連載『柔道整復と超音波画像観察装置』197 筋膜・筋周膜・筋線維束の観察
2021.08.25
田中 正樹(筋・骨格画像研究会)
当院で患者に接する際には、柔整施術を施行するにあたって、問診、視診、触診を行う。これと同時に超音波観察を行い、身体内部の状態を把握することは、適切な処置を行うだけでなく、患者の疑問にダイレクトに答え、インフォ-ムドコンセントを実現するために重要なアシストツールである。捻挫や打撲などの患部の身体内部を観察し、損傷範囲や損傷程度、回復状態などを視覚的に理解することは、患者、施術者ともに大きな安心材料であり、社会復帰、競技復帰のタイミングの把握につなげることが出来る。超音波画像を確認し状態を理解するためには、健康体の正常な抽出画像を理解することが必要となる。また、超音波プロ-ブは、単純X線写真や、CT・MRIのような広範囲のスクリ-ニング検査が困難なことから、狭小範囲の画像を連続抽出して、状態を理解しなければならない。
筋肉組織の超音波検査では、筋膜・筋周膜・筋線維束がどのように抽出されるかと理解することが重要であり正常画像として認識する必要がある。複数の筋線維が筋周膜によって包まれたものが筋束であり、複数の筋束が筋膜によって包まれたものが筋である。大腿四頭筋の短軸画像では、表層の筋膜が高エコ-に抽出され、筋腹には筋周膜を示す複数の高輝度な点を認める【図①】。長軸画像では、比較的低輝度の筋線維束と高輝度の筋周膜が配列しているのが見てとれる【図②】。【図③】では大腿外側広筋の高度な血腫貯留部位の低エコ-像が見てとれるが、当院での場合、ここまでの血腫貯留の病態は見てとれず、部分的な筋束や筋周膜の途絶を確認出来る【図④】。