神奈川県でも施術者のワクチン優先接種
2021.07.19
神奈川県が7月17日に設置した「福祉施設等従事者向け新型コロナワクチン接種会場」で、同県内で施術所に勤務する柔整師・鍼灸マッサージ師もワクチン接種を優先で受けられることが分かった。
施術者自身で申込み手続きを行い、特設サイトの申込用フォームから予約する。会場は新横浜国際ホテル(横浜市港北区)。接種実施は9月30日までで、モデルナ社製ワクチンを使用する。
神奈川県でも施術者のワクチン優先接種
神奈川県でも施術者のワクチン優先接種
2021.07.19
神奈川県が7月17日に設置した「福祉施設等従事者向け新型コロナワクチン接種会場」で、同県内で施術所に勤務する柔整師・鍼灸マッサージ師もワクチン接種を優先で受けられることが分かった。
施術者自身で申込み手続きを行い、特設サイトの申込用フォームから予約する。会場は新横浜国際ホテル(横浜市港北区)。接種実施は9月30日までで、モデルナ社製ワクチンを使用する。
2020年度の鍼灸受療率4.9%、あマ指は16.4%
2020年度の鍼灸受療率4.9%、あマ指は16.4%
2021.07.15
2020年度の鍼灸の年間受療率が4.9%であることが分かった。公益財団法人東洋療法試験財団の鍼灸等調査研究として、明治国際医療大学学長・矢野忠氏を班長とする調査研究班らが実施した。
鍼灸受療率は前年度より0.3ポイントの微減だが、2013年度以降は5%前後で推移しており、依然低迷が続いている。また、あん摩マッサージ指圧の受療率は16.4%で、前年度比3.7ポイントの減少だった。研究班は「コロナ禍での感染防止の影響も排除できないものと思われる」としている。回答数は1,201人で、調査期間は2020年11月6日~15日。
詳細は、今後弊紙で取り上げる予定。
柔整療養費 橿原市相殺裁判 最高裁で患者ら勝訴
柔整療養費 橿原市相殺裁判 最高裁で患者ら勝訴
2021.07.09
相殺処理の是正、全国に影響か
奈良県橿原市における、柔整療養費に係る国民健康保険申請書の「過誤調整」をめぐる裁判で、6月24日、最高裁判所(小池裕裁判長)が市側の上告を退けたことが分かった。全国柔整師協会(全柔協)が補助参加人を務めた原告側を勝訴とし、未払い療養費の支払いを命じた一審・奈良地裁判決が確定したことになる。
柔整療養費に係る橿原市の国民健康保険申請書の「過誤調整」をめぐり、被保険者である患者らが原告となり、本来支給されるべき療養費の不足額の支払いなどを求めて平成30年6月に奈良地裁で提訴したもの。平成29年1月から3月にかけての施術に関する療養費について、施術した柔整師の別の患者の、平成27年から28年にかけて既に支給された療養費で生じた過誤分を相殺処理(差し引き調整)されたと訴えていた。過誤調整は従来、記号番号の記入漏れといった形式上の誤りでは実施されてきたが、本件は数年前に同じ施術者が行った別の患者の施術で、しかも既に支給済みの療養費で相殺処理的な控除を行うものだった。同様の裁判事例は過去に大阪市でも生じており、平成28年2月の大阪地裁判決が被告・大阪市に未払い分の支払いを命じ、大阪市は控訴したものの、平成29年3月に大阪高裁が棄却。原告らの勝訴となっていた。
こうした経緯の中、奈良地裁は昨年3月、橿原市の「過誤調整については慣習上の合意が成立している」との主張を「被保険者の合理的な意思解釈として無理がある」と明確に否定。原告の主張を全面的に認め、橿原市に対して未払い分の療養費及び遅延損害金の支払いを命じる判決を言い渡した。市は控訴したものの昨年10月、大阪高裁は一審判決を支持し、この控訴を棄却。続けて今回、最高裁が上告を「民事訴訟法318条1項により受理すべきものとは認められない」と判断したことで、原告側の勝訴が確定した。 (さらに…)
『医療は国民のために』322 出張専門なら往療料の加算がないと支払ってもらえない!?
『医療は国民のために』322 出張専門なら往療料の加算がないと支払ってもらえない!?
2021.07.09
少し前に鍼灸療養費で、ある保険者から「出張専門の施術者が往療料を算定しない場合は施術料も算定できない」という当惑するような返戻がきた。これはあまりに厚労省通知を曲解していると感じたので、ここで解説したい。
そもそも出張専門であろうがなかろうが、医師の同意等の必要要件を満たし、患者が健康保険での施術を求めているのであれば、その申請は認められる。またその上で、往療料の支給要件が認められるかどうかだが、仮に認められないのなら往療料は算定しないで請求することになるが、これは施術者の判断によるところである。
今回、施術料も算定できないと言ってきた保険者は、 (さらに…)
全日本鍼灸学会 第70回福岡大会 医学部鍼灸教育、連携の契機に
全日本鍼灸学会 第70回福岡大会 医学部鍼灸教育、連携の契機に
2021.07.09
ネガティブイメージに懸念も
公益社団法人全日本鍼灸学会の第70回大会福岡大会が6月4日から6日、オンライン開催され、22日までオンデマンド配信された。
公募シンポジウム『医学部における鍼灸の教育の現状と課題について』では、医学部の約8割で漢方医学教育が行われる中、鍼灸の授業があるのは約4割との現状を背景に、実際に医学部で鍼灸教育を担当する教職員が登壇した。
平成27年から兵庫医科大学で講義を担当する西村理恵氏は、毎年鍼灸への興味は高まっており、平成29年と令和2年のアンケートを比較すると、受講前から「鍼灸に興味がある」が52.8%から64.1%、「連携をとってみたい」は10.5%から30.8%に増加。授業後はさらに増加するとした。同様にアンケートを実施した東北大学の金子聡一郎氏は、はり師が国家資格であると知っているのが73%であったほか、「非科学的」約25%、「民間療法の一つ」約61%、「痛い」約36%、「疑わしい」約29%と、ネガティブイメージも強いと指摘。いずれも授業直後のアンケートでは改善するものの、理解度の向上を目指す必要があるとした。このほか、 (さらに…)
鍼灸師のための漢方診療講座 インフォームド・コンセントの萌芽は
鍼灸師のための漢方診療講座 インフォームド・コンセントの萌芽は
2021.07.09
「医の心」漢方医が語る
公益社団法人東京都鍼灸師会の『第1回鍼灸師のための漢方診療講座』が6月27日、オンラインで開催された。
「医の心」と題して東京女子医科大学名誉教授の佐藤弘氏が登壇し、古今の医療人の言葉を列挙。現代医療の倫理観などと比較しつつ、医療従事者としての心得を語った。医の倫理の標語「医は仁術なり」は1655年から1661年頃に翻刻出版されたとする『古今医統大全』の後、急速に流行したと説明。例として貝原益軒(1630-1714)は『養生訓』の中で (さらに…)
【経絡治療対談――基礎理論の統一化を図ろうとする動きがある今】第3回・岡部系と井上系がともに取り組むべきこと
【経絡治療対談――基礎理論の統一化を図ろうとする動きがある今】第3回・岡部系と井上系がともに取り組むべきこと
2021.07.09
【第1回】【第2回】【第3回】【第4回】
一度は袂を分かった岡部系の経絡治療学会と井上系の日本鍼灸研究会。今、両者が連携し、日本で生まれた伝統鍼灸「経絡治療」の基礎理論の統一化を図ろうとしている。その背景にあるのは「伝統鍼灸が途絶えつつあるのではないか」という危機感だという。ビジュアル重視ではなく、経絡を重視した治療を取り戻す――。経絡治療学会会長の岡田明三氏(写真右)と日本鍼灸研究会代表の篠原孝市氏(同左)はそう意見を一致させているが、具体的にどんなことから共同でやっていくのだろうか。(鍼灸ジャーナリスト・山口智史)
――それぞれ治療法に特徴がある岡部系と井上系が一緒にやっていくにあたっては、共通項を探る必要があると思います。最大の共通点はどんなところになりますか。
岡田 脈診を中心とした経絡の補瀉であるという理解は、経絡治療学会と日本鍼灸研究会ともに共通していると思います。
篠原 経絡治療の出発は「経絡をどうやってとらえるか」です。そのために六部定位脈診と流注を重視し、経絡治療創成時の問題意識に沿って病証や脈状も考慮し、病態像である証を立てて治療を行う。それが伝統を引き継ぎ、経絡治療を実践している両会で共通しているところでしょう。
――業界全体をみれば、脈診を重視しない、あるいは、脈診を行わないスタイルもあるようですが……。 (さらに…)
日整、工藤体制5期目へ
日整、工藤体制5期目へ
2021.07.09
公益社団法人日本柔道整復師会(日整)は、6月27日の通常総会において工藤鉄男氏を会長に再任し、5期目となる体制をスタートさせた。副会長には松岡保氏(福岡県)と三橋裕之氏(東京都)が就いた。
このほか、財務部長に石原誠氏(香川県)、保険部長に伊藤宣人氏(三重県)、学術教育部長兼国際部長に長尾淳彦氏(京都府)、事業部長に竹藤敏夫氏(茨城県)、広報部長に山﨑邦生氏(岡山県)がそれぞれ就任し、計15名の理事が選任された。
連載『不妊鍼灸は一日にして成らず』39 レーザーリプロダクション学会
連載『不妊鍼灸は一日にして成らず』39 レーザーリプロダクション学会
2021.07.09
私が初めて医師の前で講演したのが4年前、表題の学会が東京で開催された時でした。東京の徐大兼先生から「こんな依頼を受けないか」と言われての登壇。その時の緊張は、今でも覚えています。前夜には徐先生が特上のうなぎをごちそうしてくれました。日本全国から生殖専門医、胚培養士、看護師さんらが参加する、規模は大きくはないですが、紛れもなく生殖医学の学会です。登壇する前に見渡すと、当院の近隣の先生や有名な先生が来られていました。その数、200人くらいだったでしょうか。実は事前に当院に通院中の妊活患者さんの体外受精における採卵成績の整理を進めており、約10年分のデータを当院通院中の医学系研究員の方に統計処理をお願いしました。結果は「有意差あり」となり、その方から「学会で発表しても大丈夫です」と言われたちょうどその時に徐先生から誘われたのです。講演終了後、医師の方々からお世辞のような言葉を頂きましたが、あながちお世辞ばかりではなかったと思ったのは翌年、翌々年と続けて招かれたから。東京、福岡、大阪と続き今回は神戸で、英ウィメンズクリニック院長の苔口昭次先生が学会長。先生が一昨年当院に視察に来られた際、学会で鍼灸の枠を増やしてもらうように依頼、そして調整を頂いた結果、鍼灸師3人が登壇することに。私の推薦で、福岡県の遠藤彰宏先生は「凍結胚移植時の鍼灸・レーザー併用治療」の検証結果を、広島県の田邊美晴先生(香川県厚仁病院生殖医療部門)は「近赤外線照射・鍼灸併用療法継続患者の酸化ストレス値・抗酸化力値の変化」という観点からの考察を、それぞれ発表されます。先鞭をつけた私の役割を引き継いで欲しいと願います。 (さらに…)
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』166 ファスティング×坐禅
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』166 ファスティング×坐禅
2021.07.09
先日、富士山麓朝霧高原の日月倶楽部にて、「ファスティング×坐禅」をテーマにした2泊3日のイベントを開催しました。梅雨で天候を心配しましたが、滞在中は全く雨に降られることもなく、最高の環境で過ごすことができました。
ファスティング(絶食)のイベントといえば、減量や、オートファジーによる体調・体質改善、糖からアミノ酸へ消費がシフトする代謝変化などを目的とした会が多いようです。過去に参加された方の話を聞いたことがありますが、「基本的に自由時間で途中はコールドプレスジュースを飲んでも良かったが、暇なので夫婦でホテルの部屋で過ごしていると、テレビつけてもレストランの紹介が流れ、だんだんイライラしてきて」と。
ただ私が企画したのは、ファスティングを「健康のため」に行うものではありません。ストレスリダクション、アンガーコントロールなど、上手にストレスを回避するための手段としてのファスティングです。僧籍持ちの医師独特のイベントになったと思います。 (さらに…)
連載『中国医学情報』196 武漢で重症新型コロナ肺炎患者17例に鍼併用治療(中国鍼灸)ほか
連載『中国医学情報』196 武漢で重症新型コロナ肺炎患者17例に鍼併用治療(中国鍼灸)ほか
2021.07.09
今回の内容
・武漢で重症新型コロナ肺炎患者17例に鍼併用治療(中国鍼灸、21年5期)
・乳癌術後のリンパ浮腫60例で常軌治療と灸頭鍼併用治療とをランダム化比較(上海鍼灸雑誌、19年6期)
・脊髄損傷による尿失禁67例で常軌治療と鍼併用治療とをランダム化比較(上海鍼灸雑誌、19年6期)
☆武漢で重症新型コロナ肺炎患者17例に鍼併用治療
広州中医薬大学第二付属病院・尹鑫らは、武漢雷神山病院の重症COVID-19に鍼治療した経験を報告(中国鍼灸、21年5期)。
対象=17例:男8例・女9例、41~81歳・平均62±13歳、入院時発症時間8~66日・平均24.8±16.1日。いずれも重症(呼吸数:≧30回/分、SpO2:≦93%、PaO2/FiO2:≦300mmHg、胸部画像24~48時間内病巣進展:>50%)。基礎疾患:高血圧8例・冠性心疾患6例・糖尿病5例・脳血管疾患3例。
治療法=<基礎治療>採血、CT検査、呼吸管理、現代医薬治療。
<鍼治療>①主穴―太渓・代謝穴(下腿内側正中線・内果上8寸・脛骨内側後縁、肝経との交会点)・止喘穴(前腕掌側・曲沢と大陵との連線上・腕横紋と肘横紋との連線で上から1/3)。②配穴―発熱に曲池・合谷、痰濁に豊隆、胸悶に内関、周身酸痛(だるく痛い)に外関を追加。③操作―0.25×40mmのディスポ鍼で直刺10~20mm。深度は鍼下の「気至る感覚」で調整。補法:提挿補法を主とし鍼下得気、捻転を配合、置鍼約2分間。瀉法:鍼下得気、軽挿重提(軽く刺入し強く引き上げる)、捻転角度大、時間やや長く、その後素早く抜鍼。虚実挟雑の患者には、平補平瀉法、得気を限度とする。入院期間中は毎日1回治療。
<中薬治療>①虚証―主方の四逆湯を加減。②実証―麻杏甘石湯、大柴胡湯加減など。
結果=17例の平均入院期間は15日、うち3例は危険状態となりICUに転科、その他は退院。自覚症状は、著効8例・有効6例・無効3例。CT検査は7例が改善。8主要症状(発熱・乾咳・乏力・気促[息切れ]・胸悶・咳痰・口乾・食欲減退)の消失率は50~75%。 (さらに…)
笠間書院から新刊 「日本疫病図説」
笠間書院から新刊 「日本疫病図説」
2021.07.09
日本疫病図説
有限会社笠間書院から新刊『日本疫病図説』が発行された。著者は作家で民俗学者の畑中章宏氏。A5判120頁、1,760円。
疱瘡や麻疹など、様々な感染症に見舞われてきた日本。病原体の存在が知られていなかった時代には、感染症はもののけや怨霊、悪鬼など、目に見えない存在によってもたらされるものと信じられてきた。 (さらに…)
2019年度自賠責における柔整施術費 前年度より44億円減少、4年連続
2019年度自賠責における柔整施術費 前年度より44億円減少、4年連続
2021.07.09
平均施術費は減少傾向ストップ
2019年度の自賠責保険における柔整施術費は約600億円で前年度より約44億円減少した。損害保険会社で構成される損害保険料率算出機構が毎年春に発行する『自動車保険の概況』で発表。施術件数は22万280件で1万6,738件減少した。いずれも2016年度から減少が続いており、2019年度は特に大きく減少した。平均施術費は27万2,236円で692円増加。医療費全体の施設別割合(総医療費約3,305億円)では、柔道整復が18.1%、医療機関が81.4%(約2,690億円)、歯科や鍼灸マッサージを含む「その他」が0.5%(約15億円)だった。下記に過去8年の施術費等の推移を掲載する。 (さらに…)
Q&A『上田がお答えいたします』 「患者照会」について柔整師に相談してはダメ?
Q&A『上田がお答えいたします』 「患者照会」について柔整師に相談してはダメ?
2021.07.09
Q.
健保組合の療養費に係る患者照会書面に、「ご回答に当たっては柔道整復師に相談しないでください」などと書かれています。
A.
健保組合は「患者さんと施術者が口裏を合わせて事前に相談してから書面回答をすれば、療養費の要件を全て満たした回答しか得られないため、不支給処分にできない」と考えているわけです。患者さんが自分の考えだけで照会文書に回答すると、「①負傷原因:特にない、自然に痛くなった、②いつからですか:数年前から慢性症状として、③あなたはケガをしましたか:ケガをしていない」というようになるでしょう。今や多くの患者さんは、 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』203 減るものと増えるもの
連載『汗とウンコとオシッコと…』203 減るものと増えるもの
2021.07.09
6月の夏至を過ぎても朝晩は涼しい気候だ。日中はむっとするし、夏のように夕立が多く、しかも局所的に大粒の雨をもたらしている。これから本格的に梅雨に突入しようというのになんだかうすら涼しく、発汗阻害されてしまうことで、秋のような頸部や肩周囲の痛みも比較的多く見られている。
ましてやコロナ禍で人が動かないが故に、ストレスで食べて熱のこもる、大青竜湯が効くのではないか、と思えるような陽明の熱が絡む痛みが非常に多い。
年の頃は40代前半、比較的がっしりとした、テニスをしている上田さんという女性が腰痛で来院していた。全国レベルではないが、なんでも小さい大会ではよく優勝しているとかで、仕事と家事をこなす元気な2児の母だ。試合中に腰を痛めたらしく、一度は治療して緩解したものの、1週間たって再び来院したというのがこれまでの経緯である。
「あれ? まだ腰痛治っとらんのかいな? おかしいな……」 (さらに…)
連載『鍼灸師・柔整師のためのIT活用講座』5 5Gとウエアラブルデバイス
連載『鍼灸師・柔整師のためのIT活用講座』5 5Gとウエアラブルデバイス
2021.07.09
ここ数年の情報通信技術(ICT)の進化には目を見張るものがあります。コンピューターの性能や速度は年々向上し、価格は下がり、身近なものになっています。またインターネットの活用によって生活は一変し、ICTの恩恵は生活の隅々まで及んでいます。新型コロナウイルスの蔓延により、コミュニケーションの在り方から価値観に至るまで変容を迫られたこともあり、ICTは生活に欠かせない存在になりました。それは、健康・医療の分野でも同じであり、健康管理から診察技術に至るまで、様々なところにICTが応用され、実装されつつあります。そこで今回からは、ICTの進化と健康・医療の関係について考えたいと思います。
近年、特に注目されているのが5G(第5世代移動通信システム)技術です。特徴は多接続・高速大容量・低遅延の三つで、同時にたくさんの情報をリアルタイムで記録することが可能となります。そのため血圧計や万歩計、体重計などのデバイスからの情報を同時に記録・収集・分析し、様々な臨床応用ができるようになりました。近年急速に普及している腕時計式のウエアラブルデバイスでは、歩行数はもちろん心拍数やそこから導かれるストレス、疲労点数、睡眠状態など様々な解析が行えます。記録できる項目も日々進化し続けており、海外では体温や血中のヘモグロビンa1c値、血糖値まで測定が可能です。また、腕時計式に限らず、衣服や靴の中にセンサーを組み込んだり、顔認証や指紋認証などと組み合わせて生体情報を測定する技術も進歩しています。そうなると、高齢者や慢性疾患を対象とした場合、治療室での診察で得られる一時点の生体情報よりも、日頃の生体情報(生活ログ)の方が日常を反映している可能性が高く、診察で重視されるようになります。そして5G技術を活用して多くの世代のたくさんのデータをリアルタイムで集められれば、医療情報と様々なデータを掛け合わせて解析することで病気を予測し最適な治療を行うことが簡単にできるようになるのです。さらに、5Gは大容量のデータを低遅延で集められることから、オンライン診療や遠隔地での診察の補助のほか、遠隔地での手術にも応用可能です。
医療分野での5G技術活用が進む中、鍼灸の情報のほとんどは電子化されていません。仮に電子カルテなどで一部電子化されていても、現在市販されている電子カルテでは医療情報や生活ログにアクセスできないので、診察の補助や病態予測には活用できません。どのような生体情報を集め、病態予測や診断に貢献するのか、そしてその情報から医療・健康の中の鍼灸治療の立ち位置をどのように確立していくのかなど、医療・健康を取り巻く情報コミュニティーでは待ったなしの状態なのです。そのために、我々は東洋医学的な生活情報を記録できるアプリを独自に開発するとともに、生活情報と連動した電子カルテの開発を進めており、生体情報から病態を予測できるシステムを今年度中に低価格で提供できるように準備しています。
【連載執筆者】
伊藤和憲(いとう・かずのり)
明治国際医療大学鍼灸学部長
鍼灸師
2002年に明治鍼灸大学大学院博士課程を修了後、同大学鍼灸学部で准教授などのほか、大阪大学医学部生体機能補完医学講座特任助手、University of Toronto,Research Fellowを経て現職。専門領域は筋骨格系の痛みに対する鍼灸治療で、「痛みの専門家」として知られ、多くの論文を発表する一方、近年は予防中心の新たな医療体系の構築を目指し活動を続けている。
今日の一冊 1は赤い。そして世界は緑と青でできている
今日の一冊 1は赤い。そして世界は緑と青でできている
2021.07.09
1は赤い。そして世界は緑と青でできている
望月菜南子 著
飛鳥新社 1,430円
1は赤い。2はピンク、3は緑で4は晴天の青空のようなイメージ。5は緑、6と8はよく似ていて、前者は紺色に近い青紫色で後者はそれに白い絵の具を足して少し薄くしたような色――。著者である女子大生は一つの刺激に対して二つ以上の刺激を感じ取る「共感覚」の持ち主で、文字に「色」を感じるのだ。文字と色の組合せで覚えるため九九は得意だった一方、源氏の将軍の名前は全てピンクに見えてしまい日本史には苦心したといった過去に触れつつ、自分らしく前向きに生きていこうとする彼女の手記。
編集後記
編集後記
2021.07.09
▽身近でワクチン接種の話題が一気に増えました。接種券が届いたこともありますが、先日は幼稚園で働く妻から余剰ワクチンが出たからどうしようと相談も受けました。6月以降、全国的に接種が加速しているので当然と言えば当然ですが、一方でワクチン供給不足で「職域接種の申請休止」や「1回目の接種予約の取り消し」と不安なニュースも。ただ、これまでの混乱やオリンピックのドタバタ劇もあり、もうそんなに驚かなくなりました。それよりも先日、東京の大規模接種会場である施術者がワクチン接種後、医師の指示による待機時間も無視して会場を後にしようとしたと業界関係者から聞きました。しかもやや暴言も吐いたとも。もう驚く以上にこんな話題は勘弁したいです、優先で接種しているのに。(和)
19条裁判、大阪二審も新設認めず
19条裁判、大阪二審も新設認めず
2021.07.09
7月9日、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師課程の新設をめぐって、平成医療学園と国が大阪高裁で係争中の第二審判決が言い渡された。永井裕之裁判長は「控訴を棄却する」として学園側の訴えを退けた。
今回、大学での研究や教育を行う権利等も争点となったが、同判決はこれも否定し、晴眼者の養成課程を規制する「あはき法19条」は合憲であるとした大阪地裁(一審)判決を採用した。平成医療学園は上告する考えを示している。
詳細は、7月25日号発行の弊紙次号で伝える。
今秋開催分の申込み16日から、柔整・施術管理者研修
今秋開催分の申込み16日から、柔整・施術管理者研修
2021.07.05
柔整療養費の受領委任を取り扱うために義務化されている「施術管理者研修」の10月以降開催分の受講申込みが、7月16日(金)14時から開始される。主催する公益財団法人柔道整復研修試験財団がホームページで発表した。
研修は原則オンラインで実施され、それぞれ300名程度募集する。受講料は2万円。申込み期間は8月2日(月)まで。