Q&A『上田がお答えいたします』 施術管理者の要件の一つ、「研修」は全ての柔整師が受けるべきではないのか?
2018.01.10
Q.
今後、柔整療養費の受領委任の取り扱いができる施術管理者になるには、3年の実務経験と研修の受講が必要になるそうですね。既に施術管理者である人にも、義務付けられるのでしょうか?
A.
厚労省から、平成29年6月15日付で「施術管理者の要件について(周知のご依頼)」という事務連絡が発出されていますね。 (さらに…)
Q&A『上田がお答えいたします』 施術管理者の要件の一つ、「研修」は全ての柔整師が受けるべきではないのか?
Q&A『上田がお答えいたします』 施術管理者の要件の一つ、「研修」は全ての柔整師が受けるべきではないのか?
2018.01.10
Q.
今後、柔整療養費の受領委任の取り扱いができる施術管理者になるには、3年の実務経験と研修の受講が必要になるそうですね。既に施術管理者である人にも、義務付けられるのでしょうか?
A.
厚労省から、平成29年6月15日付で「施術管理者の要件について(周知のご依頼)」という事務連絡が発出されていますね。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』161 degenerated…
連載『汗とウンコとオシッコと…』161 degenerated…
2018.01.10
早く到来した冬、もみじに雪、北風に狂い咲く桜やシャクナゲ……。物言わぬ植物でさえ間違える、妙な季節だ。自律神経的には血管の緩みと収縮が激しく、ラニーニャ現象の影響で身体の芯から冷え込む朝も多い。体温や血圧を上げるために食欲が変に増したり、塩の味が恋しくなる。忘年会にクリスマス、正月とイベントの連続もあって食や甘味が増えてカロリー過多になり、体幹部に血が集まり過ぎて、仮に四肢末梢が冷えて調子が狂う。横転先生が常日頃から言っている、「本当の冷え症の人がいつまでも、だらだらと食べられるか!」という言葉にもつながるわけだ。
渡辺くんという、小学5年生の男子が年末から来院している。リトルリーグの野球でピッチャーをしたりショートを守ったりと、器用な子だ。12月頭に左の環指を突き指してから腫れと痛みが引かないという。骨は大丈夫とのことだが、年明けに再開した練習でまた悪化している。今はオフシーズンで練習は走り込み中心だが、グローブを着けて球を受けると痛むらしい。治療は精神年齢の近い川端が受け持っているものの、一進一退の様子だ。 (さらに…)
連載『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』12 企業と連携した健康改革~商品から東洋医学の概念を伝える~
連載『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』12 企業と連携した健康改革~商品から東洋医学の概念を伝える~
2018.01.10
今回からは、一般の人たちの物差しをどのように変えていくのかについて具体的な取り組みを紹介したいと思います。1回目は、企業と協力した健康改革の話です。
サプリメントやサポーター、湿布薬など、健康に関する商品はたくさん存在しています。痛みに関連する分野だけ見てもサプリメントは500億円産業、サポーターは200億円産業、湿布薬は450億円産業と、確実に国民の健康を維持する手段となっており、多くの人々がこれらの商品にアクセスしていることが分かります。 (さらに…)
『ちょっと、おじゃまします』 ~トリガーポイント専門~ 大阪府堺市<タニダ鍼灸治療院>
『ちょっと、おじゃまします』 ~トリガーポイント専門~ 大阪府堺市<タニダ鍼灸治療院>
2018.01.10
「トリガーポイント(TP)療法専門治療院」を標榜している谷田陽平先生。痛みの原因がはっきりせず、転院するたびに疾患名が変わったり、「薬が効かない」といった患者さんが、口コミやホームページを見て訪れるといいます。そんな患者さんたちのために休日もなるべく治療院を開け、さらに2校の専門学校の非常勤講師を掛け持ちするという、多忙な日々を送っています。 (さらに…)
今日の一冊 酒好き医師が教える 最高の飲み方
今日の一冊 酒好き医師が教える 最高の飲み方
2018.01.10
酒好き医師が教える 最高の飲み方
葉石かおり 著
日経BP社 1,512円
お酒を飲む時、「油もの」のつまみを先に食べると悪酔いを防げる。日本酒には、生活習慣病の改善効果がある。ビールの「苦味」で認知症を予防できる――。「酒ジャーナリスト」の著者が、消化器内科医や泌尿器科医、精神科医など、酒好きを自認する医師らの下を訪ね、彼らが実践している身体に良いお酒の飲み方を聞いた。一方で、飲酒は大腸癌のリスクを確実に高める、飲み過ぎは男性ホルモンを減らす、といったデメリットも紹介。「太らない、翌日に残らない、病気にならない」飲み方が分かる。
編集後記
編集後記
2018.01.10
▽明けましておめでとうございます。甥っ子の結婚式に出席しました。お相手は裁判所で知り合った職場結婚。と言っても原告・被告の関係ではなく裁判官同士です。披露宴は法曹界から多数出席するので、やましさのない伯父もなぜか緊張気味。極度に緊張してたのが義弟で親族代表のあいさつを控え室で何度も練習。ある言葉で気分をやわらげて背中を押してやりましたが、本番では「玉砕」してました。陸上100mで日本初の9秒台を記録した桐生祥秀選手のトレーナーは、記録を出す前にマッサージしながら「まだまだ余力があるぞ」と言葉をかけ、桐生選手のモチベーションを高め背中を押したといいます。結果9.98秒。ちなみに義弟にかけた言葉は「当たって砕けろ」。気が利かなくて本当にゴメンよ。(松)
第21回日本統合医療学会 『患者中心の医療』提唱
第21回日本統合医療学会 『患者中心の医療』提唱
2017.12.25
―柔整、あはき業界からも講演多く―
第21回日本統合医療学会が11月25日、26日、東京有明医療大学(東京都江東区)で開催された。NPO法人日本ホリスティック医学協会との共催。テーマは『患者中心の医療(Patient-Based Medicine:PBM)』。
会期中、『あなたが患者ならどの医療を選ぶ―その特徴と科学的根拠』などをテーマに6題のシンポジウムが開催。漢方、ヨガ、温泉療法、放射線治療など多くの医療専門職による講演があり、鍼灸、柔整、あん摩マッサージ指圧分野からの発表も行われ、施術体験コーナーでも、あはき師のブースが設けられた。
福田文彦氏(明治国際医療大学教授)は、『がん患者に対する鍼灸治療』について講演した。国内外のガイドラインを基に、鍼灸は癌の症状緩和のほか、癌治療の副作用軽減、緩和ケア、家族への緩和ケアなど幅広い適応があると紹介した上で、鍼治療による副作用軽減についての研究成果を報告。抗癌剤Paclitaxelの副作用により末梢神経障害を発症した15人に対して週に1回・合計6回、陽陵泉―懸鐘、陰陵泉―三陰交に2Hz、10分間の鍼通電刺激と、太衝への10分間の置鍼を行った結果、しびれに有意な改善が認められたとしたほか、軽減群は年齢が若く、米国立癌研究所が作成した有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE)のグレードが低い傾向があったとした。また、投薬開始時から鍼治療で介入したところ、症状の増悪を有意に抑えられ、投薬量も減少したと説明。今後の課題として、既に治療効果が報告されている経絡治療など、施術の手法の違いによる効果の違いを検討する必要があるとした。このほかに、山口智氏(埼玉医科大学東洋医学科)も、片頭痛・緊張性頭痛に対する鍼治療の作用機序について報告し、高位中枢を介して生体の恒常性を正常化する作用が伝統医療の特質だと呼びかけた。
柔整師については東京有明医療大学准教授の櫻井敬晋氏が、主に出血を伴わない急性外傷を対象に固定・整復のほか、東洋医学に基づくリハビリ、再受傷防止の指導などを行い、慢性疼痛を防止する治療計画を作成する役割を持つと説明。綿包帯固定の有効性の報告として、giving-way台を用いて疑似的な足関節内反捻挫を発生させ、心血管用fluoroscopyを用いて骨の動きを可視化し動的な解析を行った結果を紹介した。
マッサージ論文1万6,000件を評価
『あん摩マッサージ指圧療法の歴史、現状、課題』では、藤井亮輔氏(筑波技術大学教授)が登壇。あん摩マッサージ指圧業について、あはき法の解釈を基に「部分的な医業でありながら、医業類似行為でもあるという二元解釈が可能」だとした上で、公的な位置付けがあいまいで医療の本流から外れていると指摘。行政施策の俎上に載せるためには科学的な根拠を示す必要があるとして、『医中誌Web』に掲載された昭和58年から平成26年までの論文を抽出し、エビデンスレベルの高い論文の『構造化抄録(SA)』作成に取り組んだとした。2度にわたる調査で約1万6,000件がヒットしたが、スクリーニングを重ねたところSA作成に至ったのは計30件にとどまり、国内の臨床研究が立ち遅れている現実が確認できたと述べた。また、30件のうち業界内の学会誌で発表された論文は7件(日本手技療法学会4件、日本東洋医学系物理療法学会2件、全日本鍼灸学会1件)で、病院学術雑誌、看護学会雑誌などが主だったことも残念だとした。
『医療は国民のために』238 柔整業界はビジョンを明確にしなければ保険者の理解は得られない
『医療は国民のために』238 柔整業界はビジョンを明確にしなければ保険者の理解は得られない
2017.12.25
保険者経験の長い私には保険者の友人も多く、総合健保組合の集まり等にも呼ばれることがある。その際、柔整療養費が話題に上ると、決まって私に向けた攻撃的意見が相次ぐ。せっかくの和気あいあいの雰囲気も一変してしまう彼らの指摘というのが、
①現在、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの発生機序が明らかな負傷は外科・整形外科が担当するので、柔整師はお呼びでない
②高齢者や認知症対応の者はデイサービスを主体にして介護保険を利用できる環境が整っているので、整骨院には行かない
③機能訓練や機能回復に当たっては理学療法士や作業療法士が保険医療機関内で対応し、そのリハビリ実施の結果、疼痛除去や機能障害の改善に効果があるので理学療法士と作業療法士がいれば外傷性の事後処理は問題なく対処できる
といった具合に手厳しい。柔整師はもはや「終わった資格」ととらえられ、療養費での保険給付としての活躍の場は一切無いと言われているようで、議論の応酬となってしまう。
柔整業界は「保険を守る」というが、何をどう守るのか。また、「柔整の業務・業権拡大」についても、どの分野でどの業務を勝ち取っていくのかもはっきりしないのが実情だ。
保険財源がますます厳しくなる中、保険者は、柔整業界側が「単に保険適用を慢性疾患に広げる」とか、「外傷性にとらわれない保険範囲の拡大」と言っても取り合わないだろう。可能であれば「本来の健康保険法第87条が求めている原則論」、すなわち、①被保険者証を提示できなかったことから後日、償還払いで請求すること、②治療を受けた所が保険医でなかったことから後日、償還払いで請求すること、の2点に限局したいのではないか。しかも、保険者は、「本来の柔整師が診るべき患者はもう整骨院には行かない」との認識の下、徹底的に患者調査をすれば、必ず患者から「私は外傷性の負傷ではありません」という言葉を引き出せると考えているらしい。
今、3,800億円の柔整療養費を医科に移行する考えがひそかに進行している。その証拠として、療養費検討専門委員会で療養費のあり方が議論されればされるほど厳しさが増している。そんな中、柔整師のうち、わずか0・1%程度しか取り扱われていない骨折や脱臼を専門学校等の養成施設で熱心に勉強している点や、学術レベルを高め、柔整の運動療法を確立すべき大学が何をやっているのかといった点に対する指摘や疑問が保険者から聞かれたりする。整骨院への来院者ニーズと柔整師の技能・能力の関係、保険請求の実態の不整合性、そして学術的な制度設計――これらを解決できなければ、柔整業界の先行きは自ずと知れたものになるだろう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
昨年実施のあはき業態調査 4千人弱回答から年収330万円(中央値)
昨年実施のあはき業態調査 4千人弱回答から年収330万円(中央値)
2017.12.25
―柔整師免許の有無で収入格差―
平成28年10月から11月にかけて、全国のあはき施術所・業者を対象として実施された「あはき業態調査」の結果を、本紙がこのほど入手した。同調査は、厚生労働行政推進調査事業費補助金の交付を受け、筑波技術大学保健科学部教授の藤井亮輔氏らによって実施され、平成27年の年収や施術所経営に関する意識など、近年のあはき業の実態が浮き上がった。
調査対象2万件のうち、回答したのは4,605人。そのうち、3,836人が現在も営業中であった一方、370人が休業、399人が廃業していた。また、営業している3,836人のうち、8割が晴眼者で、2割が視覚障害者であった。
「平成27年1月~12月の売り上げ(事業所・事業者の施術料収入)は、おおよそいくらでしたか?」の質問には、営業をしている3,836人が回答し、平均778.2万円で、中央値(統計学において、標本値を大きさの順に並べた場合、個数nの中央に位置する値)は330万円だった。100万円階級別でみると、最も多いのが「0~100万円」で560人(22.4%)となっており、順に「1,001万円以上」が620人(16.2%)、「101~200万円」が485人(12.6%)、「201~300万円」が370人(9.6%)と続いた。300万円以下の者が44.6%と半数近くを占めており、全体として厳しい経営状況が示された一方、901万円以上が19.7%と、5人に1人が高収入であるとの結果だった。また、平成27年の年収の中央値を企業形態別でみると、法人施術所が600万円で、個人施術所が320万円、出張専門業者が130万円となっていた。
所持免許別(中央値)では、「柔整のみ」が1381.5万円で最多、次いで「鍼灸・柔整」が731.5万円、「あマ指・鍼灸・柔整」が690万円、「あマ指・柔整」が575万円、「鍼灸のみ」が260万円、「あマ指・鍼灸」が240万円、「あマ指のみ」が230万円だった。柔整師免許所持者に比べ、所持していない施術者の収入が軒並み低い現状がうかがえる。また、柔整師免許の有無を晴眼者に限ってみた場合、「免許あり」が960万円で、「免許なし」が350万円となり、年収に大きな開きがみられた。
経営状況、多数が「苦しい」
同調査では、回答時(平成28年11月時点)の経営状況についての質問もあった。回答したのは営業をしている3,836人で、多い順から、「とても苦しい」1,316人、「少し苦しい」1,206人、「まあ順調である」897人、「どちらともいえない」292人、「おおいに順調である」107人、無回答18人となった。全体の傾向として、「苦しい」と感じている施術者が、「順調」と感じている施術者を大きく上回る結果だった。なお、晴眼者・視覚障害者ともに「苦しい」と感じている割合が70%前後を示し、一方で「順調」と感じている視覚障害者は16.8%で、晴眼者の28.3%よりも低かった。
これら施術所経営で苦戦を強いられている背景として、同調査の研究代表者である藤井氏は、「急増する鍼灸院や接骨院の間で業の過当競争が激化し、市場の需給の均等が崩れ始めていることが影響している」と考察。また、柔整師免許の有無で収入に格差が生じている点については、今後、一段と二極化が進む可能性があるとしている。
臨スポ第28回学術集会 野球肘検診を少年球児全員に
臨スポ第28回学術集会 野球肘検診を少年球児全員に
2017.12.25
一般社団法人日本臨床スポーツ医学会(臨スポ)の第28回学術集会が11月18日、19日、都内で開催された。『文化の成熟を示すスポーツ医学―2020年に向けて』をテーマに、スポーツ庁長官・鈴木大地氏による招待講演など、3年後の東京五輪・パラリンピックを意識したセッションのほか、特別講演や教育講演、シンポジウムなどが多数行われた。
シンポジウム『こどもの肘を守る。少年野球における肘障害予防』は、近年、全国各地で実施されている学童期野球選手を対象とした野球肘検診について報告された。徳島大学運動機能外科学の松浦哲也氏は、症状が進行すれば選手生命が危ぶまれる肘離断性骨軟骨炎(肘OCD)は、初期で発見され保存的に修復した症例の予後は術後例よりも良いと解説。ただ、初期で症状を自覚するケースは少なく、野球歴や練習時間といったオーバーユースに関する因子との関連もみられないとして、肘OCDを確実に早期発見するには小学生高学年の全選手に検診を行うべきだと説いた。徳島での取り組みにも言及し、検診で発見された障害の大半は初期例であり、投球・バッティング中止を主体とした保存療法を行い90%以上が修復していると紹介した。奈良県立医科大学地域医療学講座の江川琢也氏は、平成23年から同県で計7回の検診を実施していると報告した。医師と理学療法士(PT)による一病院の事業として開始したが、マンパワーと経費面の問題に直面したため、NPO法人を立ち上げ、病院関係者以外からスタッフを募集し、企業等からも寄付金を募った結果、検診費用無料で実施できていると説明。回を重ねるごとに規模も拡大し、当初13人だったスタッフが、現在は医師11人、PT78人、臨床検査技師13人、柔整師4人、栄養士4人など計154人に増えたと話した。京都医療センター整形外科の中川泰彰氏は、平成23年から京都軟式野球連盟とタイアップして実施していたが、受診する選手の数が頭打ちとなったため、年に1回は検診を受けないと翌年の連盟主催の野球大会に出場できないとの規定を設け、検診を義務化して球児の障害を守っているとした。宮崎大学医学部付属病院の帖佐悦男氏や新潟リハビリテーション病院の山本智章氏、西別府病院スポーツ医学センターの馬見塚尚孝氏も加わった総合討論では、検診で障害発生を予防するのは難しいので、早期発見し、治療につなげることが主目的である点が確認された。
桜雲会主催の講演会 『杉山和一と徳川綱吉』
桜雲会主催の講演会 『杉山和一と徳川綱吉』
2017.12.25
―管鍼法の祖と「犬公方」―
社会福祉法人桜雲会は、『江戸期の盲目の偉人―杉山和一と徳川綱吉の足跡』と題する講演会を11月19日、綱吉の母ゆかりの地である護国寺桂昌殿(東京都文京区)で開催した。芦野純夫氏(横浜医療専門学校)、香取俊光氏(群馬県立盲学校)が登壇し、朗唱家・鈴木泉氏の『杉山和一を支えた〝せつさん〟』、講談師・田辺鶴遊氏の『古典講演 杉山和一』といった演目も交え、二人の偉人の功績が解説された。
管鍼法の創始者である杉山和一(1610―1694)は、1680年に江戸幕府の五代将軍となった徳川綱吉(1646―1709)に召し出されて以来、没年近くまで専属の鍼医として綱吉の治療を行った。高齢のためか幕府の御殿医とはならなかったものの、治療を通じて信頼を得たことが、後の関東総検校への就任や、弟子たちの幕府への登用につながり、盲人の鍼灸あん摩が職業として定着する上で大きな役割を果たしたと語られた。時系列には諸説あるものの、綱吉に鍼術振興を命じられた和一は、下賜された現在の江島杉山神社(東京都墨田区)の地に世界初の視覚障害者教育施設である杉山流鍼治導引稽古所を開き、全国45の講堂を通じて杉山流を広めるとともに、当道座(盲人の互助組織)の綱紀粛正に携わったとされた。このほかに、ルーツが不明だった晴眼あん摩の吉田流も、和一の弟子の石坂流から分かれたものだと明らかになったと述べられた。
誤解された将軍・徳川綱吉
講演では、動物の殺生を禁じた「生類憐みの令」で知られ、「犬公方」と称されるなど悪名高い綱吉に関する「誤解」も語られた。近年の研究によれば、綱吉は「天和の治」といわれる政治改革によって多くの役人・大名の不正を追及し、2度拝謁した外国人医師から「卓越した君主」と記されるなど、再評価を受けていると説明。「生類憐みの令」も、本来は、病人や老人、弱者の救済を目的として儒教的教訓を謳ったもので、動物に限らず命あるものを大事にせよとの触れであったが、戌年生まれの将軍に忖度した周囲の者の考えや、治世中に元禄地震や富士山の噴火といった天災が続いたこと、『忠臣蔵』や『水戸黄門』の逸話において悪役のような立場に置かれたことといった様々な要素が影響して、現在のような悪評につながったものと解説。また、四代将軍・家綱の急死によって将軍の座に就いた綱吉は、本来世継ぎになる予定ではなかったために相応の教育を受けておらず、生来の気の優しさもあって不眠や食欲不振といった「気鬱の病」に悩まされ、和一の治療に助けられていたと考えられるとされた。
なお、講演会は、『盲教育と社会福祉の原点を訪ねて』と題するバスツアーと併せて催された。
厚労省 柔整師ら11人、行政処分
厚労省 柔整師ら11人、行政処分
2017.12.25
―6人が交通事故に絡む詐欺行為―
厚労省は12月4日、療養費を不正請求した者や、その他の刑事事件で有罪判決が確定した者について、柔道整復師、はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師ら、計11人の行政処分を決定した。施術費等の名目で保険金をだまし取るなど、交通事故に絡む不正(詐欺・詐欺未遂)は6人だった。処分発効日は12月18日。
処分は以下の通り。
【免許取消】
池田幹男(32、あん摩マッサージ指圧師、有限会社メディカル在宅マッサージセンター・名古屋市中村区)=強姦(懲役5年6月)
【業務停止5年】
口田隆二(46、はり師・きゅう師・柔道整復師、すずらん鍼灸整骨院・石川県小松市)=詐欺、詐欺未遂(懲役3年、執行猶予5年)、山形匡(57、柔道整復師、山形整骨院・福井県敦賀市)=詐欺、詐欺未遂(懲役3年、執行猶予4年)
【業務停止3年】
成安潤平(36、柔道整復師、立田町整骨院・大分県別府市)=詐欺(懲役2年、執行猶予4年)、三浦春夫(60、柔道整復師、三浦接骨院・岐阜市野一色)=保険金の詐取
【業務停止2年】
堀功徳(40、柔道整復師、あさがお整骨院・新潟県新発田市)=詐欺未遂(懲役1年6月、執行猶予3年)、五代伸吾(38、柔道整復師、当時無職)=詐欺(懲役1年6月、執行猶予3年)、岸本知郎(31、柔道整復師、やわら接骨院・岡山県井原市)=詐欺(懲役1年6月、執行猶予3年)
【業務停止3月】
堀口哲也(52、柔道整復師、堀口整骨院・神戸市兵庫区)=療養費不正請求(受領委任取扱い中止)、松浦裕紀(40、柔道整復師、陽だまり接骨院・名古屋市中村区)=療養費不正請求(受領委任取扱い中止相当)、原田泰治(51、柔道整復師、原田整骨院・大阪府東大阪市)=療養費不正請求(受領委任取扱い中止相当)
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』82 インドの統合医療について
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』82 インドの統合医療について
2017.12.25
インドには、3年前の2014年11月9日に「AYUSH省」という国の組織ができました。AYUSHとは、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ(Ayurveda)、ヨーガ(Yoga)、ユナニ医学(Unani)、シッダ医学(Siddha)、ホメオパシー(Homoeopathy)の頭文字をとった言葉で、これ以外にナチュロパシー(Naturopathy)やチベット医学(SOWA- RIGPA)を加えた、インドで行われている補完医療の教育や研究を統括する省庁です。そして国家戦略として、特にアーユルヴェーダの情報発信を海外に行っています。中国が中医学を国家戦略的に海外へと情報発信し、中医学を世界標準化しようと画策しているのと同じように、インドも世界にアーユルヴェーダを広めようと、「国家」として力を入れ始めたというのは注視すべきことです。
一方、日本は自国の伝統医学の価値を世界に発信することが上手にできていないようですね。現在、JLOM(日本東洋医学サミット会議)が中心となって、ISO(国際標準化機構)、WHO問題に対峙しています。世界の伝統医学の標準化を行おうというISOでは、中国が国家戦略的に資本と人材を使って、ロビー活動も活発に行い、標準化作業が中国にとって有利にまとまるように力を入れています。日本はと言えばようやく伝統医学に関する国の窓口ができた程度で、中国と対等に渡り合えるような戦略も不在です。
私は先日、AYUSH省の国家間のMOU(了解覚書)を取り扱うビネイクマル・アワテ氏と親しくなり、インドの最近の伝統医学への政策について色々と伺いましたが、今後の日本の国家戦略を構築する際に、非常に参考になるのではないかと感じました。
この出会いの中で、来年の3月24日、25日に、鍼灸などの日本の伝統医学が、世界で生き残りをかけた戦略を練るための、オープンディスカッションの場を「東京」で設けることになりました。しかも、インド大使館もバックアップして下さることになりました。ぜひ、来年のカレンダーにチェックを入れておいてください。
2017年も暮れが押し迫ってきましたね。東京へ出てきて5年経ち、今年1年で私の周りの環境は激変しました。皆さんはいかがでしたでしょうか。2025年問題が顕在化するまで、あまり時間がありません。来年も大きく前進できるような年にしたいです。皆さん、良いお年をお迎えください。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。
連載『柔道整復と超音波画像観察装置』153 ファベラの超音波画像観察
連載『柔道整復と超音波画像観察装置』153 ファベラの超音波画像観察
2017.12.25
田中 正樹(筋・骨格画像研究会)
ファベラは、腓腹筋外側頭の起始部にまれに見られる種子骨であり、出現率は10%程度だと言われている。ファベラが存在するというだけでは疼痛を引き起こすことはないとされているが、ファベラそのものの骨折や骨軟骨炎、ファベラに圧迫されることによる腓骨神経障害などが発生する可能性があるので軽視はできない。
1977年、ウィーナーらは、ファベラにおける鋭い疼痛・限局した圧痛・膝伸展時痛の3症状が見られる疾患を「ファベラ症候群」と報告している。これら3症状のほかに腰部前屈制限や膝伸展制限があり、起立位におけるかかと立ち及びつま先立ちで、膝関節後面外側顆に疼痛を認めることもある。ファベラ症候群は、診察する者に疾患の概念が無い場合、膝関節炎や半月板損傷、腸脛靱帯炎などと混同されてしまうケースがある。
ファベラ症候群が疑われる際に超音波画像観察装置(エコー)を用いる場合、ファベラ周囲の軟部組織やfabello-femoral(ファベロ・フェモラル)関節を観察していかなければならない。ファベラには、骨性ファベラと軟骨性ファベラがある。骨性ファベラは音響陰影を伴う高エコー像、軟骨性ファベラは卵円形の低エコー像として描出される。正常例の後外方長軸走査では、大腿骨外側顆の関節面が半円状の高輝度線に描出されるが【画像①】、骨性ファベラが出現する画像では、ファベラより深部は無エコーとなり、ファベロ・フェモラル関節は見ることができない【画像②】。また、短軸走査でもファベラより深部の関節面は無エコーになり、描出されない【画像③】。その場合は膝外側走査を行い、大腿外側顆とファベラが同時に描出されるようにする【画像④】。
ファベラによる疼痛の原因は、関節症性変化や軟部組織の炎症、滑膜炎などが考えられる。よってエコー画像の着目点は、関節面の不整、ファベロ・フェモラル関節周囲の低エコー像などだが、ファベラと外側顆によってアーチファクト(虚像)が映ることがあり、それらが低エコーを有するので、その影を炎症画像と混同しないように注意しなければならない。
エコーでファベラを観察する際は、エコーの特性をよく理解してプローブを当てる方向を考慮し、アーチファクトの存在も意識しつつ、鑑別につなげる必要がある。
森ノ宮出版部 「鍼灸のことば」を発表
森ノ宮出版部 「鍼灸のことば」を発表
2017.12.25
―キャッチフレーズで鍼灸を身近に!―
鍼灸臨床専門誌『鍼灸OSAKA』を発行する森ノ宮医療学園出版部がこのほど、鍼灸未経験者に向けて鍼灸を一言で説明するキャッチフレーズ「鍼灸のことば」の入賞作品を発表した。作品はこの秋に募り、応募総数は176作品だった。
審査は鍼灸師免許を持たない18名が行い、同出版部によると、「施術者視点と患者さん視点の作品があり、着眼点が異なるものだなあと思いました」、「鍼灸を身近に感じられる良い作品がたくさんあり、悩みました」との感想があったという。「鍼灸の3拍子♪ 痛ない、熱ない、心地よい」には審査員から「リズミカルで、明るいイメージ。鍼は痛い、お灸は熱いというイメージを持っている方に伝わりそう」との推薦コメントがあったとか。「いま薬を飲めないあなたに。鍼灸」など、鍼灸の従来のイメージを広げる作品も。なお、佳作には「お灸で免疫力アップ」、「泣く子も笑う小児はり」が選ばれた。
同出版部では「鍼灸のことば」を鍼灸の普及に役立てようと、入賞・佳作作品をデザインした缶バッジを作成。同出版部発行の書籍購入者にプレゼントするほか、販売も行う。入賞・佳作作品7個セット1,080円(写真。税込・送料別)。同出版部(メール koudoku@morinomiya.ac.jp、電話06-・6976-6889 )まで。
レポート 第2回 ディスポ鍼使い比べ総選挙
レポート 第2回 ディスポ鍼使い比べ総選挙
2017.12.25
「訪問はりきゅう上達ラボ」が主催のイベント『第2回 ディスポ鍼使い比べ総選挙』が11月18日、鍼灸用品を取り扱う株式会社メイプル名古屋(名古屋市)で開催された。臨床の現場で働く鍼灸師らと、株式会社ファロスとセイリン株式会社の営業担当者、メイプル名古屋代表取締役の岡部芳幸氏が参加、ユーザー・メーカー・販売店の三者で意見交換を行った。
「この鍼の特徴は何ですか?」「こういった場合には、こちらの鍼を使う先生がいらっしゃいます」「施術した時と、施術された時の違いは……」「自分に合う鍼を選ぶ中で先生自身も患者側に立って考えるのも大事」。今回は、8月に東京で開催された前回を上回る5社15種以上のディスポ鍼を、鍼灸師、メーカーが一緒になって、患者様目線、施術者目線でのさまざまな意見を交換した。鍼灸師は、鍼を打つ技術を磨くことはできても、鍼の品質を良くすることはできない。逆もまた然りで、良質の鍼を作っても、現場の鍼灸師が知ることがなければ患者様には届かない。このイベントは、使う側の使い心地、治療を受ける側の「刺され心地」についてダイレクトに意見交換することで、鍼灸師、メーカーそれぞれが刺激し合い、互いが日々精進してより良い鍼灸治療が患者様に提供されるきっかけとなっている。
イベントの最後に岡部氏より、「常に患者様の目線を持って頑張りましょう」との呼びかけがあった。鍼灸師とメーカー、そして販売店も含め、「安心安全に受けられる鍼灸治療」を目指し、今後も地域の患者様に健康を提供していきたい。(訪問はりきゅう上達ラボ代表 岡野浩人)
Q&A『上田がお答えいたします』 「腰部挫傷」「腹部挫傷」「頸部挫傷」も柔整療養費算定基準の負傷名に
Q&A『上田がお答えいたします』 「腰部挫傷」「腹部挫傷」「頸部挫傷」も柔整療養費算定基準の負傷名に
2017.12.25
Q.
「挫傷」は柔整療養費の支給を認められているはずなのに、腰部や腹部、頸部の挫傷は返戻されてしまいます。
A.
柔整療養費の算定基準には「胸部挫傷・背部挫傷・上腕部挫傷・前腕部挫傷・大腿部挫傷・下腿部挫傷」とあり、保険者や柔整審査会はこれをもって「国が定めた算定基準に記載の無い負傷名は認められない」との趣旨で返戻しているのでしょう。しかし、厚労省からは、算定基準における負傷名はあくまで「例示」であるとの事務連絡が発出されていることから、腰部・腹部・頸部の挫傷であることを理由に返戻するのは不当です。以下に、それぞれの挫傷についての医科学的な見解を解説します。
「腰部挫傷」は腰方形筋の損傷などが考えられます。また、私が知っている重篤な症例として、「大腰筋の肉離れ」があります。患者さんは筋トレ中、腹部に激痛を感じて保険医療機関を受診。虫垂炎の疑いで画像診断を受けたところ、大腰筋の断裂が判明したのです。「腹部挫傷」は、整形外科でよく診断されています。その多くは腹斜筋損傷ですが、腹直筋損傷もあります。スポーツ選手の場合、競技によっては腹直筋を断裂することがあるのは周知の事実ですね。腹部の筋は大腿部や下腿部の筋のように、筋力があるので遠心性収縮時に引き伸ばされて損傷しやすいと考えられます。柔整施術としては、アイシングしながらの軽擦法や強擦法が有効ですね。併せて、さらしやコルセットによる固定も必要なので、柔整の適応になるでしょう。いわゆる「むち打ち」の中でも、整形外科で「骨は大丈夫」とか「骨はズレていない」といった説明がなされるのが、「頸部挫傷」です。挫傷は筋損傷で、捻挫は椎間関節損傷と捉えられます。頸椎の椎間関節部での圧痛や椎骨を他動的に動かした時に不安定性(可動域亢進)があれば頸椎捻挫で、圧痛が椎間関節部ではなく頸部表層筋や深層筋の位置にあり、他動的に動かしても不安定性が無ければ頸椎挫傷と判断します。柔整師が臨床で遭遇することの多い「寝違え」や軽いむち打ちは、医科学的には頸椎捻挫や頸部捻挫ではなく、頸部挫傷なのです。
「算定基準に無いから」と、保険者や柔整審査会が頑として支給を拒むというのであれば、厚労省に「腰部挫傷」「腹部挫傷」「頸部挫傷」を算定基準の負傷名として追加させるよう取り組まなければなりません。それが「業務拡大の第一歩」に直結すると言えるでしょう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
連載『食養生の物語』55 ハクサイで芯から温まる
連載『食養生の物語』55 ハクサイで芯から温まる
2017.12.25
鍋物の美味しい季節です。鍋物といえばハクサイですね。ハクサイは英語ではChinese Cabbage(中国のキャベツ)と呼ばれています。「西洋のキャベツ、東洋のハクサイ」と並び称されることもあり、使い道が幅広く栄養も豊富な野菜です。
ハクサイは、実は元々野生植物ではありません。カブと漬け菜(つけな:しろな・チンゲン菜のような葉物)類が自然交雑して生まれたもので、栽培種としてのハクサイの原形は中国北部で生まれたものだと推定されています。日本に入ってきたのは明治時代になってからで、広く普及したのは大正時代と言われています。成長するにつれて根に近い白い部分が太く伸びていくことから、「白菜」と呼ばれるようになったとか。朝鮮半島にハクサイが持ち込まれたのもこの頃で、それから栽培法が確立され、朝鮮総督府によって朝鮮半島全土に普及し、白菜キムチの誕生につながったようです。
旬は、11月下旬から2月ごろにかけて。葉の周囲がちりめん状に縮れて互いに抱き合うように重なり合い、冬の冷え込みとともに巻きが強くなっていきます。寒さという陰性の中で求心力という陽性の力が強まる様子には、自然界のバランスが現れています。霜が降りるころには繊維質が柔らかくなり甘みも増して、食べ頃を迎えます。ハクサイは良質な植物性タンパク質、食物繊維が豊富で、精進料理では白菜と豆腐、大根と合わせて「養生三宝」と呼ばれるほどです。冬場には不足しがちなビタミンCやカルシウム、カリウムなどが豊富なほか、食物繊維が多く含まれているために整腸・緩下作用もあります。そのことから、肉料理であるすき焼きなどに用いられるようになったのでしょう。また、キムチを見かけることも今や珍しくなくなりましたが、日本でハクサイの漬物と言えば、やはりぬか漬けですね。ぬか漬けは、ハクサイに豊富に含まれる食物繊維、ビタミンCを保つだけでなく、発酵により乳酸菌が増え、ぬかから溶け出したビタミンB?、B?も多く含んでおり、整腸作用を強化し、肌の調子を整えてくれます。
繊維が柔らかく、味はクセがないので、どんな料理にも合う野菜です。生のシャキッとした食感もさることながら、火を通した時に出るトロッとしたのも美味しくいただけます。外側の葉は生のままでサラダにするか、煮物、お浸し、漬物などに。中ほどの葉は鍋物などでゆっくりと火を入れると柔らかくなるほか、八宝菜などの炒め物にも合います。炒め物にする時は、水気が出て料理が水っぽくなりやすいので強火で一気に炒めましょう。芯には旨味があるので、スープや出汁に使うのがオススメです。ハクサイの芯から水分に溶け出した栄養分を丸ごといただいて、身体の芯から温まりましょう。
【連載執筆者】
西下圭一(にしした・けいいち)
圭鍼灸院(兵庫県明石市)院長
鍼灸師
半世紀以上マクロビオティックの普及を続ける正食協会で自然医術講座の講師を務める。
連載『アロマテラピーをたずねて』91 乳香と没薬
連載『アロマテラピーをたずねて』91 乳香と没薬
2017.12.25
この時期、スクールの前にある教会では昼と夜に賛美歌が流れ、クリスマスを迎える礼拝が続いています。クリスマスといえば新約聖書のマタイ伝に登場する「乳香(にゅうこう)」と「没薬(もつやく)」の香りが有名です。山田憲太郎著の『香談』には「乳香は神、没薬は医師」との記述があります。当時貴重な宝物であったことは、これらを黄金と一緒にキリストに捧げていることからもうかがい知れます。乳香はアロマテラピーでは「フランキンセンス」と呼ばれることが多く、自由・純粋・豊富を意味するフランス語「フランク」と、火をつけるという意味を持つラテン語の「インセンス」に由来しています。また、調香師の間では「オリバナム」と呼ばれています。これはアラビア語の「ルバーン」、つまり樹木から滲み出るミルク色をした樹液という意味からこう呼ばれるようになったといわれています。春と秋、樹幹に切り傷をつけて染み出る樹液(ガムレジン)の凝固したものを手で採取します。成分はピネン類とリモネンで、中でもαピネンは強壮作用があり、脳血流を増やして大脳の活動を活性化する働きがあるといわれています。薄い濃度でみぞおちに塗布すると血液の流動化が促進され、指先が温まり血圧が安定することも最近では立証されています。さらにストレスなどによって高ぶっている交感神経を鎮め、副交感神経の働きを優位にします。免疫系をサポートし、鬱にも有効とされています。
もう一つの没薬は「ミルラ」と呼ばれ、アラビア語の「モル」、苦いという意味があります。医師がクスリとして使っていたことから「救世主」として知られ、古代エジプトではミイラの製造に欠かせない香料でした。体臭を緩和したり、肌を美しく保護したり、神様も人間も、天国も地獄までも清めてくれると考えられていたようです。芳香成分はセスキテルペン炭化水素類を多く含み、強壮作用があり、抗ウイルス作用や抗菌作用、抗炎症作用がよく知られています。フランスでは、甲状腺機能不全の処方にも加えられています。
【連載執筆者】
山本淑子(やまもと・よしこ)
山本淑子ハーブ・アロマアカデミー校長
AEAJ認定アロマテラピープロフェッショナル
『ちょっと、おじゃまします』 ~「のめり込める仕事」求めて~ 大阪府池田市<moriguchi整骨院>
『ちょっと、おじゃまします』 ~「のめり込める仕事」求めて~ 大阪府池田市<moriguchi整骨院>
2017.12.25
「もっと、のめり込める仕事はないか」――。もりぐち先生が柔整師を志したのは、そんな思いに取りつかれたように仕事を転々としてきた20代前半の頃でした。製薬会社でのアンプル作り、車の製造、家の内装など様々な職種を経験しつつも、本人曰く「仕事に自信がついてくると、また新しいことにチャレンジしたくなってしまう」性格。最終的にたどり着いた医療の世界で、スケートボードやサーフィンといった趣味でのケガで患者としてお世話になったことがあり、自分の責任で患者さんと向き合える仕事だと感じた柔整の道へ進みました。
当初は卒業後すぐに開業するつもりでしたが、いざその時が近付くと、座学以外の経験不足が気になるように。自分に何が足りないのかを考え抜き、優れた治療技術、経営者の視点、患者さんと向き合う姿勢など、それぞれ尊敬できる面を持った施術者の先生方の施術所に勤め、約6年半の臨床経験を積みました。中でも最も影響を受けたと話すのは最後に勤めた大阪市の整骨院の院長で、とにかく基本を大事にする先生。丁寧に筋肉にアプローチし、「全ては解剖学の教科書に載っている」と語る姿に、自分は小手先の技術に頼りすぎていたと衝撃を受けたと語ります。
開業は地元で、前職の経験を生かして「院の内装や外装も自分でできることは自分で」。地元の友人たちが手伝ってくれたこともあり、最小限のコストで理想通りの院を作り上げました。心がけているのは、初診では1時間程度の時間を取って話を聞き、なぜ痛くなったのかしっかり説明し、不安を取り去ってから治療に入ることだそうです。勤務柔整師時代に診た患者さんが追いかけてきてくれたり、良くなって「卒業」した患者さんが顔を見せに来てくれた時が一番嬉しいと語る先生。開業から1年半、次の目標を聞くと、「まだ、それを語るのは早いと思います。もっと地域に根付いて、治療のクオリティーを上げていくことからですね」。その笑顔を見る限り、もう「のめり込める仕事」を探す必要は無いようでした。
もりぐち先生 平成20年、平成医療学園専門学校卒業。同年柔道整復師免許取得。37歳
▲内装、外装ともに「自作」部分も多いとか