Q&A『上田がお答えいたします』 鍼灸療養費の支給対象となる適用疾病の拡大はなぜ進まないのか?
2022.02.10
1162号(2022年2月10日号)、上田がお答えいたします、紙面記事、
Q.
鍼灸療養費の支給対象は疼痛除去を目的とした運動器障害、運動器疾患で、しかも医師の同意書が必要です。でも、WHOが謳う「鍼灸の効能がある43疾患」には内科疾患も含まれていますよね。拡大の可能性はありますか。
A.
鍼灸療養費は広まらないように工夫した運用が過去からされていると思われ、現状はそれらから考えられた結果なのです。療養費の支給対象は「医師による適当な治療手段のないもの」、具体的にはまず神経痛とリウマチの2疾患とし、これら同様な疼痛を主訴とする疾患で、かつ慢性病であることの要件を満たす「類症疾患」として腰痛症、頸腕症候群、五十肩の三つを特定し、計五つを支給対象疾患としました。その後、1996(平成8)年に交通事故等のムチウチ症が話題になり、当時の業界団体が国会議員要請に働きかけた政治的取り組みの成果として頚椎捻挫後遺症が追加され、現在6疾病とされています。
確かに、2001年2月のWHO(世界保健機関)の報告には急性期症状にも有効とされ、鼻炎や結膜炎、歯痛、気管支喘息や十二指腸潰瘍にも効能があるとなっています。しかし、そんなことにはお構い無しに、あくまで神経痛とリウマチは医者でもなかなか治せないので、そこに医師の同意をかませることにより、療養の給付が行われると療養費は支給されないという「医科との併給・併用を認めない療養費」の取り扱いに着目したのです。つまり、医師が鍼灸施術に同意をするということは、実質上の敗北宣言であって、原則、同意などしないだろうという狙いです。ということは、ただ医科学的及び臨床的に取り組んでも保険適用の拡大はありません。 (さらに…)