鍼灸学会Tokyo 平成28年度 第3回研修会 筋膜性疼痛をエコーで評価
2017.01.25
「臨床的触診」も指南
鍼灸学会Tokyoの平成28年度第3回研修会が昨年12月4日、東京大学医学図書館(東京都文京区)で開催された。
鍼灸師、理学療法士(PT)で、治療院や介護事業所などを運営する株式会社ゼニタの代表取締役社長・銭田良博氏が『筋膜性疼痛症候群の病態とエコーによる客観的評価、鍼治療の実際―2』と題して講演した後、超音波画像観察装置(エコー)のデモンストレーションを行った。
銭田氏は、筋膜性疼痛症候群(MPS)とはレントゲン、CT、MRIには映らないが、エコーで確認できる、筋膜に原因がある疼痛の総称であると概説。筋膜にはポリモーダル受容器など痛みを感じるレセプターがあり、体の「使い過ぎ」「使わなさすぎ」「誤った使い方」などに起因する筋膜の変性によって疼痛が生じると説明した。筋膜の変性はエコーで見ると、慢性痛の場合は筋膜の白い線状が厚くなっていることが多く、急性痛の場合は筋膜の不連続が見られるとした。
筋膜に限らず、内臓を取り巻く髄膜・胸腹膜、靭帯や腱などの膜様の組織も同様の疼痛発生源であり、これらを包括するFascia(ファッシア)という概念を提唱。自身が役員を務め、医師、PT、鍼灸師など多職種で構成されるMPS研究会では現在、ファッシアの疼痛の評価法「発痛源評価」の確立を進めるとともにファッシアの適切な訳語を模索していると述べた。
ミリ単位で探る指先を
また、層構造であるファッシアへのアプローチ法として「臨床的触診」を紹介した。経絡、経穴、筋の起始・停止といった平面的な位置関係だけでなく、解剖学的知識に基づく、「深さ」を意識した三次元的な触診が重要であると強調。痛みの発生源を解剖学的に明らかにした上で、患者が圧痛を訴える深さをミリ単位で探り、刺入する深さなどを決めていると話した。
銭田氏はエコーについて、治療時に利用するだけでなく、触診で得た所見や選択した治療法が正しいかどうかを客観的に確認することで、触診技術の精度を高めていけるものであると説明。治療家の指先は極めれば極めるほど、エコーに勝るとも劣らないプローブになると語った。
デモンストレーションではエコーの使用方法に触れた後、足関節の底背屈による前脛骨筋の動きなどから、膜よりも下で筋線維が動く様子などを見せ、動脈、静脈、神経を観察できるといった機能も実演した。