日鍼会・全鍼師会合同の災害講習会、横浜で1回目 災害鍼灸マッサージ、世界へ発信
2019.01.25
DMAT、DPAT関係者も講演
日本鍼灸師会(日鍼会)と全日本鍼灸マッサージ師会(全鍼師会)による「第1回災害支援鍼灸マッサージ師合同育成講習会」が昨年12月9日、横浜市内で開かれた。
冒頭、全鍼師会災害対策委員長・仲嶋隆史氏から、両師会の災害支援活動の対外的な窓口となる「災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会(DSAM、ディーサム)」の設置が発表された(本紙1087号1面参照)。また、国内外で医療支援活動を行っている『認定特定非営利活動法人AMDA(アムダ)』、『公益財団法人国際医療技術財団(ジムテフ)』と全鍼師会の三者で結んだ災害協定に言及。災害支援活動における両者との連携を推し進めるとともに、平時の訓練や研修にも注力していくと述べた。また、アムダは国連やWHOなどで意見を具申できる経済社会理事会に対し、諮問的地位を有していると説明。将来的には、アムダを通じてWHOに「災害鍼灸マッサージ」を提言し、世界に発信していきたいと話した。
日鍼会からは危機管理委員長の堀口正剛氏が登壇。▽問診、施術を含めて20分とする、▽違和感を残さないため鍼は浅く、置鍼、単刺のみとする、▽脳貧血予防のため座位での刺鍼はしない、▽カイロ、整体、運動法については行わない、といった被災地における施術の注意点を列挙。ただ専門職として力を発揮できるのはまれで、使命感が強すぎてはいけないなど支援活動の心得も説いた。また、資金力不足などの現在の課題も挙げ、特に、災害時の対策本部設置におけるリーダー格の鍼灸師の確保が困難であるとして、リーダー候補育成のため平時からの災害研修等への参加を広く呼びかけた。
『災害時のメンタルヘルスの実際』と題して、医学博士でDPAT(災害派遣精神医療チーム)事務局アドバイザーの河嶌讓氏が講演を行った。被災後には、ASD(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)のほか、不安や不眠によるアルコール・薬物依存になるケースがみられると説明。支援者も同様で、PTSDや燃え尽き症候群で災害派遣後に離職・休職してしまう事例もあると注意した。
『災害医療対策の歴史と多職種連携の必要性』はDMAT事務局長で日本災害医学会代表理事の小井土雄一氏が登壇した。平成28年の熊本地震を受けて厚労省から発出された「大規模災害時の保健医療活動に係る体制の整備について」では今後の医療と保健・福祉・介護の連携の重要性が強調されており、災害時における多職種連携が国家レベルで実現しつつあると解説。鍼灸師の活動もこの連携の中で行われていくこととなると述べ、「避難所生活や車中泊による深部静脈血栓症や生活不活発病、心のケアにおける鍼灸師への期待は大きい」と語った。
ほかに『県庁との災害協定について』(内田輝和氏・岡山県鍼灸師会会長)などが行われた。