Q&A『上田がお答えいたします』 厚労省が行き過ぎた患者照会に苦言を呈した?
2018.06.25
Q.
厚労省から、「受診の抑制につながるような不適切な患者照会は慎むように」との事務連絡が出されたそうですね。
A.
5月24日付で厚労省から発出された柔整療養費の通知は膨大な量ながら、私たち柔整師にとってはあまりうれしくないものばかりでした。料金改定もプラス改定ではありましたが、打撲・捻挫・挫傷の料金は引き上げられなかったので、さほど意味がありませんね。そんな中で、同日付で発出された「柔整療養費の被保険者等への照会について」と題する事務連絡は、意味のあるものだといえるでしょう。健保組合を中心に保険者は独自に、あるいは外部委託点検業者に委託契約して、嫌がらせとも受け止められるほどの受診抑制を行っており、それが患者照会のやり方からは見て取れます。今回の事務連絡はこれを戒めるために、保険者に対して運用上の注意をしてくれたものです。
そもそも患者調査は、不正の疑いのある施術に加え、多部位・長期・頻度が高い傾向がある施術について、実際に施術を受けているのかどうか、そして外傷によるものなのかどうかを確認するために行うものです。ところが実際は、照会すべき理由が無いもの、わずか月1回とか1部位のみの請求分にまで照会を行うとか、支給申請書の全件について文書回答を求めるなど、明らかに嫌がらせや受診抑制のためとしか思えない患者照会が後を絶ちません。そこで、今回の事務連絡が発出されたのです。
事務連絡では、単に受診抑制を慎むことだけではなく、返戻、照会の要否、審査、支給または不支給の決定などについては、外部委託することが適当ではないことも注意が促されています。さらに厚労省は、保険者からの文書照会に関する専用の相談窓口を設けました。同省のホームページにアップされた「不適切な被保険者等への照会の連絡票」という様式を使用して、行き過ぎた患者照会の具体的事例を報告することができます。漏れの無いよう、こまめに情報提供をしていきましょう。
ただ、報告が挙がったところで保険者に対する罰則は無いので、不適切な患者照会を是正する実効性は無いかもしれません。それでも、厚労省が出してくれたこの事務連絡は私たちにとって喜ばしいものに違いありません。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。