日本伝統鍼灸学会第47回学術大会 ICD-11における経脈病証の使用状況
2019.12.10
―ICD-11における経脈病証の使用状況
最多は膀胱経、次いで胆経など―
日本伝統鍼灸学会の第47回学術大会が11月23日、24日、東京都内で開催された。テーマは『日本伝統鍼灸の確立に向けて―日本の鍼灸の発想と継承』。
JLOM委員会報告では明治国際医療大学大学院特任准教授の斉藤宗則氏が登壇し、国際疾病分類第11版(ICD-11)に伝統医療分野が導入された経緯と現状を概説した。中国や韓国はICD-11の活用のために国を挙げて症例集積を行っていると指摘。日本でもその作業が急務であるとして、昨年10月から12月にかけて行った『国際疾病分類第11版における経脈病証の鍼灸臨床使用状況の調査』の結果を発表した。症例数2,617(調査協力者213名)のうち最も多かったのが膀胱経(811例、31.0%)で、次いで胆経(447例)、腎経(431例)などとなっており、奇経八脈は正経と比べると少ないと説明。主訴は腰痛が447例(17.1%)と最多で、膝痛、肩痛が続いたとし、上位10主訴(49.5%)は「痛み」と「こり」が占めたと述べた。斉藤氏は、このようなデータを集め続ければ鍼灸受療患者の実態を明らかにできるだけでなく、主訴や西洋医学的病名と経脈病証との関連性も追求できるとして、協力を呼び掛けた。
学生限定のセミナーでは同学会会長の形井秀一氏(洞峰パーク鍼灸院院長)、長野仁氏(森ノ宮医療大学大学院教授)、寄金丈嗣氏(六然社)が講演や実技を行った。形井氏は、触診では「圧痛があるということを、圧痛を感じさせる前に分かるのが理想」だと説明。触診の練習の際には、術者側はとにかく手の感覚を磨き、被術者側は常に、左右差などの感覚を言語化して術者に伝えなければならないと学生らに説いた。長野氏は、押手で鍼を回旋させて刺手で送り込む古法による刺鍼法を、寄金氏は散鍼を披露した。
ほかに会頭講演『易と鍼灸』(小林詔司氏・積聚会名誉会長)や教育講演『「黄帝内経」千年の定説を覆す』(松田博公氏・日本内経医学会)、特別対談『脈診と経絡治療について』(篠原孝市氏・日本鍼灸研究会/浦山久嗣氏・経絡治療学会)、実技講演『散ずる鍼を尋ねて』(南谷旺伯氏・旺針療所)、一般口演などが行われた。