イベント『お灸×デザイン』 デザインは問題解決の手段
2018.11.25
―「医療職 ≒ デザイナー」―
10月8日に京都市内でセミナー『お灸×デザイン』が開かれた。講師を務めたのは、新町お灸堂(京都市下京区)院長の鋤柄誉啓先生。お灸の普及啓もうのため、お灸にまつわる言葉やイラストをあしらったTシャツなどのグッズを開発したり、お灸の漫画を監修するなど多角的に活動、最近では治療院のブランディングも手掛ける。
「デザインとは、ただ単におしゃれにしたりカッコよくしたりするということではありません」と言う鋤柄先生。課題や問題を解決したり、調整したりする手段だと説明する。デザイン業界には「デザイナーとは医者のようなものである」という言葉があるという。クライアントの課題や問題を発見して共感するのは「診察」。デザインのコンセプトの決定は「治療方針の決定」。そして、実際の作業は「治療」。アフターケアは治療後の生活指導など。これらはみな、鍼灸師にも当てはまる。「デザイナー≒鍼灸師」と表現した。
数年前、あるイベントに出店した際の好評とはうらはらに当時の来院患者数は非常に少なかった。「鍼灸は世の中に必要とされているのに……」。需要と供給との間の溝を埋めるため、鋤柄先生は自身の治療院をデザインし直すことにした。まずはターゲットを明確にしようと、「今の日本の社会で一番悩んでいるのはどんな人なのか」を探った。浮かび上がって来た人物像が、「35歳前後の女性」だ。年齢による体調の変化や子育ての負担、仕事における責任の増大、さらには親の大病や介護などが重なることもあり、ストレスからさまざまな不定愁訴を抱えている。この層を想定して、メニューをお灸のみとシンプルにして来院のハードルを下げる、来院してもらいやすい身近な雰囲気の空間をつくる、定期的な来院が難しい人へのセルフ灸と養生の指導を行う、などに取り組んだ結果、新町お灸堂は軌道に乗ることになったという。
セミナーでは問診票や問診そのもののデザインを試みるなどのグループワークも行われ、「IT技術を活用した問診」といったアイデアが飛び出した。