Q&A『上田がお答えいたします』 大腿部や下腿部の挫傷に対し、審査委員会が「膝の捻挫」の確認を求めてくる / 往療料の「距離」の確認は保険者業務
2020.12.10
1134号(2020年12月10日号)、上田がお答えいたします、紙面記事、
大腿部や下腿部の挫傷に対し、審査委員会が「膝の捻挫」の確認を求めてくる
Q.
大腿部と下腿部挫傷で柔整療養費を申請した際、柔整審査委員会から「膝の捻挫ではないのか。または、挫傷であるならば部位の上下を記入せよ」との理由で不備返戻されました。
A.
厚労省保険局医療課長通知で示された「柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項」の第5その他の施術料の4その他の事項(1)の「オ」の「また書き」には、「関節捻挫と同時に生じた当該関節近接部位の打撲又は挫傷に対する施術料は、別にその所定料金を算定することなく、捻挫に対する所定料金のみにより算定すること」との記載があります。「大腿部(上部を除く)や下腿部(下部を除く)の挫傷が、膝関節捻挫と同時に生じたものである場合、膝関節捻挫に対する所定料金のみにより算定することになる」との取り扱いに鑑みての、保険者の指摘なのでしょう。
膝の捻挫があり、同時に大腿部(上部を除く)や下腿部(下部を除く)の挫傷がある場合、大腿部挫傷と下腿部挫傷では算定できません。しかしながら、あなたが施術を行った今回の大腿部挫傷と下腿部挫傷は、同日に負傷したものですね。2部位であることから負傷原因を記入する必要が無いため、審査委員は申請書だけからでは「膝の捻挫ではない」という判断がつかないので確認する必要があるということでしょう。「膝の捻挫ではない」との回答をすれば、何の問題もなく支給されるはずです。
往療料の「距離」の確認は保険者業務
Q.
あはき療養費支給申請書が「摘要欄に起点から訪問先までの距離を記載するか、または往療内訳表に距離を記載してください」と不備返戻されました。
A.
現行の往療料加算は2,300円で、片道4km超は2,550円とする2段階の算出となっています。通知では施術管理者が正確な距離を明らかにすることにはなっておらず、これは保険者の業務です。面倒くさいからといって施術者にお願いするのは不適切な対応ですね。いずれにしても、往療距離の記載が無いのを理由に療養費支給申請書を返戻することはできません。受領委任の取扱規程第4章の24(7)及び平成30年12月27日付の厚労省保険局医療課事務連絡「はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」第4章【療養費の請求関係】(問68)とその答えによっても明らかです。往療の距離が片道4kmを超えるかどうかは、申請書や往療内訳表に記入された情報から地図上で縮尺率を基に計算したり、インターネットの地図アプリを活用したりして、あくまで保険者が確認しなければなりません。行うべき業務処理を行わず施術管理者に負担させることは認められないのです。よって、距離を明記する必要はありません。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。