Q&A『上田がお答えいたします』 地方公務員の公務災害料金は労災保険に準拠するのでは?
2019.04.10
Q.
公立学校の教員として働いている人が来院しました。地方公務員とのことなので、柔整施術料金を労災保険の額で算出して地方公務員災害補償基金の支部に提出したところ、「健康保険の料金で申請して下さい」と返戻されてしまいました。
A.
地方公務員の公務災害の治療を行った場合には、患者さんが勤務する役所・学校等の勤務先を管轄する地方公務員災害補償基金の各都道府県支部に療養補償請求書を提出することになります。
請求に際して、各支部では都道府県知事との申し合わせにより、労災料金に準拠するか健康保険料金に準拠するかを地元医師会の意向を尊重して決めています。あなたの患者さんが該当する支部では、知事との契約により健康保険の規定に基づいて算定するものとしているのでしょう。施術者としてはどうも納得できませんね。医科・歯科・薬価・調剤ですらそのようにして決められているのだから、柔整療養費ともなれば、明確な準拠規定さえ無いところが多いと考えられます。県によっては公益社団法人である地元の柔道整復師会との契約や協定があるかもしれませんが、よく分からないのが実情です。ただ、「健保に準じるべき」というのもあくまでも支払者側からの「お願い」レベルの話です。公務災害を健康保険に準拠することの非合理さについて支部に説明し、了解が得られれば労災料金での請求が可能となる場合もあるということです。実際、私が担当した案件の中にも、当初は健康保険に準じた請求を求められたものの、結果として労災料金で請求できることになったケースがありました。どの支部も「支払う料金は安い方がいい」と、施術者側が受け入れさえすれば健康保険料金で支払っているということでしょうが、これはおかしいですよね。いずれにせよ、施術者が安易に支払側の言いなりになっている実態が公務災害においても存在するのでしょう。徹底的に議論する姿勢が必要です。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。