだ。にもかかわらず多くの国民は、未病といえば「養命酒を飲むこと」程度の情報しか持っていない。寂しい限りだ。
柔道整復師法第15条は、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行ってはならないと定めている。この「業としての柔道整復は何か」について、柔道整復師法で定義をしていないのは、「学問の進展や技術の発達、社会情勢の変化等に柔軟に対処しうるよう定義しなかった」と厚生省健康政策局監修の医療関係法質疑応答集に記載がある。
現在、「急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれず、単なる肩こりや筋肉疲労に対する施術は、保険の対象外」と健康保険適用として柔整療養費が運用されているが、これは法令ではない。厚労省保険局医療課の通知で示されたに過ぎず、いわば、行政指針としての"お手紙"程度のものといえる。そんなものを後生大事にし、律儀に従う必要はないと私は考える。
国が、柔道整復の業が社会情勢の変化等に柔軟に対処しうるようにと望んでいるならば、柔整師は臨床の場での実態に即した「業務範囲の拡大」「保険取扱い拡大」を声高に要求すべきだ。一部の業界人や整形外科医らが「骨折・脱臼の整復ができない者は柔整業界から退場すべきだ」、「骨折の整復ができなければ国家資格を持っている意味がない」などと、公の席で発言しているが、現状が全く分かっていない者として苦笑されているのをご存知か。
今、骨折・脱臼の療養費申請は0・2%~0・4%程度に過ぎない。これについては、整形外科が医療として確立したという時代の流れが影響しているのは間違いない。新鮮外傷の骨折・脱臼は観血的療法や整形外科医による保存療法が相応しいのであれば、そうすればいいだろう。
では、柔整師はといえば、臨床現場に即した、そして患者の要求に対応した施術に専念するのが望ましい方向ではないか。患者の主訴に着目すると、「肩こり」「腰痛」「加齢に伴う関節痛」などの疼痛対応が挙げられ、患者自身もこれを希望している。なぜこれを柔整師が治療してはダメなのか。「業務範囲ではない」と非難されるのであれば、業界は認められるような闘いをすれば良いだけだし、「保険適用外」だといわれるのであれば、保険適用として認めてもらう取り組みを実施すれば良いだけだ。
とはいえ、柔整業界にはこのような考えを推し進めるリーダーが不在である。確たるリーダーが出現しない限り、柔整業界のジリ貧は止められないだろう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。