『医療は国民のために』270 法改正による現物給付の獲得に柔整・あはき業界はこだわれ!
2019.04.25
今回は「平成」を締めくくるに当たり、柔整・あはき療養費の世界で数多くの仕事をこなしてきた経験をもとに、私見を含めて現状を整理したいと思う。
まず、平成最後の年である本年1月より、あはき業界の長年の願いであった「受領委任の取扱い」が始まったが、これが思ったほど「大喜び」となっていない。その理由は、受領委任参加の判断を保険者の自由裁量とされたため、健保組合をはじめ、多くの保険者が償還払いへ移行してしまったことが大きい。また同時に、口頭同意が廃止されて必ず医師の同意書の添付が求められるなどの不正対策も図られ、「受領委任導入はそんなに喜ぶべきことではない」と思われたからだろう。ただ、それでも受領委任が導入されたことで、保険者の支払方法が柔整とあはきで共通したものとなったのは〝ご同慶の至り〟といっても良い。
だからこそ、私は次のステップとして、「法制化に基づく現物給付」にこだわるべきだと考える。現物給付に比べれば、受領委任もしょせんは施術管理者が療養費の受取代理人になっただけの取り決めであり、施術管理者が不支給処分に納得できないと思っていても、審査請求さえできない。また、保険者から既に支給済みの療養費の返還を求められた時も、裁判を提訴することもできない。療養費では被保険者(国保は世帯主)が帰属主体であるからだ。多くの施術者から、「なぜ施術者側が審査請求できないのか」、「なぜ私が裁判に訴えることができないのか」との質問をよく受けるが、施術者は療養費の受け取りを受任しただけであって当事者ではない。法律上の立て付けでこうなっているのだ。だから、大阪市と裁判闘争になり、その争点となった、過誤調整の名による相殺処理は「法令違反」と判断されたのだ。
そんな中、4月3日の厚生労働委員会で衆院議員の大西健介氏が、「柔整療養費」、「はり・きゅう療養費」、「あん摩マッサージ療養費」も、入院時食事療養費や保険外併用療養費などと同様に、健康保険法上に追記してはどうかといった要望を述べた。保険者が被保険者に代わって施術所にその費用を直接支払うこと、つまり現物給付化されることが、国会の委員会の場で言及されたのは非常に意味があることだと言わざるを得ない。
受領委任については、「実質上は現物給付化されている」とよく言われるが、実は施術管理者は帰属主体ではなく、そのため当事者になれないという不都合が常に付きまとってきた。令和の時代には、法制化された柔整・あはき療養費が、現物給付として施術者に支払われることを心から願う次第だ。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。




