連載『汗とウンコとオシッコと…』252 熱三重奏
2025.08.10
毎日暑すぎる。一際、目に留まるのは南方の花のようなノウゼンカズラだ。アメリカの囚人服のようなオレンジ色で、色調に呼応するかの如く薬効は血症であることが面白い。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』252 熱三重奏
連載『汗とウンコとオシッコと…』252 熱三重奏
2025.08.10
毎日暑すぎる。一際、目に留まるのは南方の花のようなノウゼンカズラだ。アメリカの囚人服のようなオレンジ色で、色調に呼応するかの如く薬効は血症であることが面白い。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』251 Want to Burnish
連載『汗とウンコとオシッコと…』251 Want to Burnish
2025.07.10
夏至を過ぎてすぐ、6月中に梅雨明けを経験したのは昭和世代でもそうないはずだ。百日紅の花が早くも咲き出し、コスモスまで咲いている。コウロギの声がかすかに聞こえ、バッタは飛んでいるのに、蝉の声は聞こえない。初夏から初秋が混在するようで、バラバラだ。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』250 魔法瓶
連載『汗とウンコとオシッコと…』250 魔法瓶
2025.06.10
ヤマボウシの花が散りだし、突出した赤い実をちらほら見かけるようになった。南天の白い花の群生が円錐状に突出し、緑の葉にコントラストの強い紫陽花が梅雨の到来を誘うように咲き誇っている。だが、この初夏は涼し過ぎる。普通ならじとじとと汗ばむ季節ではあるが、冷たい風が体表を素早く気化させて、汗が出たという感覚を奪ってしまう。また体表が冷えるので喉が渇いた感覚も作らない。そのために血が粘り内圧が上がり腫物を形成しやすいのだ。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』249 気化冷却
連載『汗とウンコとオシッコと…』249 気化冷却
2025.05.10
季節のめぐりが早い。ソメイヨシノとモクレンが散ると、八重桜とハナミズキがトレースするが、ハナミズキも開花してすぐに新緑が現れ、トコロテンが押し出されるが如き目まぐるしさだ。太陽光線が当たる所は熱いほどではあるが、影に入ると寒く、風も冷たい。寒熱の差が激しい時、調整不良を引き起こすのは決まって少陽経や肝経である。
「肝は風をつかさどる」とはよく言ったものだ。これは、肝は外気による気化に対し内部環境を、血管を拡張収縮しながら調整する働きを担うということである。これが上手くいかないと必ず筋は引きつり、けいれんする。真逆の場合は弛緩するが、風が冷たいために筋には引きつりを生じることが多い。運気論で厥陰肝木が司天に入っているためであろう。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』248 離合哀楽
連載『汗とウンコとオシッコと…』248 離合哀楽
2025.04.10
今年は3月の半ばに寒波があり、梅が散りきらずに、下旬に夏日を迎えたことで「三春」を見ることができた。「三春」とは梅・桃・桜の花が一度に咲き誇り「三つの春が同時に来る」という意味だが、雪柳やモクレンの開花も早い。下を向くと薄紫のハナニラやハコベの花を認め、木々は早くも新緑を芽吹き木象火象の挟雑をみるような状態だ。そんな中、肺の病の咳嗽が加わると脈は寸関尺に満たない短を現し、『難経・五十難』の「賊邪」系となり、早く治してしまわなければ次々と崩れていく状態に陥るのである。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』247 降量不足
連載『汗とウンコとオシッコと…』247 降量不足
2025.03.10
例年のごとく到来する建国記念日前後の寒波と、3月始めの寒の戻りがあったが、今年はその間が暖かすぎる。いつもより早くホトケノザの花が咲き、寒の戻りの時にはウグイスが鳴き出した。動植物の移り変わりがスーパーマーケットの商品のごとく活発で、人体では、循環器に負担がかかりやすくなる。「THE春の病」というものが少なく、咳嗽が絡んだり、身熱が絡んだりとややこしい。逆に経絡に投射して、あっちこっちが痛いという人の方が治しやすいのだ。
70代前半、腰と左下肢の痛みが取れず、左肩も痺れるような痛みがあるという中肉中背の女性・中川さんが来院した。不安感が強く、くどくどと症状を訴えた。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』246 止まらぬ咳嗽
連載『汗とウンコとオシッコと…』246 止まらぬ咳嗽
2025.02.10
1月は秋桜やホトケノザの開花や、花粉の飛来と、季節のグローバル化を見たわけだが、立春を過ぎたころに大寒のごとき寒波が訪れた。現在は温暖化の影響により、60年ターンで繰り返す運気論のようにはいかない場合もあり、臨機応変に対応しないと人の身体の変化を見落としてしまう。傾眠や帯状疱疹や、ギックリ腰など春には多い症状だが、皮膚の乾燥、下肢の浮腫みや怠さ、肩関節などの春らしからぬ症状も多く、一番厄介で治りにくいのが、咳嗽を伴う場合である。
「年末年始に寝込んでから、咳が止まらないんです。花粉も重なるのか鼻もグチュグチュするし、咳のしすぎで腰は痛いし……」 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』245 木の虚
連載『汗とウンコとオシッコと…』245 木の虚
2025.01.10
年末から風が強く、年末年始にホコリにさらされ、インフルエンザでもないのに発熱して寝込んだ人が多かったようだ。旧暦ではまだ年は越えていないが、今年は金運不及で、上半期は厥陰司天となり下半期は少陰君火となる。上半期は風が強く下半期は気温が下がりにくい年回りで、金運不及故に土地の水が抜けにくいようだ。そんな時は下腹部にうっ滞が生じやすいんだな。
30代前半、初産で24週に入った里帰り中の妊婦・今井さんが来院した。妊娠10週位の時も横転先生につわりを調整してもらい、今回もという具合だ。現在、北海道在住で、関西との気候の変化に戸惑いながらの3年が経とうとしていた。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』244 賊風
連載『汗とウンコとオシッコと…』244 賊風
2024.12.10
12月に入ってようやく寒くなり一気に紅葉が始まった。だが、日中は15度以上もあり、初めてモミジの紅葉と皐月・シャクナゲの開花を同時に見た。こんな気候は身体に実に堪える。こうなるとまず、衛気の発散が狂い血圧のコントロールが難しくなる。体幹血圧が上昇し、夕方急に眠くなったり、頭痛や眩暈、耳鳴がしたり、逆に朝に起きられず夕方から楽になるケースもある。上焦だけの回転が上がり身熱症状と膈下の厥冷症状が現れ、いわゆる木象と火象が冬になって暴れてしまう上熱下冷虚となるわけだ。
「以前にメニエールでお世話になりましたね」 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』243 不可入
連載『汗とウンコとオシッコと…』243 不可入
2024.11.11
11月に入り急に寒くなってきた。運気論では在泉に少陰君火が入るので暑いのは予想できたが先月はとにかく暑すぎた。初夏に開花するツユクサの花、夏に開花する朝顔とサルスベリの花が咲き続けていること、暑すぎるが故に香の薄い金木犀、うっとうしいブタクサの黄色い花。初夏と夏と秋が混在し、見たことのないコラボだった。
このようなスリーシーズンにまたがる季節は、内熱して咳嗽を伴う病が多かった。これからは恐らく、表面が冷えて内熱が身体に悪影響を及ぼし、関節の腫れや痒みなど風湿にまつわる病が現れていくことであろう。
20代後半の色の白いやせ型の女子が来院した。久しぶりの来院だ。何でも結婚して妊娠したらしく、とにかく悪阻が酷い。ただでさえ痩せていたのに体重が40㎏を切り、何を食べても飲んでも吐いてしまうという。週数は12週で、体重が5㎏減り、ブドウ糖点滴をして何とか保っている状態だ。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』242 残存
連載『汗とウンコとオシッコと…』242 残存
2024.10.10
今年は「暑さ寒さも彼岸まで」とはいかず10月もまだ夏日が続く。空は高くなりスジ雲が見られるものの時折鉛色の雲が湧き上がり局所で雨を降らせる。暖かい空気は上空に昇る途中で止まってしまい、高層の冷気が蓋をするような状態となっている。
運気的には、天の六気の客気が少陰君火に入るので太平洋高気圧の勢力が強く、台風が大陸側に流れてしまうのは『素問』の通りなのだが、暑すぎる。この残暑がどう影響するかの一つの例がここにある。
歳の頃は40代後半、高校生と中学生の2人の男子の母親、直江さんが来院した。ぽっちゃり体型で身長は普通くらい。食べ盛りの男子の夜食に付き合わされて、余剰に食べてしまう母の姿が垣間見える。
彼女は7月前半に新型コロナウイルスに感染し、その時は大きな発熱もなく早い目に症状が緩解したが、咳をし過ぎて肋軟骨を痛め、痛んでどうしようもないと来院したのだ。
整骨院でテープやサポーターをしてもらってはいるが根本的な咳が止まらず、咳止めも全く効果がないということであった。
「他の症状として暑さ寒さが繰り返したり、夜中に咳が多かったりとかはあるんかい?」
と横転先生が脈を診ながら問う。
川端が腕を組み「温瘧、温瘧」と頷きながら悦に入っている。
「ホットフラッシュみたいなんは有りません。時間的には夜が多いですけど、時間はあまり関係ないような……。咽喉の奥が乾燥し出すと、空咳が出だして、痰がゴロっと出ればしばらくはマシなんです」
「ほ~う、なるほど。オシッコの量は比較的少ない方なんかな?」
「子どものころからトイレの回数は少ない方で、これが普通と思ってるんですが」
と直江さんが答える。
「咽喉の乾燥を感じる時は、食後しばらくしてからか、はたまた、子どもを怒ったり時間に追われたりと焦っている時とどっちが多いんや?」
と横転先生。
「時間的に焦って、夕食を作りかけた時が多いかもしれません」
横転先生は「よし、分かった」と川端に振り向いて「川端氏、これは温瘧に非ずだ。わしも一瞬、温瘧からの咳嗽をよぎったが陰虚型や」と判断の誤りを指摘した。
「咳嗽は治るが3カ月くらい見てくれ。今日で7割緩解するが、残りはじんわりとしか治らないんだ。漢方薬を使っても同じくらいかかるわ。咳が緩解すれば肋骨の痛みも同時に緩解してくる。それと夜に子どもと食べる夜食を止めてくれ。あれが、治りを遅らせる一番の原因や」
と横転先生。
直江さんは「痩せろということですか……」と顔を赤らめた。
【連載執筆者】
割石務文(わりいし・つとむ)
有限会社ビーウェル
鍼灸師
近畿大学商経学部経営学科卒。現在世界初、鍼灸治療と酵素風呂をマッチングさせた治療法を実践中。
そのほか勉強会主宰、臨床指導。著書に『ハイブリッド難経』(六然社)。
連載『汗とウンコとオシッコと…』241 決壊
連載『汗とウンコとオシッコと…』241 決壊
2024.09.20
星飛雄馬の消える魔球の如き台風10号の蛇行により長雨が続き秋雨前線を刺激する。土運太過の今年は、高い湿度と日中の気温の上昇が激しく身体を蝕む。発汗が上手くいかずに熱がこもれば熱中症に至り、身体から水が飛ばされると高齢者では軟部組織の水が枯渇して圧迫骨折や関節の水枯れが生じる事例をよく耳にする。また元気な人では太陽経の水が少なくなり頸部や肩関節の痛み、また仙腸関節にギックリ腰様の痛みが現れ出した。残暑は厳しいが、秋の病も増えてきた。運気論的には下半期は比較的気温が高そうではある。
70代前半の慶田さんが来院している。既往歴は胆嚢の切除。火照りを訴えることが多いが、急に寒さを感じる寒熱往来様の自律神経の乱れもあり、右肩が痛むという。少陽胆経上には痛みは無く、急に甲状腺が腫れてバセドウ病かというような診断が付き、やや眼圧が高いと来院した。今回は2回目で、触診レベルではやや甲状腺の腫れも治まったようではある。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』240 Triple heat
連載『汗とウンコとオシッコと…』240 Triple heat
2024.08.09
7月後半から、秋の気配が忍び寄るようになった。日中は殺人的な暑さではあるが、明け方はすっかり涼しい。山に入れば7月半ばから虻が飛来し、最近は夜の野菜の水の吸い上げが少なく夜露を感じさせるような空気が漂う。今年は土運太過なので土地に含有する水が多いために雲の発生が多いようだ。
このような気温の時は、暑さが酷いのにもかかわらず、身熱の反応より下肢に障害が現れやすく、浮腫みや引きつり、痺れが多く現れ、脱力して動けなくなる場合もある。そのような人は決まって過食系の人が多いのだ。
常は川端が担当している70代後半で小柄な女性の谷村さんに、たまたま横転先生が当たることになった。谷村さんは、狭窄症により下肢神経症状が現れ痺れや脱力を訴えていた。糖尿があるにもかかわらず食べるのが好きで、注意されても饅頭を食べては具合が悪くなるということを繰り返していた。
「婆さん、足の具合はどうや。痺れはマシになったか」
と横転先生が言う。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』239 OUT OF
連載『汗とウンコとオシッコと…』239 OUT OF
2024.07.10
極めて遅い梅雨入りだったためか、晴れ間が少なく雨が降り続く。温暖化が問題になる前は、梅雨と言えば、シトシトと肌にへばりつくような糠雨が多かったが、最近は線状降水帯を形成して災害レベルのドカ雨を降らせるので、全くもって辟易する。
このような気圧の低い時が続くと血管は膨張し、圧力が無ければ弛緩し、モノが血管から漏れ出ていく。発痛物質を漏出させれば遊走性の痛みを発現し、水を漏出させれば浮腫みを形成し、炎症を起こすことが多い。特に膏肓周囲に浮腫みを形成すると、肩甲背動脈を圧迫して、上腕回旋動脈や上腕深動脈の圧を上げて怒張し、頸椎ヘルニアでもないのに痺れることが多い。また、元々関節リウマチなどがあると関節は腫れやすいし、痔持ちでイボ痔であれば肉芽組織が外に出やすく、薬店ではこれらの薬の販売量が増えているとの情報もある。
30代半ばで色白の下半身がしっかりした女性、石川さんを川端が治療していた。主訴は眩暈や頸部の後屈痛で、2年前に子どもを出産してから何かと不定愁訴が現れるようになった。産後不良は無かったが、断乳してからしばらくして、排卵期に身体がだるくなり、食欲不振や乳房の痛みが激しくなり、腰もだるいと言うのだ。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』238 溢泌(いっぴつ)
連載『汗とウンコとオシッコと…』238 溢泌(いっぴつ)
2024.06.10
今年は「ザ・五月晴れ」といった過ごしやすい日が少なかった。また、季節外れの暑さや涼しさがあり、見上げるとスジ雲が漂い秋の空のようになっている。
今年の司天は「太陽寒水」が入るので、高層の乾いて冷たい風が吹き下ろされやすい年回りだからだ。通常の夏モード(旧暦)で温められた海水と上空からの冷たく乾いた空気が触れ合うと、気化が激しく雲が増え、雨が多くなるのは当然だ。故に前半は涼しく暑さがずれるという状況になる。
これは気象庁の予報と大きく外れていないので、古代人の気象観察の力量には頭が下がる次第である。こうなると、痺の病が多くなり、今年は稼ぎ時という嫌な言葉が頭によぎる。
「2カ月前から右足の甲に痺れがあるんです。腰椎ヘルニアと診断されて、薬を飲んでいますがかえって悪くなっているような感じがして……」と訴えるのは馬場さんという50代後半の身体ががっしりした男性。中小企業の役員で奥様の紹介で来院した。腰椎ヘルニアの特異的な所見はなく、年齢的に肝数値は標準、糖尿もなく、健康診断でも比較的健康である。毎週ゴルフに行ってカートに乗らずに人生後半戦を謳歌していた矢先の話だと言う。
横転先生は「痺れているのは母趾側?」と問う。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』237 焼かれていく
連載『汗とウンコとオシッコと…』237 焼かれていく
2024.05.10
薄紫の藤の花が咲き、ピンクや濃い紫、白のツツジの花が咲き乱れ、新緑の芽が出た山の緑にコントラストを生み出してきた。光線が夏だ。この時期は気温の割に紫外線が強く、知らぬ間に肌が焼かれていく。
風が冷たく7月や8月のような、日焼けした感覚はあまりないが、やはり軽度な火傷ではあるので、口渇を生じ、尿が出にくくなる。そうすると腹の中には火傷を冷ますための水が過剰に停滞して、肌肉や表に影響し、四肢や関節に痛みを現す。甚だしければ、浮腫んで痛んで腫れる状態に陥るのである。
いわゆる、「痺」の病が意外に多くなるのもこの時期で、「湿邪」と認識しやすいのではあるが、熱を冷まさない限り「痺」の病の痛みが取りにくい時期なのだ。
4月に関東から関西へ移住した50歳の女性、沼田さんが来院した。何でも私立の小中学校の教員を指導するためにこちらに異動してきたと言うのだ。引っ越す前から右肩関節が痛み出し、仕事が本格的に始まったころには夜間痛まで現れ出したと言う。体格は一見、小顔で比較的痩せているが、下半身が比較的大きい。閉経後の、ホットフラッシュなど身熱を現すような不定愁訴はなかったものの、移住後は環境の変化や職場の問題とせわしい状態が続くと訴えていた。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』236 夏迫る!
連載『汗とウンコとオシッコと…』236 夏迫る!
2024.04.10
春の選抜高校野球で雪を見たのは人生で初めてだった。『素問・六元正紀大論』にある運気では春分周囲に寒の戻りがあるような記載があり、ドンピシャだと思いきや、3月末には夏日の到来だ。急に暑くなると分かってはいたが激しすぎる。寒の戻りの影響で桃の花が比較的長く咲いていたが、夏日の到来とともに桜だけでなくユキヤナギも開花して、桃色と白の色彩が何とも優しい雰囲気を醸し出している。
このような急激な変化は身体では火象が絡み出す。ちょっとしたことで、インフルエンザでもないのに、頭痛や風邪症状が現われ、身熱、心煩、動悸、過去に痛んだ所が再び痛み、発汗が上手くいかなければ腫脹や痒みなどの症状を引き起こす。元々の素体や体格に、火象が加わると、不定愁訴が増えるややこしい状態に陥るのだ。
20代後半、やや小柄な看護師の女性が来院した。過去に手術をしなければならないほどの仙骨嚢腫を、横転先生が切除しなくてもよいレベルまで収縮させ神経症状が緩和した経緯がある。夜勤が週2回あり体内時計が落ち着かず、月経周期が乱れ婦人科疾患の症状が現れやすい。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』235 遅いが故に
連載『汗とウンコとオシッコと…』235 遅いが故に
2024.03.08
紅梅、白梅が散り、3月末に開花する遅咲きの梅が咲きだした。雪の少ない短い冬だったようだ。フキノトウは一気に顔を出し、ウグイスは泣き声の練習する間もないほど駆け足での春の到来だ。一カ月早い春は身体にどんな影響があるのか。夏の脈に近づくように緩んでくるのだ。最近は緩み、たるみの病が多く見かけられる。
特にエストロゲン過剰の女子は緩みのために不定愁訴が多く現れ、これも治療師をラビリンスに招き入れる原因にもなるのだ。
……
来院したのはやせ型で線の細そうな32歳の男性、安田さん。彼の細君は産後に横転先生に調えてもらった経緯があり、彼女に強く勧められ来院した。
主訴は心痛。半年前からチクチクする痛みがあるという。稀に不整脈が現れるが、労作性の反応は全くなく、気短や咳嗽もない。検査をすると心電図にやや異常があるが、今のところ大きな心配はないということで経過観察になった。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』234 優しさ故ドライ
連載『汗とウンコとオシッコと…』234 優しさ故ドライ
2024.02.09
本格的な冬の到来だ。大寒前から日本海側で雪が降りだし、太平洋側では北に向けば常に鉛色の雲が覆い被さる。シベリア寒気団の影響で北風や北西の冷たい風が多く、身体を芯から冷やしてくるのだ。太平洋側は日本海側で雪を降らせた後の乾燥した冷たい風が吹き下ろされ、身体をむしばむのだ。
また、機密性の高い部屋でのエアコンの温かい乾いた風も重なり、身体を乾燥させる。これが様々な変化を身体に引き起すのである。咽痛、唇の乾燥、目尻の荒れ等から始まり、夜に背中が痒くなったり、起床時に頸部が回らなかったり、便秘や切れ痔などの病、浮腫んでだるいなどの症状を多く見かけるようになる。
「先生、年末から右の背中が痛みだして、ここのところ、呼吸も苦しくて、肋骨のあたりが重く痛んで苦しいんです。医者は肋間神経痛だと痛み止めをくれたけれどぜんぜん効かなくて……」
と、はじめに譩譆から肝兪周囲を、続いて右不容から期門辺りをなでながらアラフィフの男性設計士・南さんが訴える。比較的大柄で、甘いものが好きだった彼を横転先生は運動で10㎏も落としてスレンダーにした経緯がある。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』232 涙の代わりに
連載『汗とウンコとオシッコと…』232 涙の代わりに
2024.01.10
去年は平均して暖かい冬であった。寒暖の差が激しく定点観測では寒い時もあったが、落葉が全国的に遅く、イチョウの葉が舞うのもずいぶん遅かった。
今年はどうなるやら。素問の運気論では、年始は比較的暖かく、春先、春分の日のあたりで寒の戻りがありそうではあるが、特に海流の動きが大きく偏差する海水温が日本海にも影響するので、大陸と日本海を隔てた本邦はどう変化が現れるか理論値では測れないところがある。まあ、ゆったり、まったりした季節の変化は少なくなっているということだけは、はっきりしている。このような季節は身体の気化が激しく、血管が弛緩し、『傷寒論』でいう中風系の病が多くなるのではあるが、それに反発して緊張し、却って身体がおかしくなる場合もある。
「先生、調子が悪くて……」
と訴えるのは56歳の長身で細身、色の白い女性の山田さんだ。
「下痢と便秘を繰り返して、身体もだるくて、胃カメラやら大腸の内視鏡も検査してもらったんですけど、何ともないんです。食事も食べたり食べなかったり、バラバラです」
と下腹部あたりをさすっている。 (さらに…)