連載『織田聡の日本型統合医療“考”』82 インドの統合医療について
2017.12.25
インドには、3年前の2014年11月9日に「AYUSH省」という国の組織ができました。AYUSHとは、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ(Ayurveda)、ヨーガ(Yoga)、ユナニ医学(Unani)、シッダ医学(Siddha)、ホメオパシー(Homoeopathy)の頭文字をとった言葉で、これ以外にナチュロパシー(Naturopathy)やチベット医学(SOWA- RIGPA)を加えた、インドで行われている補完医療の教育や研究を統括する省庁です。そして国家戦略として、特にアーユルヴェーダの情報発信を海外に行っています。中国が中医学を国家戦略的に海外へと情報発信し、中医学を世界標準化しようと画策しているのと同じように、インドも世界にアーユルヴェーダを広めようと、「国家」として力を入れ始めたというのは注視すべきことです。
一方、日本は自国の伝統医学の価値を世界に発信することが上手にできていないようですね。現在、JLOM(日本東洋医学サミット会議)が中心となって、ISO(国際標準化機構)、WHO問題に対峙しています。世界の伝統医学の標準化を行おうというISOでは、中国が国家戦略的に資本と人材を使って、ロビー活動も活発に行い、標準化作業が中国にとって有利にまとまるように力を入れています。日本はと言えばようやく伝統医学に関する国の窓口ができた程度で、中国と対等に渡り合えるような戦略も不在です。
私は先日、AYUSH省の国家間のMOU(了解覚書)を取り扱うビネイクマル・アワテ氏と親しくなり、インドの最近の伝統医学への政策について色々と伺いましたが、今後の日本の国家戦略を構築する際に、非常に参考になるのではないかと感じました。
この出会いの中で、来年の3月24日、25日に、鍼灸などの日本の伝統医学が、世界で生き残りをかけた戦略を練るための、オープンディスカッションの場を「東京」で設けることになりました。しかも、インド大使館もバックアップして下さることになりました。ぜひ、来年のカレンダーにチェックを入れておいてください。
2017年も暮れが押し迫ってきましたね。東京へ出てきて5年経ち、今年1年で私の周りの環境は激変しました。皆さんはいかがでしたでしょうか。2025年問題が顕在化するまで、あまり時間がありません。来年も大きく前進できるような年にしたいです。皆さん、良いお年をお迎えください。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。