Q&A『上田がお答えいたします』 あはき療養費の往療料は施術料金と包括化されて「無くなる」?
2018.05.25
1073号(2018年5月25日号)、上田がお答えいたします、
Q.
6月からのあはき療養費の料金改定では、往療料の大幅な見直しが行われるそうですね。無くなってしまうのではないかと不安です。
A.
なぜ往療料を根本的に見直さなければならないのか。それは、あはき療養費検討専門委員会で「マッサージ療養費において施術料よりも往療料が多くなっているという現状を見直す必要性がある」との指摘があったからです。以下に、専門委員会での往療料に係る議論の要点を挙げます。
●現行の2km増すごとの770円加算(最大2,310円)を見直し、距離加算は行わない方向であること
●距離加算の廃止が困難な場合は、取り急ぎ距離加算を引き下げて施術料や往療料に順次振り替えていくこととして、その実施状況を見ながら、平成32年度までには距離加算を廃止、施術料と往療料を「包括化」した「訪問施術制度」の新たな導入に向け検討した上で、結論を得ることとすること
●往療料の距離加算の水増し、複数患者の施術に対する重複算定、「歩行可能者に対する往療料算定の増加」と極めて不適切であり、往療料関係の不正は不正請求の事例の6割に上っている。だからこそ、往療料の不正対策に今こそ取り組むとともに、抜本的見直しを行うこと
このように厳しく整理されたことに鑑みれば、将来的に往療料そのものが無くなることが予想されます。ただし、往療料の加算要件としての基本的な考え方は上述の「訪問施術制度」に色濃く反映され、離島や中山間地等の地域での加算は温存されることになるでしょう。
いずれにしても、距離加算が往療料に振り替えられて包括化されることから、料金改定が実施される6月から「4kmを超えたら2,700円」といった定額料金になり、距離が増すごとに費用が増加していくという仕組みは無くなるでしょう。次の料金改定でも段階的にこのような改定が行われ、最終的には、「往療料の単独算定」は存在しなくなります。なぜなら、その時には施術料金と往療料加算算定は完全に包括化されているからです。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。