『医療は国民のために』268 あはき受領委任の「患者押印」に関する事務連絡の意図とは?
2019.03.25
今年から導入されたあはき療養費の受領委任取扱いは、柔整のコピーであるといっても過言ではない。施術管理者を設けたり、地方厚生局長と県知事とその施術管理者で個別契約を結んだりと大枠は同じだ。しかし、柔整で失敗した点は改めようと仕切られており、その最たるものは「保険者権限の強化」だ。受領委任に参加するもしないも保険者の勝手となり、「これが療養費の原理原則だ」などとふざけたことを言っている者も少なくない。
そんな中でも、今回は「申請人欄の患者の署名・押印」について触れたい。柔整では、患者が自筆で署名できない場合、柔整師が代筆して患者に押印してもらうとしか決められていない。ただ、最近の保険者は、署名を患者本人が行ったのかどうかを確認するため、「署名欄はあなた(患者)がサインしましたか?」と字体まで確認し始めている。その結果、患者から求められたから施術者が代筆して押印したという請求が増えた。とはいえ、保険者は、これらの請求のうち相当数は患者押印を柔整師側で行っているだろうと推察している。このような反省を踏まえ、あはき受領委任では、押印は施術管理者を排除する形で仕切られた。つまり、患者から依頼を受けた場合や患者が記入できない際、施術者が代理記入することはあっても、押印については患者本人かその家族が行う。施術管理者は押印を求める立場であるから押印しないとしたのだ。このことは平成30年12月27日付の事務連絡の「問62の答え」で展開されており、
①被保険者等と患者が別人の場合、被保険者等から許可を受けた者(申請書の確認を行った患者の家族など)
②被保険者等と患者が同一人の場合であって、患者の症状より署名又は押印ができないなど真にやむを得ない場合、患者(被保険者等)から許可を受けることが可能であれば、許可を受けた者(申請書の確認を行った患者の家族など)
③②によることが困難であり、患者の症状より患者(被保険者等)から許可を受けることができない場合、家族や後見人などの法定代理人(又は任意代理人)
④③によることが困難な場合、法定代理人(又は任意代理人)から許可を受けた者(申請書の確認を行った患者の家族など)
と、患者とその家族におおむね限定している。仮に施術管理者が押印してもよいというのであれば、「施術管理者を含む」とか「施術管理者でも差し支えない」との記載があるところだが、どこにも無い。「施術管理者には絶対に押印させない」との強い意思が込められていると、この事務連絡から読み取らねばならない。
しかしながら、そんなに神経質になって仕切らなければならない問題なのか、少々疑問だ。許可をもらうべき家族が遠隔地にいる場合もあり、杓子定規で考えられるわけはあるまい。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。




