連載『食養生の物語』56 ショウガの応用
2018.01.25
鍋物の美味しい冬、薬味におろしショウガを使うと、一段と心身が温まります。ただ、最近、患者さんから「生姜紅茶をずっと飲んでいるのに、冷えが解消されない」という相談を立て続けに受けました。どんなに良いと思えるものでも、効果がない時は疑ってみる。治療であれ養生であれ、忘れてはならないことです。
確かにショウガには、身体を温め、細胞の新陳代謝を促し、免疫力を上げる作用があると確認されています。 (さらに…)
連載『食養生の物語』56 ショウガの応用
連載『食養生の物語』56 ショウガの応用
2018.01.25
鍋物の美味しい冬、薬味におろしショウガを使うと、一段と心身が温まります。ただ、最近、患者さんから「生姜紅茶をずっと飲んでいるのに、冷えが解消されない」という相談を立て続けに受けました。どんなに良いと思えるものでも、効果がない時は疑ってみる。治療であれ養生であれ、忘れてはならないことです。
確かにショウガには、身体を温め、細胞の新陳代謝を促し、免疫力を上げる作用があると確認されています。 (さらに…)
連載『食養生の物語』55 ハクサイで芯から温まる
連載『食養生の物語』55 ハクサイで芯から温まる
2017.12.25
鍋物の美味しい季節です。鍋物といえばハクサイですね。ハクサイは英語ではChinese Cabbage(中国のキャベツ)と呼ばれています。「西洋のキャベツ、東洋のハクサイ」と並び称されることもあり、使い道が幅広く栄養も豊富な野菜です。
ハクサイは、実は元々野生植物ではありません。カブと漬け菜(つけな:しろな・チンゲン菜のような葉物)類が自然交雑して生まれたもので、栽培種としてのハクサイの原形は中国北部で生まれたものだと推定されています。日本に入ってきたのは明治時代になってからで、広く普及したのは大正時代と言われています。成長するにつれて根に近い白い部分が太く伸びていくことから、「白菜」と呼ばれるようになったとか。朝鮮半島にハクサイが持ち込まれたのもこの頃で、それから栽培法が確立され、朝鮮総督府によって朝鮮半島全土に普及し、白菜キムチの誕生につながったようです。
旬は、11月下旬から2月ごろにかけて。葉の周囲がちりめん状に縮れて互いに抱き合うように重なり合い、冬の冷え込みとともに巻きが強くなっていきます。寒さという陰性の中で求心力という陽性の力が強まる様子には、自然界のバランスが現れています。霜が降りるころには繊維質が柔らかくなり甘みも増して、食べ頃を迎えます。ハクサイは良質な植物性タンパク質、食物繊維が豊富で、精進料理では白菜と豆腐、大根と合わせて「養生三宝」と呼ばれるほどです。冬場には不足しがちなビタミンCやカルシウム、カリウムなどが豊富なほか、食物繊維が多く含まれているために整腸・緩下作用もあります。そのことから、肉料理であるすき焼きなどに用いられるようになったのでしょう。また、キムチを見かけることも今や珍しくなくなりましたが、日本でハクサイの漬物と言えば、やはりぬか漬けですね。ぬか漬けは、ハクサイに豊富に含まれる食物繊維、ビタミンCを保つだけでなく、発酵により乳酸菌が増え、ぬかから溶け出したビタミンB?、B?も多く含んでおり、整腸作用を強化し、肌の調子を整えてくれます。
繊維が柔らかく、味はクセがないので、どんな料理にも合う野菜です。生のシャキッとした食感もさることながら、火を通した時に出るトロッとしたのも美味しくいただけます。外側の葉は生のままでサラダにするか、煮物、お浸し、漬物などに。中ほどの葉は鍋物などでゆっくりと火を入れると柔らかくなるほか、八宝菜などの炒め物にも合います。炒め物にする時は、水気が出て料理が水っぽくなりやすいので強火で一気に炒めましょう。芯には旨味があるので、スープや出汁に使うのがオススメです。ハクサイの芯から水分に溶け出した栄養分を丸ごといただいて、身体の芯から温まりましょう。
【連載執筆者】
西下圭一(にしした・けいいち)
圭鍼灸院(兵庫県明石市)院長
鍼灸師
半世紀以上マクロビオティックの普及を続ける正食協会で自然医術講座の講師を務める。
連載『食養生の物語』45 『根も葉もカブ』
連載『食養生の物語』45 『根も葉もカブ』
2017.02.25
春の七草といえば、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。このうち、スズナはカブの葉、スズシロは大根の葉のことです。今回は、カブについてお話しましょう。カブは、カブラ大根とも呼ばれる根の部分が淡色野菜である一方、葉はスズナまたはカブラナとも呼ばれ、緑黄色野菜として、根と葉が別の野菜として分類されています。地中海原産とも中央アジア原産とも言われていますが、日本にも弥生時代には伝来していたようで、『古事記』にも記載があることから、遅くとも7世紀には栽培されていたようです。痩せた土地でも育ち、根も葉も食べられることから、広く普及していったのでしょう。
根には消化酵素のジアスターゼやアミラーゼが含まれ、炭水化物の消化を促すので、食べ過ぎ・飲み過ぎからくる胃腸の不調を整えるのに一役買います。他にもビタミンCやカリウム、抗ガン作用が強いとされるグルコシノレートも含まれています。葉はというと、ビタミンA、B1、B2、Cが多いほか、カルシウム、鉄分、カリウムも豊富です。特にカルシウムは、全ての野菜の中で最も多いと言われるほど。なので、おひたしや浅漬けにしたり、細かく刻んで味噌汁に入れたりして、毎日でも食べたい野菜です。カルシウムの働きで骨・歯を丈夫にするだけでなく、春の始まりに起きがちなイライラ・不安・不眠や自律神経失調症などの予防・改善が期待できます。また、カブの葉には炎症や熱を鎮める働きがあり、特に乳腺炎には軽く塩もみしたものを貼りつけるお手当ても伝わっています。
カブは大抵、葉付きで売られていますが、そのままにしておくと水分や栄養分が葉に奪われてしまうので、買ってきたらすぐに切り分けるといいでしょう。葉はしおれてしまう前にできるだけ早く使い、根も1週間以内には食べたいところです。また、カブといえば、千枚漬がよく知られていますね。作り方は、薄く切ったカブに全体の3%程度の塩をまぶし、昆布と唐辛子を入れてよくかき混ぜてから酢をかけ、ガラス容器などに入れて寒いところに半日ほど置くだけ。その後は冷蔵庫で保存し、4、5日程度で食べきるようにしましょう。漬物にすることでしんなりとしてたくさん食べられますし、パリパリとよく噛むことで唾液の分泌にもつながります。
食養生の「一物全体」は、自然界にあるがままの状態でいただくことが最もバランスが良いという教えです。根も葉も食べられるカブで、胃腸も自律神経のバランスも整えて、春からの活動期に向かいたいものですね。
【連載執筆者】
西下圭一(にしした・けいいち)
圭鍼灸院(兵庫県明石市)院長
鍼灸師
半世紀以上マクロビオティックの普及を続ける正食協会で自然医術講座の講師を務める。
連載『食養生の物語』44 『一本でもニンジン』
連載『食養生の物語』44 『一本でもニンジン』
2017.01.25
英語でキャロット(carrot)といえば、ニンジン。キャロットという言葉は、栄養成分であるカロチンが語源なのだとか。それほどニンジンに多く含まれるカロチンは、活性酸素を除去し、免疫力を高める成分で、1982年に米国科学アカデミーで「ニンジンジュースは潰瘍とガンを癒す世紀の奇跡」という発表があったほどです。 (さらに…)