Q&A『上田がお答えいたします』 「訪問施術料」新設の構築に期待
2020.02.25
Q.
往療専門のあマ指師です。今後、往療料が距離に関係なく定額化されるとか、施術料と統合して新たに「訪問施術料」が設定されると聞きました。
A.
近々、あはき療養費検討専門委員会の議論が再開されますね。6月には2年に1回の料金改定が実施予定なので、 (さらに…)
Q&A『上田がお答えいたします』 「訪問施術料」新設の構築に期待
Q&A『上田がお答えいたします』 「訪問施術料」新設の構築に期待
2020.02.25
Q.
往療専門のあマ指師です。今後、往療料が距離に関係なく定額化されるとか、施術料と統合して新たに「訪問施術料」が設定されると聞きました。
A.
近々、あはき療養費検討専門委員会の議論が再開されますね。6月には2年に1回の料金改定が実施予定なので、 (さらに…)
連載『食養生の物語』81 新型コロナウイルス感染症とその対策
連載『食養生の物語』81 新型コロナウイルス感染症とその対策
2020.02.25
新型コロナウイルスによる感染症が、深刻な広がりを見せています。WHO(世界保健機関)は2月11日、「COVID-19(コビッド・ナインティーン)」と名付けたと発表しました。COは「コロナ(Corona)」、VIは「ウイルス(Virus)」、Dは「疾患(Disease)」、発生が確認された2019年の「19」が続くとされています。
現時点では重症化して死に至る致命率、感染力(基本再生産数)ともに、2009年に新型インフルエンザとして流行したH1N1亜型ウイルスや、SARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスによる感染症などと比較すれば低いと推定されています。新型のウイルス性感染症では、インフルエンザに対するタミフルのような治療薬や、予防のためのワクチンが存在しないために不安が強まってしまうのでしょう。だからこそ自己の持つ免疫力(自然治癒力)を高めることが必要といえます。免疫力を高めることは、例えばタミフルのように特定の疾患に対してだけではなく、あらゆる病気に対して有効であり、最高の対策とも言えそうです。
風邪など感染症の流行りやすい冬には、梅肉エキスを日頃から摂取しておくことがオススメです。 (さらに…)
連載『あはき師・絵本作家 かしはらたまみ やわらか東洋医学』16 「太陽と月で決めた暦」
連載『あはき師・絵本作家 かしはらたまみ やわらか東洋医学』16 「太陽と月で決めた暦」
2020.02.25
旧暦は、太陽と月を観察した天文学から作られています。一年は、太陽が南にある時に出来る影が一番長くなる冬至の日を始まりの子(ね)の月としましたが、 (さらに…)
『ちょっと、おじゃまします』 ~柔整・鍼灸の二本柱で幅広く~ 大阪府豊中市〈小林整骨院〉
『ちょっと、おじゃまします』 ~柔整・鍼灸の二本柱で幅広く~ 大阪府豊中市〈小林整骨院〉
2020.02.25
ケガが治って痛みが取れると体の健康が気になり始め、心の健康やさらには「美」にも興味が湧いてくる――。柔整師で鍼灸師の小林先生は、昨今の患者さんの傾向をそう見ています。柔整師として十数年のキャリアがあり、はり師・きゅう師免許も昨年取得しました。柔整・鍼灸の二本柱で、ケガから「美容鍼」まで施術の幅が広がったといいます。 (さらに…)
今日の一冊 介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント
今日の一冊 介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント
2020.02.25
介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント
藤原るか 著
幻冬舎新書 858円
昨年夏、介護ヘルパーの女性に利用者がわいせつ目的で睡眠導入剤を飲ませたことがきっかけで交通事故が発生し、話題となった。本書は事件発覚に先駆けて発行され、介護ヘルパーが直面する数多くのハラスメントの実態に警鐘を鳴らす一冊。ヘルパーをベッドに誘う老人、全裸で立ちふさがる青年、トイレ介助で性器を顔に押し付けてくる利用者……生々しい事例の数々はセクハラにどとまらず、それ以上に多いというパワハラ、ペット関係の問題にも及ぶ。筆者らが行う、介護従事者の権利を守るための取り組みも紹介。
編集後記
編集後記
2020.02.25
▽新型コロナウイルスの流行が拡大する一方、今年は過去10年で2番目にインフルエンザの患者が少ないとか。理由は、マスク着用や手洗いが徹底されているからと目されています。実際、医療関係者のSNSでは風邪やインフルエンザの患者が明らかに少ないとの声も目立ち、知人の鍼灸師の先生が「皆、普段どれだけ手洗いしてなかったんや」と嘆いていたのが印象的でした。……などと、のんきなことを言ってはいられません。「不要不急の集まりは控えよ」との国のお達し以降、取材予定だった勉強会や会食の中止が相次ぎ、各方面への影響を実感しています。医療者として不安な国民を支えることも大切ですが、体調不良の患者と接する機会が多い先生方ご自身も、どうぞ気を付けてお過ごしください。(平)
柔整・施術管理者研修の申込み方法を変更 「申込者の中で優先度の高い順」
柔整・施術管理者研修の申込み方法を変更 「申込者の中で優先度の高い順」
2020.02.10
―①特例者→②前任者の退職→③開業予定→④それ以外―
令和2年度の施術管理者研修の申込み方法が明らかになった。開業を取りやめる柔整師が現れるなど、問題を抱えていた従来の「先着順」を廃し、新たに「優先度の高さ」で受講させる仕組みに変更した。
「優先度の高い者・ケース」として挙げたのは、卒業後すぐに開業をする新卒者などの「特例対象者」のほか、施術管理者の退職により早急に施術管理者が必要となった場合や、既に開業の準備を進めている者などで、それぞれの条件の間でも優先順位がある(下図参照)。申し込みに当たっては、各条件に該当することを証明する書類の提出が必要。厚労省によるQ&Aも示されており、柔道整復研修試験財団のホームページ上で確認できる。
■厚労省作成の申込み方法に関するQ&A
問1 なぜ、今回申し込み方法を変更したのか。
(答) これまでの先着順では、ただちに施術管理者にならない方も応募していることから、研修が受けられないとの声がありました。
このため、一旦申し込みを受け付けた後に優先度が高い方を選定して受講者を決定し、通知する仕組みに改めたものです。
問2 優先度はどのようになっているのか。
(答) 現時点では以下の順で優先度を設定しています(今後、申し込み状況を見ながら優先度を変更する可能性もあります)。
①施術管理者研修導入時の特例対象者として、研修修了証の写しを後日提出する旨の確約書を地方厚生(支)局へ提出し、受領委任の取扱いの登録または承諾をされている方
②施術所において受領委任の取扱いはまだ行っていないが、既に保健所に施術所開設届を提出している(例 施術管理者が自己都合で退職したために施術管理者が必要となった)。
③既に開業準備を行っている方
④それ以外の方
さらに、上記の②・③及び④においては、既に柔道整復師として1年以上の実務経験期間を有するか否かで優先度を設定しています。
問3 どのように受講者を決定するのか。
(答) 問2の答の優先度②において、開設年月日等の日付順を元に、各会場の受講者を決定させていただきます。
問2の答の優先度③において、不動産の売買契約締結年月日等の日付順を元に、各会場の受講者を決定させていただきます。
また、問2の答の優先度④において、コンピューターシステムによる抽選により、各会場の受講者を決定させていただきます。
なお、今回で受講が決定されなかった場合には、次回で再度の申し込みをしていただく必要があります。
※第一希望から第三希望の受講会場が定員のため、受講者として決定されなかった場合、次回での再度の申し込みをしていただく必要があります。
問4 申し込み結果については、どのようにお知らせされるのか。
(答) 予約申し込みをしていただく折りに、マイページをご用意させていただきます。結果については、マイページでご確認いただくこととなります。
問5 施術管理者が自己都合で退職したため、施術所では自費診療で対応しているので、今回の申し込みについては、どこに該当するのか。
(答) 既に施術管理者がいないため、早急に施術管理者研修を受講する必要があることから、優先度②で申し込みして頂くこととなります。
【必要な書類】
・開設者又は法人の代表者が申し込む場合 → 施術所開設届
・現在の施術所で業務に従事する施術者が申し込む場合 → 施術管理者が自己都合で退職したことが確認出来る書類(例 開設届事項一部変更届及び離職証明書)及び施術所開設届
・その施術所に新たに勤務する者が申し込む場合 →施術管理者が自己都合で退職したことが確認出来る書類(例 開設届事項一部変更届及び離職証明書)及び新たに雇用する者の雇用関係が分かる書類
問6 施術管理者が退職予定であるので、今回の申し込みについては、どこに該当するのか。
(答) 施術管理者の退職を確認することが困難であることから、優先度④で申し込みして頂くこととなります。なお、優先度の見直しについては、今後、実施状況を見ながら検討することとしています。
問7 不動産売買契約をしていないと、優先度③で、今回の申し込みができないのか。
(答) 準備いただく書類として、開業準備が分かる書類が必要であるため(必ずしも不動産売買契約をしていなくとも差し支えない)、①不動産売買契約書の写し、②不動産賃貸契約書の写し、③構造設備や施術に用いる器具及び手指などの消毒設備の領収書の写しなど開業準備が分かる書類が一つでもあれば優先度③で申し込むことができます。
なお、複数の方が、同一の不動産売買契約書の写し等を流用するようなことは不可とさせていただきます。
『医療は国民のために』288 「保険者の裁量拡大」の風潮に思う
『医療は国民のために』288 「保険者の裁量拡大」の風潮に思う
2020.02.10
最近の柔整療養費の傾向として、支給決定に際し、ことさら「保険者判断」が強調されるようになってきた。この傾向はあはき療養費にも見られ、施術者団体として納得できない旨を保険者に伝えても、「療養費だから支給するもしないも保険者の勝手である」などと高圧的な言葉が返ってくる。しかも、行政に至っては「療養費なので最終的には保険者判断ですから」と何とも頼りない回答しかしてくれない。当然、療養費なので保険者が認めた場合が支給対象となる原則は理解している。が、何でもかんでも保険者の自由裁量によるものではないだろうと疑念を抱いてしまう。
療養費の支給条件を見てみると、「緊急其ノ他已ムヲ得ザル場合ニ於テ……保険者ガ必要アリト認メタルトキ」とされていた条文が、昭和55年の健康保険法改正の際に「緊急」の文言を削除した。この改正の趣旨は、できる限り客観的に療養費が支給されるよう、保険者による裁量の余地を狭めることによって、被保険者の便益と負担の軽減を図ることが狙いであった。その結果、個別具体的に支給の可否を判断することになり、療養費の取り扱いは広まっていったのだ。
しかし、最近の国の通知・事務連絡は、明らかに保険者による裁量の余地を広めることを目指し、さらに、被保険者に施術を受けさせることを抑制するかのような内容だ。これらは冒頭に挙げた保険者や行政側の態度から見て取れる。この最たるものが、昨年1月より開始されたあはき療養費の受領委任だ。受領委任を導入するかしないかの判断が保険者の自由であるため、いまだに多くの国保は実施しておらず、健保組合においてはむしろ償還払いへの移行が進んでしまった。
また、健保連からは、同じ療養費の柔整の取り扱いでも保険者の自由裁量を認めるべきだとの意見も出されている。健保連は今後、この柔整療養費への保険者裁量の導入を果たす前段階として、まずあはきの受領委任において、保険者自らの判断の下、特定の患者(被保険者)について受領委任を認めず償還払いに戻せる仕組みの導入を声高に主張してくるだろう。もしこれが実現するようなことになれば、保険者の指導に従わない者や多頻回・長期受療の者などを受領委任の取り扱いからピンポイントで退場させることが可能になる。柔整療養費にまでも適用されれば、償還払いへの移行が「加速度的」に進行してしまうだろう。
保険者、特に健保組合は、厳しい保険財源を前に支給の抑制しか考えてはおらず、40年前の法改正で被保険者の便益と負担の軽減を図ったことなど知ったことではない。私としては、法改正の趣旨や意図が消え失せてしまい残念だが、その原因の全てが不正請求の実態による信頼関係の喪失・欠落ということであれば、仕方のないことかもしれない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
全病理、マッサージ診療報酬で要望 推進協7団体での合同提出へ
全病理、マッサージ診療報酬で要望 推進協7団体での合同提出へ
2020.02.10
公益社団法人全国病院理学療法協会(全病理)が、以前より団体独自で提出してきたマッサージ診療報酬等の見直しに関する要望書について、日本視覚障害者団体連合(日視連、昨年10月に日本盲人会連合より改称)などあはき7団体(推進協)の連名での提出とすべく調整していることが分かった。
要望内容は、適切な研修を修了したマッサージ師等の診療報酬を引き上げ、理学療法士(PT)との格差を是正することのほか、理学療法従事者に鍼灸師を組み入れることなど(下記)。ただし、鍼灸師に関する要望については他団体と協議中。
長年にわたり要望続ける
要望を連名とすることは、昨年11月に開催された推進協の会合において、全病理が提案した。全病理は本紙の取材に対し、「PT以外の理学療法従事者が行う消炎鎮痛の点数は、PTと比べて非常に低いものです。また、理学療法従事者を対象として平成4年より実施している運動療法機能訓練技能講習会は、鍼灸師でも受講できるにもかかわらず、受講しても診療報酬、介護報酬の算定要員として認められません。それでも資質向上のために定期的に修了している鍼灸師は存在し、当会にも複数在籍しています。この格差も是正したいと考え、長年要望を続けてきました」とコメントした。厚労省に対し、今年度中の要望書提出を目指して、現在調整中だという。
■全病理の要望内容(概要)
【診療報酬】
・疾患別リハビリテーション料の施設基準における、理学療法士と「運動療法機能訓練技能講習会を受講し、定期的に適切な研修を修了しているマッサージ師等(以下、理学療法従事者)」の診療報酬算定上の格差是正
・消炎鎮痛処置における、理学療法従事者が行う手技療法の評価
・理学療法従事者に「はり師、きゅう師」を加える
【介護報酬】
・指定通所リハビリテーション費において、理学療法従事者を全ての時間帯で算定要員とする
・機能訓練指導員において、理学療法従事者を「リハビリテーション専門職」として位置付ける
商品紹介 トワテック『ホワイトテープ<ベージュ>』
商品紹介 トワテック『ホワイトテープ<ベージュ>』
2020.02.10
―「肌色」だから目立たない―
トワテック(東京都文京区)の、「肌色」だから目立たない『ホワイトテープ<ベージュ>』。
従来品の「手で切りやすい特殊加工」「引っ張りに強く高いサポート力」という特長はそのままに、色だけを変更した。「女性など、患者さんの『目立つのは嫌』という気持ちに寄り添えるテープ」と同社。サイズ3.8㎝×13.7m・入数8巻と5.0㎝×13.7m・6巻は直販価格1,600円、3.8㎝×13.7m・1巻は同350円、5.0㎝×13.7m・1巻は同380円で、いずれも税抜価格。販売に関する問合せは同社(0120-609-151)へ。
連載『不妊鍼灸は一日にして成らず』22 着床
連載『不妊鍼灸は一日にして成らず』22 着床
2020.02.10
この連載もネタがどれだけ続くかと思いきや、毎月色んなことが起こります。ある医師から当会、一般社団法人JISRAM事務局長の徐大兼先生に「鍼による着床改善」というテーマで執筆依頼が来ました。そして徐先生から「一緒に書こうよ」と言われて「もちろんいいよ」と安請け合い。でもちょっと待てよ、日本中の産婦人科医が目を通すこの本に説得力を持って書けるのか、と不安に駆られました。五里霧中とはまさにこの事。鍼灸の作用機序が現代医学的に見ても着床に影響することを説明し、かつそれに見合ったデータを提示できるか。つまり理論、基礎研究、臨床データの三位一体の完成度が高くなくてはなりません。未完成ですが、執筆の導入部分をかいつまんで以下に紹介します。
――鍼及び灸はホリスティックな医療だと言われるが、分析すると①自律神経に関する作用②免疫に関する作用③局所血流に関する作用③精神的充足に及ぼす作用の四つに集約されると考える。様々な基礎研究がなされているものの、着床に及ぼす作用についてはほとんど未解明である。そこで本稿では特に①~③について基本的な概念、それぞれに対する鍼の作用、期待される効果、現段階で蓄積されたデータを提示し、鍼の着床に対する作用を論じる。自律神経はサーカディアンリズム(日内変動)によってコントロールされているが、昨今、交感神経、副交感神経それぞれが優位な状態において、免疫細胞の体内循環、組織滞在、二次リンパ組織へのホーミングに影響を与えていることが分かってきた。特に交感神経優位な状態では、骨髄系の好中球や単球(組織に移動する時にマクロファージなどに変化する)は末梢組織に、リンパ系細胞群はリンパ節に集積し抗原提示を受ける準備をして、外敵の侵入に備えている。免疫系は、約6億年前に生物に自然免疫が誕生。そこから約2億年遅れ、脊椎動物が誕生して獲得免疫が始まった。さらに遅れて今から1.5億年前に胎生生物が出現したが、子宮の中に存在する免疫細胞は自然免疫担当細胞であるNK細胞とマクロファージがその大部分を占めており、初動免疫の急先鋒である好中球が存在しないことなど、勉強すればするほど極めて理にかなっている。子宮内には、その部位や時期で差はあるものの、およそ約70%のNK細胞、次いでマクロファージやT細胞、わずかな樹状細胞が存在すると言われている。そこで、鍼灸と関連が深いものとして、NK細胞(脱落膜NK細胞:decidual NK細胞)について言及する。dNK細胞は末梢血中のものと異なり、表面に独自の膜タンパクを発現し細胞傷害性を持たず、サイトカインの分泌などで妊娠の維持に働くと言われている。NK細胞はリンパ系共通前駆細胞より分化し、T細胞とは兄弟の関係である。そしてdNK細胞は、胎児のMHCクラスⅠとの相互作用を持っている。胎児栄養膜細胞の一部はHLAの独特な形を持っており、dNK細胞はそれを認識する抑制系受容体を持ち、アロ反応を抑制している。一時期、子宮内のNK細胞が多いと良くないと言われたが、dNK細胞が末梢血中のNK細胞とは似て非なるものであるのは周知の事実となった。非自己を全て食い殺す「生来の殺し屋(Natural Killer)」とはもはや別物である――。
医師向けなので少し難しいでしょうか。ちょうど当会の今年の公開講座が『免疫を学んで着床を知る!』というテーマで、着床に対する鍼灸の効果を探っていく予定です。しかし1月20日に一般参加募集を開始してたったの5日で、100名の定員で残席は20余り。この紙面をご覧になる頃に空きはあるのでしょうか。参加ご希望の方は、とりあえずメールしてみて下さい(hari9@pearl.ocn.ne.jp)。上記の書籍の発刊については、またお知らせします。
【連載執筆者】
中村一徳(なかむら・かずのり)
京都なかむら第二針療所、滋賀栗東鍼灸整骨院・鍼灸部門総院長
一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)代表理事
鍼灸師
法学部と鍼灸科の同時在籍で鍼灸師に。生殖鍼灸の臨床研究で有意差を証明。香川厚仁病院生殖医療部門鍼灸ルーム長。鍼灸SL研究会所属。
JATAC関東ブロック研修会 厚底シューズの構造など解説
JATAC関東ブロック研修会 厚底シューズの構造など解説
2020.02.10
安全性の研究不足も示唆
ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会(JATAC)の関東ブロック研修会が1月26日、埼玉県内で開催された。
講演では、JATAC専務理事の蛭間栄介氏(帝京大学医療技術学部教授)が、足部アライメントに着目して長距離走におけるスポーツ障害の機序を概説したほか、スポーツシューズ開発の歴史を紹介した。
この3、4年ほどの厚底シューズブームの発端となった『Hoka One One』のシューズの場合、厚底である意義は、クッション性向上のほか、踵に丸みをつけた「ゆりかご」状の形状により、後足部接地からスムーズに前方へ体重移動できる作りを実現できる点にあったと説明。一方で、最近話題となっているナイキの厚底シューズはカーボンプレートを内蔵し、爪先が曲がらないほど固く、前足部接地を前提とした構造であり、使用時はこうした差異を理解しておく必要があるとした。また、平成30年に同シューズを使用した設楽悠太選手が日本新記録を更新した際の走りを「膝が内転し、踵が外に出ている」と指摘。結果を出しているとはいえ、膝を痛める危険のある走り方を誘発している可能性を示唆した。また、カーボンファイバーシューズの最新報告として、▽は下腿部の関節への負荷を分散するとした研究、▽酸素摂取量やストライド、重心の上下動などを改善するとした研究、▽ミッドソールにカーボンファイバーを挿入する場合と比べ、靴内部に挿入すると床反力が減少し、ショパール関節背屈と足関節底屈が優位に増加するとした研究を紹介。「足下のアーチにわずかな角度の変化があれば、姿勢全体には大きな影響が生じる」として、安全性に関する研究を増やしていくよう呼びかけた。
このほか、3月1日開催の東京マラソンへの提言を掲げたシンポジウムでは、JATACの小池龍太郎副理事長、今井裕之理事が登壇。ボランティアの参加呼びかけなども行われた。
セミナー『次世代に繋げたい鍼灸治療』 腹診と背部で全体治療
セミナー『次世代に繋げたい鍼灸治療』 腹診と背部で全体治療
2020.02.10
―「僅三針法」の紹介も―
セミナー『次世代に繋げたい鍼灸治療―一見は百書を凌駕す』が1月12日、13日、大阪市内で開催された。鍼灸治療による疼痛治療研究会主催。
薬剤師で鍼灸師の南利雄氏(壺中天薬局・南鍼灸院)は、江戸時代の医師は実証主義で、「万病一毒説」を唱えた吉益東洞は陰陽五行説を否定していたと説明。現代でも、臨床においては無理に五行に当てはめることなく全体で診て治療に臨むべきだと説いた。江戸期の医書には脈診の記載は少なく、腹診が重要視されていたと指摘。脈診よりも腹診の方が分かりやすく誰もが習得しやすいとして、腹診と背部を基本とした全体治療を指南した。「一つの道具だけでは家が建てられないのと同様に治療道具にも種類があった方が良い」と解説。火鍼や長針、員利鍼といった臨床で実際に使用している鍼を実技を交えて披露し、細絡刺絡や皮膚刺絡なども行った。また、「鍼灸師にお勧め」の書籍として鍼灸素霊会編著『経穴の使い方 鍼の刺し方』や劉玉書編『刺鍼事故』などを紹介。『経穴の使い方 鍼の刺し方』は経絡治療の大家であった上地栄の講義をまとめたものだが、脈診よりも腹診を推奨している点が興味深いと述べ、『刺鍼事故』は中国の草医、いわゆる素人による事故例集だが、防止策や解決策も掲載されており参考になると話した。
循環器内科医の西田晧一氏(西田順天堂内科院長)は、数十年に及び鍼灸治療を臨床に取り入れてきた経験から、疾患によっては鍼灸でしか治らないものもあると説明。中国に起源を持つという、わずか三つの配穴で全身を治療する「三針法」に独自のアレンジを加えた「僅三針法」を紹介した。僅三針法は整形外科的疾患から内科的疾患にとどまらず、鬱病や認知症といった精神疾患にも効果があると解説。難病とされる線維筋痛症の原因は患者本人も自覚していない持続する精神的緊張にあると指摘し、僅三針法でその緊張を取り、付随する身体症状にも用いて症状が寛解した症例を提示した。
ほかに、「臨床歴70年」の松林康子氏による実技や佐藤崇司氏(千葉大学大学院医学研究院整形外科学)の研究発表が行われた。
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』132 今一度、スタンダードプレコーションを
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』132 今一度、スタンダードプレコーションを
2020.02.10
2月1日、新型コロナウイルスによる肺炎などが『新型コロナウイルス感染症』として、指定感染症及び検疫感染症に指定されました。日本での感染者が拡大する中、「ヒト―ヒト」感染が確定し、非顕性感染(非症候性保有者)も確認され、検査体制や受け入れ態勢もままならない状況下で、行政による指定がなされました。報道も過熱し、薬局やコンビニの陳列棚からマスクが消え、混乱の様相を呈してきました。
また、中国政府の公式発表に加え、SNSなどからうかがい知れる武漢の医療機関の混乱ぶりと疲弊……果たしてこれら中国発の情報が正確なのかという疑問もあります。おまけに、未確認ながらも生物兵器の漏洩による陰謀論まで登場している始末。私たちはより一層、情報の真偽に慎重になり、同時に迅速に取り扱っていく必要があります。
そして、今一度、スタンダードプレコーション(標準感染予防策)を意識してください。
基本は、感染者が同一空間にいるかいないかを問わず、体が直接触れ得る全ての物・場所(机や壁、ドアノブ、さらに自分の衣服も含め)に「絵の具がべったり付いている」と考えてください。そして、絵の具は24時間は乾かないと思ってください。今回のコロナウイルスは皮膚から感染せず、必ず上気道の粘膜を介して感染します。よって「絵の具」が手や体に付いただけでは感染しませんので、口や鼻の粘膜に付かないようにするにはどうしたらよいかを意識してください。
また、マスクは全く無意味だとは言いません。「絵の具の付いた手」で不用意に口に触れないための効果があり、自分が感染源という可能性を考えると、飛沫を飛ばさないためにも有効です。報道後、ホテルや遊園地などのホスピタリティーが求められる業種でも従業員が希望すれば、マスク着用が認められるようになったと聞きます。「健康な非感染者に対する感染予防の効果」は、多くの人が持つイメージとは異なり、非常に限定的です。もちろん、マスクは使い捨てにして口側に触れないことです。
さらに言えば、たとえ口にウイルスが付いたとしても、必ずしも感染するとは限りません。まずは、うがい。水道水で十分で、市販のうがい薬などは正常な粘膜を洗い流してしまい、ウイルスへの免疫機構を阻害することにもなりかねません。ポイントは、口をすすぐのではなく、喉の奥まで洗い流すようにうがいをしましょう。手洗いもアルコールなどの手指消毒より圧倒的に流水のほうが有効です。
医療の臨床現場では、免疫抑制状態の患者さんも少なくないので、スタンダードプレコーションをより意識する必要がありますね。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。
連載『中国医学情報』179 谷田伸治
連載『中国医学情報』179 谷田伸治
2020.02.10
☆痔核手術PPH法後の肛門の腫れに鍼通電
南京中医薬大学第二臨床医学院・宋揚揚らは、日本で厚労省が「先進医療」として承認している痔核手術PPH法(イタリアで開発された新しい自動縫合器による手術法)による、術後重度肛門の腫れ30例での鍼通電治療を報告(中国鍼灸、19年9期)。
対象=30例(男20例・女10例)、平均(34±9)歳、混合痔罹患期間1~10年。術後症状出現期間:平均(3±1)日、重度の腫れに、渋り腹(排便少量すぐに便意)・頻繁な便意・排便不暢などを伴う。
治療法=取穴―八髎穴。操作―0.30×75mmの毫鍼で斜刺:約60°で肛門方向に40~70mm、提挿捻転法、平補平瀉法、鍼感を肛門部に伝導、得気後に左右の次髎(+極)・下髎(-極)に通電(疎密波2Hz/15Hz)、置鍼30分。毎日1回、刺鍼24時間後に効果判定、症状消失後全患者を1カ月追跡調査(再発患者は消失まで刺鍼)。
結果=第1回治療後(30例):消失7例・著効15例・有効6例・無効2例、第2回後(23例):消失10例・著効8例・有効5例・無効0例、第3回後(13例):消失8例・著効5例、第4回後(5例):消失5例。1カ月の追跡調査での再発者なし。
☆COPD(慢性閉塞性肺疾患)急性増悪90例で灸頭鍼併用を現代薬とランダム化比較
四川省南充市中医院・謝芳らは、COPD急性増悪(AECOPD)患者で灸頭鍼併用、現代薬、シャム鍼(sham:偽物の意)併用3群をランダム化比較(中国鍼灸、19年9期)。
対象=入院中の90例(男43例・女47例)、平均年齢約63.7歳(52~79歳)、平均罹患期間約16年、病期分類:Ⅱ期66例・Ⅲ期24例。これらをランダムに各30例に分けた。
治療法=3群とも国際治療ガイドライン(GOLD)治療。
<灸頭鍼群>取穴―豊隆・肺兪・太淵・足三里・中府・陰陵泉。操作―0.25×40mmのディスポ鍼で、太淵には直刺3~5mm、肺兪には脊柱方向に斜刺12~15mm、足三里・陰陵泉・豊隆には直刺12~15mm。提挿捻転し得気後、長さ1cmの棒灸を豊隆・肺兪・足三里・陰陵泉の鍼柄に着け点火(ツボの皮膚面に厚紙を敷く)、置鍼30分。毎日1回、計14日。
<シャム鍼群>取穴―同上のツボからそれぞれ2.5cmの部位。操作―直刺1~3mm、手技せず得気なし、灸なし。毎日1回、計14日。
観察指標=①呼吸機能検査(スパイログラム)―FEV1(努力肺活量の測定における最初の1秒間の努力呼気量)・FVC(努力肺活量:最大吸気を行った後に強制的に呼出する空気の最大量)・FEV1/ FVC(1秒率)。②咳と痰の評価―喀痰喀出障害質問票(CASA-Q)。③患者自己評価―COPDアセスメントテスト(CAT)。④中医証候評価。
結果=治療後3群とも、①の各項は治療前より有意に上昇(群間に有意差なし)、②③④も有意に軽減した。灸頭鍼群は、治療前後の各項の差が他2群より有意に大きかった。
☆小児の眼瞼痙攣60例に按摩と耳穴貼圧
陝西省西安市第四病院中医リハビリ科・張英英らは、小児の眼瞼痙攣に按摩と耳穴貼圧が効果的と報告(中国鍼灸、19年9期)。
対象=同院(西安交通大学付属広仁病院)小児眼科外来などの60例(男40例・女20例)、平均(6±2)歳(3~9歳)、平均罹患期間(5.5±3.7)カ月。いずれも両目あるいは片目に頻繁な不随意的まばたきがあり、結膜炎や眼精疲労の既往歴を有し、「単純眼性眼瞼痙攣」と診断された。
治療法=治療期間:12日。
<按摩点穴>取穴―攅竹・魚腰・陽白・糸竹空・太陽・百会・四神聡・顴髎。もし鼻部・口角筋の痙攣を伴う時は迎香・地倉・下関を追加。操作―拇・示・中指で毎穴点按・点揉1~2分間。終了後、両拇指腹で眉間から神庭まで推法(押し動かす)5回、眉間から太陽まで推法5回、大魚際(拇指の中手骨掌側)で太陽から陽白を経て印堂まで揉法2回。毎回計15分間、毎日1回。
<耳穴貼圧>取穴―耳尖・風渓・神門・心・肝・脾・脳幹・内分泌・皮質下。操作―生薬の王不留行の種子を6×6mmの絆創膏で貼り(片側のみ)、毎日何度か毎穴5回按圧させる。2日1回左右交替。
結果=治癒19例・著効30例・有効8例・無効3例。眼の乾き・痒み・充血などの状況も明らかに好転した。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
催し物案内 鍼灸師・歯科医師が講演と実技、函館で
催し物案内 鍼灸師・歯科医師が講演と実技、函館で
2020.02.10
―『実践!! 臨床歯科東洋医学』テーマに―
3月14日(土)16時半から、サン・リフレ函館(北海道函館市)で開催される。函館鍼灸マッサージ師連絡協議会(函鍼連)主催、函館歯科医師会後援。
鍼灸師・歯科医師で、日本スポーツ歯科医学会認定医や美容鍼灸の会「美真会」顧問、アスレティックトレーナーなど、様々な肩書を持つ関根陽平氏が登壇。歯科医師の立場から、また東洋医学的な視点からも、顎関節症・不正咬合・オーラルフレイル・口腔機能低下症などについて解説し、歯科領域と東洋医学の「相性の良さ」にも触れる。「明日から使える鍼灸実技」も披露する。
参加対象は医療系国家資格所持者で参加費5,000円。申込みは函鍼連事務局(TEL/FAX 0138-41-8901)もしくは函館歯科医師会(TEL 0138-23-3650/FAX 0138-23-4765)へ。申込締切りは3月9日(月)。
催し物案内 JISRAM第3回公開講座、京都で
催し物案内 JISRAM第3回公開講座、京都で
2020.02.10
―『免疫を学んで着床を知る!』テーマに―
3月22日(日)10時から、アークホテル京都(京都市中京区)で開催される。
JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)代表理事・中村一徳氏の『はじめの言葉 免疫基礎の基礎』、同事務局長・徐大兼氏の『鍼による子宮内膜受容能の変化についての論文解説』、醍醐渡辺クリニック胚培養室主任・野々口耕介氏の『ERA、EMMA、ALICEについて(着床の阻害要因を知る)』、大手前大学副学長・大橋一友氏の『生殖免疫の基礎』、兵庫医科大学准教授・福井淳史氏の『子宮NK細胞について』が行われる。
参加費は昼食代・懇親会費込みで12,000円。定員100名、申込締切りは2月末日。申込みはメールに「JISRAM公開講座受講希望」と明記の上、①郵便番号、②住所、③氏名、④電話番号(携帯及び固定)、⑤メールアドレス、⑥所属(院名または学校名)を記入して中村氏(メール hari9pearl.ocn.ne.jp)まで。
あん摩マッサージ療養費 都道府県別支給状況 厚生労働省『平成30年度 療養費頻度調査』から
あん摩マッサージ療養費 都道府県別支給状況 厚生労働省『平成30年度 療養費頻度調査』から
2020.02.10
調査は、平成30年10月の1カ月間に行われた施術に係る療養費支給申請書が対象。支給申請書のうち、全国健康保険協会管掌健康保険で全件、国民健康保険で5分の1、後期高齢者医療制度で10分の1の割合で抽出している。1件当たりの平均支給額は約31,110円。なお、平成30年10月より再同意期間が「6カ月ごと」に引き伸ばされ、口頭同意の廃止や施術報告書の導入といった運用の変更があった。『平成29年度 療養費頻度調査』を基に、昨年度の金額と、そこからの増減比率も掲載した。
Q&A『上田がお答えいたします』 これまでの「整骨院」は認めるがこれからの「整骨院」は認めない
Q&A『上田がお答えいたします』 これまでの「整骨院」は認めるがこれからの「整骨院」は認めない
2020.02.10
Q.
広告規制のガイドラインはいつまでたっても出ませんね。広告の検討会での議論のポイントだけでも教えてください。
A.
厚労省が事務局となって議論を進めてきた広告の検討会も8回目でほぼ問題点が出尽くした感があります。今後は早急にガイドラインのとりまとめに着手していくでしょう。私が着目しているのは以下の4点です。
まず、「『治療院』という表記を認めない」。私たち治療家は患者さんの疼痛を取り除き治癒に導く施術を提供しています。これは治療ですが、広告検討会では「治療」の表記を認めないといいます。だから「治療院」は広告できなくなります。
次に「『鍼灸整骨院』を認めない」。鍼灸と柔整は法律が異なり専用の施術室も異なるのだから、併記してはダメだというのです。
3点目は「『整骨院』も認めない」。厚労大臣告示によれば「ほねつぎ又は接骨」とあるのだから接骨院はよいが整骨院はいけないというのです。
そして、「ガイドライン発出後から適用して従前の届出済みの施術所には遡及しない」ということになっているのですが、そうなると将来長きにわたって整骨院と接骨院が混在し続けることになり、ダブルスタンダードができてしまいます。法令用語で「当分の間」とは実質的に永久を指すようにも思われますが、それなら全て認めるということでいいではありませんか。こんな表記にこだわって認めないなどと何の意味があるのでしょうか。患者さんが医師と施術者を間違えたり、治療院と医療機関を混同したりすることなどあるでしょうか。表記や広告の問題は全て、あはき・柔整が医業ではなく医業類似行為とされてしまったことが原因です。あはき法の規定の解釈どおり、あはき・柔整が医業の一部であると認識できれば、議論の問題点はおおむね解決できるのに、そうはなっていません。
広告のガイドラインは3月までに策定され、1年間の周知期間を設けて、令和3年度の実施となるようタイムスケジュールが組まれそうですが、詳細はまさにこれからというところです。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
連載『汗とウンコとオシッコと…』186 それぞれの春
連載『汗とウンコとオシッコと…』186 それぞれの春
2020.02.10
今年の冬は暖かい。大寒で梅のつぼみが付き、立春に至り早い所では咲きかけている。雪は少なく、北海道の雪祭りは前倒し。関西のスキー場は営業できず、日本海側でさえ、除雪車が待機しているものの動きが無い。この暖かさのために通常なら3月後半にかけて現れる、血管弛緩による血圧低下傾向の病が目立つ。例えば片頭痛や動悸や筋力低下による関節深部の痛みなどで、膝痛や仙腸関節痛が多い。血圧が下がれば具合が悪いので過食して調整するスタイルの人は、頸部痛や眼の疾患、口腔疾患などが現れやすい。まるでもう春のようだ。悪いことばかりではなく、心臓疾患のある冷え傾向の人は助かってはいるのだが……。
沢村某という、色白の貧血傾向で低血圧、40代前半の女性が来院している。既往歴にキアリ奇形がある。脳室の水が溢れかえり、水頭症や呼吸障害を引き起こすものだ。溢れた水を腸管に管を入れて溜まらないようにする術式で症状が抑えられるが、尿が少なくなると眩暈などが現れる。横転先生の所で常に利尿形態の治療を行うことで緩和していたが……。
「あれ? 何や、今回の眩暈は? 尿は出てるやないか」
と軽くお腹を触り横転先生が言う。
「そうなんです。今回はいつもの、キアリから来るような眩暈の感じではなくて……あまりに具合が悪いので胃カメラで検査もしてもらったんです。そうしたら逆流性食道炎で、キアリから来る後遺症じゃないって……。でも、薬をもらってもあまり良くならなくて……食事をするとしばらくして気持ちが悪くなって、頭痛や動悸も出てくるんですよ。右肩もだるくて、右膝も具合が悪いんです。特に3日くらい前から急にひどくなって」
と沢村さんが答えた。不定愁訴をそのほかにも語ってはいたが、聞き流すように横転先生が、ぱっと脉を診ると、
「これ、仕事で何かあったんか? 精神的なところからおかしくなる反応があるぞ。ほとんどそこからやな……」
「えっ? そ、そうです……人間関係がこじれて、そういえばその頃から……」
「それだけやないな。胃酸の抑制剤が効きすぎてるのもあるんやが……これ、排卵期に差し掛かったくらいやろ」
「えっ、ちょっと待ってください……そういえばそうですわ、日数的に」
「それで余計にひどくなってる。これな、更年期もかかっとるわ。排卵期はな、内膜の増殖に血が子宮に取られてやな、胃に流れ込む血や食ったもの分解する肝臓の血が少なくなるんや。それで、今みたいな感じを助長する。まあ、血液の流れ方を調整したら、不定愁訴は緩和するわ。ただし、月経前と、次の次の月経が終わった時の排卵前は必ず来といてくれ。崩れるから……」
「次の次の?」
「卵巣は月経ごとに左右で動きが違う。今月右、来月左って感じでな。調子が悪くなる前に整える。それと人間関係はワシは解決できん。人の営みの中ではイロイロあるさかいな」
「ええ、分かりました。身体がましになれば……」
「そう、前向きになる」
と言う横転先生だ。
【連載執筆者】
割石務文(わりいし・つとむ)
有限会社ビーウェル
鍼灸師
近畿大学商経学部経営学科卒。現在世界初、鍼灸治療と酵素風呂をマッチングさせた治療法を実践中。そのほか勉強会主宰、臨床指導。著書に『ハイブリッド難経』(六然社)。