日本AT学会の第7回学術大会 スポーツ中の心臓突然死、どこでも
2018.08.10
一般社団法人日本アスレティックトレーニング学会(広瀬統一代表理事)の第7回学術大会が7月7日、8日、横浜市内で開催された。同学会は、学問領域としてのアスレティックトレーニング学の確立、アスレティックトレーナーの社会的認知の向上等を目的に平成24年に設立。学術大会には2日間で約380人が集まった。
教育講演1『スポーツ現場における心臓突然死ゼロを目指して』では、医師で慶應義塾大学スポーツ医学研究センター専任講師の真鍋知宏氏が登壇した。発症後24時間以内に死亡する「突然死」は国内で年間7万人に上り、その6割以上は「心臓性突然死」だと説明。スポーツ中の事例では、2011年夏にサッカー元日本代表選手、2012年ロンドン五輪前のノルウェー水泳選手がともに急性心筋梗塞で帰らぬ人となり、社会的に話題に上ったが、その原因・発生頻度を含む統計データは乏しく、詳細な検討があまり行われていないと指摘した。その中で真鍋氏自身が関わった近年の調査に触れ、2011年4月から2018年3月までの461のマラソン大会(総参加数300万人以上)において、57例の心肺停止例があったとし、その発生率は「10万人あたり1.69人」だったと報告。また、心肺停止と走行距離・時間との間に相関はみられず、「どの地点でも心肺停止は起こり得る」と強調した。さらに、全競技を調査対象に、日本臨床スポーツ医学会が2016年より実施している『J-SPORTSCAR study』にも言及し、現時点で心臓超音波検査などのメディカルチェックが予防に有用だと示されていると話した。
高校運動部でトレーナー介入増
国際武道大学の西山侑汰氏による一般演題『高校運動部活動におけるトレーナー介入実態の経年的推移』では、ある大学の2011年度から2018年度までの新入生(3,937名)に対し、「高校の部活動でトレーナーがいたか」と質問したところ、2015年度以降はトレーナー介入率が45~52%で、増加傾向にあると報告された。サッカー・陸上・野球部での介入が目立ち、介入内容は「治療(マッサージなど)」の回答が多かったとした。
このほか、杉山ちなみ氏(株式会社リボンプロジェクト)の大会長講演『アスレティックトレーニング学のアートを探る』などが行われた。