連載『アロマテラピーをたずねて』96 認知症予防に効果ローズマリー
2018.05.25
ローズマリーの青白い小さい花が、初夏の陽射しを浴びて満開です。地中海沿岸に分布するこのハーブが日本に渡来したのは、江戸時代初めの文政年間といわれています。シソ科の常緑低木で和名マンネンロウ、生薬名は迷迭香(めいてつこう)で、まっすぐに伸びる立性タイプと匍匐(ほふく)性タイプがあります。立性のローズマリーを庭に植えたことがありますが、私の身長くらいに成長しました。匍匐性タイプは、放置すると枝が暴れて見た目が悪くなるので、しっかり剪定をする必要があります。
有効成分はロスマリン酸で、抗酸化作用や殺菌作用が特長です。古代ギリシャの時代から記憶力や集中力を高めると伝えられ、若返りのハーブとしても有名でした。ハーブティーの要領で浸出液を作り、家庭でも化粧水やヘアリンス、入浴剤に役立てることができます。消化促進作用もあるので、脂っこいラム肉の料理などにもよく合います。
南フランスでは、「4人の盗賊のビネガー」というローズマリーにまつわるエピソードが知られています。昔、ペストが流行っていた時代に、ペストに罹患した人の家ばかりを狙って侵入していた泥棒がいたとのこと。彼らを逮捕すると、ビネガー(酢)に、ローズマリー、セージ、タイム、ラベンダーを浸けてハーブビネガーを作り、それを殺菌剤代わりに体に塗って侵入していたことが分かったという話です。
最近では、ローズマリーに含まれているロスマリン酸には「アルツハイマー型認知症」の予防効果が期待できるとの発表があります。脳組織内に沈着するアミロイドβタンパクの線維化を抑え、神経細胞の死滅を防止してくれる働きがあるとのこと。ロスマリン酸はポリフェノールの一種で、ペパーミントやスペアミント、レモンバームなどシソ科のハーブに多く含まれています。精油の場合は、モロッコやフランスで栽培されるシネオールタイプ、スペイン産のカンファータイプ、コルシカ島のベルベノンタイプの3種類が出回っています。精油はそれぞれの作用も異なるので、専門家のアドバイスを参考にしてください。
【連載執筆者】
山本淑子(やまもと・よしこ)
山本淑子ハーブ・アロマアカデミー校長
AEAJ認定アロマテラピープロフェッショナル