柔整療養費検討専門委員会 第9回会議 厚労省の審査会権限強化案、批判集まる
2017.07.25
審査会の体制や法的根拠から問題提起
1月18日、柔道整復療養費検討専門委員会の第9回会議が都内で開かれた。平成29年度からの実施に向けた療養費の見直し案などが厚労省により示され、柔整業界や保険者の委員らが議論を行った。柔整審査会の権限強化に関する案に対しては多くの指摘が挙がった。
(さらに…)
柔整療養費検討専門委員会 第9回会議 厚労省の審査会権限強化案、批判集まる
柔整療養費検討専門委員会 第9回会議 厚労省の審査会権限強化案、批判集まる
2017.07.25
審査会の体制や法的根拠から問題提起
1月18日、柔道整復療養費検討専門委員会の第9回会議が都内で開かれた。平成29年度からの実施に向けた療養費の見直し案などが厚労省により示され、柔整業界や保険者の委員らが議論を行った。柔整審査会の権限強化に関する案に対しては多くの指摘が挙がった。
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柔整療養費検討専門委員会 第10回会議 審査会強化、承認されるも課題残す
柔整療養費検討専門委員会 第10回会議 審査会強化、承認されるも課題残す
2017.02.25
2月15日、柔道整復療養費検討専門委員会の第10回会議が都内で開かれた。「平成29年度に実施を予定しているもの」として、事務局の厚労省により提示された柔整審査会の権限強化を含む「審査・指導監督」関連の改正案に議論が集中した。全委員の間で実施に向けた一応の合意は形成されたが、柔整審査会の組織上の不備等を指摘する声もあり、今後さらなる見直しの必要性が確認された。
審査体制に「利益相反」との指摘も
改正案には、柔整審査会について、▽「部位転がし」を審査項目に追加する、▽不正請求の疑いの強い施術所に資料提出や説明を求めることができる、▽必要に応じて施術所に通院の履歴が分かる資料の提示を求めることができる、といった権限強化策などが盛り込まれている。以前から業界側が主張してきた意見が強く反映された内容となった。
そんな中、今回、全国柔道整復師連合会(全整連)の田村公伸氏から、現状の柔整審査会の審査員構成に偏りがあるとの指摘が出た。田村氏は「保険者、学識経験者、施術者の各立場からなる三者構成で審査が実施されているが、例えば、保険者審査員に開業整形外科医が、学識経験者の審査員に元協会けんぽ職員が務めている場合があり、また施術者審査員は日整社団の者がほとんどを占めていると聞く」と述べた上で、厚労省に対し、審査員委嘱の不透明性の是正とともに、全国の審査員構成の実態を早急に調査するよう求めた。この発言後、すぐさま健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏から「自らの団体に所属する柔整師の申請書を見て、これは利益相反に当たらないのか」との疑問も呈された。
また、幸野氏は「月に1回しか開催されていない柔整審査会で、新たに施術所を調査するといった業務が課せられるが、現状の短い審査時間でそれらも実施できるのか」と指摘し、開催頻度を週1回に増やすなど柔整審査会の体制自体を抜本的に見直さなければ、権限強化策を盛り込んだ今回の改正案の効果は見込めないと主張した。これらを受け、伊藤宣人氏(日本柔道整復師会理事)は「日整の審査員は、日整所属以外の柔整師の申請書を審査しているところも中にはある」と反論。厚労省は、柔整審査会の審査員構成の調査について、まず実施するのか否かを検討し、実施した場合は今後の専門委員会で報告すると回答した。
議論の終盤、座長の遠藤久夫氏(学習院大学経済学部教授)が、過去の専門委員会でも多くの時間を割き、厚労省も「平成29年度に実施を予定しているもの」と位置付けて具体案を示しているとの理由から、改正案の決議を行った。柔整審査会の権限強化を図る点には業界側、保険者側とも了承し、一応の合意は形成されたが、幸野氏が「今回の権限強化策だけで審査が強化されたと考えるのは大間違いで、柔整審査会の体制の見直しがまだまだ必要だ」と引き続きの審議を求めた。
なお、前述の田村氏の発言に対して、日本柔道整復師会保険部長の三橋裕之氏から「その発言は全整連としての発言か」との質問が上がり、田村氏が「個人的な意見」と回答し、また全整連会長の田中威勢夫氏が「田村氏の発言は全整連の立場からではない」と発言するといった場面があり、業界側委員間で意見集約が徹底されていない面が表出する一幕が見られた。
このほか、施術管理者の要件追加や亜急性の解釈などが議論され、また、「不適切な広告」の是正について、全国調査を実施するよう厚労省に複数の委員から要望があった。
『医療は国民のために』218 柔整・あはきへの電子カルテ導入の必要性
『医療は国民のために』218 柔整・あはきへの電子カルテ導入の必要性
2017.02.25
医科での診療録(カルテ)の電子化が確実に進んできている。社会保険診療報酬明細書(レセプト)の電子申請化はほぼ完了し、カルテとレセプトとの作成が連動するシステムの普及が背景にあるようだ。ただ意外なことに、レセプトの電子申請化が90%を超える中、電子カルテの普及率は400床以上の一般病棟で82.5%であり、一般診療所においては36.2%(平成27年度調査実績)だという。とはいえ、今後も大いに進捗していくことは期待される。その電子カルテの有用・有益さとしては、
①患者への病状説明に当たり貴重な説明ツールとして武器となることから、患者の信頼獲得に直結する
②見やすい画面構成により他院との差別化が図れる
③医療スタッフのカルテ整備に係る事務処理作業の軽減につながる
の3点が挙げられる。そして、カルテとは、まさに「治療行為の事実の根拠」であり、治療を行う者はその整備をしなければならない。これをこの業界に置き換えて考えてみよう。
療養費という医療保険はもちろん、労災、生活保護、また交通事故に対する自賠責でも、当然カルテの整備は求められている。具体的に、柔整療養費では「受領委任の取扱規程20」や「算定基準の実施上の留意事項第6」によって、カルテの作成と5年間の保存期間を求めている。あはき療養費でも、柔整ほど明確な規定はないが、課長通知による留意事項に施術録の記載事例が示されている。
ただ、柔整師や鍼灸マッサージ師には文書作成が苦手な者も少なくないであろう。だからこそ、電子カルテの導入だ。「文書が書けない、書きたくない」という施術者にとっては、カルテ作成に当たっての必須のアイテムになることは間違いない。さらに今後、確実に普及が見込まれる理由が、柔整・あはきの両療養費検討専門委員会での議論の中に明快に見いだせる。昨秋に示された「療養費検討専門委員会における議論の整理に係る対応スケジュール」によれば、柔整審査会の権限を強化し、不正請求の疑いが強い施術所に資料の提出や説明を求める仕組みを、早ければ平成29年度から実施を目指したいとされていることに着目すべきだ。ここでいう「資料の提出」の「資料」とは、具体的には「カルテ」と「問診票」であることは言うまでもない。すなわち、カルテを作成していない者は、今後、保険請求から「撤退」させられるといった環境が整いつつあると見るべきだ。
医科では既にe―文書法により、一定の評価を得ているが、療養費ではまだまだ認知されてはおらず、あくまで保険請求の証拠・証明は「紙媒体」で保管となっているのが現状だ。しかし、医科・歯科・調剤と同様に、今後必ず電子カルテの認知が進んでいくことになるだろう。柔整とあはきの業界は、療養費の取扱い高の拡大を目指すのであれば、早急に電子カルテを導入し、事業展開すべきであり、このことを行政・保険者に対して積極的にアピールしていかねばならない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
第13回統合医療展2017 医療、ヘルスケアの商材・サービスが集結
第13回統合医療展2017 医療、ヘルスケアの商材・サービスが集結
2017.02.25
介護食・生活支援・保険外サービス展も併催
『第13回統合医療展2017』が1月25日、26日、「治療から予防への転換、新たな医療体系を提案する」をテーマに、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。
高齢者食・介護食の展示会『メディケアフーズ展』、『高齢者生活支援サービス展』、『保険外サービス展』との併催。4展合計で284の企業・団体等が、医療・介護、ヘルスケアに関わる商品やサービスを来場者に紹介した。2日間の総来場者数は1万4213人で、前回を132人上回った。
同展後援団体の一つ、公益社団法人日本鍼灸師会(日鍼会)が、セイリン株式会社(静岡市)、株式会社山正(滋賀県長浜市)とともに出展。同師会員らが来場者に鍼灸の魅力を伝え、簡単な施術を行うなどのPR活動を展開。セイリンと山正は商品紹介スペースを設け、パッチ鍼や台座灸などを配布した。看護師や介護福祉士、ケアマネジャーなどの医療・介護関係者が数多く訪れ、好評を博していたという。
他職種へ鍼灸をアピール
会場では出展者や有識者らによるセミナー、講演も多数開催された。日鍼会地域ケア推進委員会委員長の松浦正人氏は『鍼灸刺激の適応事例と他専門職との連携方法』をテーマに講演。鍼灸治療の概要や鍼灸師の教育制度に触れた後、急性腰痛や下肢の痺れ、五十肩など、鍼灸治療が保険適用となった症例を報告した。また松浦氏は他職種連携の一環として、「何のためにどのような治療を行ったか」、「施術前後の患者の様子や変化」、「会話の内容」などを詳細に記した報告書を、患者の主治医、利用している訪問看護ステーション、介護支援事業所といった関係各所に必ず提出していると述べた。
本紙で連載中の織田聡氏(一般社団法人日本統合医療支援センター代表理事)も登壇し、『統合医療から編成医療へ―2025年までに医療介護をこう変える』と題してセミナーを行った。
次回開催は平成30年1月24日、25日、同じく東京ビッグサイトの予定。
連載『柔道整復と超音波画像観察装置』143 胸郭出口症候群の一症例
連載『柔道整復と超音波画像観察装置』143 胸郭出口症候群の一症例
2017.02.25
松本 尚純(筋・骨格画像研究会)
スマートフォンの普及が進むにつれ、過度の操作や長時間にわたる使用などによって、ストレートネックや手の痺れなど、上肢に障害を抱えた患者が増えてきている。今回は、胸郭出口症候群について述べる。
患者は40歳女性。最近、ヨガを習い始めた。手を挙げるようなポーズをとると、途端に左手が痺れるという主訴で来院。左手を少しでも挙げると、痺れ感や知覚異常、冷え感が直ちに発生するという。以前は、このような症状をあまり感じなかったとのことである。左上肢のアドソンテスト陰性、ライトテスト陽性、モーリーテスト陰性、ルーステスト陽性、エデンテスト陽性、アレンテスト測定不能。
徒手検査では斜角筋症候群ではなく過外転症候群が疑われたが、念のため超音波画像観察装置で斜角筋や腕神経叢、鎖骨下動脈、腋窩動脈を描出してみた。
前斜角筋、中斜角筋、腕神経叢、総頸動脈を描出したのが、【画像①】と【画像②】である。烏口突起をランドマークに腋窩動脈を描出したのが【画像③】、腋窩動脈の長軸が【画像④】。肩関節90°外転、外旋位、肘関節90°屈曲位で描出したのが【画像⑤】である。小胸筋により圧迫され、血行が失われているように見える。
このように、患者には視覚的に患部の状況を見せて、治療方針を説明していく必要があると考える。
厚労省 平成26年度の保険者別療養費
厚労省 平成26年度の保険者別療養費
2017.02.25
マッサージと鍼灸、後期高齢者が突出
厚生労働省保険局調査課が昨年末に公表した『医療保険に関する基礎資料』において、平成26年度の保険者別療養費の状況が示された。あん摩マッサージとはり・きゅうで、後期高齢者医療制度の全体に占める割合の高さが目立つ結果となった。
※療養費計は「補装具」「その他」も含む
※各療養費の保険者別の割合を示した円グラフは、上記医療費をもとに作成
『医療は国民のために』217 柔整業界は総力をあげて「亜急性論争」を後押しだ
『医療は国民のために』217 柔整業界は総力をあげて「亜急性論争」を後押しだ
2017.02.10
1月18日の第9回柔整療養費検討専門委員会では、全国柔道整復師連合会(全整連)所属の業界側委員が「亜急性」に関する重要な意見を述べていた。世界の約17言語に翻訳され、長年診断と治療のスタンダードとして活用されている医学情報『メルクマニュアル(The Merck Manual)』を持ち出し、その中の「スポーツ損傷」の箇所で解説されている「酷使(Overuse injuries)」が柔整師の保険対象としての負傷であることを懸命に主張したのである。 (さらに…)
寄稿 「亜急性」への柔整業界からの提言
寄稿 「亜急性」への柔整業界からの提言
2017.02.10
現在、柔整療養費検討専門委員会で「亜急性の外傷」の解釈を巡って、柔整側委員と有識者委員の整形外科医との間で意見の対立がみられ、議論は平行線をたどっている。そんな中、柔道整復学科を設置する宝塚医療大学(兵庫県宝塚市)から、医科学的視点からの論考を加えた亜急性に対する提言が本紙に寄せられた。
柔道整復師の亜急性の範疇について「日本と世界のオーバーユースの位置付けの違いから」
社会保障審議会医療保険部会の柔道整復療養費検討専門委員会で、療養費に係る柔道整復師業務について議論が繰り広げられている、特にオーバーユースoveruse(以下「overuse」という)についての議論がなされた。柔整師が日常取り扱う外傷にはスポーツによるものも多く、その症例はシンスプリントや野球肘、アキレス腱炎、Osgood-Schlatter病等、多くを取り扱う。しかし、一般的な日本の整形外科書では、スポーツ外傷sports injuryとスポーツ障害sports disturbance(overuse酷使も含まれる)の分類が示されている。
これらの分類によると、スポーツ外傷(骨折・脱臼・靭帯損傷・肉離れ等)は急性期に起こる柔整師の業務範囲内であり、スポーツ障害(肩関節亜脱臼症候群・肩インピンジメント症候群・野球肘・ジャンパー膝・シンスプリント等)は時間の経過とともに症状が現れる亜急性とされ、原因も急性期のように明確ではない。また、疾患名が記載されているため業務範囲外と位置付けられている。しかし、柔整師の業務範囲は所謂「外傷(傷害)」であるが、従前より「障害」も「overuse」も業務の範疇である。そこで、日本の整形外科書に示されているこれらの分類は世界的基準によるものなのかを検証した。
整形外科先進国である英国のオックスフォード大学が出版している「The Oxford Dictionary of Science and Medicine」では、『運動、動作の過剰な負荷や頻度の増加、あるいは低負荷ではあるが長時間の強制により身体に過度の負荷がかかることに起因する損傷は、「使い過ぎ損傷overuse injury」』と位置付けられている。また、『身体ストレスの多い状況で繰り返し運動をすることによって生じた病理的徴候が、「痛み」となって症状に現れるものを「使い過ぎ症候群overuse syndrome」』と紹介されている。これらはoveruse injuryであり、「ある程度の運動が許容される場合」と「安静が必要とされる場合」の二つに分類されているのみで、障害disturbanceという分類は示されていない。
米国では、「メルクマニュアルMSD MANUAL(医学事典)」がスポーツ損傷sports injuryの中にoveruseを位置付けている。ただし、スポーツ外傷とスポーツ障害のような分類は無く、overuseによる症状は全て外傷(傷害)overuse injuryによるものであるとしている。その治療内容は局所を安静にし、「痛み」が無くなるまでとしている。
同じく米国Rochester医科大学(URMC)の見解でも「overuse injury」と位置付けられ、多くのスポーツ損傷やoveruseは、軟部組織損傷が含まれていて、微小な外傷によるものと説明されている。これらは、日本の分類とは異なっている。したがって英・米国が位置付けているsports injuryのカテゴリーは、スポーツ障害(肩関節亜脱臼症候群・肩インピンジメント症候群・野球肘・テニス肘・ジャンパー膝・シンスプリント・足底筋膜炎等overuse「酷使」)も含め、柔整師が取り扱い、施術できるものと解釈できる。
わが国の一般的な整形外科書では、overuseをスポーツ障害の分類に位置付けている。しかし、その治療法は日本においても米国のメルク マニュアルと同様で、外傷に対する安静を主体とした除痛処置を優先的に行っている。そのことは、overuseが外傷により生じるinjuryであることを証明している。日本の医師は障害という分類を盾に取り、敢えて疾患名を付け、柔整師がoveruseの施術を扱えないように働きかけている。
しかし、実際の国民目線はというと、安静と痛み止めの投薬という整形外科の治療に対して満足できない患者が、1日80万人程度、接骨院を訪れ治療を受けている。接骨院では、局所の固定、手技による除痛及び電気治療を行い補完している。柔整師によるoveruseの治療を制限することは、このような、国民の治療を受ける権利を阻害しているのではないかと考える。
柔整師の支給対象である亜急性は、歴史的に、負傷の時期ではなく、発症の起点に着目した問題として柔整師の業務範囲とされてきた。反復性の外的圧力要因や微小の外力による負傷といえるスポーツ障害、特にその代表的な例であるoveruseはその範疇に属し、柔整師が古く、整形外科医師が不足していた時代から治療対象としてきたものと考える。
■国別の「スポーツ外傷sports injury」と「スポーツ障害sports disturbance」の取り扱い状況
トランス健保の不支給処分、取消 「柔整施術を整形外科で相談せず」問題なし
トランス健保の不支給処分、取消 「柔整施術を整形外科で相談せず」問題なし
2017.02.10
患者・柔整師側の不服申立て、認める
整骨院で治療中の疾患(捻挫)を、同時期に受診した整形外科で診断されなかったことが柔整療養費申請の要件を満たしていないとして、トランスコスモス健康保険組合(以下、トランス健保)が昨年8月に行った不支給処分が、審査請求で覆った。関東信越厚生局社会保険審査官が、平成28年12月21日付の審査請求の「決定書」で処分の取り消しを命じた。
本件の患者はトランス健保の被保険者である組合員で、平成28年3月分と4月分の柔整療養費申請が不支給処分されたことを受け、代理人を介し、不服申立ての審査請求を同年10月に行った。代理人は、施術を行った柔整師が所属する全国柔整鍼灸協同組合(全柔協)の専務理事・上田孝之氏が務めている。
本件で問題点となったのは、トランス健保の不支給理由だ。患者は平成28年3月と4月に整骨院へ計4回来院し、「右肩関節捻挫」「左膝関節捻挫」の治療を受け、施術費用を療養費として申請した。また、3月中旬の同時期に整形外科にも来院しており、「頚椎椎間板症」等の治療を受けた。これに対し、トランス健保は、整形外科では「右肩関節捻挫」「左膝関節捻挫」の診断がされていない上、患者が捻挫について医師に訴えず、また医師も「右肩関節捻挫」「左膝関節捻挫」を認識していないことから、健康保険法第87条第1項の規定する「保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる」との条件を満たしていないとして不支給処分を行った。
決定書では、不支給処分の取り消しについて、「頚椎椎間板症のため整形外科で受診しているが、右肩関節捻挫、左膝関節捻挫についての診断が下されていないことに、申請とは矛盾がある旨の理由によって、療養費の支給対象外とする項目は見当たらないと言わざるを得ない」「健保法第87条第1項の規定に該当していないとまでは言えない」との理由を挙げ、トランス健保の主張を退けた。
解説
今回の審査請求で、仮にトランス健保の主張が認められ、まかり通るようなことになれば、話が「医科との併給・併用の禁止」にも飛び火し、患者が保険で柔整施術を受ける権利は大きく制限される事態になりかねない。決定書の中に、「医師が整骨院の治療を認識していないと整骨院の保険が利かないというのはおかしいのではないかと思います」との請求人(患者)の言葉を目にした。本事例は明らかに保険者の行き過ぎた判断といえ、今後、類似の不支給処分には必ず声を上げなければならない。(編集局・倉和行)
第20回日本統合医療学会 柔整師に「エコー」の使用を推奨
第20回日本統合医療学会 柔整師に「エコー」の使用を推奨
2017.02.10
擦過鍼、認知症の症状改善に有用
第20回日本統合医療学会が昨年12月23日から25日まで、東北大学医学部星陵キャンパス(仙台市青葉区)で開催された。テーマは『統合医療に科学の光を日本から』。
シンポジウム『医業類似行為・相補代替療法の社会化に向けて―現状と課題』の演者のうち、鍼灸・柔整業界からは東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科の山口登一郎氏と森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科の坂部昌明氏が登壇。 (さらに…)
鍼灸学会Tokyo 平成28年度 第3回研修会 筋膜性疼痛をエコーで評価
鍼灸学会Tokyo 平成28年度 第3回研修会 筋膜性疼痛をエコーで評価
2017.01.25
「臨床的触診」も指南
鍼灸学会Tokyoの平成28年度第3回研修会が昨年12月4日、東京大学医学図書館(東京都文京区)で開催された。
鍼灸師、理学療法士(PT)で、治療院や介護事業所などを運営する株式会社ゼニタの代表取締役社長・銭田良博氏が『筋膜性疼痛症候群の病態とエコーによる客観的評価、鍼治療の実際―2』と題して講演した後、超音波画像観察装置(エコー)のデモンストレーションを行った。
銭田氏は、筋膜性疼痛症候群(MPS)とはレントゲン、CT、MRIには映らないが、エコーで確認できる、筋膜に原因がある疼痛の総称であると概説。筋膜にはポリモーダル受容器など痛みを感じるレセプターがあり、体の「使い過ぎ」「使わなさすぎ」「誤った使い方」などに起因する筋膜の変性によって疼痛が生じると説明した。筋膜の変性はエコーで見ると、慢性痛の場合は筋膜の白い線状が厚くなっていることが多く、急性痛の場合は筋膜の不連続が見られるとした。
筋膜に限らず、内臓を取り巻く髄膜・胸腹膜、靭帯や腱などの膜様の組織も同様の疼痛発生源であり、これらを包括するFascia(ファッシア)という概念を提唱。自身が役員を務め、医師、PT、鍼灸師など多職種で構成されるMPS研究会では現在、ファッシアの疼痛の評価法「発痛源評価」の確立を進めるとともにファッシアの適切な訳語を模索していると述べた。
ミリ単位で探る指先を
また、層構造であるファッシアへのアプローチ法として「臨床的触診」を紹介した。経絡、経穴、筋の起始・停止といった平面的な位置関係だけでなく、解剖学的知識に基づく、「深さ」を意識した三次元的な触診が重要であると強調。痛みの発生源を解剖学的に明らかにした上で、患者が圧痛を訴える深さをミリ単位で探り、刺入する深さなどを決めていると話した。
銭田氏はエコーについて、治療時に利用するだけでなく、触診で得た所見や選択した治療法が正しいかどうかを客観的に確認することで、触診技術の精度を高めていけるものであると説明。治療家の指先は極めれば極めるほど、エコーに勝るとも劣らないプローブになると語った。
デモンストレーションではエコーの使用方法に触れた後、足関節の底背屈による前脛骨筋の動きなどから、膜よりも下で筋線維が動く様子などを見せ、動脈、静脈、神経を観察できるといった機能も実演した。
厚生労働省『平成27年度 療養費頻度調査』から 柔整・あはき療養費 年齢別支給状況
厚生労働省『平成27年度 療養費頻度調査』から 柔整・あはき療養費 年齢別支給状況
2017.01.10
調査は、全国健康保険協会管掌健康保険、国民健康保険及び後期高齢者医療制度における平成27年10月の1カ月間に行われた施術に係る療養費支給申請書が対象。 (さらに…)
全国個人契約柔道整復師連盟発足17団体、総会員数8,800
全国個人契約柔道整復師連盟発足17団体、総会員数8,800
2017.01.10
業界の継続と発展、後進のために
公益社団法人全国柔整鍼灸協会(岸野雅方代表、公益社団全柔協)と16の賛同団体(別表)が共同で、「全国個人契約柔道整復師連盟」を設立した。総計約8800の会員を擁する組織体として、柔整業界の継続と発展を目指す。柔道整復療養費検討専門委員会への参画に向け、取り組みを進める方針という。 (さらに…)
平成28年度JATAC本部主催講習会in大阪 テーピング、筋の予備緊張促進
平成28年度JATAC本部主催講習会in大阪 テーピング、筋の予備緊張促進
2017.01.10
効果的なストレッチ、独自開発
NPO法人ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会(JATAC)の平成28年度本部主催講習会(大阪)が昨年12月11日、大阪市北区の平成医療学園専門学校で開かれた。
一般(学生)会員向けテーピング講習会は関西医療大学講師でNATA―ATCの牛島詳力氏が講義と実技を行った。牛島氏は、テーピングとは「ケガの痛みを軽減させて再び試合に臨めるようにする」ものではなく、あくまでも外傷や傷害の予防を目的としていると説明。関節可動域の制限、筋、腱など軟部組織の制御、筋の予備緊張の促進といったテーピングの効果に触れ、『(足関節)内反角速度の減少』『テーピングの皮膚刺激が腓骨筋の反応時間を短縮する』などの研究報告も紹介した。
また、テーピングの課題点として運動後の「緩み」と「コスト」を挙げ、▽35%の可動域制限をかけても1時間の運動後には5・5%に低下した、▽内反ストレスに対する抵抗力が10%増加したものの40分後には0・6%になった、といったデータを提示。競技特性にもよるが、テーピングは試合や練習の前後などに切り取って外し、一から巻き直すことが多いと述べた。例えばバスケットボールの場合、試合当日は1人の選手に4、5本のテープを使う場合もあると解説。効率の良い巻き方や、適切な素材選びなどを心がけるよう呼びかけた。
阪神のトレーナー登壇
『野球で頻発する外傷、関節部へのアプローチ』は阪神タイガースのトレーナーで鍼灸師・柔整師の小滝康樹氏が登壇。阪神タイガースでのトレーナー業務の内容や流れ、使用する道具などについて概説した後、数多くの関節部の外傷に携わった経験から開発した「ストラクションベルト」を紹介した。
ストラクションベルトはクッション付きのベルトで、牽引や固定によってストレッチングとモビライゼーション、さらに整復動作の補助ができる道具であると、実演を交えて解説。ベッドなどに対象者の身体の一部を固定すれば、代償運動を防いで目的の筋肉だけを効率的に伸ばせるとし、骨折、脱臼の整復の補助も、より安全に行えると述べた。講演後の実技では、ベルトを利用したハムストリングスなどのストレッチや、股関節などのモビライゼーションを指導した。