連載『織田聡の日本型統合医療“考”』126 日医主催の健康スポーツ医学講習会に参加
2019.11.10
1108号(2019年11月10日号)、織田聡の日本型統合医療"考"、
日本医師会(日医)主催の「健康スポーツ医学講習会」に参加しています。スポーツ活動に深く関わるようになってきたため、系統的な学習を目的として、週末4日間で計1,500分を自己投資しています。 スポーツ医学というと、整形外科的な領域がメインと思われがちですが、日医認定の「健康スポーツ医」の約半数は内科医だそうです。講習科目も内科疾患を予防するための運動や、患者さんがより健康になるための運動を処方するための知識が中心となっています。もちろん、競技スポーツという側面から可否判定をするメディカルチェックの話もあります。マラソン大会の最中に心肺停止となった選手の蘇生の様子がビデオで紹介され、スポーツに関わる医師にとっても緊張する内容でした。30代のランナーですら心肺停止の例があると聞き、油断できません。特に今の時代は、趣味・娯楽としてのスポーツを楽しむ人から極限を目指す人まで幅広いです。ふと、山岳診療所で診た登山者に「私、心臓疾患があるのですが……」と言われ、なぜ登ってきたの? と内心思った時のことを懐かしく思い出しました。医師でなくともスポーツ大会でボランティア活動に参加される方は、せめて一次救命処置ぐらいは覚えていてくださいね。
さて、「運動が健康のために良い」というのは、おそらく間違いはないのですが、その種類や強度によっては害にもなり得ます。当然、医学的基礎知識の上に、運動に関するエビデンスを重ねていく必要があります。講習会の中で、「テニスが最も寿命を延ばす」というデンマークの報告が紹介され、最近は野球との関わりが強い私には、少し「盲目的なテニス推し」の講演が鼻につき、バイアスを考えてしまいました。▽ジムでのフィットネス、▽徒手体操、▽ジョギング、▽水泳、▽サイクリング、▽サッカー、▽バドミントン、▽テニスの8種類を行っている8577人の25年分のデータから比較したところ、テニスをしていた人の平均寿命が「運動不足」の人たちよりも平均9.7年間も長くなったといいます。次いで延命効果が高かったのはバドミントンで平均6.2年、以下順に、サッカー4.7年、サイクリング3.7年、水泳3.4年、ジョギング3.2年、徒手体操3.1年でした。「ジムでのフィットネス」は最下位で、ジムにお金を払っても1.5年だそうです。年齢や教育レベル、BMI、身体的・精神的疾患の有無、喫煙、飲酒等の背景は調整しているそうですが、そもそもデンマークと日本は人気のスポーツも違えば、経済的背景も異なります。何か交絡因子が隠れているのではないかと疑いました。ご興味のある先生方は、ぜひ原著を当たってみてください(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27895075)。ちなみに、東京五輪ではテニス女子シングルスが最も紫外線を受けるというオーストラリアの研究もありますね。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。