連載『介護予防研究会による柔整師・鍼灸師のための介護保険講座』2 通い慣れた施術所で介護予防も
2021.03.25
1141号(2021年3月25日号)、介護、介護予防研究会による柔整師・鍼灸師のための介護保険講座、紙面記事、
私は宮城県の仙台で、平成22年から通所介護と障害福祉の事業所の拠点をそれぞれ三つ置いて、運営を行っています。
通所介護事業所では、機能訓練指導員に柔整師・鍼灸師を職員として配置し、利用者のニーズに沿いながら、日常生活で支障が生じている動作に対しパーソナルケアを実施しています。具体的には、少人数のグループで機能訓練や集団で行うトレーニングを2時間程度で行っていて、「要介護3」で通所を開始された利用者が、通所1年後には「要支援2」へと認定更新されるなど、日々の健康管理に通所利用を継続してもらっています。
来月の令和3年4月からの介護保険改正では、私たち機能訓練指導員が常勤専従で配置されていることにより算定できる加算がプラス改定となりました。今回の改定指針は、重度化の予防、要支援や事業対象者といった「要介護予備軍」をいかに地域の介護施設で改善、または自立に向かわせるかがカギとなっています。前回改正(平成30年4月)から全国一斉開始されている介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の緩和型通所サービスでは、接骨院、整骨院、鍼灸院の施術所スペースに、要支援や事業対象者の利用者が通所できる制度が新設されていて、一般のデイサービスに通いたくない団塊世代の高齢者に関しては、通い慣れている施術所でも介護予防に取り組めます。施術所も国の目指す「重度化予防」に大いに貢献できると感じているところです。
このサービスを利用するまでの流れとして、まずは利用者が住まいの圏域にある地域包括支援センターを訪れ、相談員に「基本チェックリスト」にて評価してもらい、その結果、「事業対象者」の認定を受ける必要があります。「要支援」の認定を希望される場合には、主治医からの意見書と自治体からの訪問調査が必要です。私の施設では、要支援認定を希望しない人に関しては、事業対象者としての認定を案内しております。ちなみに、要支援の場合、認定されるまでに1カ月以上時間を要する一方、事業対象者は主治医の意見書、訪問調査が省かれるため通所開始までの期間が短縮できる点が異なります。
この制度の設立と同時に、当会・介護予防研究会では、柔整、鍼灸の専門学校で深く学ばない介護保険や障害者総合支援法等の制度、また、機能訓練指導員としての業務範囲と個別機能訓練計画の作成方法等を学べる講座を開設しました。現在では、全国各地から受講いただき、介護施設または施術所にて介護予防を実践する有資格者を輩出しているところです。私見ではありますが、療養費分野に特化した施術者の先生方は、新たな取り組みや周辺分野の制度への興味が低く、行政との折衝なども不慣れな傾向にあるように感じます。初めの一歩を踏み出すのには大変な気苦労と勇気がいると思いますが、介護予防分野に関しては民間のスポーツセンターの事業所も参入している現状にあって、私たち柔整師、鍼灸師も当然活躍でき、そして収入の一つの柱にできると自負を持っていただきたい。当会主催の研修会に参加された際には、介護予防事業所を運営する当会理事が全力でサポートします。
【今回の執筆者】
中川裕章
柔整師・鍼灸師
株式会社中川代表取締役
東北学院大学教養学部卒、東京柔道整復専門学校卒、東京大学公共政策大学院医療政策実践ユニット卒