【無料レポート】大阪府鍼灸師会学術講習会 発達障害への鍼灸の可能性

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投稿日:2022.08.17

あはき

 公益社団法人大阪府鍼灸師会の令和4年度第2回学術講習会が、7月10日に開催された。大阪府鍼灸師会館(大阪市北区)及びオンライン開催で全国から142名が参加した。

発達障害の「生きづらさ」と鍼灸に対する期待

中村元昭先生

 中村元昭氏(昭和大学発達障害医療研究所副所長)は、『発達障害を理解しよう』とのテーマで、発達障害の種類とその特徴を概説。特に、コミュニケーションやイマジネーションが苦手な自閉スペクトラム(ASD)と多動が目立つ注意欠如・多動症(ADHD)を詳しく取り上げた。

 ASD特有の行動例として、子供がグループで遊ぶ様子を示した。通常発達の子供や目が不自由な子供のグループは、仲間と笑い合い、おもちゃを活用し遊ぶのに対し、ASDのグループはそれぞれが単独で、おもちゃの形状には関心を示したが、見立て遊びなどを楽しむ様子はなかった。中村氏は「社会的コミュニケーションの問題が見られる。言語でなく、人間交流の問題だと分かる」と説明した。

 ADHDについては、患者に世界がどう見えているかを知るヒントとして、注意欠如の症状が強い患者が、画面に映し出された点をどう目で追うかを調べた検査結果を示し、移動する点に目が追いつけず、視点がゆらぎ不安定になっている様子を解説した。これらの特徴は、子供の頃は個性だと見過ごされがちだという。そして、進学や就職などで協調を要求される世代になると、つまずいたり無理をしたりと生きづらさを実感し、発達障害に気づく人も多いと説明。また、症状は多岐に渡るとし、障害の名前でなく症状に合わせた支援の必要性を説いた。

 中村氏は、鍼灸に対する期待として、西洋医学では十分に対処できていないという感情コントロールの一症例、フラッシュバックの克服を挙げた。「患者の周囲の人の心身にも大きな負担がある」とも述べ、患者に関わる人に対する鍼灸の必要性も強調した。

東洋医学的な身体所見を数値化するK式鍼灸スコア

石井弦氏先生

 石井弦氏(はりとお灸日月堂院長)は『K式鍼灸スコアの使い方』と題した講義と実技供覧を行った。東洋医学的な身体所見を数値で確認できるK式鍼灸スコアは、精神活動への影響を重視して、腹診や経穴の触診、問診を行い、数値化した結果を元に鍼灸施術を施す「Kiikoスタイル」を参考に、臨床・研究を重ね完成。特にうつ病患者への有効性が期待されている。

 実技では、圧痛所見の取り方を紹介。例えば、副腎スコアの測定箇所として、盲兪、然谷を挙げ、押圧して、被験者に痛みの度合いなど尋ねながらスコア付けする方法を披露した。また、頭部瘀穴スコアの測定箇所として挙げた百会は、圧痛に加え、周囲より熱を持っているかの熱感や、むくみのような感触がないかの触感をスコア付けする方法なども示した。

 全身に位置する測定箇所のスコア測定後は、3つの基本の施術「胃の気処置」「副腎処置」「免疫処置」を行うと説明。所定の経穴に鍼を施すほか、治療穴を押圧しながら測定箇所で感じる圧痛の度合いを確認し、刺鍼箇所や角度を調整する方法を紹介した。

 抜鍼後に再度スコアを測定し、施術前と比較。数値の改善しない部位は、的を絞った施術に移り、改めてスコアを確認すると解説し「投薬など治療の影響により、はじめのスコア測定では感覚が鈍く、施術後の測定で感覚が正常に近づき、スコアが上がる場合がある」と注意点を述べた。

あはき

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