連載『柔道整復と超音波画像観察装置』153 ファベラの超音波画像観察
2017.12.25
田中 正樹(筋・骨格画像研究会)
ファベラは、腓腹筋外側頭の起始部にまれに見られる種子骨であり、出現率は10%程度だと言われている。ファベラが存在するというだけでは疼痛を引き起こすことはないとされているが、ファベラそのものの骨折や骨軟骨炎、ファベラに圧迫されることによる腓骨神経障害などが発生する可能性があるので軽視はできない。
1977年、ウィーナーらは、ファベラにおける鋭い疼痛・限局した圧痛・膝伸展時痛の3症状が見られる疾患を「ファベラ症候群」と報告している。これら3症状のほかに腰部前屈制限や膝伸展制限があり、起立位におけるかかと立ち及びつま先立ちで、膝関節後面外側顆に疼痛を認めることもある。ファベラ症候群は、診察する者に疾患の概念が無い場合、膝関節炎や半月板損傷、腸脛靱帯炎などと混同されてしまうケースがある。
ファベラ症候群が疑われる際に超音波画像観察装置(エコー)を用いる場合、ファベラ周囲の軟部組織やfabello-femoral(ファベロ・フェモラル)関節を観察していかなければならない。ファベラには、骨性ファベラと軟骨性ファベラがある。骨性ファベラは音響陰影を伴う高エコー像、軟骨性ファベラは卵円形の低エコー像として描出される。正常例の後外方長軸走査では、大腿骨外側顆の関節面が半円状の高輝度線に描出されるが【画像①】、骨性ファベラが出現する画像では、ファベラより深部は無エコーとなり、ファベロ・フェモラル関節は見ることができない【画像②】。また、短軸走査でもファベラより深部の関節面は無エコーになり、描出されない【画像③】。その場合は膝外側走査を行い、大腿外側顆とファベラが同時に描出されるようにする【画像④】。
ファベラによる疼痛の原因は、関節症性変化や軟部組織の炎症、滑膜炎などが考えられる。よってエコー画像の着目点は、関節面の不整、ファベロ・フェモラル関節周囲の低エコー像などだが、ファベラと外側顆によってアーチファクト(虚像)が映ることがあり、それらが低エコーを有するので、その影を炎症画像と混同しないように注意しなければならない。
エコーでファベラを観察する際は、エコーの特性をよく理解してプローブを当てる方向を考慮し、アーチファクトの存在も意識しつつ、鑑別につなげる必要がある。