『医療は国民のために』249 施術管理者の新要件「研修の受講」への疑問
2018.06.10
健康保険等の医療保険各法で柔整療養費の受領委任取扱いが認められている「施術管理者」の要件が、4月より追加されたのは周知の通りである。しかし、その運用においては不信感を持たざるを得ない。改正通知を発出した厚労省保険局に対するものはもちろん、それにも増して、運用に関わっている柔整業界側に対しても情けない思いでいっぱいだ。
中でも「研修の受講」の運用だ。 (さらに…)
『医療は国民のために』249 施術管理者の新要件「研修の受講」への疑問
『医療は国民のために』249 施術管理者の新要件「研修の受講」への疑問
2018.06.10
健康保険等の医療保険各法で柔整療養費の受領委任取扱いが認められている「施術管理者」の要件が、4月より追加されたのは周知の通りである。しかし、その運用においては不信感を持たざるを得ない。改正通知を発出した厚労省保険局に対するものはもちろん、それにも増して、運用に関わっている柔整業界側に対しても情けない思いでいっぱいだ。
中でも「研修の受講」の運用だ。 (さらに…)
ロコモペイングループ設立2周年記念セミナー
ロコモペイングループ設立2周年記念セミナー
2018.06.10
「筋連結」の概念や筋膜の構造など
一般社団法人ロコモペイングループ(LPG)の設立2周年記念セミナーが5月13日、名古屋大学鶴舞キャンパス(名古屋市昭和区)で開かれた。
特別講演は理学療法士、医学博士で大分大学福祉健康科学部教授の河上敬介氏が登壇し、「筋連結」の概念を紹介。 (さらに…)
第47回現代医療鍼灸臨床研究会 末梢循環障害への鍼灸治療
第47回現代医療鍼灸臨床研究会 末梢循環障害への鍼灸治療
2018.06.10
「冷えと産婦人科領域」にも言及
第47回現代医療鍼灸臨床研究会が4月29日、東京都文京区の東京大学鉄門記念講堂で開かれた。テーマは『冷え症に対する鍼灸治療の現状―末梢循環障害の基礎と臨床のエビデンス』。
基礎講座は、東京都健康長寿医療センター研究所の内田さえ氏と東京有明医療大学教授の坂井友実氏が講演した。 (さらに…)
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』93 フィンランドの医療
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』93 フィンランドの医療
2018.06.10
『Upgraded Life Festival 2018』(5月31日~6月1日開催)に参加するために、フィンランドはヘルシンキへ行ってきました。フィンランドは、日本より「税」は高いですが、日本と同じように「高福祉国家」です。 (さらに…)
連載『中国医学情報』159 谷田伸治
連載『中国医学情報』159 谷田伸治
2018.06.10
☆ドライアイに鍼通電治療と導気鍼法併用
上海中医薬大学・謝汶璋らは、ドライアイ患者で常軌治療と上海市名老中医・張仁の導気鍼法併用を比べた(中国鍼灸、18年02期)。
対象=患者60例、男18例・女42例、平均年齢46.5歳(20~65歳)、平均罹患期間1.6年(0.3~6年)。眼科薬物の受療者は、2週間以上治療停止。これをランダムに常軌群・導気鍼併用群各30例に分けた。 (さらに…)
催し物案内 日本美容医療協会の美肌術セミナー
催し物案内 日本美容医療協会の美肌術セミナー
2018.06.10
リフトアップや美肌鍼をテーマ、7月に
7月29日(日)12時から、横浜医療専門学校(横浜市神奈川区)で開かれる。一般社団法人日本美容医療協会主催。『フェイシャルリフトアップ術』『美肌鍼及びSSPによるPNF顔面応用術』をテーマに、美顔スキンケアの手技アプローチを解説する。講師は同協会理事長の吉田洪先氏。
また、「柔整師・鍼灸師だから出来る美肌術」シリーズとして、『包帯美肌鍼とリガメント・メディカルエステリンパマッサージ』をテーマに11月18日(日)、『美顔率への頭蓋骨のレンジオブモーション』をテーマに平成31年2月24日(日)にも講習会を行う。ともに、会場は横浜医療専門学校で10時開始。
講習会に関する問合せは、同協会(045-453-9321)まで。
商品紹介 日本シグマックス『マックスベルト S1』
商品紹介 日本シグマックス『マックスベルト S1』
2018.06.10
運動時の動きを妨げない
日本シグマックス株式会社の腰部固定帯『マックスベルト S1』。
運動時の動きを妨げないように、幅を狭くしたタイプ。薄型で、服の下に装着しても目立たない。通気性に優れムレにくい素材を採用。補助ベルトは腹腔圧上昇効果を高める。背部には耐久性の高いプラスチックステーを4本内蔵し、安定性を向上させた。本体内側には滑り止めテープを装備しており、ズレにくい。サイズはSS(胴囲55~65cm)、S(65~75cm)、M(75~85cm)、L(85~95cm)、LL(95~105cm)。
販売に関する問合せはセラピ株式会社(0120-89-8128)へ。
ザ・ハラノムシ・ワールド 『針聞書』完全覆刻版の刊行記念
ザ・ハラノムシ・ワールド 『針聞書』完全覆刻版の刊行記念
2018.06.10
▲会場内には「ハラノムシ」たちの姿も
演奏家や落語家、有名声優も
茨木元行の編纂した『針聞書』の成立450周年と完全覆刻版刊行を記念するイベント、ザ・ハラノムシ・ワールドが5月13日、茨木市立生涯学習センターきらめきホール(大阪府茨木市)で開催された。
ハラノムシとは針聞書に描かれた、病気の原因を「虫」に求める特有の病理観に基づいた、虫の姿の想像図で、「妖怪図鑑」の走りともいえるもの。当日は中国古筝演奏家の伍芳氏によるライブ演奏や、『シティーハンター』冴羽獠役や『北斗の拳』ケンシロウ役などで有名な声優・神谷明氏のトークショーなども催され、ハラノムシのイラストで彩られた会場は市民らで賑わった。 (さらに…)
Q&A『上田がお答えいたします』 運動後療料の名称が不自然?
Q&A『上田がお答えいたします』 運動後療料の名称が不自然?
2018.06.10
Q.
今年度の料金改定で新設された柔道整復運動後療料ですが、これって、単に後療料に310円加算されただけではないのでしょうか?
A.
6月1日から骨折・不全骨折・脱臼の後療料に310円の加算ができる「柔道整復運動後療料」が認められました。 (さらに…)
連載『汗とウンコとオシッコと…』166 Light the lighting
連載『汗とウンコとオシッコと…』166 Light the lighting
2018.06.10
夏の到来が早いかと思えば、自然界はやはり帳尻を合わせてくる。太陽光線が強い時期ではあるのに、風が秋のように涼しく、汗が出にくい。たとえ夏日で30度を超えたとしても、日陰に入れば薄ら寒く感じ、夜になると半袖ではとても無理だ。一枚羽織らないと確実に風邪を引く感じがする。露地モノ野菜でも、初取れキュウリやトマトが店頭に並んでもいい時期のはずだが、まだまだ畑にあって、田植えすら遅かったのが現状だ。
光線振動量と風の冷たさが曲者で、気圧が下がったあとがややこしい。電子レンジのように光線の振動で皮下は熱を持つが、涼しい風で汗が止められることにより、プチ熱中症のようになる。尿が減少し、循環器に基礎疾患がある人は胸が苦しく、動悸がする。背中に痛みを投射すれば巨闕兪や患門が差し込み痛む。通常は浮腫んだりしていないのに、関節が腫れたり、古傷が痛むことが多い。年齢に関係なく同じような状態に陥りやすく、子供や体力のある人は発熱して太陽病の表実症が出てくるのが今の状態だ。
「先生、また左腕が痺れだして……。頸を後ろに倒すと、指先全体に痺れがひどくなるんです。バチンって、目から火が出るような感じで痺れて……」
70代前半の上品な老婆が横転先生に訴えている。 (さらに…)
連載『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』17 何故、健康でなければいけないのか?~健康と社会をつなげる~
連載『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』17 何故、健康でなければいけないのか?~健康と社会をつなげる~
2018.06.10
これまでは、国民の「健康の物差し」を変えることの意味や、その具体的な方法について紹介してきました。今回からは、それぞれの具体的な方法を線でつなげ、持続可能な健康システムにするにはどうすれば良いのかについて考えていきたいと思います。
予防医療の難しさは、予防が治療ほど切実な問題ではないことに原因があります。 (さらに…)
『ちょっと、おじゃまします』 ~痛みが出にくい身体に~ 大阪市阿倍野区〈今百合整骨院〉
『ちょっと、おじゃまします』 ~痛みが出にくい身体に~ 大阪市阿倍野区〈今百合整骨院〉
2018.06.10
痛みは姿勢や身体の歪みからくる「二次災害」だといい、痛みを取るのではなく痛みが出にくい身体になるよう整えるという大谷先生。患者さんには、「身体が重い、ダルい」など痛みが出そうな徴候を感じたら来院してほしいと伝えています。 (さらに…)
今日の一冊 ディア・ペイシェント
今日の一冊 ディア・ペイシェント
2018.06.10
ディア・ペイシェント
南 杏子 著
幻冬舎 1,728円
患者様プライオリティー。元銀行マンの事務長が唱える「何よりも患者の利益を優先する」という理念によって、総合病院「佐々井記念病院」に勤める医師らの仕事はサービス業と化していた。内科医の真野千晶はクレーマー患者に悪戦苦闘しつつ、医師としてのやりがいも模索。そんな中、「モンスター・ペイシェント」座間敦司が現れる。一方、頼りになる先輩医師・浜口陽子は大きな医療訴訟を抱えていた……。現役医師で、終末期医療の人間ドラマを描いた『サイレント・ブレス』の著者が放つ長編医療小説第二弾。
編集後記
編集後記
2018.06.10
▽国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』の主人公、野原しんのすけの声優が変わります。声優の矢島晶子さんによれば、「声を保つのが難しくなった」。平成4年の初回放送から四半世紀以上も演じ続けた役ですから無理もない話。平成の終わりを感じます。思えば『ドラえもん』の声優が大山のぶ代さんから変わったのは13年前、『名探偵コナン』の「眠りの小五郎」は9年前。どれも未だ違和感があり、まるで交代が昨日のようです。ちょうど取材した『ザ・ハラノムシ・ワールド』では先代小五郎・神谷明さんのトークショーがあり、小五郎ボイスのファンサービスも。「娘の蘭はあぁ見えて柔道の都大会で優勝してましてなぁ」。おっちゃん、娘さんがやってるのは空手です。やっぱり9年は長いかも……。(平)
全柔協が協定・契約の統合、訴える
全柔協が協定・契約の統合、訴える
2018.05.25
全ての柔整師を「協約」で平等に
公益社団法人全国柔整鍼灸協会(岸野雅方理事長、全柔協)が柔整療養費の受領委任取扱いにおける「協定」と「契約」を統合し、全ての柔整師が団体所属の区別無く、平等な運用を行えるよう求めていることが分かった。4月下旬に問題提起を含む要請文書を、各地方厚生(支)局長・都道府県知事宛てに送付しており、新たなルールとして、両者を「協約」(協定と契約を合わせた造語)の名称でまとめ、一本化の実現を訴えている。 (さらに…)
『医療は国民のために』248 亜急性の表現抹消はやはり事実上の敗北であろう
『医療は国民のために』248 亜急性の表現抹消はやはり事実上の敗北であろう
2018.05.25
柔整療養費の支給対象としての「亜急性」の議論が一応の決着を見た。4月23日に開かれた第14回柔整療養費検討専門委員会で亜急性の表現が「抹消」されることが合意されたのだ。今後は、亜急性という用語は議論されないようだ。合意内容としては、
①厚労省の通知から「急性又は亜急性」の文言を全て削除する。このことから「亜急性」との表現自体が通知から抹消される
②代わって、負傷の原因を徹底的に明確にし、いつ、どこで、どうして負傷したかを施術録に記載しなければならなくなった
③新たに外傷性の定義が明確化され、「外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものであり、いずれの負傷も、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていないものであること」と通知上の明文化が図られることになる
との3点だが、③の表現では、組織の損傷状態の「慢性」という時間軸によって、慢性に至っていないことが新条件として加わったに過ぎず、「慢性に至っていないものであること」の具体的な意味はよく分からない。
これまでの亜急性議論では、柔整業界側から亜急性がオーバーユースに見られる負傷の一般的態様であり、すべからく柔整師の療養費支給申請の対象となるとの従来の考え方に基づき、主張も行われていた。私から見てもこの論調は正当であり、医科学的にも十分説明がつくものであったと感じている。事実、柔整側委員が専門委員会の席上で、柔整養成施設の大学の考察等を交えながら「亜急性は負傷の範囲を指す」ことを論旨に明快に発言された。しかし、保険者側委員や有識者委員がこれを理解できず、そもそも座長が亜急性を全く理解していない。その結果、無視されたといえ、これはいかがなものかと非常に残念である。
現在、柔整療養費は、柔整師バッシングの中で多くの返戻と不支給処分に遭い、毎年大幅な縮小を余儀なくされている。一方、7年連続で外科・整形外科の収入は伸びており、整形の診療報酬と柔整師の療養費の金額を比較すれば、その格差に呆れる。真面目な整形外科では理学療法士や作業療法士が患者のお世話をしてくれているのは評価できるが、レントゲン等の最新医療機器による費用に加え、痛み止めの薬剤の投与など、実際に治療行為として行われているのはほとんど無いといえよう。
また、健保組合の財政的視点から見ても、医科の診療報酬に比べて療養費は圧倒的に安価であると断言できる。ところが、健保組合は柔整師に療養費を支払うくらいなら、病院に行って医者の治療を受けるよう誘導する。今後、健保組合は23~30%の範囲で解散していく。もちろん財政的に持たないからだ。多くの健保組合が解散を余儀なくされ、税金が大量に投入される「協会けんぽ」に移行していくことになる。安価で患者満足度の高い柔整・あはきの療養費をないがしろにする保険者には物申すことなど特にない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
日鍼会が医療連携テーマの講座開催 キーワードは「連携ができる鍼灸師」
日鍼会が医療連携テーマの講座開催 キーワードは「連携ができる鍼灸師」
2018.05.25
公益社団法人日本鍼灸師会(日鍼会)の第1回医療連携研修講座が3月25日、東京衛生学園専門学校(東京都大田区)で開催された。日鍼会理事・研修事業担当の小川卓良氏はあいさつで、「鍼灸一本で生計を立てている者が次第に減っており、なおかつ病院内の鍼灸も減っている現状で、もっと医療・他職種との連携を高める必要があるとの意見を多数聞き、これからの時代の鍼灸師の重要なキーワードになると考えた」と開催主旨を述べた。
講演『医療連携の意義とその実践に向けて』は、埼玉医科大学医学部講師の山口智氏が登壇。連携の主眼は満足度の高い医療を提供することであり、患者の病気・症状を西洋・東洋医学の両面で捉え、治療する中で双方の信頼を深めれば、療養費の同意書問題なども解決していくと説明。そのためにも専門医と連携する際は、▽鍼灸師に可能な医療面接と検査の実施、▽血液・尿検査や画像診断の意義、▽鍼灸治療の期待できる疾患や症状の鑑別、▽古典・中医学と現代医学との接点の探求、などの資質・見識が必要になると説いた。
鍼灸院と連携する医師、1割未満 「鍼灸の効果不明」で同意書拒否
また山口氏は、昨年2月、埼玉県医師会の協力の下に実施した医師向けアンケートの結果を紹介。161名が回答し、「特定の鍼灸院と連携しているか」との質問に対して「はい」と答えた医師が1割にも満たなかったと述べた。また、回答者の約半数は施術者から同意書の依頼を受けた経験があるが、そのうちの4割は「鍼灸の効果が不明」「鍼灸院内の治療環境が分からない」との理由で同意しなかったとの厳しい回答内容も明かした。ただ、鍼治療が診療ガイドライン等で推奨されているものについては、約65%の医師が「勧めてみたい」という前向きな回答も聞かれたと報告。コクラン・システマティックレビューでは鍼灸に肯定的な結論が述べられている、一次性頭痛をはじめとする多くの疾患があり、鍼灸も評価されていることを地元医師に積極的にアピールし、連携構築に結びつけてほしいと語った。
シンポジウム『何故「医療連携ができる鍼灸師」が求められるのか?』では、スポーツ・介護・保険・災害の各分野を担当する日鍼会理事4名から、それぞれの取り組みの実績が報告されたほか、それを通じて連携の場に加わるためのポイントなどが紹介された。
連載『先人に学ぶ柔道整復』九 嘉納治五郎(後編)
連載『先人に学ぶ柔道整復』九 嘉納治五郎(後編)
2018.05.25
柔整との接点と治五郎の高弟たち
治五郎のお話の締めくくりとして、彼の柔道整復との接点に触れてみたいと思います。治五郎が創始した講道館柔道は明治中期より柔術各流派を統合し、次第に興隆の徴を表していました。接骨に対しては、「講道館柔道には人の足腰を察するようなことはさせたくない」という見解を当初示していたようです。というのも、大正末期まではいまだに江戸時代の考え方が色濃く残っており、地域医療に対する世間の見方は「士農工商でいえば、工と商の間くらい」の評価でしかありませんでした。武家由来の柔道家が接骨を営むことについて、治五郎が理解を示さなかったのもやむを得ないことでしょう。このように医療行政的に厳しい状態の中で、どうにかして接骨を業としてつなぎとめたのは、天神真楊流をはじめとする各流派の柔術家による秘術としての接骨術が世間に対して治療実績を上げ続け、信頼を得てきたからだといえます。一方、1906(明治39)年には整形外科が一般外科から分離独立し、東京大学内に講座が開設されています。このため、整形外科は接骨業と診療科目が重なり、将来的に両者は競合することが懸念されていました。
こうした中、治五郎は萩原七郎の強い働きかけにより、講道館の高弟である山下義韶を派遣し、全国の接骨家と協力して「柔道接骨術公認期成会」を結成し、接骨術の法制化に協力しました。その結果、「接骨」は、1920(大正9)年に按摩術に準じて免許を与えられることになり、「柔道整復」という名で初めて法規の上で認められることとなりました。
この「柔道接骨術公認期成会」には、山下のほかにも治五郎の高弟の柔道家がいくらか協力しています。例えば、大阪では戸張滝三郎(1872年~1942年)。のちに大阪調整会の相談役兼顧問を務め、大阪府柔道整復師会の代議員や副会長などを歴任しています。また、講道館関係者では、愛知の米田松三(1892年~1958年)がおり、愛知県柔道整復術組合(現愛知県柔道整復師会)の創設メンバーとして尽力しました。米田は愛知県立第一中学校時代に既に初段を取得していましたが、東京物理学校への進学のため上京した際に、山下の元に住み込み、そこから講道館へ柔道の稽古に通っていました。その後、米田は柔道9段となり、さらに柔整師として愛知県柔道整復師会の第3代会長に就任しています。1928(昭和3)年には施術所を併設した「米田道場」を創設し、この道場は後の米田柔整専門学校へと継承されています。
治五郎の柔道整復に対する関わりは政治的側面が強かったのですが、治五郎の高弟たちの活動により大阪、愛知など大都市で柔道整復の基盤が作られ今日に至っています。
参考文献:加藤高茂、長谷川泰一、江口真一編(1959年、米田松三遺徳顕彰会)『米田松三』ほか
【連載執筆者】
湯浅有希子(ゆあさ・ゆきこ)
帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科助教
柔整師
帝京医学技術専門学校(現帝京短期大学)を卒業し、大同病院で勤務。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程を修了(博士、スポーツ科学)。柔道整復史や武道論などを研究対象としている。
第1回あはき・柔整等の広告検討会 年末へ向け、ガイドライン作成
第1回あはき・柔整等の広告検討会 年末へ向け、ガイドライン作成
2018.05.25
施術所の広告について規制の見直しや適正な運用を議論する「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」の第1回会議が5月10日、都内の厚労省本省で開かれた。新たなガイドラインの作成などに向けて議論を重ね、今年末をめどにとりまとめ案を示す方針だ。併せて無資格業者の規制も検討していくという。
無資格業者への規制も論点に
同検討会は、あはき・柔整の両療養費検討専門委員会の席上で「広告について適正化を行うべき」との指摘があったことを受けて設置された。1、2カ月に1回のペースで検討会を計6回開催し、▽広告に関するガイドラインの作成、▽広告可能な事項の見直し、▽無資格類似業者の広告のあり方、の三つの論点を議論していく。 (さらに…)
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』92 ターミナルケアにおける補完医療
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』92 ターミナルケアにおける補完医療
2018.05.25
大学院生の頃、愛知県岡崎市の生理学研究所で学位のために研究をしていました。久しぶりにこの岡崎に来て、「日本死の臨床研究会」中部支部総会で特別講演をさせていただきました。「死の臨床研究会」は、死の臨床において患者さんやご家族に対する真の援助の道を全人的立場より研究していくことを目的とし、1977年に創立された研究団体です。山積しているターミナルケアにおける問題に対し、研究会を通して医療提供専門職の啓蒙に取り組んでおられます。
今回の講演内容は「日本型統合医療」についてでしたが、午後に参加者の皆さんとワールド・カフェのスタイルで議論する中で、「なるほど」と思うことが出てきました。特にターミナルケアの現場は、西洋医学的な積極的加療を行わない時期なので、補完医療が活用される場面が多いです。ただ同時に、様々な理由で導入も難しくなっているようです。
ターミナルケアも保険診療の枠組みの中で行う以上、補完医療のような自費で行う診療が介入すると混合診療になりかねません。特に国立病院などの公的医療機関では、保険診療以外の行為を入れるにはハードルが高いと言われます。そこで、多くの補完医療は「ボランティア」という形で参入されていることが多いようです。
ところが、ボランティア団体の中には自己主張が強い団体もあり、複数の団体の間で勢力争いが始まったり、看護師との関係がうまくいかなくなったりして、結局「補完医療のボランティアは一律でお断り」となってしまうことが少なくないようです。また、材料費などの一部負担を患者さんに求める「有償ボランティア」に対する理解が希薄で、補完医療側が「無償ボランティア」という条件に疲弊し、うまくいかなくなってしまうこともあるようです。
さらに、補完医療の知識が医療従事者側に不足しているために生じる問題もあります。補完医療側も自らを理解してもらおうと、医療従事者に対して施術を行い、まず信頼を得てから患者さんの施術へつなげる努力をされるところもあるそうですが、ここで医療従事者側が「何か取り入られるのではないか」と不安を感じたり、「看護師を洗脳しようとしている」と管理者が断ったりするケースもあり、信頼を得ようとする行為が「洗脳」とみられることもあるようです。特に補完医療のような、「一見怪しく」思われるような施術と対峙した時に相手が不安を感じるのも理解できます。
様々な意見を伺ってみると、やはり多職種が自らのサービスについて情報共有する「話す場所」を増やすことが肝要です。実はこのような場所に最も足が遠いのは「医師」ですので、日常業務の効率化を図って心の余裕を作り、関心が持てるような環境が必要といえますね。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。