あマ指師課程新設非認定処分取消裁判・大阪地裁 憲法研究者の意見で原告主張出尽くす
2019.07.25
晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設申請を認めなかったとして、学校法人平成医療学園らが国を相手取って処分取消を求めている裁判の14回目となる口頭弁論が6月28日、大阪地裁で行われた。今回、原告の学園側から、これまでの主張・指摘を総括した意見文書のほか、憲法研究が専門の大学准教授による「あはき法19条は違憲」と結論付けた鑑定意見書などが提出された。
憲法研究者の鑑定意見書は、あマ指師養成課程新設に対してあはき法が採用する「許可制」に関連する過去の裁判例(小売市場判決や薬事法判決)を引用し、その変遷や比較分析を交えながら、非認定とした国の処分が「過度に経済的自由権を制約」し、19条1項は職業選択の自由を損なうと説いた。意見書の中には、あはき法と同様に「当分の間」という時間的限定を付けた「たばこの小売販売規制」に言及した個所もあり、「法律施行から2年という短い期間での出訴(訴え出る)であった」との記述も見られた。また、今回原告の提出文書の中には、身近に養成校が無く、やむなく越県して通った晴眼者の体験談等も陳述書(下記の要約参照)として出されていた。
当日の口頭弁論では、裁判所が「原告側の主張は総括だが、今後、追加の主張などはもう無いか」と尋ね、原告が「今後の被告の反論次第だが、現時点では無い」と答えた。一方、被告は次回までに反論の要否も含めて検討したいと述べた。次回弁論は10月11日。
越県して養成校に通った晴眼者の声(要約)
▼私は現在、柔整師・鍼灸師・あマ指師として、福岡市で治療院を経営している。高校卒業後、大阪のA専門学校柔整師科に入り、平成18年に卒業。さらなるキャリアアップのため、鍼灸師の免許を取ろうと考えた。しかし、その時に出会ったスポーツ業界の方から「鍼を打つならマッサージができた方が、鍼が上達する」と聞き、あマ指師の資格も取りたいと思った。
▼ところが、出身地である福岡県にはあマ指師の資格を取る学校が無く、九州では鹿児島県にしかないことを知った。そのため、神奈川県のB専門学校を選び、受験等で神奈川へ出向かなければならないし、当然引っ越しもしなければならない。3年間の学費は奨学金(現在、返済中)を受け、一人暮らしの生活費をまかなうため深夜もアルバイトをした。
▼私はこれまで数名の視覚障害者と出会い、視覚障害があっても「あはき師」の方ばかりではなかった。その中の一人は今の患者さんで、飲食業の会社で長年勤められていた。あはき法19条の視覚障害者の職域を守るという意図は理解できるが、この条文があるために、晴眼者があマ指師になるハードルが非常に高い。また、このため、全国で資格を持たずに「もみほぐし」「リラクゼーション」等をしている者が増え、未熟なセラピストによって、一般消費者の健康被害が増えているのも事実だ。