連載『中国医学情報』189 谷田伸治
2020.12.10
☆認知症患者の記憶力向上に鍼通電併用治療―薬物単独群とランダム化比較
黒龍江中医薬大学・夏昆鵬らは、認知症患者で常軌内科治療単独と鍼治療併用の効果を比較(上海鍼灸雑誌、20年8期)。 (さらに…)
連載『中国医学情報』189 谷田伸治
連載『中国医学情報』189 谷田伸治
2020.12.10
☆認知症患者の記憶力向上に鍼通電併用治療―薬物単独群とランダム化比較
黒龍江中医薬大学・夏昆鵬らは、認知症患者で常軌内科治療単独と鍼治療併用の効果を比較(上海鍼灸雑誌、20年8期)。 (さらに…)
連載『中国医学情報』188 谷田伸治
連載『中国医学情報』188 谷田伸治
2020.11.10
☆膝に水が溜まる患者31例での鍼灸治療効果―新穴「膝霊」と灸頭鍼併用
山東中医薬大学鍼灸推拿学院・馬東雲らは、膝関節水腫患者に対する鍼灸治療を報告(中国鍼灸、20年7期)。
対象=同大付属病院鍼灸科とリウマチ科の外来患者31例(男11例・女20例)、年齢:38~76歳・平均(59±11)歳、罹患期間:1カ月~15年・平均(3.04±3.31)年。主要症状:膝関節腫脹・疼痛・運動制限・膝蓋跳動・膝関節浸出液(MRI像)。中医弁証:寒湿型11例・瘀血閉阻型8例・肝腎虧虚型12例。
(さらに…)
連載『中国医学情報』187 谷田伸治
連載『中国医学情報』187 谷田伸治
2020.10.09
☆新型コロナウイルス肺炎回復期中医リハビリ推奨ガイドライン(国家試行版)―鍼灸関連部分
武漢の李暁東(湖北省中医院)らは、COVID-19による肺炎(中文:新型冠状病毒肺炎、以下「新冠肺炎」と略記)の回復期患者に対する、国家衛生委員会辦公庁・国家中医薬管理局の「新冠肺炎回復期中医康復指導建議(試行)」(2020年2月22日)を解説した。以下、その鍼灸関連の治療法を紹介する(中医雑誌、20年11期)。 (さらに…)
連載『中国医学情報』186 谷田伸治
連載『中国医学情報』186 谷田伸治
2020.09.10
☆新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療例―バイブレーション治療器併用68例
武漢の黄海(湖北省中医院)らは、COVID-19による肺炎(中文:新型冠状病毒肺炎、以下「新冠肺炎」と略記)患者で、現代医学の常軌の治療法にバイブレーション治療器を併用し、臨床症状の改善などを認めたと発表(鍼灸臨床雑誌、20年5期)。
対象=入院中の新冠肺炎(普通型)68例(男29例・女39例)、年齢33~84(平均60.68±13.98)歳。
※「軽型」:症状軽微、肺炎の画像所見なし。「普通型」:発熱・呼吸器症状などと肺炎の画像所見あり。「重型」:呼吸回数が30回/分以下、血中酸素濃度測定SpO2が93%以下、動脈血酸素分圧/吸入酸素濃度が300mmHg以上、これら3項中1項該当。―国家衛生健康委「新冠肺炎診療方案(試行第六版)」
治療法=<治療器>上海生生医用器材有限公司(米国Body Rub Incの子会社)の「按摩器SSA-600型」(ネットで画像閲覧可)。
<操作法>施術者は、マスク・防護眼鏡・フェイスシールドなど装着。患者は座位か伏臥位。術者は患者の背部で、治療器を両手で保持し、下(第2腰椎の命門・腎兪のライン)から上(第7頸椎棘突起下の大椎)まで、移動路線(気管支の分布に一致)に沿って外から内に、先に右半身その後左半身で移動。その持続振動時間は約2.5分間。次に患者の前方の胸骨部を0.5分間。振動回数は毎分2,800回。毎回合計約3分間、毎日1回を退院まで。
観察指標=①ウイルスのPCR検査(治療器使用前・終了後)、②12の臨床症状―発熱・乾咳・倦怠感(乏力)・胸部不快感(胸悶)・息切れ(気短)・食事量減少(納差)・咽痛/痒・咳白色痰/黄色痰・発汗・下痢・鼻閉・頭痛/めまい、③バーセルインデックス(Barthel Index):食事・移乗・整容・トイレ動作・入浴・移動・階段昇降・更衣・排便自制・排尿自制10項目を評価、④6分間歩行試験(6MWT)、⑤「重型」などへの転化率
結果=平均入院日数18.18±7.06日。①治療前検査者30例:陽性16例・陰性14例→治療後の陽性23例(陰性→陽性12例)・陰性7例(陽性→陰性5例)(無変化13例)、陽性検出率は治療前より高いが、統計学的有意差なし。②食事量減少・発汗は、治療前後の有意差なし。他の10症状は、有意に改善。③・④ともに有意に改善。⑤悪化者なし。
<付記>新冠肺炎の鍼灸治療例は本欄2020年8月10日号で紹介。
☆中・重度の癌性疼痛60例で医療用麻薬単独と鍼併用治療とをランダム化比較
安徽中医薬大学・李丹らは、中・重度の癌性疼痛にはオピオイド鎮痛薬単独より鍼併用治療が有用と報告(中国鍼灸、20年3期)。
対象=60例(男36例・女24例、30~80歳)。これをランダムに単独群・鍼併用群各30例に分けた。内訳―単独群:平均58±11歳、肺癌8例・胃癌9例・肝癌7例・大腸癌6例、中等度疼痛19例・重度疼痛11例。併用群:平均55±12歳、肺癌9例・胃癌7例・肝癌8例・大腸癌6例、中等度疼痛21例・重度疼痛9例。両群に有意差なし。
治療法=両群とも連続2週間治療。オキシコドン塩酸塩(oxycodone hydrochloride)徐放錠を服用。
<鍼治療>①主穴―合谷・内関・足三里・三陰交。②配穴(原発臓腑と疼痛部位で弁病取穴・循経取穴)―背兪穴・郄穴・阿是穴など。[例]肺癌:肺兪・阿是穴、めまい:百会・風池、悪心嘔吐:胃兪・脾兪・足三里、便秘:天枢・大腸兪、尿閉:中極・膀胱兪。③操作―0.25mm×25mm、0.30mm×40mmのディスポ鍼使用。合谷・内関は直刺13~20mm、足三里・三陰交は直刺25~30mm、平補平瀉法。配穴は病状による。置鍼30分間(この間に行鍼1回)。毎日1回治療。
観察指標=①毎日の服用量、②有害事象、③カルノフスキーの一般全身状態スコア(KPS)ほか
結果=単独群:完全緩解11例・部分緩解12例・軽度緩解5例・無緩解2例・緩解率(完全+部分)76.7%、併用群:完全緩解13例・部分緩解14例・軽度緩解2例・無緩解1例・緩解率90.0%。
①(前→後/mg)単独群:92.00±64.46→108.67±59.98、併用群:94.67±65.58→64.33±47.76。②単独群:便秘13例・悪心嘔吐8例・めまい5例・尿閉2例、併用群:便秘6例・悪心嘔吐4例・めまい3例・尿閉1例。③(前→後)単独群:63.67±10.33→71.67±9.86、併用群:64.00±9.32→78.33±8.33。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』185 谷田伸治
連載『中国医学情報』185 谷田伸治
2020.08.07
☆新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の鍼灸治療例―「熱敏灸」治療42例
黄仙保(江西中医薬大学付属病院)らは、COVID-19による重症肺炎(中文:新型冠状病毒肺炎、以下「新冠肺炎」と略記)患者の隔離病室での灸治療で、ネガティブ感情の軽減、胸部不快感・食事量減少症状の改善などを認めたと発表(中国鍼灸、20年6期)。 (さらに…)
連載『中国医学情報』184 谷田伸治
連載『中国医学情報』184 谷田伸治
2020.07.10
☆新型コロナウイルス肺炎の鍼灸法―中国鍼灸学会「指導意見」第二版
中国鍼灸学会は、新型コロナウイルス肺炎の鍼灸法(第二版)を発表(中国鍼灸、20年5期)。 (さらに…)
連載『中国医学情報』183 谷田伸治
連載『中国医学情報』183 谷田伸治
2020.06.10
☆新型コロナウイルス肺炎患者の温灸法―中国鍼灸学会「指導意見」
中国鍼灸学会は、新型コロナウイルス肺炎患者の温灸法を発表(中国鍼灸、20年2期)。 (さらに…)
連載『中国医学情報』182 谷田伸治
連載『中国医学情報』182 谷田伸治
2020.05.10
☆癌性疼痛(多発性骨転移癌)の鍼灸治療例
南京中医薬大学・魏心昶(しんえい)らは、腎臓癌術後の骨転移による癌性疼痛の鍼灸治療例を報告(中国鍼灸、19年4期)。
患者=男、72歳、退職した職工。2017年7月10日初診。
主訴=左右肋骨部と右側頭部の疼痛が反復し1年余り、この1カ月で悪化。
現病歴=2002年右腎臓癌が発見され、切除術後一般状況は良好。1年前歯の色が濃くなり、全身各所の疼痛を自覚、南京市第一病院の検査で多発性骨代謝異常が見つかり、多発性骨転移癌の可能性が考えられたが、放射線や抗癌剤治療を拒否。鎮痛剤(Tramadol)長期服用も効果なし。17年6月9日南京市中医病院のMRI検査:右第7・9肋骨、左第8肋骨、右肩甲骨に破壊、左第6肋骨前段に骨破壊に伴う皮下軟部組織腫瘤。
現症=左右肋骨部・右側頭部・背部の疼痛顕著(VAS:8~9)、四肢運動制限なし、活力不足、食欲少、排便正常、夜間疼痛顕著、睡眠に影響。舌尖紅、苔黄膩、脈弦数。
診断=西医:腎臓癌術後多発性骨転移、中医:骨瘤。
治療法=毎日1回、1クール5回(クール間2日休む)。
①仰臥位―0.25×40mmの鍼で、中脘・下脘・気海・関元・大横・足三里・三陰交・懸鍾・太衝・風池・右率谷に刺鍼。局部疼痛部位(左右肋骨部、右肩甲下角)に、直径10cmで上下左右4方向から15°で斜刺(深度30mm)。左右の足三里・懸鍾を各一対で通電(連続波・30Hz・約2mA)30分間。同時に湧泉に棒灸30分間。
②座位―大杼・肝兪・脾兪・腎兪の膀胱経に上向きで45°で斜刺10mm、捻転得気後、置鍼10分間。抜鍼後、膀胱経第1線の肺兪・心兪・膈兪・肝兪・脾兪・腎兪・大腸兪を上から下に直径5cmの竹製の吸い玉(閃缶)をかけ、皮膚を紅潮させる。
経過=1クール後、疼痛顕著に軽減(VAS:4~5)、食欲・睡眠も好転、鎮痛剤(Tramadol)減量(100~200mg→50mg)。2クール後、疼痛はたまにだけ(VAS:2~3)、食欲・睡眠は正常、鎮痛剤停止可能となり、歯の色浅くなる。3クール後、病状安定、疼痛目立たなくなるが、毎週3回の継続治療。17年11月10日、疼痛目立たず(VAS:2~3)、運動制限なし、食欲・排便は正常、夜間疼痛再発なし、MRI検査:骨転移部に変化なし。
☆癌性疼痛の常用穴
広西中医薬大学・唐翠娟(すいえん)らは、癌性疼痛の常用穴を分析(中国鍼灸、20年3期)。
方法=国内三つ、海外一つ のデータベースを用い、2008年1月1日~18年12月30日までの臨床文献を検索。
文献=中文67篇・英文1篇。内訳:多種癌41篇、肝臓癌9篇、胃癌6篇、肺癌5篇、乳癌4篇、卵巣癌・大腸癌・食道癌各1篇。
結果=穴位処方73首、穴位総数117穴(4回以上使用は40穴)。
①10回以上使用の穴名と回数―足三里65・内関55・太衝50・合谷48・三陰交48・阿是穴39・陽陵泉38・豊隆32・膈兪29・血海29・大椎23・肝兪22・中脘21・期門20・腎兪14・胃兪13・脾兪13・肺兪12・行間11・関元11・支溝10。
②経絡別の使用回数と穴数―膀胱経141回21穴・胃経121回13穴・肝経96回7穴・脾経91回7穴・大腸経61回6穴・心包経60回4穴・胆経54回11穴・任脈53回7穴・奇穴/阿是穴48回5穴・督脈34回7穴・三焦経23回8穴・肺経20回7穴・小腸経14回9穴・心経8回3穴・腎経5回2穴。
☆脳卒中後の手関節縮には梅花鍼併用
河北省中医院・王穎穎(えいえい)らは、脳卒中後の手関節拘縮には梅花鍼併用が効果的と報告(中国鍼灸、20年1期)。
対象=同院鍼灸科とリハビリ科入院患者72例(男35例・女37例)、平均年齢約61.5歳、平均罹患期間約58日。これをランダムに常軌群(リハビリ)・鍼併用群各36例に分けた。
治療法=1クール3週、計3クール。
①リハビリ―1)Bobath法:毎回20分間・毎日1回・毎週5回。2)日常生活活動能力訓練。
②鍼併用群―梅花鍼で手三陰経を手関節横紋下1寸→上3寸まで叩刺(80~130回/分、軽微な出血が限度)、2日1回・毎週3回。
観察指標=①自動的手関節背屈時の可動域(AROM)、②Fugl-Meyer 評価法(FMA)、③バーセル指数(BI)。
結果=①AROM:常軌群16.14±5.86、鍼併用群25.47±9.35。②FMA:常軌群25.00±4.78、鍼併用群41.78±7.36。③BI:常軌群30.22±7.74、鍼併用群41.22±9.30。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』181 谷田伸治
連載『中国医学情報』181 谷田伸治
2020.04.10
☆全身性無汗症の鍼治療例
成都中医薬大学・趙映らは、難病の無汗症の鍼治療例を報告(中国鍼灸、19年9期)。
患者=男、51歳。
主訴=全身無汗で6カ月あまり。時々身体の倦怠疲労感あり。
現病歴=半年前、特に誘因なしに全身無汗となり、暑い日や運動後も無汗。病状が次第に重くなり、日常活動に影響するが、他に異常なし。皮膚科の検査では異常なしで、自律神経失調と診断されるが服薬せず。後に自ら益気補脾方剤(内容不明)を服用するが無効。
現症=顔色悪く、肥満体でBMI27.3、睡眠中よだれ出る、酒やタバコの嗜好なし、運動後に息切れを自覚、外食多く、脂肪分の多い甘い物を好む、小便黄色、大便正常、睡眠可、舌胖苔白膩、唇舌乾燥状態、脈象濡軟無力。
診断=無汗症。証は湿遏営衛、肺脾気虚。
治法= (さらに…)
連載『中国医学情報』180 谷田伸治
連載『中国医学情報』180 谷田伸治
2020.03.10
☆前立腺肥大症50例に次髎・中髎穴の鍼通電―刺鍼深度をランダム化比較
北京中医薬大学東直門病院・兪立豊らは、前立腺肥大症患者で鍼通電の刺鍼深度をランダム化比較(鍼灸臨床雑誌、19年11期)。
対象=50例をランダムに試験群(深刺)・対照群(浅刺)各25例に分けた(脱落者が試験群2例・対照群3例)。試験群:平均(64.74±9.75)歳・平均罹患期間(8.63±3.42)年、対照群:平均(66.05±5.67)歳・平均罹患期間(9.28±2.91)年、両群に有意差なし。
治療法=取穴―次髎・中髎穴。操作―試験群:0.30×75mmの鍼で斜刺(60~75mm)、提挿捻転し得気後、局部にだるく腫れた感覚、鍼感を持続させ前陰部に放散させてから通電(連続波・20Hz)30分。対照群:0.25×40mmの鍼で直刺(25~40mm)、捻転法で局部にだるく腫れた感覚の出現のみ、通電は試験群に同じ。両群とも週3回、計4週間治療。
観察指標=IPSS(国際前立腺症状スコア)、QOL(生活の質)、Qmax(最大尿流量)、PVR(残尿量)。
結果=試験群(23例):著効13例・有効8例・無効2例・総有効率91.30%、対照群(22例):著効4例・有効14例・無効4例・総有効率81.82%。
☆慢性前立腺炎60例で現代薬単独と八髎穴刺鍼併用とをランダム化比較
浙江省寧波市中医院・兪静玉らは、非細菌性の慢性前立腺炎患者で現代薬単独、八髎穴刺鍼(深刺)併用2群をランダム化比較(上海鍼灸雑誌、19年12期)。
対象=60例、これをランダムに単独群・併用群各30例に分けた。単独群:平均(55±9)歳・平均罹患期間(12.53±4.00)カ月、併用群:平均(54±8)歳・平均罹患期間(14.27±4.35)カ月。
治療法=両群ともレボフロキサシンとタムスロシン塩酸塩を毎日1回服用、計2カ月。
<併用群>取穴―上髎・次髎・中髎・下髎穴。配穴―「湿熱下注証」(尿道灼熱・陰嚢湿潤・舌紅苔黄膩ほか):行間・豊隆・陰陵泉、「気滞血瘀証」(会陰部や下腹部などに腫れや痛み・尿刺痛・舌の紫暗や瘀斑ほか):血海・太衝・期門、「肝腎陰虚証」(腰膝だるく力ない・手足のほてり・めまい・遺精や早漏・舌紅少苔ほか):太渓・肝兪・腎兪、「腎陽不足証」(寒がり・手足冷たい・腰膝だるく痛む・インポテンツや早漏・舌淡苔薄白ほか):関元・気海・腎兪。操作―0.30×40/70mmの鍼。70mmの鍼で上髎・次髎・中髎には内下方に斜刺、下髎には直刺、深度各穴50~60mm、ゆっくりと小幅に提挿捻転し前陰部と肛門部に鍼感を放散。配穴は、40mmの鍼で15~30mm刺入、柔和な提挿捻転手法。各穴手法2~3分、置鍼30分(行鍼2回)。2日1回、計2カ月治療。
観察指標=米国国立衛生研究所慢性前立腺症状スコア(NIH-CPSI)・前立腺触感スコア・前立腺周囲組織圧痛スコア・前立腺圧出液。
結果=臨床効果は、単独群:回復(NIH-CPSI減少90%以上)1例・著効(同60~89%)6例・有効(同30~59%)15例・無効(同30%未満)8例・総有効率73.3%、併用群:回復4例・著効16例・有効9例・無効1例・総有効率96.7%。また、前立腺液の検査の結果、局部炎症の要因となるIL-8とTNF-αの値は、併用群が単独群より有意に低下していた。
☆疲労型の未病47例に吸い玉治療
広西中医薬大学・栄亮均らは、未病(原文「亜健康」)の患者への吸い玉治療を報告(中国鍼灸、19年11期)。
対象=同大付属第一病院推拿科外来の47例(男22例・女28例、脱落3例)、年齢22~40歳・平均(33±6)歳、疲労状態持続期間3~15カ月・平均(9.3±2.9)カ月。いずれも、疲労型未病の診断基準(肉体的/精神的疲労の持続期間3カ月以上、明確な原因が不明、明確な疾病診断ができない、ほか)に符合。
治療法=週1回、合計4回治療。
背部循経走缶法―背部の督脈・膀胱経にワセリンを塗布し、最初に膀胱経、最後に督脈で、吸い玉を上下に往復して走缶法を行う。皮膚に紅潮あるいは瘀斑ができるのを限度とする。毎回10~15分間。
観察指標=①肉体的/精神的疲労、②思考力/記憶力低下、③意欲低下、④睡眠不良、⑤食欲不振、以上5つの主要症状をVASで10段階評価。
結果=臨床効果は、著効(症状改善率70%以上)24例・有効(同30~69%)20例・無効(同30%未満)3例。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』179 谷田伸治
連載『中国医学情報』179 谷田伸治
2020.02.10
☆痔核手術PPH法後の肛門の腫れに鍼通電
南京中医薬大学第二臨床医学院・宋揚揚らは、日本で厚労省が「先進医療」として承認している痔核手術PPH法(イタリアで開発された新しい自動縫合器による手術法)による、術後重度肛門の腫れ30例での鍼通電治療を報告(中国鍼灸、19年9期)。
対象=30例(男20例・女10例)、平均(34±9)歳、混合痔罹患期間1~10年。術後症状出現期間:平均(3±1)日、重度の腫れに、渋り腹(排便少量すぐに便意)・頻繁な便意・排便不暢などを伴う。
治療法=取穴―八髎穴。操作―0.30×75mmの毫鍼で斜刺:約60°で肛門方向に40~70mm、提挿捻転法、平補平瀉法、鍼感を肛門部に伝導、得気後に左右の次髎(+極)・下髎(-極)に通電(疎密波2Hz/15Hz)、置鍼30分。毎日1回、刺鍼24時間後に効果判定、症状消失後全患者を1カ月追跡調査(再発患者は消失まで刺鍼)。
結果=第1回治療後(30例):消失7例・著効15例・有効6例・無効2例、第2回後(23例):消失10例・著効8例・有効5例・無効0例、第3回後(13例):消失8例・著効5例、第4回後(5例):消失5例。1カ月の追跡調査での再発者なし。
☆COPD(慢性閉塞性肺疾患)急性増悪90例で灸頭鍼併用を現代薬とランダム化比較
四川省南充市中医院・謝芳らは、COPD急性増悪(AECOPD)患者で灸頭鍼併用、現代薬、シャム鍼(sham:偽物の意)併用3群をランダム化比較(中国鍼灸、19年9期)。
対象=入院中の90例(男43例・女47例)、平均年齢約63.7歳(52~79歳)、平均罹患期間約16年、病期分類:Ⅱ期66例・Ⅲ期24例。これらをランダムに各30例に分けた。
治療法=3群とも国際治療ガイドライン(GOLD)治療。
<灸頭鍼群>取穴―豊隆・肺兪・太淵・足三里・中府・陰陵泉。操作―0.25×40mmのディスポ鍼で、太淵には直刺3~5mm、肺兪には脊柱方向に斜刺12~15mm、足三里・陰陵泉・豊隆には直刺12~15mm。提挿捻転し得気後、長さ1cmの棒灸を豊隆・肺兪・足三里・陰陵泉の鍼柄に着け点火(ツボの皮膚面に厚紙を敷く)、置鍼30分。毎日1回、計14日。
<シャム鍼群>取穴―同上のツボからそれぞれ2.5cmの部位。操作―直刺1~3mm、手技せず得気なし、灸なし。毎日1回、計14日。
観察指標=①呼吸機能検査(スパイログラム)―FEV1(努力肺活量の測定における最初の1秒間の努力呼気量)・FVC(努力肺活量:最大吸気を行った後に強制的に呼出する空気の最大量)・FEV1/ FVC(1秒率)。②咳と痰の評価―喀痰喀出障害質問票(CASA-Q)。③患者自己評価―COPDアセスメントテスト(CAT)。④中医証候評価。
結果=治療後3群とも、①の各項は治療前より有意に上昇(群間に有意差なし)、②③④も有意に軽減した。灸頭鍼群は、治療前後の各項の差が他2群より有意に大きかった。
☆小児の眼瞼痙攣60例に按摩と耳穴貼圧
陝西省西安市第四病院中医リハビリ科・張英英らは、小児の眼瞼痙攣に按摩と耳穴貼圧が効果的と報告(中国鍼灸、19年9期)。
対象=同院(西安交通大学付属広仁病院)小児眼科外来などの60例(男40例・女20例)、平均(6±2)歳(3~9歳)、平均罹患期間(5.5±3.7)カ月。いずれも両目あるいは片目に頻繁な不随意的まばたきがあり、結膜炎や眼精疲労の既往歴を有し、「単純眼性眼瞼痙攣」と診断された。
治療法=治療期間:12日。
<按摩点穴>取穴―攅竹・魚腰・陽白・糸竹空・太陽・百会・四神聡・顴髎。もし鼻部・口角筋の痙攣を伴う時は迎香・地倉・下関を追加。操作―拇・示・中指で毎穴点按・点揉1~2分間。終了後、両拇指腹で眉間から神庭まで推法(押し動かす)5回、眉間から太陽まで推法5回、大魚際(拇指の中手骨掌側)で太陽から陽白を経て印堂まで揉法2回。毎回計15分間、毎日1回。
<耳穴貼圧>取穴―耳尖・風渓・神門・心・肝・脾・脳幹・内分泌・皮質下。操作―生薬の王不留行の種子を6×6mmの絆創膏で貼り(片側のみ)、毎日何度か毎穴5回按圧させる。2日1回左右交替。
結果=治癒19例・著効30例・有効8例・無効3例。眼の乾き・痒み・充血などの状況も明らかに好転した。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』178 谷田伸治
連載『中国医学情報』178 谷田伸治
2020.01.10
☆全人工膝関節置換術(TKA)の術後疼痛管理とリハビリに円皮鍼併用が好影響
南京中医薬大学・邱犀子らは、TKAの術後疼痛管理に対する円皮鍼併用の効果をランダム化比較(上海鍼灸雑誌、19年11期)。
対象=片側TKAをした60例(男24例・女36例)、平均約64.5歳。これらをランダムに、持続大腿神経ブロック(CFNB)群と円皮鍼併用群各30例に分けた。
治療法=両群にCFNBと常軌リハビリ。
<リハビリ>術後に下肢関節の屈伸など、1回30分、毎日2回。
<円皮鍼>取穴―同側の申脈・大杼・懸鍾・豊隆・風市。操作―0.2×1.2mmの円皮鍼(セイリン社製)を上述の5穴に刺入、毎日1回。
観察指標=①視覚的アナログスケール(VAS)で疼痛評価②関節の連続受動運動(CPM)最大角度③炎症などに関与するIL-6の血中濃度を、術後24・48・72・92時間などに測定。
結果=①受動運動時VAS(術後24→48→72→96時間)―ブロック群:4.4→3.5→2.6→1.6、併用群:3.3→2.9→1.9→1.5。②CPM最大角度(術後48→72→96時間)―ブロック群:49.5→68.7→73.0、併用群:58.6→76.3→85.5。③IL-6血中濃度(術前→後24→72時間)―ブロック群:171.95→400.97→228.82、併用群:163.43→303.91→225.94。
☆脳性麻痺児で円皮鍼併用療法などのコアマッスル群への影響をランダム化比較試験
遼寧省瀋陽市児童病院神経リハビリ科・斉騰澈らは、脳性麻痺児120例をリハビリ単独、リハビリ+刺鍼、リハビリ+円皮鍼按圧の3群で、コアマッスル(体幹の筋肉)群への影響を比較検討(中国鍼灸、18年6期)。
対象=120例(男76例・女44例)、月齢24~40カ月。粗大運動能力分類システム(GMFCS):レベルⅢ(歩行補助具で歩ける)73例・レベルⅣ(歩行補助具でもほとんど歩けない)47例。タイプ別分類:痙直型81例・ジスキネティック型(原文「不随意運動型」)18例・失調型3例・舞踏様アテトーゼ型(「肌張力低下型」)6例・混合型12例(分類名は日本理学療法士協会ガイドラインによる)。これらをランダムに、3群各40例に分けた。
治療法=毎日1回、週5回、計12週間。
<リハビリ>運動療法とコアマッスル安定性訓練など。毎回30分。
<刺鍼>取穴―腰陽関・命門・L2~5夾脊穴。操作―0.25×25mmの毫鍼で、腰陽関・命門は直刺10mm、夾脊穴はやや脊柱方向に斜刺10~15mm、平補平瀉法、置鍼30分。
<円皮鍼>取穴―同上。操作―長さ0.2~0.3cmの円皮鍼を置鍼24時間、その間に毎日3回(間隔は最低4時間)按圧させる。毎穴按圧1分間、按圧頻度毎分80~120回。1日1回、週5回円皮鍼を交換。
結果=①表面筋電図(sEMG)―治療後、脊柱起立筋の各項目指標は、円皮鍼併用群が他の2群より有意に高かった。②Bergバランススケール―円皮鍼併用群が他の2群より有意に高かった。③粗大運動能力尺度(GMFM)―鍼併用群・円皮鍼併用群のB座位・C四つ這いと膝立ち・D立位が、リハ単独群より有意に高く、円皮鍼併用群のB・Cは鍼併用群より有意に高かった。
結論=円皮鍼按圧併用は、常軌の刺鍼とリハビリのみより優れた効果を上げられる。
☆薬剤性便秘には円皮鍼併用が効果的
浙江省衢州市中医病院・許金釵らは、悪性腫瘍などに使うセロトニン5-HT受容体拮抗薬による便秘に常軌薬物+円皮鍼が効果的と報告(上海鍼灸雑誌、19年5期)。
対象=60例(男31例・女29例)、平均年齢68.5歳(35~82歳)。これをランダムに、常軌薬物単独群・円皮鍼併用群各30例に分けた。
治療法=治療期間:4週間。
<円皮鍼>取穴―天枢・腹結・大腸兪・小腸兪。操作―まず掌腹で患者の腹部を時計回りに約3分間按摩し、腹筋を緩める。その後、0.25×1.2mmの円皮鍼を刺し、そこを2~3時間おきに毎回1分間按揉。円皮鍼は24時間に1回交換する。
観察指標= ①ブリストル便形状スケール(BSFS)、②便秘スコア(CSS)、③QOL。
結果=①BSFS(治療前→後)―薬物群:45.8→38.2、併用群:45.4→30.2。②CSS―薬物群:12.1→9.6、併用群:12.2→7.8。
臨床効果―薬物群:治癒4例・著効8例・有効9例・無効9例・総有効率70.0%、併用群:治癒10例・著効14例・好転4例・無効2例・総有効率93.3%。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』177 谷田伸治
連載『中国医学情報』177 谷田伸治
2019.12.10
☆慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する耳穴貼圧併用の効果
海南省海口市第三人民病院・符夢楠らは、COPDで対症支持療法(薬物療法・栄養療法など)と支持療法耳穴貼圧併用療法との治療効果を比較(上海鍼灸雑誌、19年7期)。
対象=同院呼吸器内科の87例(男54例・女33例)、平均年齢約68.5歳(51~86歳)、平均罹患期間約2.9年(1~7年)。これらをランダムに、①支持療法群43例、②耳穴併用群44例に分けた。
治療法=治療期間:9日間。
<耳穴>国家中医薬管理局COPD中医方案(2013年)推奨の穴位(肺・気管支・神門・皮質下)を取穴。王不留行(生薬)の種子を貼り、毎日5回、毎回2分間按圧させ、3日後に取り替える。
観察指標=呼吸機能、血液ガス分析、臨床症状、睡眠状態。
結果=臨床効果は、①支持療法群―治癒(症状消失、臨床検査値正常)1例・著効(症状著明好転、検査値著明改善)23例・有効(症状好転、検査値に改善あり)18例・無効1例・著効以上率55.8%、②耳穴併用群―治癒5例・著効31例・有効8例・無効0例・著効以上率81.8%。
呼吸機能(治療前→後)は、FEV1(L):①群0.89→1.35、②群0.88→1.79、FVC(L):①群1.70→2.16、②群1.69→2.40、FEV1/ FVC(%):①群53.98→80.39、②群54.67→85.84。
☆腰椎椎間板ヘルニアの鍼治療間隔を比較
北京市石景山区中医病院・鍾潤芬らは、腰椎椎間板ヘルニアの鍼治療で3種の治療間隔を比較(中国鍼灸、19年5期)。
対象=180例(男55例・女125例)、これをランダムに①毎日1回(週5回)群、②2日1回(週3回)群、③3日1回(週2回)群各60例に分けた。①群:平均52歳・平均罹患期間26.9カ月、②群:平均51歳・平均罹患期間33.9カ月、③群:平均56歳・平均罹患期間36.1カ月。
治療法=治療期間:3週間。
<選穴>主穴―L3~L5夾脊穴・環跳・委中。配穴―疼痛部位督脈:命門・腰陽関、疼痛部位足太陽経:腎兪・大腸兪・殷門・承山・崑崙、疼痛部位足少陰経:風市・陽陵泉・陽輔・懸鍾・足臨泣、腎虚腰痛:腎兪・太渓、寒湿腰痛:腰陽関、瘀血腰痛:膈兪。
<操作>夾脊穴は、0.30×60mmの毫鍼で40~50mm直刺し、提挿手法で得気後、捻転手法で鍼感を下肢部に放散させる。環跳穴は、0.30×75mmの毫鍼で50~70mm直刺し、電撃様の鍼感を下向きに足部まで伝達させる。その他の穴は、0.30×40mmの毫鍼で10~25mm直刺し、得気後に平補平瀉手法。さらに環跳穴をプラス極、委中穴をマイナス極として通電(疎密波、2Hz)、置鍼20分。
観察指標=視覚的アナログスケール(VAS)、日本整形外科学会(JOA)スコア。
結果=臨床効果は、①群―回復10例・著効41例・好転7例・無効2例・総有効率96.7%、②群―回復9例・著効39例・好転9例・無効3例・総有効率95.0%、③群―回復5例・著効27例・好転21例・無効7例・総有効率88.3%。
JOAスコア(治療前→後)は、①群15.05→26.22、②群15.18→26.15、③群15.97→24.25。
☆前立腺肥大症に三陰交への灸頭鍼
山東省青島療養院・張立志らは、良性の前立腺肥大症患者で、中薬治療と鍼併用治療とを比較(上海鍼灸雑誌、19年7期)。
対象=同院の外来患者74例、平均年齢約61.5歳(50~80歳)、平均罹患期間約6.7年(1~22年)。これをランダムに①中薬群、②鍼灸併用群各37例に分けた。
治療法=治療期間:3カ月間。
<中薬>益腎化瘀方(黄耆・肉蓯蓉・桂枝・桃仁・紅花など12生薬で構成)。毎日食後3回、毎回200mL服用。
<鍼灸>取穴:三陰交(左右)。0.30×40mmの毫鍼で直刺し、提挿捻転手法で得気、患者にだるく・しびれ・腫れぼったい感覚があった後に、2cmの長さの棒灸を鍼柄に装着し、皮膚から2cmの距離で点火燃焼させる。毎回1壮・毎壮6~8分間、置鍼30分間。毎週5回。
観察指標=排尿機能、血清性ホルモン、前立腺体積、不良反応。
結果=臨床効果は、①群―著効8例・有効18例・無効11例・総有効率70.3%、②群―著効24例・有効10例・無効3例・総有効率91.9%。
前立腺体積(治療前→後、㎤)は、①群46.26→38.37、②群45.86→32.33。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』176 谷田伸治
連載『中国医学情報』176 谷田伸治
2019.11.10
☆腰椎椎間板ヘルニアで3種の鍼法を比較―臨床効果と炎症性サイトカインへの影響
成都市双流区第一人民病院・呉萍らは、腰椎椎間板ヘルニアで、普通鍼法・動気鍼法・瞬間強電鍼法の治療効果と炎症因子への影響を比較(鍼灸臨床雑誌、19年6期)。
対象=同院の180例(男100例・女80例)、平均年齢約56歳、平均罹患期間約23年。これらをランダムに、普通鍼群・動気鍼群・電鍼群各60例に分けた。
治療法=各群2日1回、連続20回治療。
共通取穴―主穴:患側の秩辺・環跳・筋会(陽陵泉)・夾脊穴。配穴:「肝腎虧虚」に腎兪、「寒湿痹阻」に陰陵泉、「気滞血瘀」に膈兪。鍼具―0.30×75/40mmの毫鍼。
<普通鍼>刺入40~65mm、同時に捻転提挿、得気後に置鍼20分。補瀉手法なし。
<動気鍼>患者は立位、術者は患側に立ち、刺入40~65mm、同時に捻転提挿、得気後に患者にゆっくりと腰部の運動(前屈・背屈・左右捻転)をさせ、置鍼30分、5分間隔で1回の捻転(角度90~180°)提挿(深度0.3~0.5cm)手法(毎分60~90回)を行い得気(下肢に放散するのが良い)。
<電鍼>直刺、捻転提挿し得気後少し鍼を引き上げ、HANS-200A型連続波15Hzで、秩辺・環跳・筋会に最初10~20mAで徐々に増加させ軽微な鍼感後、迅速に50mAまで増加させ、下肢に電触感があったらすぐ0mAに。これを15秒間隔で3回、最後に耐えられる強さで15分間保持。
観察指標=症状スコア、視覚的アナログスケール(VAS)、静脈血の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)。
結果=①普通鍼群:臨床的制御22例・著効10例・有効14例・無効14例・総有効率76.7%、②動気鍼群:臨床的制御43例・著効5例・有効5例・無効7例・総有効率88.3%。③電鍼群:臨床的制御44例・著効4例・有効5例・無効7例・総有効率88.3%。
炎症性サイトカインは、各群とも統計学的有意に抑制され、普通鍼群と他2群間の比較では、後者が前者より有意に抑制していた。
☆機能性便秘の鍼通電治療―骨盤底筋痙攣型と同弛緩型への効果を比較
南京市秦准区中医病院・鄒洋洋らは、骨盤底筋機能不良による機能性便秘への鍼通電治療を報告(中国鍼灸、19年5期)。
対象=87例―痙攣型61例:平均年齢51歳(13~80歳)・平均罹患期間7.6年(0.2~30年)、弛緩型26例:平均年齢54歳(26~84歳)・平均罹患期間9.1年(1~20年)。排便週3回以下、過敏性腸症候群には符合せず、全腸管通過時間3日以下、排便造影検査などで痙攣型/弛緩型いずれかに所属。
治療法=0.30×75mmの毫鍼で中髎・下髎穴へ60~70mm刺入し、鍼感を肛門部に放散させてから通電(疎密波、2/15Hz)30分。1日1回、1週5回、連続2週間。
観察指標=QOL。便質・排便頻度・排便時間・排便時腹圧・残便感・肛門部感覚・腹満・腹痛の8項目を点数化し評価。
結果=両型ともに有効であった。排便時間の改善では痙攣型が弛緩型より統計学的に良く、肛門部感覚の改善では弛緩型が痙攣型より良かった。
☆変形性膝関節症にはリハビリ+円皮鍼治療
浙江省杭州市第三人民病院リハビリ医学科・徐緯らは、初・中期の変形性膝関節症患者で、リハビリ単独と円皮鍼併用治療を比較(中国鍼灸、19年6期)。
対象=Kellgren-Lawrence分類(KL)2と3の70例を、ランダムに単独群・併用群各35例に分けた。脱落があり最終的に単独群32例(男10例・女22例、KL2:23例・KL3:9例、平均年齢62歳、平均罹患期間8.8カ月)、併用群34例(男12例・女22例、KL2:23例・KL3:11例、平均年齢65歳、平均罹患期間10.0カ月)。
治療法=治療期間:4週間。
<リハビリ>関節運動と筋力訓練(毎日)や電磁波照射(隔日)など。
<円皮鍼>取穴:犢鼻・内膝眼・血海・梁丘・陽陵泉・阿是穴(疼痛陽性点)。操作法:まず阿是穴以外に刺入後、膝の屈伸運動をして鍼下の感覚を意識させる。阿是穴に刺入後、屈伸と短距離歩行し、新たな阿是穴に刺入。以上はリハビリ前、置鍼は24時間で、その後は患者に除去させる。2日1回、1週3回。
観察指標=VAS、WOMACスコア、関節可動域。
結果=臨床効果は、①単独群:臨床的制御3例・著効11例・有効12例・無効6例・総有効率81.3%、②併用群:臨床的制御5例・著効14例・有効14例・無効1例・総有効率97.1%。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』175 谷田伸治
連載『中国医学情報』175 谷田伸治
2019.10.10
☆強直性脊柱炎60例で鍼灸治療と薬+灸治療を比較
広東省深圳市宝安区沙井人民病院・任英傑らは、難病の強直性脊柱炎で鍼灸治療と薬+灸治療を比較(鍼灸臨床雑誌、19年6期)。
対象=同院の60例(男40例・女20例)、平均年齢約33.5(16~46)歳、平均罹患期間約8.2(2~14)カ月。これをランダムに治療群(鍼灸)・対照群(薬+灸)各30例に分けた。
治療法=両群とも2カ月間治療。
<治療群>①華佗夾脊穴(第1胸椎~第5腰椎棘突起下の左右0.5寸の計34穴)に、脊柱方向45°の斜刺15mm、置鍼30分。毎日1回連続6日。②第7日目に督脈灸:ショウガを擦って泥状にして脊柱の第1胸椎~第5腰椎まで幅約5cm・厚さ約1.5cmに敷く。その上にモグサ(直径1.5cm)を約2cm間隔に置き点火し完全燃焼。これを連続3回。灸後1カ月冷水浴しない。以上①②を繰り返す。
<対照群>①薬:sulfasalazine錠剤、毎日2回服用。②「仮灸」:治療群と同じ部位と方法だが、モグサとショウガの間に紙を敷く。
観察指標=国際的な重症度判定基準と中医学の証候スコア。
結果=治療群:臨床的制御0例・著効19例・有効8例・無効3例・総有効率90.00%、対照群:臨床的制御0例・著効8例・有効12例・無効10例・総有効率66.67%。
☆原発性卵巣機能不全60例に学会推奨の鍼治療
深圳市中医院鍼灸科・卓縁圓らは、40歳未満の女性で卵巣の正常な機能が停止する原発性卵巣機能不全(POI、旧名:早発卵巣不全または早発閉経)に対する鍼治療を報告(中国鍼灸、19年7期)。
対象=同科外来の60例。平均(32±3)歳、治療前無月経/希発月経期間は平均(1.8±0.8)年。いずれも、2016年欧州学会(ESHRE)ガイドラインの診断基準(40歳未満。無月経/希発月経期間が少なくとも4カ月。2回のFSH測定値が>25U/L)に符合。
治療法=中国鍼灸学会の推奨治療法。
①取穴―A(仰臥位):百会・神庭・本神・中脘・天枢・関元・子宮(奇穴。中極穴の左右各3寸)・大赫・足三里・三陰交・太衝、B(伏臥位):百会・腎兪・次髎・太渓。以上2組を交替で使用。
②操作―百会・神庭・本神は水平刺10~25mm、太衝は湧泉方向に10~25mm、腎兪・太渓は直刺10~25mm、次髎は内下方に60~75mm、その他は直刺25~40mm。全穴に提挿捻転手法(百会・神庭・本神は捻転のみ)で得気。左右の足三里と三陰交、次髎と腎兪に通電治療(疎密波、2/15Hz)。毎回置鍼30分。毎週3回、計3月経周期(無月経者は連続3カ月)治療。
観察指標=月経・排卵・卵巣・子宮状況。血中ホルモン(E2・FSH・AMH)。自己評価不安スケール(SAS)。クッパーマン更年期指数(KI)。
結果=月経(治療前→後の例数)は、正常0→18、不規則51→34、無9→8。排卵は、有18→18、間欠24→32、無18→10。治療後のFSHは、有意に下降。FSH測定値>40U/Lの患者34例のE2は、有意に上昇。子宮内膜厚度は、有意に増加。臨床的効果は、回復9例・著効12例・有効31・無効8例。
☆精子無力症には薬物単独より灸併用治療
成都市の四川省中西医結合病院・邵欣らは、精子無力症で薬物単独と灸併用治療を比較(上海鍼灸雑誌、19年7期)。
対象=同院男性科の75例、平均約31.5(24~42)歳、平均罹患期間約2.9(1~8)年。いずれも、中医学の「腎陽不足」型。これらをランダムに、薬物群39例・灸併用群36例に分けた。
治療法=両群とも「強精片」(成分不明、成都中医薬大学病院西薬房提供)を1日3回、12週間服用。
<灸>取穴―関元・命門。操作―棒灸で透熱灸(関元穴では命門まで熱が浸透するように施術)、毎穴隔日1回交替で使用、毎回30分。
観察指標=精子の運動性(運動率)―PR率、NP+PR率(PR:前進運動精子、NP:非前進運動精子)。中医学の証候評価。
結果=臨床効果では、薬物群:治癒1例・著効5例・有効25例・無効8例・総有効率79.5%、灸併用群:治癒3例・著効15例・有効16例・無効2例・総有効率94.4%。精子の運動性では、薬物群は有意に改善(P<0.05)、灸併用群も有意に改善(P<0.01)していた。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』174 谷田伸治
連載『中国医学情報』174 谷田伸治
2019.09.10
☆排卵障害性不妊症84例で管鍼治療と薬物治療の効果を比較
広東省深圳市南山区婦幼保健院・鄭晨思らは、腎虚型の排卵障害性不妊症に対する西洋薬単独・鍼単独・鍼中薬併用の三つの治療法を比較(中国鍼灸、19年5期)。
対象=広東省中医院婦人科の、排卵障害性不妊症で中医学の腎虚(腎陰虚39例・腎陽虚45例)の84例(平均年齢約29歳、平均不妊期間約2.4年)。これをランダムに、西薬(clomiphene citrateとHCG治療)群30例・鍼群27例・鍼中薬群27例に分けた。
治療法=3群とも連続3カ月間治療。
<鍼>①取穴―主穴:中脘・下脘・気海・関元、配穴:気穴・水道・帰来。②操作―0.22×30(または40)mmの「薄氏腹鍼専用鍼」(ディスポの管鍼)で、主穴に15~20mm、配穴に20~30mm刺入、候気3~5分、その後軽刺激手法(軽い捻転のみ。得気時の酸・麻・腫・痛感なし)採用、置鍼30分。月経第5日から開始、3日おきに1回治療(排卵後は終了)。15日後も卵胞に変化がなければ、腹鍼は停止。
<中薬>老中医・李麗芸教授の経験方(省略)。毎日1剤(月経第1~4日は中止)。
観察指標=超音波検査で卵胞発育度と子宮内膜肥厚度、症状・中医症候、妊娠(終了3カ月後と半年後に確認)。
結果=排卵率は、西医群53.3%(16例)・鍼群55.6%(15例)・鍼中薬群59.3%(16例)。妊娠率は、西医群30.0%(9例)・鍼群40.7%(11例)・鍼中薬群44.4%(12例)。治療前→後の平均子宮内膜肥厚度(mm)は、西医群5.87→7.83・鍼群5.70→8.78・鍼中薬群5.74→9.15。
☆前立腺肥大症33例に曲骨穴への鍼治療
北京の中国中医科学院西苑病院・陸永輝らは、前立腺肥大症に曲骨穴への鍼治療が有効と報告(中国鍼灸、19年6期)。
対象=超音波などで良性の前立腺肥大症と診断された同院鍼灸科の33例、平均58歳(46~82歳)、平均罹患期間7.6年(1.6~21年)。
治療法=①取穴―曲骨。②操作―0.30×60~75mmの毫鍼を、指切進鍼法で恥骨上縁と膀胱の間隙に刺入55~70mm。患者は軽微な刺痛や刺痛感が尿道に放散、あるいは排尿感あり。また軽い提挿捻転手法で排尿感を起こさせる。これらの鍼感後に刺鍼停止、置鍼25分、2日1回、毎週3回、6週間治療。
観察指標=国際前立腺症状スコア(IPSS)、QOL。
結果=臨床的回復11例・著効14例・有効6例・無効2例。
☆溺水後の酸欠性脳障害児に鍼治療
北京中医薬大学鍼灸推拿学院・董莎らは、酸欠性の脳損傷児への鍼治療1例を報告(中国鍼灸、19年6期)。
患者=女、5歳3カ月
初診=2016年3月1日
主訴=無表情、反応遅い、言語・運動障害。
現病歴=2015年12月27日、午後6時ごろ公共浴場で溺れ、約1~2分後に救出。意識喪失、口唇青紫、背中拍打で水様物を嘔吐。すぐ大学病院に搬送(午後7時18分)。患児は意識不明、呼吸80~100回/分、両眼球結膜水腫、両瞳孔直径5mm、両肺に大量の貯痰音、心拍数190~200回/分などの状態。酸素吸入・静脈点滴注入でバイタルが安定し小児病院に転院。治療後、意識回復するが応答できず運動障害あり、MRI検査異常なし。酸素治療・リハビリなどを受け45日後退院。
初診時現症:無表情、聴覚・呼吸機能は正常、目で物を追えない、言語不明瞭で応答不能、筋力正常、歩行状態異常、手首・手指に運動障害。舌暗紅・苔白・唇紫・脈細。
診断=西医:溺水後酸欠性脳損傷、中医:溺水(瘀阻脳絡・神機失用・肢体経絡失養)。
治療=①取穴―百会・脳戸・大椎・風池・手三里・足三里・三陰交・太渓。②操作―0.25×25mmの鍼で常軌刺鍼5~15mm、置鍼30分。2日1回。
経過=1週間後、「パパ」などと発音し笑えたが、なお反応度鈍く運動障害あり。父親に発音練習を頼む。4カ月後、言語機能基本的回復、反応明らかに改善、自力歩行可能だが走ると転びやすい、学習記憶力やや弱い。2カ月夏休みで治療中止。運動機能不完全で継続治療4カ月後、反応敏捷で応答スムーズ、運動能力と学習能力正常。2カ月冬休みで中止。まだ運動能力弱く継続治療2カ月後、自力で書写、完全回復。2019年1月31日現在異常なし。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』173 谷田伸治
連載『中国医学情報』173 谷田伸治
2019.08.10
☆トゥレット症候群児童に風池穴刺鍼
上海交通大学医学院付属上海児童医学センター・余平波らは、チックのうち音声や行動を主体とするトゥレット症候群児童に対する風池穴刺鍼治療の結果を報告(上海鍼灸雑誌、19年5期)。
対象=同センター中医科の60例(男33例・女27例)、年齢4~12歳、罹患期間1カ月~4年、イェール全般的チック重症度尺度(YGTSS:Yale Global Tic Severity Scale)の軽度27例・中度16例・重度17例。これをランダムに、西医群(チアプリド塩酸塩治療)・鍼群各30例に分けた。
治療法=両群とも1カ月間治療。
<鍼治療>風池穴に0.25×25mmの毫鍼で鼻尖方向に刺入0.5寸、平補平瀉法で快速提挿捻転10回後に素早く抜鍼。1日1回、1クール1カ月、合計1クール治療。
観察指標=イェール全般的チック重症度尺度(YGTSS)。
効果判定基準=治療後と治療後半年に臨床効果を観察。「全快」:症状完全消失し3カ月間再発なし、「著効」:症状・回数が明らかに軽減し減少(70~94%減少)、「有効」:症状・回数が軽減し減少(30~70%減少)、「無効」:症状に明らかな改善なし(30%未満減少)。
結果=①YGTSSの治療前後―西医群:27.55±3.91→15.21±3.45、鍼群:28.75±4.83→8.36±2.35。②半年後の治療効果―西医群:全快2例・著効10例・有効5例・無効13例・総有効率56.7%、鍼群:全快3例・著効14例・有効5例・無効8例・総有効率73.3%。
☆排卵障害性不妊症の鍼併用治療で妊娠成功率がアップ
甘粛省白銀市景泰県人民病院・張永宏は、排卵障害性不妊症では西洋医学の排卵促進治療単独より鍼治療併用の妊娠成功率が高かったと報告(上海鍼灸雑誌、19年5期)。
対象=排卵障害性不妊症の106例、平均年齢29±4歳、平均不妊期間約3.49年。これをランダムに、西医群(排卵促進剤治療)・鍼群各53例に分けた。
治療法=両群とも、排卵促進剤治療を合計3月経周期行った。
<鍼治療>①取穴―腎兪・命門・中極・関元・天枢・帰来・三陰交。配穴:「?滞胞宮」に膈兪・胆兪、「腎虚」に志室・太渓、「痰湿内阻」に脾兪・足三里をそれぞれ追加。
②操作―0.25×25mmの鍼を使用、刺鍼後に電鍼治療機(G6805型)により疎密波・16Hzで通電。月経周期第5日から鍼治療開始、2日1回(月経期間は中止)、3月経周期治療。以上は、頼新生教授の「通元鍼法」。
観察指標=①卵巣機能、②子宮内膜肥厚度、③排卵(超音波検査)、④妊娠。
結果=排卵率は、西医群55.3%(159周期中88周期)・鍼群75.5%(159周期中120周期)。妊娠成功率は、西医群30.2%(16例)・鍼群60.4%(32例)。治療後、①は鍼群がFSH・LH・E2で西医群より有意に高く、②も同様であった。
☆末期癌患者のQOLに対する足三里穴への温灸治療効果
天津中医薬大学・周?らは、末期癌患者60例で、常軌内科対症治療と温灸併用治療の効果を比較(中国鍼灸、19年02期)。
対象=同大付属病院腫瘍科の入院患者60例(男35例・女25例)、平均年齢65歳(30~83歳)。内訳は、肺癌19例・消化器系癌26例・婦人科系癌11例・その他の癌4例、ステージⅢ16例・ステージⅣ44例。これをランダムに常軌群・温灸群各30例に分けた。
治療法=両群とも、常軌内科対症治療(中薬を含む抗癌剤治療、貧血患者にはエリスロポエチン[EPO]治療)を12日間。
<温灸治療>①取穴―左右の足三里。
②操作―箱灸器に燃えた20×40mmの棒灸を入れ、左右の足三里穴を温め、30分後に外す。1日1回、12日間治療。
観察指標=①免疫機能、②ヘモグロビンレベル、③カルノフスキーの一般全身状態スコア(KPS)、④中医主要9症状(脱力感・不眠・息切れ・食欲減少・自然発汗・めまい・顔色不良・心悸・腰膝だるい)の総合スコア?。これらを、治療前・治療12日後に測定・評価。
結果=①②は、両群ともに治療前後に統計学的有意差なし。③は、常軌群では有意差なし、温灸群では有意差あり。④は、常軌群では有意差なし、温灸群では7症状(脱力感・息切れ・食欲減少・めまい・顔色不良・心悸・腰膝だるい)の改善が常軌群と比較し有意差あり。
結論=温灸治療は、末期がん患者の臨床症状の改善に有効な方法である。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』172 谷田伸治
連載『中国医学情報』172 谷田伸治
2019.07.10
☆アレルギー性鼻炎に腹鍼・抜缶治療
北京市懐柔区中医病院・孫三峰らは、3医療機関のアレルギー性鼻炎患者64例で、西洋薬(loratadine錠剤)単独と腹鍼・抜缶(吸い玉)治療の効果を比較(上海鍼灸雑誌、18年10期)。
対象=WHOアレルギー性鼻炎2008年診断基準で診断された64例、男23例・女41例、19~57歳、罹患期間2カ月~10年。これをランダムに治療群(腹鍼抜缶群)・対照群(西洋薬群)各32例に分けた。
治療法=両群とも4週間治療。
<腹鍼・抜缶治療>①取穴―腹鍼:中脘・下脘・気海・関元、左右の滑肉門・外陵・商曲。抜缶:肺兪・脾兪・腎兪。
②操作―まず2号ガラス製缶で背部のツボに快速閃缶で皮膚を発赤させてから保留10分間。抜缶後、腹鍼の取穴の記載順に刺鍼。中脘・下脘・商曲は、0.25×25mmの鍼で浅刺。滑肉門・外陵は、0.25×40mmの鍼で刺鍼1寸。快速進鍼、軽く捻転、微痛または無痛、鍼感は求めない。置鍼30分間。週3回治療。
観察指標=鼻症状の総合スコア (TNSS:鼻汁、くしゃみ発作、鼻閉、鼻内掻痒感)が主要指標、鼻炎に伴う症状の総合スコア(TNNSS)と鼻炎のQOL質問票(RQLQ)とが副次的指標。これらで、治療前・治療1週・同2週・同4週に評価。
結果=両群ともに安全有効であった。治療群のTNSS・TNNSS・RQLQと対照群のTNSS・RQLQは、各時期の点数がそれぞれの群の前期より有意に改善。治療群の治療1週・2週・4週のTNSSは、対照群の同時期より有意に改善。治療群の治療4週のTNNSSは、対照群より有意に改善していた。
結論=腹鍼・抜缶治療は、アレルギー性鼻炎治療の有効な方法である。
☆肩関節周囲炎の痛点への円皮鍼治療
湖南中医薬大学第一付属病院・劉而君らは、肩関節周囲炎患者で、円皮鍼と消炎鎮痛薬(celecoxib)の効果を比較(上海鍼灸雑誌、18年12期)。
対象=同院疼痛理療科外来の64例、男29例・女35例。これをランダムに、治療群(円皮鍼)・対照群(薬)各32例に分けた。治療群は、平均52±6歳、平均罹患期間3.2±1.3カ月。対照群は、平均50±7歳、平均罹患期間2.9±1.1カ月。
治療法=両群に持続的他動運動(CPM)―治療家が患者の肩と肘を掴み、他動的に我慢できる範囲に動かし5~10秒間保持、これを伸展・屈曲・外転各方向10回―、毎日1回、2週間治療。
<円皮鍼治療>患側の肩関節とその周囲で、痛覚が最も明瞭な4カ所の痛点を探す。そこに円皮鍼を刺入し、絆創膏で固定、8時間後に円皮鍼を取る。2日1回、2週間治療。
観察指標=①視覚的アナログスケール(VAS)、②関節可動域、③肩の機能評価スコア(CMS:Constant Murley Score)。
結果=両群とも、治療前後の同群での各指標の比較に有意差あり。治療後の治療群と対照群の各指標での比較では、治療群が有意に改善していた。③のCMSの治療前・後は、治療群27.5±5.3→52.7±7.2、対照群28.3±6.8→40.6±7.5。
☆踵痛に神門穴刺鍼とレジスタンス運動
黒龍江中医薬大学・孫遠征らは、踵痛患者18例に対する、手関節の神門穴刺鍼と患足のレジスタンス運動による治療成績を報告(中国鍼灸、19年1期)。
対象=同大付属第二病院鍼灸科の外来患者18例(男6例・女12例)、平均年齢46±12歳(17~60歳)、平均罹患期間143±107日(3日~1年)、単側15例・両側3例。
治療法=患者は座位。0.35×40mmの毫鍼で患側手関節の神門穴に直刺10~15mm、平補平瀉法で得気、その後患足のレジスタンス運動(床を踏みつける運動)をさせる。置鍼30分(10分ごとに刺激1分間)。1日1回、1クール5回、合計、2クール。
踵は足の少陰腎経の循行部位、神門穴は手の少陰心経で同名経。「病が下に在るものは、高くこれ(穴)を取る」と「経に循(したが)いて遠くに(穴を)取る」の原則により取穴。
効果判定基準=「回復」:痛み消失、「著効」:立位後にやや痛みあり、「好転」:痛みが緩解したが長時間の歩行や立位後に痛みあり、「無効」:痛みの緩解なし。
結果=全快11例(61.1%)・著効6例(33.3%)・好転1例(5.6%)・無効0例。全快者の最短は3日で、11例全員に半年後の追跡調査で再発なし。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』171 谷田伸治
連載『中国医学情報』171 谷田伸治
2019.06.10
☆体外受精卵移植の反復失敗者に鍼灸併用治療
上海中医薬大学・馬娟娟らは、体外受精卵移植の反復失敗者で、西洋薬単独と鍼灸併用の効果を比較(上海鍼灸雑誌、18年12期)。
対象=連続3回以上失敗した60例、BMI:18.5~23.9、平均年齢約30歳、平均不妊期間約4.4年、中医弁証は腎陽虚(めまい・耳鳴・性欲淡白・腰痛ほか)。これをランダムに西洋薬単独群・鍼灸併用群各30例に分けた。
治療法=両群とも月経3日目からホルモン剤治療。併用群は月経2日目から毎日1回鍼灸治療。
<鍼灸治療>①取穴―移植前:関元・気海・帰来・子宮(奇穴。中極穴の左右三寸)・足三里・三陰交・地機・太衝。移植後:関元・気海・帰来・足三里・地機・太衝。
②操作―0.25×40mmの鍼で直刺10~20mm、平補平瀉法し得気。
③灸頭鍼―移植前、子宮(奇穴)・足三里には刺鍼後、鍼柄上に約2cmの棒灸モグサを挿入し点火、30分後抜鍼、毎穴毎回2壮。
観察指標=①妊娠率・移植率、②子宮内膜の状態(内膜厚・血流・形態など)。
結果=妊娠率は、単独群26.7%(8/30例)併用群43.3%(13/30例)。移植率は、単独群15.80%(9/57卵)併用群27.6%(16/58卵)。子宮内膜の状態も、併用群が単独群より有意に改善。
☆多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の不妊症に鍼併用治療
広東省の中山大学付属第八病院・柳元娥らは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の不妊症患者で、西洋薬単独と鍼併用の効果を比較(上海鍼灸雑誌、18年12期)。
対象=PCOSの不妊症患者278例、平均年齢約30.6歳。これを診察順に、西洋薬単独群140例・鍼併用群138例に分けた。
治療法=両群に西洋薬治療(metformin)。
<鍼治療>①弁証分型―A)宮寒証型:先天的に体寒あるいは冷たい食物を好む・月経量少・下痢しやすいなど。B)宮熱証型:先天的に体熱あるいは温かい食物を好む・月経量多・口舌乾燥など。C)肝気不順証型:情緒不安定・月経不順など。D)宮内瘀血証型:子宮手術や生理痛あり・月経量少・皮膚乾燥など。E)宮内痰湿証型:肥満・白帯量多など。F)腎気不足証型:月経不順・めまい・耳鳴・腰膝だるい・倦怠感・頻尿など。
②取穴―A):気海・関元・神闕・中脘・子宮(奇穴。中極穴の左右三寸)・命門・腎兪・足三里・三陰交。B):合谷・曲池・三陰交・太渓・太衝・内庭・地機。C):中極・地機・行間・太衝・大敦・中封。D):帰来・関元・血海・三陰交・足三里・神門。E):脾兪・中脘・三焦兪・三陰交・豊隆・公孫・支正。F):腎兪・気海・復溜・志室・然谷・湧泉。
③操作―毫鍼で平補平瀉法。毎週3回、連続2カ月治療。(操作法の詳細は記載なし)
観察指標=①月経周期変化、②BMI、③血清ホルモンレベル(LH・FSH・E2ほか)、④(治療後6カ月の)妊娠率・排卵率。
結果=排卵率は、単独群80.00%(112例)併用群90.58%(125例)。妊娠率は、単独群74.29%(104例)併用群85.51%(118例)。①②③では、いずれも併用群の数値が単独群より有意に良い状態。
<付記>PCOSは本年4月10日号本欄でも紹介。
☆変形性膝関節症(KOA)の温灸時間
上海健康医学院付属周浦病院・曹紅らは、変形性膝関節症患者で、温灸時間を4種類に分け比較(上海鍼灸雑誌、18年12期)。
対象=同院中医科の140例(男43例・女97例)、平均年齢約64.5歳、平均罹患期間約74カ月。これをランダムに温灸時間15分群36例・同30分群36例・同45分群33例・同60分群35例の4群に分けた。
治療法=取穴―神闕、患側の血海・梁丘・内膝眼(奇穴。膝蓋骨下縁内側の陥凹部)・犢鼻。操作法―棒灸とツボの距離は3cm。毎週3回、連続4週間。
観察指標=WOMAC スコア。
治療効果基準=①「臨床的制御」:疼痛などの症状消失・関節運動正常・ スコア改善率95%以上・X線像正常。②「著効」:症状消失・関節運動に制限なし・改善率70~95%未満・X線像明らかに好転。③「有効」:症状は大体消失・関節運動に軽度な制限・改善率30~70%未満・X線像好転。④「無効」:症状と関節運動に明らかな改善なし・改善率30%未満・X線像改善なし。
結果=(効果基準①②③④の各例数)15分群(0・6・28・2例)30分群(1・10・21・4例)45分群(0・17・16・0例)60分群(0・26・9・0例)。
結論=45分が勧められる。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
連載『中国医学情報』170 谷田伸治
連載『中国医学情報』170 谷田伸治
2019.05.25
☆早発卵巣不全(POF)の不妊症には鍼併用治療
河南省鶴壁市の侯紹亮らは、早発卵巣不全(POF)による不妊症患者で西洋薬単独治療と鍼併用治療の効果を比較した(上海鍼灸雑誌、19年1期)。
対象=早発卵巣不全(POF)による不妊症患者96例、平均年齢約33歳(27~39歳)。これをランダムに西洋薬単独群・鍼併用群各48例に分けた。
治療法=両群とも常軌の西洋薬治療(女性ホルモン剤)。治療期間6週間(2クール)。
<鍼治療>①取穴―腎兪・百会・神庭・本神・関元・子宮(奇穴。中極穴の左右三寸)・足三里・三陰交・太渓・太衝。
②使用鍼―腎兪・関元・子宮・足三里・三陰交が0.25×40mm、百会・神庭・本神・太渓・太衝が0.25×25mm。
③操作―腎兪:脊柱に向け45°の斜刺35mm。百会・神庭・本神:後方に15°の斜刺20mm、得気後に平補平瀉法。関元・子宮・足三里:直刺35mm、得気後に重挿軽提補法。三陰交:上方に45°の斜刺、得気だけ。太渓:直刺15mm、得気後に重挿軽提補法。太衝:直刺10mm、得気後に軽挿重提補法。以上は、毎回置鍼25分(行鍼1回)。各穴を交替使用。毎週3回、1クール36回で2クール治療。
観察指標=①卵巣機能(卵巣体積・胞状卵胞数・卵巣拍動指数)、②血清ホルモンレベル(E2・FSH・LH)、③妊娠率と不良反応発生率。
結果=妊娠率は、単独群12.5%(6例)併用群31.3%(15例)。①と②では、いずれも併用群の数値が単独群より有意に良い状態。不良反応発生率は、単独群8.3%(悪心・腰痛各2例)併用群10.4%(悪心1例・暈鍼2例・腰痛2例)で有意差なし。
<付記>早発卵巣不全(POF)に対する鍼灸治療は、本年4月10日号の本欄でも紹介。
☆寒湿型の腰痛患者には通電+灸頭鍼治療
広州中医薬大学・頼鵬輝らは、明らかな神経障害のない寒湿型(冷えて痛み四肢が冷たいタイプ)の腰痛患者126例で、鍼通電・灸頭鍼・通電+灸頭鍼の3種類の治療法の効果を比較した(鍼灸臨床雑誌、19年1期)。
対象=126例(男66例・女60例)、平均年齢約51歳(30~85歳)、平均罹患期間約30日。これをランダムに3群各42例に分けた。
治療法=<取穴>腎兪・大腸兪・腰陽関・命門・阿是穴。
<操作>0.30×40~75mmの鍼で、腰部の筋肉の肥厚状況に合わせて直刺25~50mm、提挿捻転し得気後、通電または灸頭鍼治療。
<通電>電極は3組:左右の腎兪・大腸兪と阿是穴1組。断続波・2Hzで30分。
<灸頭鍼>通電と同じ穴位の鍼柄上に約2cmの長さのモグサを挿入して点火、穴位のところに火傷予防の紙片を置く。毎回30分。
<併用>通電後に灸頭鍼。
以上の治療を毎日1回、1クール6回、1週間休止後に更に12クール、計12回治療。
観察指標=JOAスコア(日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準)、VAS(視覚的アナログスケール)、FFD(指床間距離)。
結果=通電群:全快2例・著効8例・好転21例・無効11例・総有効率73.8%。灸頭鍼群:全快6例・著効14例・好転16例・無効6例・総有効率85.7%。併用群:全快12例・著効19例・好転10例・無効1例・総有効率97.6%。
☆ドライアイに対する選穴データ
甘粛中医薬大学・馬雪嬌らは、データベースを利用し中国でのドライアイに対する鍼灸治療文献の選穴状況を報告した(中国鍼灸、19年1期)。
対象=国内の3つのデータベースで検索した、2007~2017年に報告された文献145篇から、総述・動物実験などを除外した52篇。
検索結果=穴位数は経外奇穴を含め60穴。
<選穴>(カッコ内篇数)①睛明(47)、②攅竹(44)、③太陽(40)、④三陰交(32)、⑤合谷(29)、⑥風池(28)、⑦糸竹空(27)、⑧四白(26)、⑨太衝(24)、⑩太渓(21)、⑪足三里(21)、⑫承泣(17)、⑬百会(16)、⑭肝兪/腎兪(各14)、以下略。
<選経>陽経が選穴総数の62.7%で、その頻度は、①足太陽膀胱経(11穴、25.1%)、②足陽明胃経(6穴、14.0%)、③足少陽胆経(6穴、9.3%)、④足太陰脾経(5穴、9.4%)、⑤経外奇穴(5穴、9.1%)、以下略。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。