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あはき

新元号記念号インタビュー 第3弾 平松 燿氏(eスポーツトレーナー) 鍼灸によるeスポーツ選手のケアに取り組む

投稿日:2019年5月25日

 昨夏の第18回アジア競技大会で、コンピューターゲームやビデオゲームを使った『eスポーツ』がデモンストレーション競技に採用された。2020年の東京五輪での採用はなかったものの、世界的に注目されているといえる。鍼灸師はこの新たな競技形態への貢献ができるのか――国内唯一のeスポーツトレーナーとして活動する鍼灸師・平松耀氏と、プロチーム関係者に話を聞いた。

eスポーツトレーナー 平松 燿 氏
ひらまつ・よう:25歳。鍼灸師、東京有明医療大学付属鍼灸センター研修生。「全日本鍼灸Summarize」発起人。

「もはやゲームではなくスポーツ――心からそう感じました」

――活動のきっかけは
 元々ゲームは好きなのですが、『League of Legends(LOL)』というゲームで、世界大会のライブ配信を見て衝撃を受けました。賞金総額407万ドル(約4億6千万円)に及ぶ大規模な大会です。観客を魅せることを意識した配信の構成に、サッカーや野球の観戦と何も変わらない興奮を感じ、「もはやゲームではなくスポーツだ」と心から感じましたね。

――どのようにして参画を
 とにかくチームに連絡して回りました。鍼灸師の立場を説明し、選手のケアに協力できると呼びかけたのです。チーム側も選手に何が必要なのかが分かっていなかったこともあり、最初は苦戦しましたが、EVOというアメリカで開催されている格闘ゲームの世界大会に帯同できました。まだ運営側にもプロスポーツとして未成熟な面があり、待機場所がなく床に座ったまま数時間待機したりと、選手の心身の消耗は大きなものでした。そうした中でのサポートで信頼を積み重ね、現在は日本eスポーツ連合の紹介を受け、『AKIHABARA ENCOUNT』など複数のプロチームでケアに当たっています。

――他のスポーツとの違いは
 意外に思われるかもしれませんが、何十、何百時間と同じ姿勢で机に向かい、画面に集中し続ける非常に過酷な世界です。有名選手が腱鞘炎で引退といった話も珍しくありません。先に話した『LOL』で言えば、上級者は1秒間に複数回という頻度で常にマウスのクリックを繰り返すと言えば、手指の負担が想像できるでしょうか。FPS(一人称視点の射撃ゲーム)なら「手首」、両手でそれぞれレバーとボタンを操作する格闘ゲームなら「レバー側の上肢全体」など、ゲームの種類で負担がかかる部位は違います。また、多くのゲームで反射神経以上に情報処理、戦略的な強さが求められます。集中力の持続という面でも、鍼灸の可能性を感じます。

――選手の特徴は
 10代の選手が多く、年齢層が低いことです。選手生命も短いと言われますね。ただ、個人的には異論もあり、そもそも選手生命を伸ばす取り組みが十分行われていないんです。鍼灸を含めたサポートの事例を増やしてデータを蓄積し、同時に待遇面でも仕事として成り立つようになれば状況も変わるかもしれません。若いからこそはっきり意見や感想を伝えてくれる面もあり、「お灸もやってみたい」など、自分から調べて興味を持ってくれた時は嬉しく感じます。

――気を付けていることは
 eスポーツは、ゲームが好きなつながりから広まってきたコミュニティです。空気を壊してしまうような押し売りに対する忌避感が強く、私自身、そうならないよう気を付けています。鍼灸はコミュニティを良くするための手段の一つというスタンスです。

――選手のサポート体制は
 先進国の中では、進んでいるとは言えません。例えば、強豪である韓国では鍼灸がサポートに取り入れられていると聞きますが、国内で他に専門的に取り組んでいる方の話は聞きません。もちろん、個人で治療やケアを受けている選手はいると思いますが……。

若者への鍼灸発信の糸口に

――参入による鍼灸業界へのメリットは
 私は、鍼灸界に足りないのは発信力だと考えています。eスポーツは、若い子に人気のあるジャンルです。人気選手がケアを受け、SNSで「鍼灸を受けて調子が良い」と発信すれば、見たファンは自然と興味を持ち、良いイメージを抱く。また、選手自体も若年層が多いですから、そうした経験を味わえば、大人になってからも、子どもが出来た時にも、鍼灸について前向きに考えてくれる。そうした効果も期待できます。

――eスポーツトレーナーに興味を持った施術者は、まず何をすべきですか
 まず自分がそのゲームをやってみることです。私もチームに入ったら、プレイしたことのないゲームは試しに遊んでいます。勝ったことがうれしく、負けたことが悔しい。スポーツとして当然の気持ちを体感し、選手と共有することが、eスポーツとの関わりの第一歩です。

 

森山進太郎さん プロチーム『AKIHABARA ENCOUNT』オーナー・森山進太郎さんの話
 未成年の選手をお預かりすることも多い以上、大人の責任としてきっちりサポートするという意識は常に持っています。ただ勝率に反映できる保証がない限り、予算面で限界もあるのも現実です。我々としてはプロ野球のドラフト会議などと同じく、強い選手を勧誘したいわけですが、例えば中学生でゲームの上手い子がプロを志し、所属先を選ぶ時、福利厚生は条件に入らない。彼らが選ぶのは報酬の多いチーム、勝てるチームです。そうした意味でも、実際の事例を通じて、鍼灸がパフォーマンス向上につながるというデータを蓄積していくことができれば、よりサポートを手厚くできるチームも増えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

▲大会の様子(写真提供:AKIHABARA ENCOUNT)

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