Q&A『上田がお答えいたします』 施術管理者は「年5日間の有給休暇」をどうやって消化すればいいのか
2019.06.10
Q.
「働き方改革」のおかげで、法人の場合は年5日間の有給休暇の消化が必要だと聞いています。ただ、施術管理者は簡単に休むことができません。
A.
働き方改革関連法により本年4月から全ての企業において10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、雇用者は時季を指定して年5日間の年次有給休暇を取得させることが義務化されました(年次有給休暇の時季指定)。労働基準法で、年次有給休暇は勤続年数に応じてその付与が義務付けられています。しかし、従来は年次有給休暇を取るも取らないも労働者の裁量に任せている企業がほとんどであったため、「周りの皆が働いている中で自分だけ休むのは申し訳ないから」と、有給を取りたくても取れない労働者も多くいました。これからは「自由に取っていい」から「必ず取らなくてはならない」ものに変わり、労働者の心身の疲労の回復、そして生産性の向上など労働者・会社双方にとってメリットがあるとされています。
施術管理者は「常駐して専ら施術に当たる者」であるという基本的な考えにより、厚労省から「一人の柔道整復師が複数の施術所の施術管理者となることは原則として認められない。例外的に複数の施術所の施術管理者となる場合については、同時に複数の施術所の管理はできないことから、各施術所における管理を行う日時(曜日)を明確にさせる必要があること」という通知が発出されています。それでは、複数の施術所ではなく1カ所の施術所において施術管理者が有給休暇の日は全額自費にしなければならないのかといえば、そんなことはありません。
深夜営業や土日も営業している整骨院の保険請求の是非を議論した際、24時間・365日営業しているところもあるという話がありました。そのようなところでは現実問題として施術管理者が常駐できないのは明白です。そこで2011年4月に近畿厚生局に確認したところ、「勤務する柔整師がいるのであれば特段問題はない」「施術管理者に常に連絡がつく状態にあるのであれば問題ない」との回答がありました。そのような環境が確保できているのであれば療養費の取り扱いは認められる、ということになりますね。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。




