連載『汗とウンコとオシッコと…』177 今更……
2019.05.25
令和元年だ。これで筆者も三代の年号の変化を経験した。過去に例のない10連休が明け、いつになく身体の調子が悪いという話も聞く。普通は連休の内に過食したり、気温上昇に伴う暑さに身体がついてこれず崩れることが多いが、今年はいつになく涼しい。日差しは強いが北海道では五月に雪が降り、風が冷たい。燕の飛来は確認したものの、飛ぶ姿はあまり見ない……。今年の夏は、いわゆる冷夏の可能性が高い。そうなると自律神経的には、太陽光線に当たることで、光線量で時計を決定するわけだが、涼しいので発汗しきれない状態が形成される。発汗といっても不感蒸散の減少だ。
「先生、一週間くらい前からなんですけど、両肩が痛くて、ぐ~っと詰まってくる感じなんです……」
そう語るのは三十代前半、ちょっと微妙なお年頃の色の白い独身女性だ。
「目が痛くて、ふらふらすることも……それで、ちょっと息苦しくて……頭痛がでたりでなかったりで。ロキソニン飲んでもあまり変わらなく、胃の調子も悪くなって……。これでも白川先生に言われてから、私なりにしっかり歩いてるんですけど……」
訴えを聞くのは横転先生。普段は白川女史が施術を担当しているが、今日は彼女は公休のため、代わりに横転先生が施術することになった。森畑、川端の男子両名のガサツさでは対応できないと、横転先生に申し送りをしていたわけだ。
脉をとりながら、横転先生は「これ、大小便の出が急に悪くなったわな」と確認する。
「そうなんです。連休中はそこそこ運動もできてよかったんですけど……」
「歩いてたりすると、風を受けるとゾクッとするやろ」
「そ、そうなんです……カーっと火照りかけたと思ったら、ゾクゾクして、薄ら寒く感じます。それからしばらくすると頭の後ろが痛んだりして……」
「そうやろなぁ。これ、歩いてる運動してる時間帯はいつなんや? 会社帰りの夜に歩いてるんか?」
「はい、夜です」
「これなあ……夜の涼風に当たって体表が冷えて、汗を止めてるんやわ。体温を守ろうとして尿まで止めてる。さらに、身体を治そうとして、脱水予防で便まで少なくした。つまり、風邪を引いてるんやな。それで発熱するけど、中途半端に熱が出かけた時に火照って頭痛がする。体表が冷えてるから発汗しきれなくて、火照りが止まったらゾクゾクする、中途半端な状態なんや。女性の不定愁訴と混同されがちなやつやな……。利尿しながら体表をあっためるようにするわ。まあ、この症状は尿さえ出てくれたら一回で治る」
「え~、もっと早く来ればよかった」
一方、川端は腕を組み、あごに手を当てながら、斜めに頭を倒し、うなずきながら、一人で悦に入っている。川端思考フィールドだ。
「虚邪でござるな、黄耆建中湯に柴胡を加味?」
(今更何を言ってる……)
この時は邪魔くさいので、最近はみんな関わらない……。
【連載執筆者】
割石務文(わりいし・つとむ)
有限会社ビーウェル
鍼灸師
近畿大学商経学部経営学科卒。現在世界初、鍼灸治療と酵素風呂をマッチングさせた治療法を実践中。そのほか勉強会主宰、臨床指導。著書に『ハイブリッド難経』(六然社)。




