連載『柔道整復と超音波画像観察装置』176 『投球障害とソフトボールの関係を超音波画像観察装置で検証する②』
2019.11.25
1109号(2019年11月25日号)、柔道整復と超音波画像観察装置、
竹本 晋史(筋・骨格画像研究会)
前回から「投球障害とソフトボールの関係」について検証している。小学5、6年生のソフトボール選手63名のうち21名(33.3%)に肘痛の既往歴があったが(グラフは肘が痛くなった時の「学年」をアンケート調査したもの)、超音波画像観察装置によって肘部に変形が認められたのは8名(画像はそのうち2名のもの)にとどまり、12.6%だった。変形のある選手のうち肘痛の既往歴があるのは7名で、1名は若干の変形が観察できるものの痛みは訴えていない。ソフトボールを始めたのは「1年生から」が24名と最も多く、次いで「3年生」18名、「4年生」10名、「2年生」9名、「5年生」2名となっている。
【考 察】
ソフトボールは軟式ボールや硬式ボールに比べると15.3㎜~22.6㎜大きく、14.2g~36.8g重たい。m(質量)、a(加速度)、F(力)とするとma=Fの運動方程式が成り立ち、軟式、硬式は握りやすく腕が振りやすいことからソフトボールに比べるとFは大きくなる。また、手に保持したボールを加速させる時にボールが軽いと手からの作用は腕を加速させるために働き、ボールが重いと手首で作用させてボールの加速に使われる。重いボールは腕を強く振らないので、肘への負担は軽減されると推察される。硬式、軟式、ソフトボール、それぞれの練習の頻度、時間、強度等、環境が統一されていないので一概には言えないが、ソフトボールが肘に与える影響は軟式ボールや硬式ボールに比べると少ないと考えられる。
【まとめ】
平成29年の検証では、変形が見られたのは9名中1名で11.1%だった。母数が変わっても同様の結果(12.6%)になり、「ソフトボールから始めた選手には肘内側部の変形が少ないのでは」との当時の推測通りとなった。ただ、練習方法に違いがあるので、統一した練習方法で検証する必要と、それぞれのボールで肘に掛かる外反力を測定する必要があると思われる。