連載『中国医学情報』178 谷田伸治
2020.01.10
☆全人工膝関節置換術(TKA)の術後疼痛管理とリハビリに円皮鍼併用が好影響
南京中医薬大学・邱犀子らは、TKAの術後疼痛管理に対する円皮鍼併用の効果をランダム化比較(上海鍼灸雑誌、19年11期)。
対象=片側TKAをした60例(男24例・女36例)、平均約64.5歳。これらをランダムに、持続大腿神経ブロック(CFNB)群と円皮鍼併用群各30例に分けた。
治療法=両群にCFNBと常軌リハビリ。
<リハビリ>術後に下肢関節の屈伸など、1回30分、毎日2回。
<円皮鍼>取穴―同側の申脈・大杼・懸鍾・豊隆・風市。操作―0.2×1.2mmの円皮鍼(セイリン社製)を上述の5穴に刺入、毎日1回。
観察指標=①視覚的アナログスケール(VAS)で疼痛評価②関節の連続受動運動(CPM)最大角度③炎症などに関与するIL-6の血中濃度を、術後24・48・72・92時間などに測定。
結果=①受動運動時VAS(術後24→48→72→96時間)―ブロック群:4.4→3.5→2.6→1.6、併用群:3.3→2.9→1.9→1.5。②CPM最大角度(術後48→72→96時間)―ブロック群:49.5→68.7→73.0、併用群:58.6→76.3→85.5。③IL-6血中濃度(術前→後24→72時間)―ブロック群:171.95→400.97→228.82、併用群:163.43→303.91→225.94。
☆脳性麻痺児で円皮鍼併用療法などのコアマッスル群への影響をランダム化比較試験
遼寧省瀋陽市児童病院神経リハビリ科・斉騰澈らは、脳性麻痺児120例をリハビリ単独、リハビリ+刺鍼、リハビリ+円皮鍼按圧の3群で、コアマッスル(体幹の筋肉)群への影響を比較検討(中国鍼灸、18年6期)。
対象=120例(男76例・女44例)、月齢24~40カ月。粗大運動能力分類システム(GMFCS):レベルⅢ(歩行補助具で歩ける)73例・レベルⅣ(歩行補助具でもほとんど歩けない)47例。タイプ別分類:痙直型81例・ジスキネティック型(原文「不随意運動型」)18例・失調型3例・舞踏様アテトーゼ型(「肌張力低下型」)6例・混合型12例(分類名は日本理学療法士協会ガイドラインによる)。これらをランダムに、3群各40例に分けた。
治療法=毎日1回、週5回、計12週間。
<リハビリ>運動療法とコアマッスル安定性訓練など。毎回30分。
<刺鍼>取穴―腰陽関・命門・L2~5夾脊穴。操作―0.25×25mmの毫鍼で、腰陽関・命門は直刺10mm、夾脊穴はやや脊柱方向に斜刺10~15mm、平補平瀉法、置鍼30分。
<円皮鍼>取穴―同上。操作―長さ0.2~0.3cmの円皮鍼を置鍼24時間、その間に毎日3回(間隔は最低4時間)按圧させる。毎穴按圧1分間、按圧頻度毎分80~120回。1日1回、週5回円皮鍼を交換。
結果=①表面筋電図(sEMG)―治療後、脊柱起立筋の各項目指標は、円皮鍼併用群が他の2群より有意に高かった。②Bergバランススケール―円皮鍼併用群が他の2群より有意に高かった。③粗大運動能力尺度(GMFM)―鍼併用群・円皮鍼併用群のB座位・C四つ這いと膝立ち・D立位が、リハ単独群より有意に高く、円皮鍼併用群のB・Cは鍼併用群より有意に高かった。
結論=円皮鍼按圧併用は、常軌の刺鍼とリハビリのみより優れた効果を上げられる。
☆薬剤性便秘には円皮鍼併用が効果的
浙江省衢州市中医病院・許金釵らは、悪性腫瘍などに使うセロトニン5-HT受容体拮抗薬による便秘に常軌薬物+円皮鍼が効果的と報告(上海鍼灸雑誌、19年5期)。
対象=60例(男31例・女29例)、平均年齢68.5歳(35~82歳)。これをランダムに、常軌薬物単独群・円皮鍼併用群各30例に分けた。
治療法=治療期間:4週間。
<円皮鍼>取穴―天枢・腹結・大腸兪・小腸兪。操作―まず掌腹で患者の腹部を時計回りに約3分間按摩し、腹筋を緩める。その後、0.25×1.2mmの円皮鍼を刺し、そこを2~3時間おきに毎回1分間按揉。円皮鍼は24時間に1回交換する。
観察指標= ①ブリストル便形状スケール(BSFS)、②便秘スコア(CSS)、③QOL。
結果=①BSFS(治療前→後)―薬物群:45.8→38.2、併用群:45.4→30.2。②CSS―薬物群:12.1→9.6、併用群:12.2→7.8。
臨床効果―薬物群:治癒4例・著効8例・有効9例・無効9例・総有効率70.0%、併用群:治癒10例・著効14例・好転4例・無効2例・総有効率93.3%。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。