Q&A『上田がお答えいたします』 上腕部挫傷(上部)の負傷原因として 「三角筋の痛み」は「部位相違」か
2017.07.25
Q.
上腕部挫傷(上部)の負傷原因として「三角筋部に痛みが出た」と記載したところ、「部位相違」と国保審査会から返戻されました。なぜ返戻されたのか分かりません。 (さらに…)
Q&A『上田がお答えいたします』 上腕部挫傷(上部)の負傷原因として 「三角筋の痛み」は「部位相違」か
Q&A『上田がお答えいたします』 上腕部挫傷(上部)の負傷原因として 「三角筋の痛み」は「部位相違」か
2017.07.25
Q.
上腕部挫傷(上部)の負傷原因として「三角筋部に痛みが出た」と記載したところ、「部位相違」と国保審査会から返戻されました。なぜ返戻されたのか分かりません。 (さらに…)
柔整療養費検討専門委員会 第9回会議 厚労省の審査会権限強化案、批判集まる
柔整療養費検討専門委員会 第9回会議 厚労省の審査会権限強化案、批判集まる
2017.07.25
審査会の体制や法的根拠から問題提起
1月18日、柔道整復療養費検討専門委員会の第9回会議が都内で開かれた。平成29年度からの実施に向けた療養費の見直し案などが厚労省により示され、柔整業界や保険者の委員らが議論を行った。柔整審査会の権限強化に関する案に対しては多くの指摘が挙がった。
(さらに…)
『医療は国民のために』216 全く議論になっていないあはき療養費検討専門委員会
『医療は国民のために』216 全く議論になっていないあはき療養費検討専門委員会
2017.07.25
1月18日に開かれた『第10回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会』を傍聴した。驚くべき低レベルの議論で、なんら建設的な話し合いになっていなかったのが残念でならない。あはき療養費に受領委任を導入するか否かについては、「平成28年度中に明確な方向性を示すもの」と、昨年示された工程表(スケジュール案)で整理されているため、この2カ月程度の間で結論を出さなければならない。今後、年度末の3月までに、柔整よりも多くの専門委員会の開催が予定されていることからも明らかだ。仮に、受領委任を導入するか否かという議論が来年度に持ち越しとなった場合、すなわち「あはきの受領委任の導入にあたっては、引き続き検討を要する」となった場合は、保険者側の全面的な「負け」といえる。なぜなら、来年度以降も「受領委任の導入」が議論の最優先事項となり、実質的な適正化の議論に入っていけなくなるからである。 (さらに…)
連載『先人に学ぶ柔道整復』二 竹岡宇三郎(中編)
連載『先人に学ぶ柔道整復』二 竹岡宇三郎(中編)
2017.03.10
卓越した整復技術を披露し、法制化に貢献
今回は竹岡宇三郎の柔道接骨術公認期成会(期成会)の会長としての活動に迫ります。
明治末期、「接骨術」を法制化するために組織された期成会の実質的な政治活動は、萩原七郎(柔道家、接骨家)によって開始されました。柔道保存という国家的な見地に立ち、柔道家の生活確立のための経済基盤を整えようとした人物です。萩原については、『柔道接骨術公認期成会設立ノ理由』(1913年7月)の中の、「武ハ誠ニ国家精神ノ根本ナリ…(中略)…、益々光輝アルモノハ柔道ナリ…(中略)…、其奥儀ニ於テ、幸ニシテ接骨術ノ一法アルナリ、由テ以テ柔道ノ命脈ヲ持続シ来リタリ、故ニ柔道伝授ノ心法ニシテ、生々子孫ニ渉リテ断絶スルナクバ、日本特有ノ柔道ハ誠ニ永古不朽ノモノタルナリ…」との記述からその強い意志が窺えます。
しかし、結成までに萩原は活動への賛同者集めに大変苦労します。理由は33歳という若さで、多くの接骨家が政治的指導者として認めなかったことにありました。そんな中、宇三郎は、相談に来た萩原の公認運動の姿勢に共鳴。会長の重責を引き受けます。これにより数多くの接骨家が参集し、1913(大正2)年に期成会が結成されました。柔道接骨術公認の請願書は何度か議会に提出され、その後内務省衛生局の諮問に付されました。そして公認の可否について、接骨術の「実態調査」という最後の段階に差しかかり、接骨術の「真価」について当局の理解を深める必要に迫られたのです。
実態調査の当日、当局の技官や、内務省衛生局から派遣された医学博士らが竹岡接骨院に集まりました。宇三郎は、西洋医学に基づいた病態の把握及び整復時に患者に苦痛を与えず、後遺症の少ない手順等の整復技術のほか、殺菌性の高いヒバ木の副木や、宇三郎考案の固定力が高い上、人体にフィットしやすく整形できる金属シーネを用いた合理的で科学的な固定法の実地を直接披露し、当局の認識を新たにさせました。
こうして宇三郎の卓越かつ医学的根拠に立った技術が接骨術の信頼度を高めたこともあり、1920(大正9)年に柔道接骨術は「柔道整復」として公認(按摩術営業取締規則改正)されました。この時、宇三郎は警視庁の第1回柔道整復術試験の実技担当の試験官に任命されます。これを知った全国の受験生が見学しようと、毎日何十人となく接骨院を訪れたといいます。接骨院は通常の施術に支障をきたすほどで、そこで翌年からは試験1カ月前より見学者のために接骨院2階の一室を開放し、講習会を開きました。受講料は一切取らず、門弟・宇佐美信が生理学、衛生学、解剖学、外科学、消毒等の学科を担当し、実技を宇三郎と代診の石森が担当。1日3時間程度の講習をした後、毎日模擬試験が行われ、そこで成績が明示されるなど厳しい訓練の結果、講習生のほとんどが合格との実績を上げました。講習生からは、後の全日本柔道整復師会会長の谷田部通一を輩出。宇三郎には子が無かったため、接骨院の後継者はいませんでしたが、その技術は門弟を通じて現代の柔道整復師界にも受け継がれているのです。
主な参考文献:前田勘太夫(1921)『竹岡式接骨術』、宇佐美信(年代不明)「先覚者の横顔(一)恩師竹岡先生を偲ぶ」(『日整百年史』所収)
【連載執筆者】
湯浅有希子(ゆあさ・ゆきこ)
帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科助教
柔整師
帝京医学技術専門学校(現帝京短期大学)を卒業し、大同病院で勤務。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程を修了(博士、スポーツ科学)。柔道整復史や武道論などを研究対象としている。
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』63 『みんなのカルテ』を導入し、保険内外を含めて医療機関と連携を
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』63 『みんなのカルテ』を導入し、保険内外を含めて医療機関と連携を
2017.03.10
今回は『みんなのカルテ』のお話をしたいと思います。私が統合医療の啓蒙活動を進めているのは、西洋医学と補完医療との間にある“コミュニケーションの壁”を壊し、互いが対話し、連携をしながら医療ができるようにするためです。今まで医療機関と治療院をつなぐ患者情報共有のためのコミュニケーションネットワークはほとんどありませんでした。株式会社IMSSが開発し、その設計デザインを私が中心となって作ってきた『みんなのカルテ』は、その連携のための専用線といえます。
なお、株式会社IMSSは『リテラス・メディカ株式会社』へと社名を変更し、サポートも万全の体制を組むために社員も増やすなど、新体制となりました。「リテラス・メディカ」とは、「リテラシー」の「リテラ」、「照らす」の「テラス」、「人々が集う場所」の「テラス」という願いが込められています。様々な医療が集い、連携して情報共有できるテラスのような環境を構築し、正しい情報発信を促すとともに、国民の医療情報リテラシーを高め、医療に光を照らします。
『みんなのカルテ』は今年中に東京大学ソーシャルICTセンターのPLR(Personal Life Repository)プロジェクトと接続されます。これにより、大学病院や市中病院の電子カルテとつながることになります。とうめい厚木クリニックなど、一部では既に医療機関と治療院との連携に『みんなのカルテ』が利用されていますが、新たに都内で私のクリニックの外来とも接続することになります。保険内外を含めて医療機関との連携を必要とする鍼灸マッサージ師の皆さんには必須のツールとなるでしょう。3月中に、諸々のバグ改修や新機能を盛り込んだ新バージョンをリリースする予定で準備しています。「どうやったら医療機関と連携ができるのだろう」とお考えの施術者の方は、ぜひ『みんなのカルテ』を導入して医療・介護の現場へと出てきていただきたいと思います。
私はよく『みんなのカルテ』を国際電話の海底ケーブルに例えています。外国と日本でお互いに電話をかけようと思わなければ、単なるケーブルに過ぎません。さらに言語が翻訳されたり、共通言語があったりしなければ、対話になりません。この対話をどうやってするべきなのかというノウハウを学ぶためにこれまで展開してきたのが、「統合医療支援セミナー」です。来年度は統合医療に関わる多くの医師も参画し、教育プログラムも展開する予定です。「医療介護危機」が来ると言われる2025年に間に合うように着々と準備を進めています。一緒に日本の医療を変えていきませんか?
※リテラス・メディカ株式会社への問合せは、info@literrasmedica.jp、0800-170-9610(フリーコール)まで。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。
連載『中国医学情報』143 脳卒中後の感覚障害には鍼プラス十二井穴刺絡ほか
連載『中国医学情報』143 脳卒中後の感覚障害には鍼プラス十二井穴刺絡ほか
2017.03.10
今回の内容
・脳卒中後の感覚障害には鍼プラス十二井穴刺絡
・腰痛患者で鍼通電と灸頭鍼を比較
・胃カメラによる吐き気・嘔吐予防には内関穴への円皮鍼プラス穴位按圧
☆脳卒中後の感覚障害には鍼プラス十二井穴刺絡
浙江省台州市立病院・潘丹らは、脳卒中後の感覚障害患者で、鍼治療と鍼治療プラス十二井穴刺絡治療とを比較した(上海鍼灸雑誌、16年7期)。
対象=同院鍼推拿リハビリ科の外来・入院の90例(男44例・女46例)、平均年齢約41.5歳、平均罹患期間約50日、脳出血43例・脳梗塞47例。これをランダムに、鍼治療群・プラス刺絡群各45例に分けた。
治療法=鍼治療―取穴:風池・極泉・肩髃・曲池・外関・合谷・環跳・陽陵泉・足三里・懸鐘・太衝穴。0.3×50/60mmの毫鍼で、極泉・環跳穴には60mmの鍼を刺入し触電感を手足の指先に伝え、その他のツボには50mmの鍼を刺入し得気後に置鍼30分、1日1回、1週5回、4週間治療。
刺絡治療―まず十二井穴をよく揉み充血させ、三稜鍼で0.1~0.2寸刺入し、周囲を軽く圧迫し3~5滴出血させる。2日1回、1週3回、4週間治療。
評価法=フーゲル・マイヤー(Fugl - Meyer)などの評価法を使用。
結果=鍼群―臨床的回復8例・著効9例・有効13例・無効15例・総有効率66.7%、プラス刺絡群―臨床的回復18例・著効13例・有効10例・無効4例・総有効率91.1%。
☆腰痛患者で鍼通電と灸頭鍼を比較
上海市閔行区中医病院・李文順らは、腰痛患者で鍼通電と灸頭鍼の効果を比較した(上海鍼灸雑誌、16年7期)。
対象=同院鍼灸科外来患者78例(男41例・女37例)、平均年齢約40歳、平均罹患期間約6カ月。これをランダムに通電群28例・灸頭鍼群26例・薬物群24例に分けた。
治療法=各群2週間治療。
<取穴>左右の腎兪・大腸兪・委中穴および相応する夾脊穴、さらに症状により環跳・陽陵泉・崑崙穴などのツボから選択。
<刺鍼方法>患者は腹臥位、0.3×50mmの毫鍼で刺鍼(病症の虚実により補瀉手法)、患者にだるく腫れぼったい感覚を起こさせた後に置鍼。通電―患者の病状により2~3対のツボを選び、連続波で20分通電、同時に腰部を赤外線照射、2日1回。灸頭鍼―左右の腎兪・大腸兪穴で2cmの艾で毎穴2壮、2日1回。
<薬物>西洋医薬の消炎鎮痛カプセル(Celebrex)を1日3回内服。
評価法=主にマックギル疼痛質問票、VAS(視覚的アナログスケール)、日本整形外科学会とOswestryの評価スコアなど。治療前・治療1週間・治療2週間・終了後1カ月・終了後3カ月で評価。
結果=通電群28例は、治癒0例・著効16例・有効8例・無効4例・総有効率85.7%。灸頭鍼群26例は、治癒0例・著効13例・有効6例・無効7例・総有効率73.1%。薬物群24例は、治癒0例・著効9例・有効5例・無効10例・総有効率58.3%。
☆胃カメラによる吐き気・嘔吐予防には内関穴への円皮鍼プラス穴位按圧
杭州市の浙江省中医院・孫敏らは、胃カメラによる吐き気・嘔吐の予防には、内関穴への円皮鍼プラス穴位按圧が穴位按圧単独より効果的と報告した(中国鍼灸、16年11期)。
対象=心身に重篤な疾患が無く、心肺機能正常な、同院で最初に胃カメラ検査をした120例―男73例・女47例、平均年齢約37.3歳(18~65歳)。急性期の食道・胃・十二指腸疾患患者、妊娠・哺乳期の患者、急性の重症咽喉部疾患を有する患者、鎮痛剤・鎮静剤・鎮痙剤使用中の患者、コミュニケーション困難な患者、内関穴の皮膚に破損・血腫・感染・皮疹のある患者などは排除した。これをランダムに、按圧単独群・円皮鍼併用群各60例に分けた。
治療法=<穴位按圧>取穴:内関穴。胃カメラ検査15分前、治療者の母指にタルクを付け、軽く圧をかけながら持続的に回旋(120回/分)、左右のツボを交替、各穴3~5分。
<円皮鍼>上記の按圧後に、0.22×1.5mmの円皮鍼を刺入に絆創膏で固定し、胃カメラ検査終了まで患者に母指で按圧させる。
評価法=吐き気・嘔吐回数と程度(VAS)、不安感(汪向東『心理衛生評定量表手冊』1999年の心理評価40項目)。
結果=両群とも不良反応―暈鍼・切鍼・局部皮下血腫・皮膚破損など―はなかった。吐き気・嘔吐回数と程度(VAS)では、円皮鍼併用群が穴位按圧単独群より効果的で統計学的有意差があったが、不安感では両群に有意差はなかった。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
Q&A『上田がお答えいたします』 「あはき療養費の受領委任払い導入」の行方は?
Q&A『上田がお答えいたします』 「あはき療養費の受領委任払い導入」の行方は?
2017.03.10
Q.
3月1日に行われた「第13回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」を傍聴してきました。受領委任払いが導入されるような展開の議論でうれしかったのですが、本当に実現するのでしょうか?
A.
私も傍聴していました。柔整療養費と同様にあはきにも受領委任払いを導入することについて、厚労省保険局の事務方が積極的に解説していましたね。さらに、療養費を支払う側である保険者側委員2名から資料の提出があり、いずれも「あはきへの受領委任の取り扱いの導入について賛成」との内容で、これには驚きました。委員は資料だけを提出して欠席しましたが、事務局による資料説明は「現状、多くの代理受領が保険者判断として実施されているのだから、受領委任を導入して何が悪い!」というような「上から目線」になっていたので、協会けんぽと健保連の委員は驚いたことでしょう。
そもそも後期高齢者医療広域連合は、あはき療養費の8割以上を支給していることから、療養費の抑制策と不正防止対策として国の指導監査体制の構築を希望していました。そのため、後期高齢者医療代表の委員は以前から繰り返し受領委任払い導入の必要性について触れ、賛成の立場で発言しています。
それにしても、今回の議論の展開には「政治的な配慮や圧力」の存在を感じますね。業界の四大団体である日本鍼灸師会・全日本鍼灸マッサージ師会・日本あん摩マッサージ指圧師会・日本盲人会連合が与党自民党に働きかけた結果、自民党幹部や政府関係者から厚労省に「受領委任払いを導入するように」とのお達しがあった……とか。
いずれ分かることですが、問題は政府や自民党が考えるほど単純ではありません。私の予測では、この紙面でも解説してきた通り、受領委任払い導入の議論の順当な落としどころは「平成29年度においても引き続き検討を要す」として継続審議の事案とされるというところでしょう。そうなれば、「保険者側の負け」です。今後の専門委員会においてもこのテーマが最重要事項となり、保険者が望む別の適正化項目に議論が集中できなくなることで、「施術者側の勝利」といえる結果になるでしょう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
静岡県鍼灸マッサージ師会、 三島市と災害時における支援協定を締結
静岡県鍼灸マッサージ師会、 三島市と災害時における支援協定を締結
2017.03.10
県下初、公益三団体共同で
2月3日、公益社団法人静岡県鍼灸マッサージ師会と静岡県三島市は「大規模災害時における鍼灸・マッサージ施術等の支援に関する協定」を締結した。鍼灸・マッサージの団体が自治体と災害時の協定を締結するのは県下初。災害時、避難所等での施術のほか、エコノミークラス症候群の予防指導、災害対応従事者の疲労回復支援などを行う。
支援には同師会と公益社団法人静岡県鍼灸師会、公益社団法人静岡県視覚障害者協会との共同で臨む。東日本大震災では、混乱を避けるために現地入りする業界団体の一本化を希望する声が自治体などから上がったといい、静岡ではこれを教訓に、三団体の会員で構成される静岡県保険鍼灸マッサージ師会が取りまとめ役を、静岡県鍼灸マッサージ師会が窓口を務めることとなった。
静岡県保険鍼灸マッサージ師会理事・災害対策委員長の鈴井典之氏によると、鍼灸・マッサージ治療費の助成を行っている同市の長寿介護課から災害対策を担う危機管理課に働きかけてもらい、協定締結に至ったという。かねてより各会の有志らは、地元消防局による救命救急講習を受け、また、災害医療の専門家を招いて講演会を行うなどして支援への準備を進めてきた。施術だけでなく人命救助や簡単なトリアージもできるような、災害初期の要員としても役立ちたいとしている。また、東日本大震災の際に避難所となった「ビッグパレットふくしま」では鍼灸師らの予防指導によってエコノミークラス症候群の発症が無かったという実績も、協定締結の一助になったという。
大規模災害が発生した場合、「我々自身、動きが取れなくなる可能性もある」と言う鈴井氏。広域での連携の必要性を訴え、また発生の切迫性が危惧される東海地震も視野に入れ、愛知県など他県・他地域にも呼びかけて、取り組みを拡大させていきたいと語った。
連載『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』2 医学の進歩は医療費削減につながるのか?
連載『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』2 医学の進歩は医療費削減につながるのか?
2017.03.10
医学は目覚ましいほどに進歩しています。以前は難病と考えられていたAIDSや癌などの疾患でも、医学の進歩により生存率が伸び、完治までは難しくともコントロールが可能となるなど、明るい兆しが認められています。さらに今後は、iPS細胞やゲノム解析などの未知の技術や治療法が次々と開発され、ほとんどの病気が治療できるようになるかもしれません。
その一方で表面化してきたのが、前回取り上げた高額医療費の問題です。近年癌治療の分野で注目を浴びている免疫治療薬「オプジーボ」という新薬があります。この新薬は今までの薬とは異なり、免疫に作用して癌の進行を抑えるという新しい仕組みのため、従来の抗癌剤で無効だった患者にも効果が期待でき、一部の抗癌剤と併用がしやすいなどの利点があります。最近では皮膚癌に続いて肺癌に適応が拡大され、他の癌への適応拡大も期待されています。
しかし、新薬の効果以上に話題になったのが、オプジーボにかかる治療費です。オプジーボによる治療費は1人当たり年間約3500万円と試算されており、1カ月の治療費に換算すると300万近くになります。本邦ではオプジーボは保険適応である上に、高額療養費制度による負担額の軽減が認められているため、所得によっても負担額は異なりますが、月3万5千円から最大25万円で治療を受けられます。裏を返せば、患者1人につき年間3千万円以上が国の負担となるということです。もし、適応となる肺癌患者(1万5千人)がオプジーボを利用したとすれば、国の負担は6300億円とも試算されており、国の財政破綻につながる危険性まで指摘されているのです。
年間3千万円のお金で1人の命が助かるというのは素晴らしいことかもしれません。しかし、現行の医療制度を続けていけば、医学が進歩すればするほど国の負担が多くなり、破綻という結果につながりかねません。ギリシャの例を考えれば、国の財政破綻もあり得ないものとは言い切れません。
そう考えると、本邦の医療制度は限界に近づいており、変革の時期を迎えています。そのような現状を踏まえ、我々鍼灸師は、現行の医療制度の中で生き残る道を考えるのか、従来とは異なる新たなシステムができるのを待つのか、あるいは自らの手でそれを作るのかという岐路に立たされています。将来の鍼灸師のため、私たちはどの選択をするべきなのでしょうか。
【連載執筆者】
伊藤和憲(いとう・かずのり)
明治国際医療大学鍼灸学部長、鍼灸師
2002年に明治鍼灸大学大学院博士課程を修了後、同大学鍼灸学部で准教授などのほか、大阪大学医学部生体機能補完医学講座特任助手、University of Toronto,Research Fellowを経て現職。専門領域は筋骨格系の痛みに対する鍼灸治療で、「痛みの専門家」として知られ、多くの論文を発表する一方、近年は予防中心の新たな医療体系の構築を目指し活動を続けている。
『ちょっと、おじゃまします』 ~ED・男性不妊専門の鍼灸院~ 平癒堂鍼灸<大阪市淀川区>
『ちょっと、おじゃまします』 ~ED・男性不妊専門の鍼灸院~ 平癒堂鍼灸<大阪市淀川区>
2017.03.10
「勃起不全(ED)は血管と男性ホルモン、自律神経に由来する立派な病気。虚血性心疾患に先行することも多くあなどれませんが、世間では正確に理解されていないのが現状です」。そう語るのは、鍼灸師の平谷透先生。ED・男性不妊を専門とする数少ない鍼灸院『平癒堂鍼灸』の院長です。
平谷先生が東洋医学の道を意識するようになったのは、大学卒業後、紳士服メーカーの営業として激務に励む中、ストレスと過労から胃を痛めたことがきっかけでした。病院では信頼できる医師に出会えず、たどり着いたのが、故・入江正先生の漢方薬局でした。劇的な症状改善に感動し、定期的に通うようになる中で目にしたのが、入江先生の鍼治療を受けて楽になったとお礼を言う、嬉しそうな患者さんの様子。「患者さんから、お金と一緒に感謝の気持ちを受け取れる」――。その光景をとても魅力的に感じ、退職後、関西鍼灸短期大学(当時)に入学しました。
在学期間中は、入江先生から独自の脉診法を用いた治療を学ぶ一方、学校ではトリガーポイント療法の第一人者の黒岩共一教授に師事。入江式とトリガーポイント、いずれも伝統的な枠組みにとらわれない二つの治療理論が、現在まで続く治療の柱になったそうです。同短大を首席で卒業後、黒岩教授から紹介された治療院での勤務や、平成医療学園専門学校での非常勤講師の仕事を通じ、15年間、延べ約3万人もの患者さんに施術を行ってきたとか。その中で、中年期以降の男性の臀部・腰部のこわばりと、男性機能の低下の関連性に着目。腰部周辺への鍼治療で改善が見込めると考え、昨年秋、平癒堂鍼灸の開業に至りました。
平癒堂の大きな特徴はプライバシーへの配慮。完全予約制の上、待合室は入口・出口が仕切られ、治療中に次の患者さんが訪れても顔を合わせることはありません。オフィス街のビルの7階という立地もあり、目立たず来院できるとか。トリガーポイントと、入江式による自律神経へのアプローチを組み合せ、『世間の男性の性への意識を変えること』を自身のミッション(人生の目標)と定めながら、日々の治療に当たっています。
平谷透先生
48歳。平成15年、関西鍼灸短期大学(当時)卒業。同年はり師・きゅう師免許取得。平成23年、トリガーポイント健康クラブ設立。平成28年、平癒堂鍼灸開業
今日の一冊 キラーストレス 心と体をどう守るか
今日の一冊 キラーストレス 心と体をどう守るか
2017.03.10
キラーストレス 心と体をどう守るか
NHKスペシャル取材班 著
NHK出版新書 842円
東日本大震災の余震が起きた際には、脳卒中や心臓病の発作で救急搬送される人が急増した。ある女性は夫と離婚後、一人娘の子育てと仕事に追われていた時に乳癌が見つかった。知らず知らずのうちに心身を蝕んで死の遠因となる「キラーストレス」。脳や心臓、血管、免疫システムにまつわる最新の知見から、ストレスと疾患の因果関係を紐解く。ストレスフルな環境にさらされる宇宙飛行士も行っている「コーピング」や「マインドフルネス」など、ストレス対処法についても紹介する。NHKで反響を得た番組の書籍版。
編集後記
編集後記
2017.03.10
▽12日初日の大相撲春場所で話題の主は、ロシア出身で三段目の大露羅。場所前の計量で283.8キロを計測。かつて焼き肉屋で50人前を注文して、さらにラーメン鉢でご飯を4杯とラーメン6杯を食べた巨漢力士です。元大関小錦の歴代最重量にあと1.2キロ。メシ食って測り直したらと思うのは私だけ? さて、毎年親孝行で春場所のチケットを贈っていたけど、今回は両親揃って骨折で「休場」となりました。父は今年になって3回目。あまりにポキポキ折れるので、かかりつけの整骨院が病院を紹介し、86歳にして骨粗鬆症治療が始まりました。「くしゃみしても折れまっせ」。友達から脅されてるらしいけど、栄養を摂って骨密度を上げる努力をしているようです。でも決して大露羅の真似はしないでね。(松)
『ちょっと、おじゃまします』 ~鍼灸師と社会をつなぐ~ 次世代はりきゅうレボリューションズ
『ちょっと、おじゃまします』 ~鍼灸師と社会をつなぐ~ 次世代はりきゅうレボリューションズ
2017.02.25
鍼灸が「必要な選択肢の一つ」であることを伝えていきたい。鍼灸師と社会をつなぎたい――。そんな思いから、鍼灸師・あマ指師の伊藤由希子さんと、鍼灸師・あマ指師で理学療法士(PT)の白石哲也さんは昨年、「次世代はりきゅうレボリューションズ(はりレボ)」を立ち上げました。医師や看護師、介護士などを招いて多職種で語り合うワークショップやセミナーを開くとともに、教員やトレーナーといった様々な職域の若手鍼灸師にインタビュー取材を行い、彼らの活躍をホームページから発信しています。
伊藤さんは元々、心理カウンセラーを目指して大学で心理学を学んでいました。授業で、心身両面をケアできる東洋医学に触れて大いに惹かれたといい、大学卒業後、鍼灸・マッサージの専門学校へ。一方、学生の頃、陸上競技に打ち込んでいた白石さんは、陸上に関わる仕事がしたいと、PTの免許を取得してスポーツ整形外科に勤務。さらに、競技者時代にお世話になっていた鍼灸・マッサージの資格も取りました。希望を胸に抱いていたお二人ですが、鍼灸の認知度の低さや、受療率が数パーセントに満たないといった現実に直面。現場レベルからの業界の地位向上、発展の道を模索するようになります。杖にすがらなければ歩けなかった祖父が、鍼灸治療によって杖無しで歩けるようになったという伊藤さん。訪問看護事業所でリハビリ職を務めていたこともあり、鍼灸の介入があればQOLの改善が見込めそうな利用者さんを数多く見てきたという白石さん。そんな経験から、「介護・福祉業界にも鍼灸治療を広めたい」とそれぞれに考えていた折、偶然、同じセミナーに参加。お二人の思いを聞いた主催者に引き合わされて意気投合し、はりレボ設立に至りました。
今後は、鍼灸業界の課題や新しい働き方について考えたり、業界のトップランナーの話を聞いて見識を深めたりする場を設けたいといい、さらに、養成学校の学生に、鍼灸師の可能性、職域の多様性について知ってもらえるような活動も行っていきたいとのことです。
今日の一冊 サイレント・ブレス
今日の一冊 サイレント・ブレス
2017.02.25
サイレント・ブレス
南 杏子 著
幻冬舎 781円
「死んでいく患者も、愛してあげてよ――」。大学病院で知識と技術の研鑽に明け暮れていた医師の水戸倫子は、突如、終末期を扱う訪問クリニックに異動となり、数々の看取りを経験することになる。ベテラン内科医である著者が終末期医療の在り方を問う、渾身の書き下ろし小説。若くして乳癌を患いながらも、不敵とも取れる態度を貫いた女性ジャーナリストの真意。人工呼吸器に命をつながれながらも前向きに生きた青年の突然の死。そして、父との別れ――。胸を打ち、考えを新たにさせられる六つのストーリー。
編集後記
編集後記
2017.02.25
▽妻から休肝日の導入を言い渡されました。昨年末の健康診断での尿酸値の高さが原因です。しかも昨春に原因不明の足先のしびれがあった際、痛風の疑いを掛けられていたのがこれを後押し。妻いわく、尿酸には「プリン体」とやらが悪いようで、プリン体カットのビールの日も設定されてしまいました。さらに追い打ちを掛けるように右目が白内障に。こちらは「水晶体」が悪いようです。医者から手術以外に「白く濁った視界」の改善の道は無いと言われ、術後1週間はアルコールを控えるようにと指示されました。この休肝ウィークはノンアルコールビールで対応。ただ冷蔵庫に並ぶ色とりどりの缶を見た妻から「アルコールだけ減って酒代は減っていない」と。これは親父の血筋なので、「染色体」が悪い?(和)
柔整療養費検討専門委員会 第10回会議 審査会強化、承認されるも課題残す
柔整療養費検討専門委員会 第10回会議 審査会強化、承認されるも課題残す
2017.02.25
2月15日、柔道整復療養費検討専門委員会の第10回会議が都内で開かれた。「平成29年度に実施を予定しているもの」として、事務局の厚労省により提示された柔整審査会の権限強化を含む「審査・指導監督」関連の改正案に議論が集中した。全委員の間で実施に向けた一応の合意は形成されたが、柔整審査会の組織上の不備等を指摘する声もあり、今後さらなる見直しの必要性が確認された。
審査体制に「利益相反」との指摘も
改正案には、柔整審査会について、▽「部位転がし」を審査項目に追加する、▽不正請求の疑いの強い施術所に資料提出や説明を求めることができる、▽必要に応じて施術所に通院の履歴が分かる資料の提示を求めることができる、といった権限強化策などが盛り込まれている。以前から業界側が主張してきた意見が強く反映された内容となった。
そんな中、今回、全国柔道整復師連合会(全整連)の田村公伸氏から、現状の柔整審査会の審査員構成に偏りがあるとの指摘が出た。田村氏は「保険者、学識経験者、施術者の各立場からなる三者構成で審査が実施されているが、例えば、保険者審査員に開業整形外科医が、学識経験者の審査員に元協会けんぽ職員が務めている場合があり、また施術者審査員は日整社団の者がほとんどを占めていると聞く」と述べた上で、厚労省に対し、審査員委嘱の不透明性の是正とともに、全国の審査員構成の実態を早急に調査するよう求めた。この発言後、すぐさま健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏から「自らの団体に所属する柔整師の申請書を見て、これは利益相反に当たらないのか」との疑問も呈された。
また、幸野氏は「月に1回しか開催されていない柔整審査会で、新たに施術所を調査するといった業務が課せられるが、現状の短い審査時間でそれらも実施できるのか」と指摘し、開催頻度を週1回に増やすなど柔整審査会の体制自体を抜本的に見直さなければ、権限強化策を盛り込んだ今回の改正案の効果は見込めないと主張した。これらを受け、伊藤宣人氏(日本柔道整復師会理事)は「日整の審査員は、日整所属以外の柔整師の申請書を審査しているところも中にはある」と反論。厚労省は、柔整審査会の審査員構成の調査について、まず実施するのか否かを検討し、実施した場合は今後の専門委員会で報告すると回答した。
議論の終盤、座長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部教授)が、過去の専門委員会でも多くの時間を割き、厚労省も「平成29年度に実施を予定しているもの」と位置付けて具体案を示しているとの理由から、改正案の決議を行った。柔整審査会の権限強化を図る点には業界側、保険者側とも了承し、一応の合意は形成されたが、幸野氏が「今回の権限強化策だけで審査が強化されたと考えるのは大間違いで、柔整審査会の体制の見直しがまだまだ必要だ」と引き続きの審議を求めた。
なお、前述の田村氏の発言に対して、日本柔道整復師会保険部長の三橋裕之氏から「その発言は全整連としての発言か」との質問が上がり、田村氏が「個人的な意見」と回答し、また全整連会長の田中威勢夫氏が「田村氏の発言は全整連の立場からではない」と発言するといった場面があり、業界側委員間で意見集約が徹底されていない面が表出する一幕が見られた。
このほか、施術管理者の要件追加や亜急性の解釈などが議論され、また、「不適切な広告」の是正について、全国調査を実施するよう厚労省に複数の委員から要望があった。
『医療は国民のために』218 柔整・あはきへの電子カルテ導入の必要性
『医療は国民のために』218 柔整・あはきへの電子カルテ導入の必要性
2017.02.25
医科での診療録(カルテ)の電子化が確実に進んできている。社会保険診療報酬明細書(レセプト)の電子申請化はほぼ完了し、カルテとレセプトとの作成が連動するシステムの普及が背景にあるようだ。ただ意外なことに、レセプトの電子申請化が90%を超える中、電子カルテの普及率は400床以上の一般病棟で82.5%であり、一般診療所においては36.2%(平成27年度調査実績)だという。とはいえ、今後も大いに進捗していくことは期待される。その電子カルテの有用・有益さとしては、
①患者への病状説明に当たり貴重な説明ツールとして武器となることから、患者の信頼獲得に直結する
②見やすい画面構成により他院との差別化が図れる
③医療スタッフのカルテ整備に係る事務処理作業の軽減につながる
の3点が挙げられる。そして、カルテとは、まさに「治療行為の事実の根拠」であり、治療を行う者はその整備をしなければならない。これをこの業界に置き換えて考えてみよう。
療養費という医療保険はもちろん、労災、生活保護、また交通事故に対する自賠責でも、当然カルテの整備は求められている。具体的に、柔整療養費では「受領委任の取扱規程20」や「算定基準の実施上の留意事項第6」によって、カルテの作成と5年間の保存期間を求めている。あはき療養費でも、柔整ほど明確な規定はないが、課長通知による留意事項に施術録の記載事例が示されている。
ただ、柔整師や鍼灸マッサージ師には文書作成が苦手な者も少なくないであろう。だからこそ、電子カルテの導入だ。「文書が書けない、書きたくない」という施術者にとっては、カルテ作成に当たっての必須のアイテムになることは間違いない。さらに今後、確実に普及が見込まれる理由が、柔整・あはきの両療養費検討専門委員会での議論の中に明快に見いだせる。昨秋に示された「療養費検討専門委員会における議論の整理に係る対応スケジュール」によれば、柔整審査会の権限を強化し、不正請求の疑いが強い施術所に資料の提出や説明を求める仕組みを、早ければ平成29年度から実施を目指したいとされていることに着目すべきだ。ここでいう「資料の提出」の「資料」とは、具体的には「カルテ」と「問診票」であることは言うまでもない。すなわち、カルテを作成していない者は、今後、保険請求から「撤退」させられるといった環境が整いつつあると見るべきだ。
医科では既にe―文書法により、一定の評価を得ているが、療養費ではまだまだ認知されてはおらず、あくまで保険請求の証拠・証明は「紙媒体」で保管となっているのが現状だ。しかし、医科・歯科・調剤と同様に、今後必ず電子カルテの認知が進んでいくことになるだろう。柔整とあはきの業界は、療養費の取扱い高の拡大を目指すのであれば、早急に電子カルテを導入し、事業展開すべきであり、このことを行政・保険者に対して積極的にアピールしていかねばならない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
あはき療養費検討専門委員会 第12回会議
あはき療養費検討専門委員会 第12回会議
2017.02.25
業界「あはき独自の新たな受領委任を」
保険者「保険者機能を発揮する環境が先」
2月15日、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会の第12回会議が都内で開かれた。昨年末より月1、2回のペースで開催されており、平成28年度中に明確な方向性を示すと期限を定めている「受領委任導入」について議論が行われた。
保険者側委員の髙橋直人氏(全国健康保険協会理事)は、事務局の厚労省が今回提示した、償還払いと代理受領と受領委任での不正・給付費を比較した資料(下図参照)に言及。代理受領から受領委任に変更した場合、不正や給付費は変わらないとする記載に対し、「資料の作り方がおかしい。受領委任を持ち出さなくても、単に代理受領において、施術所としか契約できず、請求代行業者とは契約できないとする規制を加えれば良いだけだ」と厚労省に疑念を示した。これに対し、日本鍼灸師会理事の中村聡氏が、あはき療養費の請求は後期高齢者医療広域連合と市町村国保が大半を占めており、その後期高齢者医療広域連合では全都道府県、国保では7割以上が代理受領に応じている現状を鑑みれば、給付費は変わらず、ましてや急増するとは考えにくく、また受領委任導入で施術所の指導監督も可能になると主張した。
■厚労省提出の支払方法で比較した図
全日本鍼灸マッサージ師会副会長の往田和章氏は、「柔整の受領委任をそのままあはき療養費に導入してほしいと要望しているわけではない」と新たな仕組みとしての導入を提案。鍼灸・あん摩マッサージと柔道整復では、疾患や年齢など患者層は大きく異なり、医師の同意という存在が適正な運用に寄与する点を強調した。有識者委員の清水惠一郎氏(東京内科医会副会長)は、「高齢社会が進展し、疾病構造が変わってきたので、当然柔整とは異なる新しいシステムを作らなければならない。でなければ、この議論は永遠に続いてしまい、その間、困るのは患者さんです」と述べた。
保険者側は依然として受領委任導入に強く反対しており、今以上に保険者機能を発揮できるよう国が推進・指導していくことが適正化につながるとし、この議論よりも優先すべきだと求めた。
WFAS Tokyo/Tsukuba2016 実行・運営委員会 「10年後の実行委員会に残すべき事柄」総括
WFAS Tokyo/Tsukuba2016 実行・運営委員会 「10年後の実行委員会に残すべき事柄」総括
2017.02.25
鍼灸界の結束、次のステップへ
昨年11月5日、6日、23年ぶりに日本で開催された鍼灸の国際学会、WFAS Tokyo/Tsukuba2016を締めくくる総括の場として、2月5日、実行・運営委員会が東京都内で行われた。「10年後の実行委員会に残すべき事柄」を議案として大会を振り返った。
各種調査では、大会来場者から「現在の日本鍼灸を知る上で大変意義のある大会」「多くの海外の方も興味深く見学されていた」と実技を中心に好意的な評価が寄せられた一方、来場者やスタッフから「演者を増やし過ぎて一人当たりの講演時間が短い」「スタッフの負担配分が偏った」といった指摘もあった。また、「中国の演者が、血液が付着した酒精綿を再度使用した」「線香を持参して着火した演者がいた」などのトラブルも挙げられた。形井秀一副会頭は、フランスの団体間で起きた衝突を報告。同国の法律では鍼灸施術は医師が行う一方、EU法の加盟国の事情を反映する原則から非医師系の鍼灸関連団体も存在し、両者が参加していたという。形井氏は「他国に介入はできないが、事前に関係を知っておけば柔軟に対応できる」と、参加者の事情に通じておくことを呼びかけた。
なお、大会後に発売された、全実技セッションの様子を収めたDVDは既に2百枚以上を製作したといい、今後も長期的に受け付けていくとされた。
第13回統合医療展2017 医療、ヘルスケアの商材・サービスが集結
第13回統合医療展2017 医療、ヘルスケアの商材・サービスが集結
2017.02.25
介護食・生活支援・保険外サービス展も併催
『第13回統合医療展2017』が1月25日、26日、「治療から予防への転換、新たな医療体系を提案する」をテーマに、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。
高齢者食・介護食の展示会『メディケアフーズ展』、『高齢者生活支援サービス展』、『保険外サービス展』との併催。4展合計で284の企業・団体等が、医療・介護、ヘルスケアに関わる商品やサービスを来場者に紹介した。2日間の総来場者数は1万4213人で、前回を132人上回った。
同展後援団体の一つ、公益社団法人日本鍼灸師会(日鍼会)が、セイリン株式会社(静岡市)、株式会社山正(滋賀県長浜市)とともに出展。同師会員らが来場者に鍼灸の魅力を伝え、簡単な施術を行うなどのPR活動を展開。セイリンと山正は商品紹介スペースを設け、パッチ鍼や台座灸などを配布した。看護師や介護福祉士、ケアマネジャーなどの医療・介護関係者が数多く訪れ、好評を博していたという。
他職種へ鍼灸をアピール
会場では出展者や有識者らによるセミナー、講演も多数開催された。日鍼会地域ケア推進委員会委員長の松浦正人氏は『鍼灸刺激の適応事例と他専門職との連携方法』をテーマに講演。鍼灸治療の概要や鍼灸師の教育制度に触れた後、急性腰痛や下肢の痺れ、五十肩など、鍼灸治療が保険適用となった症例を報告した。また松浦氏は他職種連携の一環として、「何のためにどのような治療を行ったか」、「施術前後の患者の様子や変化」、「会話の内容」などを詳細に記した報告書を、患者の主治医、利用している訪問看護ステーション、介護支援事業所といった関係各所に必ず提出していると述べた。
本紙で連載中の織田聡氏(一般社団法人日本統合医療支援センター代表理事)も登壇し、『統合医療から編成医療へ―2025年までに医療介護をこう変える』と題してセミナーを行った。
次回開催は平成30年1月24日、25日、同じく東京ビッグサイトの予定。