連載『織田聡の日本型統合医療“考”』62 医師が「同意書」を書きたくなるには
2017.02.25
私は「医療機関との連携」をテーマに講演する機会が少なくなく、大抵の場合、質疑応答で「どうしたら同意書を書いてもらえる医師と連携できるでしょうか」という質問が出てきます。「医療機関との連携→同意書」と発想をしているのですね。私は、基本的には療養費の枠の中で施術を行っていくのは限界があると感じています。保険外の自費での治療の方が、自由度が高くなり、何より医療機関と連携がしやすくなります。しかし、もちろん全てを自費診療でと言うつもりはありません。患者さんの中には保険でないと施術を受けられない方々もおられるからです。今回は、逆説的ではありますが、どうしたら医師が「同意書」を書いてくれるようになるのか、考えてみます。
「同意書」を拒否する医師は、必ずしも社会保険制度について深く理解をしていて、確固たる信念を持って拒否しているとは限りません。中には「同意書とは何?」と思っている医師もいます。いずれにしても数ある"書類仕事"の一つです。患者さんに言われるまま書いたり、医師会や保険者から「書くな」と言われて書かなかったり。私が以前勤務していたクリニックでは、「原則書かない」との院長通達が出ていました。しかし、同意書の意義を説明したところ、私は「書いて良し」となりました。同意書の"意義"がもっと理解されるようになれば書く医師は増えるかもしれません。
よく理解していても、理由があって書かない場合もあります。ある日、整形外科医の友人が「同意書」の用紙が治療院側にあるのはおかしいと怒っていました。いきなり患者さんが用紙だけ持ってきて、「先生、同意書を書いてください」と言われたとかで、これは順序が違うだろう、というのです。なぜよく知りもしない治療院のために一筆書かなければならないのか。本来ならば、自分が知っている治療院に患者さんを紹介するために同意書を書くから、「用紙は医療機関側に置いてあるべきだ」と。彼は実家が接骨院だったこともあり、柔整師や鍼灸マッサージ師に理解のある医師の1人です。何の連携もない治療院が患者さん本人に「同意書もらって来て」と紙だけ届けさせるような、不躾なやり方に怒っているのです。
「同意書を書いてもいいかな」と医師が思えるのは、「この先生とは連携してもいいかな」と思える施術者です。冒頭の質問への答えは「連携できる医師は同意書を書いてくれる」です。連携せずに同意書をもらおうとするから書いてもらえない。「顔の見える連携」を作ることが先決でしょう。まず患者さんを「紹介状」付きで紹介することから始めたらどうでしょうか。Give and TakeではなくGive and Giveが良いかもしれませんよ。