Q&A『上田がお答えいたします』 あはき受領委任導入後の署名・捺印の取り扱いはどうなるの?
2018.07.10
Q.
来年1月からあはき療養費の受領委任が始まるとのことですが、療養費支給申請書への署名・捺印の取り扱いはどうなるのでしょうか。現在は、重篤な麻痺や拘縮のある患者さんの場合、ご家族による代筆や捺印を認めてもらっていますが、受領委任に移行してからも認めてもらえるでしょうか。
A.
受領委任における署名・捺印については、柔整療養費で既に明らかになっています。例えば、患者さんが乳幼児で文字が書けない場合、母親などの家族が代筆することは認められず、施術者が代筆した上で、家族の捺印または患者さんの拇印を求めることになります。奇妙にも思える運用ですが、通知上はこれが「正解」です。患者さんが署名した場合は、押印は要りません。すなわち、柔整ではあはきと異なり「家族が委任欄を作成することは一切無く、患者が書けなければ施術者が代筆して、押印を求めるか拇印を押してもらうこと」と明確にルール化されています。
ご質問があったように、来年1月からのあはき施術に係る療養費支給申請においては、新たに始まる受領委任の証明欄の取り扱いには多くの疑義が生じそうですね。しかし、原則的には柔整療養費で現在運用されている点がそのまま踏襲され、別途、修正や運用変更を意図する通知の発出が無い限りは、あはきも柔整と全く同様の取り扱いにならざるを得ないでしょう。いわゆる「6疾患」などの痛みによって、あるいは麻痺や関節拘縮の影響で、患者さんが自分の名前を書けないとします。その場合、ご家族が患者さんに代わってサインをするのではなく、あはき師が責任をもって「代筆」した上で、押印や拇印を求めることになるのではないかと思われます。
ただ、この運用は患者さんがサインをすることが容易な事例が比較的多い柔整療養費での取り扱いです。もし、「柔整と同様の取り扱いではダメだ」というのであれば、あはき業界側から厚労省に申し入れを行わねばなりません。当事者ではない厚労省には、そのような考えは起こらないからです。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。