連載『中国医学情報』143 高齢者の再発性アフタ性口内炎には薬物治療プラス円皮鍼治療ほか
2017.02.10
1042号(2017年2月10日号)、中国医学情報、紙面記事、
今回の内容
・高齢者の再発性アフタ性口内炎には薬物治療プラス円皮鍼治療
・腰椎椎間板ヘルニアの置鍼時間は15分
・高脂血症を伴う肥満症1528例の鍼灸治療
☆高齢者の再発性アフタ性口内炎には薬物治療プラス円皮鍼治療
浙江省杭州市中医院・金贇は、高齢者の再発性アフタ性口内炎で薬物治療とプラス円皮鍼治療を比較(上海鍼灸雑誌、16年10期)。
対象=同院口腔科の60例(男22例・女38例)、平均年齢63.5±9歳、平均罹患期間2.29±0.52年。中医学的には「陰虚火旺」。これをランダムに、薬物群・鍼群各30例に分けた。
治療法=両群とも5日間、朝晩歯磨き後、クロルヘキシジン含嗽薬(うがい薬)10mLを5分間。
鍼群―胃兪・腎兪・曲池・足三里穴に1日1回、左右交代で円皮鍼治療(6時間後に取る)。
評価法=中医学的症状には『中薬新薬臨床研究指導原則』の評価法―主症状:軽度2点・中等度4点・重度6点、二次症状:無0点・軽度1点・中等度2点・重度3点、痛みにはVAS(視覚的アナログスケール)を採用。
結果=5日間の治療後、鍼群―臨床的回復10例・著効13例・有効6例・無効1例・総有効率96.7%、薬群―臨床的回復6例・著効9例・有効10例・無効5例・総有効率83.3%。また中医症状とVASでも鍼群が良く、薬群と有意差あり。
☆腰椎椎間板ヘルニアの置鍼時間は15分
中国では近年、各種疾患に対する置鍼時間の比較報告が増えている。北京中医薬大学東直門病院・侯学思らは、腰椎椎間板ヘルニア患者に対する3つの置鍼時間の効果を比較(鍼灸臨床雑誌、16年8期)。
対象=同院鍼灸科外来患者99例、これをランダムに1群(置鍼時間15分)・2群(同30分)・3群(同45分)各33例に分けたが、6例(1群2例・2群1例・3群3例)の脱落者が出て最終的には93例(男58例・女35例)。平均年齢約53歳。
治療法=<取穴>局所―患部椎体直上の椎体の棘突起下の督脈・夾脊穴および足膀胱経第1線のツボ。遠隔部―下肢症状が後側で顕著な場合:委中・承山・崑崙穴、同症状が側面で顕著な場合:環跳・陽陵泉・足臨泣穴、いずれも左右。<刺鍼方法>患者は仰臥位か側臥位(患側上)、1.5寸(0.25×40mm)の毫鍼で足臨泣・崑崙穴に直刺13~20mm、その他は直刺13~25mm、得気後に置鍼(静留鍼:置鍼中操作なし)。各群とも腰部を遠赤外線照射30分。1週2回で10回。
評価法=主にマックギル疼痛質問票、VAS、二次的にローランドモリス障害質問票など。
結果=各群の治療前後は各評価法で有意差ありだが、3群間の比較には有意差はなし。腰椎椎間板ヘルニアでの置鍼は、15分で効果が得られるが、時間を延長することが効果を向上させるとは言えない。
☆高脂血症を伴う肥満症1528例の鍼灸治療
南京中医薬大学・原萌謙らは、高脂血症を伴う肥満症の鍼灸治療を報告(中国鍼灸、16年8期)。
対象=同大外来部の1528例―男207例・女1321例、16~72歳、罹患期間0.5~56年。いずれもこれまで関連治療を受けなかったか、受けても無効。
治療法=<取穴>①「肝鬱脾虚型」:曲池・合谷・期門・章門・血海・足三里・豊隆・三陰交・太衝・太白・膈兪・肝兪・脾兪穴、②「脾腎陽虚型」:中脘・中極・関元・豊隆・飛揚・陰陵泉・太白・太渓・脾兪・腎兪・命門穴、③「脾虚湿阻型」:中脘・天枢・気海・陰陵泉・足三里・豊隆・三陰交・衝陽・太白穴、④「痰湿内阻型」:太淵・合谷・中脘・天枢・豊隆・太白・太渓・足三里・脾兪・腎兪穴、⑤「胃腸腑熱型」:曲池・前谷・二間・天枢・豊隆・上巨虚・足三里・下巨虚・内庭穴、⑥「陰虚夾瘀型」:曲池・合谷・太淵・神門・血海・陰陵泉・豊隆・足三里・三陰交・太渓・太衝・太白・膈兪・肝兪・脾兪・腎兪穴。<操作>0.3×40/50mmの毫鍼で得気後置鍼30分(10分ごとに平補平瀉法1回)、②「脾腎陽虚型」③「脾虚湿阻型」④「痰湿内阻型」には気海・足三里穴に灸頭鍼20分。治療は2日1回連続3カ月。治療中は薬物治療なし。
結果=肥満度別の減量効果―軽度466例:回復428例・著効19例・有効16例・無効3例・総有効率99.4%、中等度502例:回復78例・著効353例・有効52例・無効19例・総有効率96.2%、重度560例:回復2例・著効430例・有効97例・無効31例・総有効率94.5%。高脂血症に対しても効果があり、やはり軽度肥満者が最も効果的であった。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。