連載『織田聡の日本型統合医療“考”』61 鍼灸の受療率の向上には既存のイメージ払拭を
2017.02.10
鍼灸の受療率が5%を切り、国民の認知度も下がり、これをどのように上げていくのかというのは、大きな問題だと思います。なぜ、受療率が上がらないのでしょうか。死活問題である受療率の向上に関しては、私なんかより読者の皆さんの方が熟慮しきっているとは思いますが、私の見解を述べたいと思います。
私が外来診療をしている時に、患者さんに鍼を薦める機会は少なくありません。しかし、受療までたどり着くのには大きなハードルがあります。
①鍼灸のイメージ―「鍼? 痛いんでしょ? 怖いから私は結構です」という反応が非常に多いです。「鍼灸=皮膚に鍼を刺す=痛い」というイメージが強く根付いているのを実感します。
②情報の不足―鍼灸院の玄関の入り口の敷居の高さを感じます。中がどうなっているのか分からない。何をされるのか分からない。患者情報保護の観点から、受療中の様子が外から見えるのは問題がありますが、患者さんの中には、鍼灸院がどんな雰囲気で、何が行われているのか分からないとの不安を理由に私の提案を断る人もいます。
②については、インターネット上に様々なサイトが立ち上がり、情報発信がされるようになってきました。この不安も徐々に減りつつあると思います。重要なのは、①だと感じています。もう少し「鍼灸のイメージ」が高まると、私の外来患者さんへの説明も楽になるのになぁと思うのです。
この「鍼灸のイメージ」改善については、「痛い」というイメージの払拭以外にも、改善点があるように考えます。事業が顧客ターゲットを絞ることは非常に重要です。既に「腰痛専門」「美容」などと絞った治療を展開している治療院も見受けられます。フォーカスを絞って営業をかけることは大切なのですが、その絞り方の再考が必要ではないかと思います。
「鍼灸あん摩マッサージ」や「接骨院」というと、「痛み」や「しびれ」などの整形外科領域の疾患が大前提のイメージがあります。保険診療をしているところは、神経痛・関節リウマチ・腰痛症・五十肩・頚腕症候群・頚椎捻挫後遺症の病名が必要ですから、なおのこと、こういう疾患へのイメージが鍼灸について回ります。私は、「鍼灸=整形外科領域」というイメージを壊せないかと考えています。鍼灸には、もう少しトータルなヘルスケアを統括的に提供する能力があるはずです。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。