連載『織田聡の日本型統合医療“考”』132 今一度、スタンダードプレコーションを
2020.02.10
2月1日、新型コロナウイルスによる肺炎などが『新型コロナウイルス感染症』として、指定感染症及び検疫感染症に指定されました。日本での感染者が拡大する中、「ヒト―ヒト」感染が確定し、非顕性感染(非症候性保有者)も確認され、検査体制や受け入れ態勢もままならない状況下で、行政による指定がなされました。報道も過熱し、薬局やコンビニの陳列棚からマスクが消え、混乱の様相を呈してきました。
また、中国政府の公式発表に加え、SNSなどからうかがい知れる武漢の医療機関の混乱ぶりと疲弊……果たしてこれら中国発の情報が正確なのかという疑問もあります。おまけに、未確認ながらも生物兵器の漏洩による陰謀論まで登場している始末。私たちはより一層、情報の真偽に慎重になり、同時に迅速に取り扱っていく必要があります。
そして、今一度、スタンダードプレコーション(標準感染予防策)を意識してください。
基本は、感染者が同一空間にいるかいないかを問わず、体が直接触れ得る全ての物・場所(机や壁、ドアノブ、さらに自分の衣服も含め)に「絵の具がべったり付いている」と考えてください。そして、絵の具は24時間は乾かないと思ってください。今回のコロナウイルスは皮膚から感染せず、必ず上気道の粘膜を介して感染します。よって「絵の具」が手や体に付いただけでは感染しませんので、口や鼻の粘膜に付かないようにするにはどうしたらよいかを意識してください。
また、マスクは全く無意味だとは言いません。「絵の具の付いた手」で不用意に口に触れないための効果があり、自分が感染源という可能性を考えると、飛沫を飛ばさないためにも有効です。報道後、ホテルや遊園地などのホスピタリティーが求められる業種でも従業員が希望すれば、マスク着用が認められるようになったと聞きます。「健康な非感染者に対する感染予防の効果」は、多くの人が持つイメージとは異なり、非常に限定的です。もちろん、マスクは使い捨てにして口側に触れないことです。
さらに言えば、たとえ口にウイルスが付いたとしても、必ずしも感染するとは限りません。まずは、うがい。水道水で十分で、市販のうがい薬などは正常な粘膜を洗い流してしまい、ウイルスへの免疫機構を阻害することにもなりかねません。ポイントは、口をすすぐのではなく、喉の奥まで洗い流すようにうがいをしましょう。手洗いもアルコールなどの手指消毒より圧倒的に流水のほうが有効です。
医療の臨床現場では、免疫抑制状態の患者さんも少なくないので、スタンダードプレコーションをより意識する必要がありますね。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。