Q&A『上田がお答えいたします』 「あはき療養費の受領委任払い導入」の行方は?
2017.03.10
Q.
3月1日に行われた「第13回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」を傍聴してきました。受領委任払いが導入されるような展開の議論でうれしかったのですが、本当に実現するのでしょうか?
A.
私も傍聴していました。柔整療養費と同様にあはきにも受領委任払いを導入することについて、厚労省保険局の事務方が積極的に解説していましたね。さらに、療養費を支払う側である保険者側委員2名から資料の提出があり、いずれも「あはきへの受領委任の取り扱いの導入について賛成」との内容で、これには驚きました。委員は資料だけを提出して欠席しましたが、事務局による資料説明は「現状、多くの代理受領が保険者判断として実施されているのだから、受領委任を導入して何が悪い!」というような「上から目線」になっていたので、協会けんぽと健保連の委員は驚いたことでしょう。
そもそも後期高齢者医療広域連合は、あはき療養費の8割以上を支給していることから、療養費の抑制策と不正防止対策として国の指導監査体制の構築を希望していました。そのため、後期高齢者医療代表の委員は以前から繰り返し受領委任払い導入の必要性について触れ、賛成の立場で発言しています。
それにしても、今回の議論の展開には「政治的な配慮や圧力」の存在を感じますね。業界の四大団体である日本鍼灸師会・全日本鍼灸マッサージ師会・日本あん摩マッサージ指圧師会・日本盲人会連合が与党自民党に働きかけた結果、自民党幹部や政府関係者から厚労省に「受領委任払いを導入するように」とのお達しがあった……とか。
いずれ分かることですが、問題は政府や自民党が考えるほど単純ではありません。私の予測では、この紙面でも解説してきた通り、受領委任払い導入の議論の順当な落としどころは「平成29年度においても引き続き検討を要す」として継続審議の事案とされるというところでしょう。そうなれば、「保険者側の負け」です。今後の専門委員会においてもこのテーマが最重要事項となり、保険者が望む別の適正化項目に議論が集中できなくなることで、「施術者側の勝利」といえる結果になるでしょう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。




