連載『柔道整復と超音波画像観察装置』178 足関節損傷時の超音波画像観察について
2020.01.24
鈴木 孝行(筋・骨格画像研究会)
30代の男性。柔道の練習中、畳に足をとられて右足関節が外返しになり受傷、その直後から足関節内側部に痛みが出現したため来院した。患部を診察したところ、自発痛、運動痛はもちろんのこと、内果部の腫脹や三角靭帯付近の圧痛が確認でき、外返しのストレステストで疼痛が増強、患側での荷重負荷も困難で、跛行が見られた。これらを踏まえると「三角靭帯損傷」と「脛骨下端部骨折」の二つの損傷の可能性が考えられたので、その判断のため、超音波画像観察装置で患部を観察することにした。
まず、健側(左足)画像中の組織の位置を確認する【画像①】。①は「脛骨下端部」、②の高エコーラインは「距骨」、③の帯状のラインが「三角靭帯」である。全体的に組織間の境界が明確になっている。患側(右足)の画像と健側の画像を比較するとまず確認できるのが、患側の脛骨下端部の黄色い線で囲んでいる箇所の不整画像である【画像②】。健側では、脛骨の高エコーラインが鮮明に描出されていたが、患側では骨折があるため、高エコーラインに侵入像が見られ、さらにその周囲には出血や炎症物質が滲出して、低エコー領域が増加しているのが認められた。また、三角靭帯の観察においては、健側と比較すると、高エコーのラインに低エコーが入り込んでいる不整画像が確認できた。これは、骨折における内出血として捉えられるが、靭帯損傷の疑いも考えられるので見極めが難しい所見である。
今回のような足関節周辺の損傷では、下端部骨折や靭帯損傷など判断に迷う症例が多々存在するので、見逃さぬようにしなければならない。多くの情報が得られる超音波画像観察装置を使用して健側と患側とを比較観察し、患者にも画像を確認してもらえれば、患部の客観的な説明が可能になる。これによってインフォームドコンセントをより明確に行うことができるので、骨折および軟部組織損傷に対する超音波画像観察の必要性は今後も高いと考えられる。