Q&A『上田がお答えいたします』 「腰部挫傷」「腹部挫傷」「頸部挫傷」も柔整療養費算定基準の負傷名に
2017.12.25
1063号(2017年12月25日号)、上田がお答えいたします、
Q.
「挫傷」は柔整療養費の支給を認められているはずなのに、腰部や腹部、頸部の挫傷は返戻されてしまいます。
A.
柔整療養費の算定基準には「胸部挫傷・背部挫傷・上腕部挫傷・前腕部挫傷・大腿部挫傷・下腿部挫傷」とあり、保険者や柔整審査会はこれをもって「国が定めた算定基準に記載の無い負傷名は認められない」との趣旨で返戻しているのでしょう。しかし、厚労省からは、算定基準における負傷名はあくまで「例示」であるとの事務連絡が発出されていることから、腰部・腹部・頸部の挫傷であることを理由に返戻するのは不当です。以下に、それぞれの挫傷についての医科学的な見解を解説します。
「腰部挫傷」は腰方形筋の損傷などが考えられます。また、私が知っている重篤な症例として、「大腰筋の肉離れ」があります。患者さんは筋トレ中、腹部に激痛を感じて保険医療機関を受診。虫垂炎の疑いで画像診断を受けたところ、大腰筋の断裂が判明したのです。「腹部挫傷」は、整形外科でよく診断されています。その多くは腹斜筋損傷ですが、腹直筋損傷もあります。スポーツ選手の場合、競技によっては腹直筋を断裂することがあるのは周知の事実ですね。腹部の筋は大腿部や下腿部の筋のように、筋力があるので遠心性収縮時に引き伸ばされて損傷しやすいと考えられます。柔整施術としては、アイシングしながらの軽擦法や強擦法が有効ですね。併せて、さらしやコルセットによる固定も必要なので、柔整の適応になるでしょう。いわゆる「むち打ち」の中でも、整形外科で「骨は大丈夫」とか「骨はズレていない」といった説明がなされるのが、「頸部挫傷」です。挫傷は筋損傷で、捻挫は椎間関節損傷と捉えられます。頸椎の椎間関節部での圧痛や椎骨を他動的に動かした時に不安定性(可動域亢進)があれば頸椎捻挫で、圧痛が椎間関節部ではなく頸部表層筋や深層筋の位置にあり、他動的に動かしても不安定性が無ければ頸椎挫傷と判断します。柔整師が臨床で遭遇することの多い「寝違え」や軽いむち打ちは、医科学的には頸椎捻挫や頸部捻挫ではなく、頸部挫傷なのです。
「算定基準に無いから」と、保険者や柔整審査会が頑として支給を拒むというのであれば、厚労省に「腰部挫傷」「腹部挫傷」「頸部挫傷」を算定基準の負傷名として追加させるよう取り組まなければなりません。それが「業務拡大の第一歩」に直結すると言えるでしょう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。