「医業類似行為の定義」めぐる質問主意書(1) 「あはき・柔整も含む」と政府回答
2019.06.25
宮城県選出の参院議員・櫻井充氏(国民民主党)が、あはき法12条にある「医業類似行為」に対する政府の認識・見解を求め、5月23日付で質問主意書を提出した。政府から同月31日に答弁書が出され、国家資格者が行う「あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復」が、他の療術行為同様、医業類似行為に含まれるとの見解が示された。(次ページ以降に質問・回答要旨)
「公共の福祉に反する職業」にリラク業は当たらない
櫻井議員が質問で主に問いただしたのは、国家資格者のあはき師や柔整師の施術が「医業類似行為」に含まれるか否かという点だった。複数の側面から政府の認識等を求め、▽医業類似行為は、広義(無資格者)と狭義(有資格者)を合わせた概念なのか、▽過去の判例(昭和29年6月29日の仙台高裁判決や昭和35年1月27日の最高裁判決)では、あはき師等が資格の範囲内で行う施術は医業類似行為に該当しないという認識が共通のものであると考えられるが、政府の見解はどうか、などの関連した8の質問をした。これに対して政府は、個別の質問には「意味するところが明らかでなく、回答は困難」と答えを避け、その上で総合的な考えとして、「医業類似行為には、あん摩、マッサージ及び指圧、はり、きゅう並びに柔道整復のほか、これら以外の手技、温熱等による療術行為も含まれる」旨の見解を示した。
また質問主意書では、これとは別に、近年頻発している無資格者による事故の危険性を指摘し、法的な規制や取り締まりの強化の必要性も求めた。その中で、「現在経済産業省が推進する無資格者が行うリラクゼーション業は憲法第22条で規制される公共の福祉に反する職業であり、推進することは立憲主義に反する行為」と批判し、政府に見解を求めた。政府は答弁書で、「経済産業省はあはき法を含む関係法令の遵守を前提としている」と前置きをした上、「御指摘は当てはまらない」と一蹴した。
行政の間違った解釈が踏襲された答弁書
元厚生労働教官の芦野純夫氏(横浜医療専門学校学術顧問)の話
質問主意書は、リラクゼーションは健康被害を与えかねず、最高裁が禁じた公共の福祉に反する医業類似行為なのでこれを経産省が推進するのはおかしいと指摘する。しかし、そもそも最高裁判決でいう「危害を及ぼす虞」とは「治療行為」のことで、慰安・娯楽・風俗のたぐいや健康法などは含まれていない。これは法施行時に厚生省医務局で作られた『営業法の解説』にも明記されている。問題はリラクゼーションを逸脱して治療行為に及んでしまうケースで、当然取り締まりの対象にもかかわらず、多くの者が最高裁判決を誤解し、職業選択の自由が認められて医業類似行為が解禁されたと思っている。判決は逆で医業類似行為を禁止した12条を合憲とし、治療であれば必ず「有害有益」の行為なので、医業類似行為は認められないと判示した。行政側もそのあたりを正しく理解できておらず、医業類似行為者の団体を医道審議会のメンバーに迎え入れ、そのためあはき・柔整の施術行為も広義の医業類似行為にされてしまい、12条は1条と同じ内容を表現を替えて繰り返したと解釈を変えた。行政の都合で条文を読み替えるのは、三権分立の建て前から許されず、今回の答弁書でもその間違いが踏襲されている。