Q&A『上田がお答えいたします』 「筋肉痛」は保険の適用外?
2018.08.25
Q.
協会けんぽの被保険者・患者向けの広報パンフレットに「筋肉痛は保険が使えない」とありました。筋肉痛への治療では療養費は請求できないのでしょうか。
A.
筋肉痛に対する施術は保険の対象です。ただ、「筋肉痛」は医学用語ではなく、筋肉に発生する痛みを筋肉痛や筋痛と呼んでいるだけなのです。筋に発生する痛みのメカニズムは現在の医学では明確にされていませんが、有力とされる説を以下に述べます。骨格筋は筋線維の束ですが、疼痛を感じる神経終末は接合していません。しかし、その筋線維を包む筋膜には接合しており、筋の損傷による刺激が加わった際、疼痛を感じるというものです。
以上を踏まえて、打撲・捻挫・挫傷と筋痛との関係性を考察してみましょう。打撲は、筋そのものに直達的な外力がかかることにより筋膜が損傷して疼痛が発生するもの。捻挫は、関節の骨と骨の間に起こる急激な捻れ、あるいは激しい外力により、関節の生理的可動範囲を超えた運動を強制された場合に靱帯や関節包の損傷をきたしたものです。関節周辺を通過している筋にも外力は及んでいるので、筋膜にも微細な損傷が発生することは容易に考えられます。挫傷は筋損傷の総称で、筋損傷の程度の分類でみると第Ⅱ度と第Ⅲ度では筋膜の損傷が明らかです。第Ⅰ度は筋細胞の微細な損傷で、MRI検査において出血所見が認められるだけですが、筋膜そのものが損傷していなくても、筋細胞が破壊されることで筋細胞内に多く存在するATP(アデノシン三リン酸)が細胞外に放出されて疼痛を誘発するという説や、筋膜内の内圧上昇で神経終末を刺激して疼痛を誘発するという説があります。このように、挫傷だけではなく捻挫や打撲でも筋痛は発生すると言えるでしょう。
補足で「遅発性筋痛」と筋損傷の関係にも言及しますと、遅発性筋痛は筋が引き伸ばされる運動、いわゆる伸張性収縮により発生するといわれています。これも詳しい仕組みは解明されていませんが、伸張性収縮では筋形質膜やZ帯の破壊、出血、マクロファージの集積が起こり、血中クレアチンキナーゼや乳酸脱水素酵素の上昇がみられるなど、短縮性収縮よりも筋の障害が強く起こることが生化学的にも明らかになっています。また、運動後24~48時間には筋の傷害や炎症、修復過程と関連するといわれるグルコース6リン酸脱水素酵素の活性が増大することも分かっています。これらのことから、遅発性筋痛は筋の損傷で発生していると理論付けられます。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。




