橿原市での柔整療養費の相殺処理めぐる裁判、来年3月判決
2019.12.13
柔整療養費の相殺処理をめぐって、橿原市の住民が同市を相手取り、本来支給されるべき療養費の不足額の支払いなどを求めた裁判は、12月12日の奈良地裁での口頭弁論で結審した。判決は令和2年3月12日に言い渡される。
なお今回、原告側を支援する全国柔整師協会(全柔協)の補助参加の申請が裁判所から認められた。(今後発行の弊紙で、原告・被告双方の主な主張などを詳述)
橿原市での柔整療養費の相殺処理めぐる裁判、来年3月判決
橿原市での柔整療養費の相殺処理めぐる裁判、来年3月判決
2019.12.13
柔整療養費の相殺処理をめぐって、橿原市の住民が同市を相手取り、本来支給されるべき療養費の不足額の支払いなどを求めた裁判は、12月12日の奈良地裁での口頭弁論で結審した。判決は令和2年3月12日に言い渡される。
なお今回、原告側を支援する全国柔整師協会(全柔協)の補助参加の申請が裁判所から認められた。(今後発行の弊紙で、原告・被告双方の主な主張などを詳述)
ホームページをリニューアルしました
ホームページをリニューアルしました
2019.12.13
いつも鍼灸柔整新聞のホームページにアクセスいただき、誠にありがとうございます。このたび、ホームページを全面リニューアルいたしました。
利用者の中には視力障害の施術者も少なからずおられ、読み上げ機能も使用できるテキスト主体のページに変更するなど、どなたでも快適に閲覧いただけるようなサイト構成やデザインに一新しました。
また、有料記事として配信している「デジタル版」(年3,000円)も併せてリニューアルしました。
今後も、より充実したホームページにしていけるよう努力して参りますので、鍼灸柔整新聞をよろしくお願い申し上げます。
帝国データバンクが整骨院等の経営状況を発表 2018年度収入高が2,000億円超
帝国データバンクが整骨院等の経営状況を発表 2018年度収入高が2,000億円超
2019.12.10
―前年度4.8%増、療術業者含む約2,000社調査―
整骨院・療術・マッサージ業者1,888社の2018年度における収入高合計が2,038億4,800万円で、前年度比4.8%増――株式会社帝国データバンクが、2019年10月時点の同社の企業データファイル(147万社収録)を用い、治療院等の経営実態に関する調査を行った結果を11月11日に発表した。調査対象は整骨院・マッサージ院のほか、療術業者も含まれ、同様の調査は初めてという。
「収入高合計」は、2016年度から3期連続で収入高が判明した1,888社を対象としている。2018年度は2,038億4,800万円で増加傾向(下表参照)を示しており、収入高トップはリラクゼーション大手の「株式会社りらく」で、次いで整体サロン『カラダファクトリー』運営の「株式会社FJG」、整骨・鍼灸院『げんき堂』運営の「株式会社GENKIDO」と続いた。帝国データバンクは「中堅・大手業者は新規出店で増収につなげており、小規模業者では高齢者を中心としたリピーターを確保できた業者が多くみられた」と分析している。
2018年倒産85件
競合激しく、淘汰も
倒産動向についても調査結果を公表。2018年の倒産件数は85件で、2000年以降、最多を記録し、また、ここ10年間で3倍超と増加傾向が続いている。2019年も10月までの倒産件数が既に78件発生しており、2018年に迫るペースで推移しているほか、「負債1,000万円~5,000万円未満」の小規模業者の倒産が目立ったという。帝国データバンクは、自費メニュー(骨盤矯正など)のシェア拡大に注力する整骨院が増える中、今後リラクゼーション業者と競合し、淘汰が加速する可能性を指摘している。
『医療は国民のために』284 「柔整ガイドライン」の構築が求められる
『医療は国民のために』284 「柔整ガイドライン」の構築が求められる
2019.12.10
施術所広告に関する「ガイドライン」が、今年度末にも策定される見通しという。遅れに遅れた感があるが、それでも策定できるのであれば良いことなのだろう。医療分野において「ガイドライン」とは、最新の臨床研究の結果を踏まえた上で、その時点で推奨される治療法・範囲などがまとめられた文書のことだ。医療行為として、一般的で、かつ最善とされる診療方策が提示されているものといえる。
ところが、柔整施術は実際に患者に施術を行うという点で、常に臨床実態が伴っているものの、そのガイドラインが存在していない。実に驚くべきことだ。公益社団法人日本柔道整復師会(日整)の広報誌等には、療養費の支給対象となっている「骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷」が柔整師の業務範囲であるとの記述が確認できるが、私からすれば、それは建前であり、実態に全くそぐわない机上の空論であると言える。なぜなら現在、整骨院で骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の施術が広く実施されているとは思えないからだ。もちろん急性期の捻挫・打撲の患者は来院しているが、その他の多くは運動器に係る慢性疼痛疾患ではないのか。だからこそ、柔整業界の先人・先達は「亜急性負傷」の定義にこだわり、発生機序が反復・継続・酷使(使いすぎ、オーバーユース)も柔整施術として堂々と治療がなされてきた。今もなお、これらは柔整師の業務範囲であることに疑いはない。昨年、療養費の支給対象として「慢性が除かれる」と明記されてしまったが、柔整師が運動器の慢性疼痛疾患等を自費で手がけるのは何ら問題ないではないか。
一方、広告に関するガイドライン策定でも議論になっている「整骨院での整体・カイロプラクティック・アロマテラピー・リフレクソロジー等」については、それぞれの施術や行為に基本的な概念なり、定義、考え方が存在するのだから、これらは明らかに「柔道整復」ではない。その上、施術所には「専用の施術室」と法令上の規制がある。法令では「柔道整復師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者をいう」ともあるが、それでは柔整とは何なのか? 実のところ、明快に答えられる言葉は存在しないのだ。そう考えると、今まさに「柔道整復に関するガイドライン」の策定が求められる。柔整師がやらなければならないこと、そして、やってはいけないことについてガイドラインを構築し、明らかにするのはどうだろうか。これは必ずしも療養費という保険取扱いと一致しなくともよい。例えば、骨盤矯正は柔整師の業務なのか? また、物理的な電療を施すのが柔整なのか? 後者については、電療施術一つとっても、奥行きが深く経験や実績が必要になるだろう。
世間や保険者から「柔整師は単なる“もみやさん”」などと揶揄する言葉も聞かれ、そのたびに「柔整ガイドライン」の必要性を強く感じてきた。柔整師が業を行うに当たっての当たり前の定義・考え方を早急に構築すべきだ。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
第64回日本生殖医学会学術講演会 JISRAMの徐大兼氏が登壇
第64回日本生殖医学会学術講演会 JISRAMの徐大兼氏が登壇
2019.12.10
―生殖医療「国内最大級」の学会で―
第64回日本生殖医学会学術講演会が11月7日、8日、神戸国際会議場・展示場(神戸市中央区)で開催された。同学会はヒトと動物の生殖医療に関する学術の発展を目的として活動しており、医師や獣医師、研究者など、数千名の会員を擁している。今回の学術講演会は演題数600弱、参加者2,500人以上という「国内最大級」の規模となった。統合医療をテーマとしたシンポジウムではJISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)代表理事の中村一徳氏が医師と共同で座長を担当し、シンポジストの一人として、鍼灸師の徐大兼氏(アキュラ鍼灸院、JISRAM事務局長)が講演を行った。
徐氏は、近年、米国ではART(高度生殖医療)と鍼灸を併用する患者が増えていると説明。マサチューセッツ州の高度生殖医療施設「ボストンIVF(体外受精)」のドマール博士の研究によると、対象患者の30%がIVF前に鍼灸治療を受け、47%がIVF中に利用していたと解説。現在鍼灸を現場で提供している、または鍼灸院と提携している施設は米国の高度生殖医療施設全体の50%以上に上るのではないかとの、博士の推論を紹介した。
反復不成功例でも鍼灸で妊娠率向上
また徐氏は、自身が責任者を務める京野アートクリニック高輪の鍼灸ルームで行った、不妊患者への鍼灸治療の効果についての調査結果を発表した。調査では、2002年にPaulusらが不妊に対する鍼灸治療で有意な結果を示したプロトコールに星状神経節へのレーザー照射を追加。鍼灸を実施しなかった群の妊娠率が33.4%で流産率が28.3%だったのに対し、鍼灸群では妊娠率54.3%と大きく上回り、流産率は15.8%と低く抑えられたと述べた。対象となった患者のうち凍結胚移植3回以上の反復不成功例の患者については、鍼灸を実施しなかった患者の妊娠率は24.8%だったのに対して、実施した患者の妊娠率は54.5%に上ったと説明した。
シンポジウムにはほかに、著書『The Fertility Diet(邦題:妊娠しやすい食生活)』で知られるジョージ・E・チャヴァロ氏(ハーバード大学公衆衛生大学院栄養免疫学准教授)、太田邦明氏(福島県立医科大学産科婦人科学講座ふくしま子ども・女性医療支援センター)、古賀文敏氏(古賀文敏ウイメンズクリニック)が登壇、栄養学などの観点から妊孕性について語った。
連載『不妊鍼灸は一日にして成らず』20 日本生殖医学会
連載『不妊鍼灸は一日にして成らず』20 日本生殖医学会
2019.12.10
11月7日と8日に神戸国際会議場で第64回日本生殖医学会学術講演会が開かれました。生殖関連の演題数600弱、参加者2,500人以上という国内最大級の学会です。私が座長を務めた統合医療のシンポジウムには一体どれほどの人が集まるのか心配でしたが、二つ目に大きな会場の8割程度が埋まって一安心。有名な医師もたくさん来られました。このシンポジウムの大きな目的に、代替療法の評価や適応をどうするか、という課題がありました。福島県立医大の太田邦明先生がヨガについて、ストレス軽減、体調管理などの全身的に良い効果は期待できても、生殖に対して現段階では直接的に評価し得る効果は乏しいと結論されました。ハーバード大学のチャヴァロ先生は、生殖において女性のみならず男性にも食事が重要であることを強調され、福岡の古賀文敏先生は、コレステロールやBMIと妊孕性の関連を述べられました。我がJISRAMの徐大兼先生は、ボストンIVFセンターなど海外での鍼の導入状況や、私が胚の進捗について有意差を証明した「育卵鍼灸」を解説されました。また「鍼の効果を検証するのに、いわゆる二重盲検のような検証は困難。なぜなら偽鍼を使っても皮膚に刺激が与えられるのは避けられず、DBTのような検証は困難である」と言われました。するとフロアから「では指圧のような刺激でも効果があると言えるのか」との質問が。私は「偽鍼は本物の鍼と判別できないレベルの刺激を与えなくては偽鍼にはならないから検証が困難なのであって、指圧のように明らかに鍼と異なる感覚のものを俎上に載せているわけではない」と伝えました。もし「指圧でも効果があるかもしれない」などとこの格式ある学会で言ってしまうと大変なことになりかねません。
スタイナーがラットを使って卵巣血流量を測定した実験では鍼、指圧、熱、ピンチといった刺激を与えた場合、熱については火傷を起こすレベルの強い熱刺激ではじめて効果が確認されており、これは直接灸のレベルです。一方、弱い心地良い温熱では効果は確認されていません。鍼はと言えば、正しい場所に鍼をして、強く一定の頻度で電気刺激を与えることが必須とされ、それ以外の、刺さない鍼、置鍼のみ、弱い電気刺激は無効であり、電気刺激の頻度すらも正しくなければその効果は無い、または乏しいことが分かっています。つまり鍼灸は、手技が違えば効果は全く異なるわけです。確かに様々な鍼法が健康に役立つかもしれません。また「しょせん動物実験じゃないか」という批判的意見もあるでしょう。しかし鍼による様々な刺激方法で卵巣への直接的な効果を計測したわけですから、逆にあえて効果が乏しかった方法を取る理由もないでしょう。育卵鍼灸は、この実験同様の方法で採卵成績向上の有意差を確認できているのです。まずはセオリーに沿って行うべきではないでしょうか。
妊娠は医療介入が無くても一定割合成立しやすいので、手技手法は特に慎重に採用されなくてはなりません。鍼灸が妊娠の何に対して効果を及ぼし得るのか、またどういった検証が可能なのか、それを模索するには色んな知識を備えておくことが必要です。また日々変化する生殖医療を知っておくのは、患者さんに間違った情報を伝えないようにするためにも、とても大切なことです。
さて、今回は二十人近くのJISRAMの仲間が来場していました。更に長年お会いしたかった医師が「中村先生」と声をかけて下さりしばし歓談、再会を約して別れました。年末年始は当院にお二人の医師が見学に来られる予定で、また医師の学会から三つ講演依頼が来ていて楽しみです。そういえば、もうすぐ締め切りの講演抄録を書かないと。皆様、今年はどんな年でしたか? 来年が一層良い一年になりますように。
【連載執筆者】
中村一徳(なかむら・かずのり)
京都なかむら第二針療所、滋賀栗東鍼灸整骨院・鍼灸部門総院長
一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)代表理事
鍼灸師
法学部と鍼灸科の同時在籍で鍼灸師に。生殖鍼灸の臨床研究で有意差を証明。香川厚仁病院生殖医療部門鍼灸ルーム長。鍼灸SL研究会所属。
日本伝統鍼灸学会第47回学術大会 ICD-11における経脈病証の使用状況
日本伝統鍼灸学会第47回学術大会 ICD-11における経脈病証の使用状況
2019.12.10
―ICD-11における経脈病証の使用状況
最多は膀胱経、次いで胆経など―
日本伝統鍼灸学会の第47回学術大会が11月23日、24日、東京都内で開催された。テーマは『日本伝統鍼灸の確立に向けて―日本の鍼灸の発想と継承』。
JLOM委員会報告では明治国際医療大学大学院特任准教授の斉藤宗則氏が登壇し、国際疾病分類第11版(ICD-11)に伝統医療分野が導入された経緯と現状を概説した。中国や韓国はICD-11の活用のために国を挙げて症例集積を行っていると指摘。日本でもその作業が急務であるとして、昨年10月から12月にかけて行った『国際疾病分類第11版における経脈病証の鍼灸臨床使用状況の調査』の結果を発表した。症例数2,617(調査協力者213名)のうち最も多かったのが膀胱経(811例、31.0%)で、次いで胆経(447例)、腎経(431例)などとなっており、奇経八脈は正経と比べると少ないと説明。主訴は腰痛が447例(17.1%)と最多で、膝痛、肩痛が続いたとし、上位10主訴(49.5%)は「痛み」と「こり」が占めたと述べた。斉藤氏は、このようなデータを集め続ければ鍼灸受療患者の実態を明らかにできるだけでなく、主訴や西洋医学的病名と経脈病証との関連性も追求できるとして、協力を呼び掛けた。
学生限定のセミナーでは同学会会長の形井秀一氏(洞峰パーク鍼灸院院長)、長野仁氏(森ノ宮医療大学大学院教授)、寄金丈嗣氏(六然社)が講演や実技を行った。形井氏は、触診では「圧痛があるということを、圧痛を感じさせる前に分かるのが理想」だと説明。触診の練習の際には、術者側はとにかく手の感覚を磨き、被術者側は常に、左右差などの感覚を言語化して術者に伝えなければならないと学生らに説いた。長野氏は、押手で鍼を回旋させて刺手で送り込む古法による刺鍼法を、寄金氏は散鍼を披露した。
ほかに会頭講演『易と鍼灸』(小林詔司氏・積聚会名誉会長)や教育講演『「黄帝内経」千年の定説を覆す』(松田博公氏・日本内経医学会)、特別対談『脈診と経絡治療について』(篠原孝市氏・日本鍼灸研究会/浦山久嗣氏・経絡治療学会)、実技講演『散ずる鍼を尋ねて』(南谷旺伯氏・旺針療所)、一般口演などが行われた。
現代医療鍼灸臨床研究会 第50回記念大会 現代医学的視点の追求、25年
現代医療鍼灸臨床研究会 第50回記念大会 現代医学的視点の追求、25年
2019.12.10
―設立当初は業界の反発も―
現代医療鍼灸臨床研究会の第50回記念大会が10月27日、東京大学鉄門記念講堂(東京都文京区)で開催された。25周年の節目を記念して、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣の橋本聖子氏が講演を行うなど、盛大に催された。
坂井友実会長(東京有明医療大学教授)は講演で、会の成立を振り返った。現代医学的な視点から病態を把握すること、治療の方針は鍼灸にも現代医学にも限定しないことを特徴とし、平成7年に設立。会の名称は、発足当時は医師からの鍼灸の理解がないだけでなく、鍼灸界にも「病院のメニューに組み込まれるのは業界の不利益」という空気が蔓延していたため、業界内の反発を抑えるため、あくまで臨床研究に限定した会だと説明するために決めたと語った。現在も続く、一つの疾患や症状をテーマと定め「テーマについて解説する基礎講座」「第一線で活躍する鍼灸師を集めたシンポジウム」「専門医による教育講演」を行う三部構成も発足当時からだと説明。テーマの内訳は、節目の記念回を除く45回中、23回が運動器で、うち腰痛が6回と最多。神経内科(6回)、婦人科(5回)、癌(2回)が続くと述べた。
また、小内愛氏(埼玉医科大学東洋医学科)は、平成29年に埼玉県医師会と合同で行った、4地方(北海道、東北、近畿、九州)の医師会会員を対象にした鍼灸への意識調査、及び先に実施した関東での調査結果を報告。「先生の施設で鍼灸治療を実施していますか」には九州・近畿・北海道が3%、東北地方は0%で、関東の7%と比べて低く、「特定の鍼灸施術所と連携している、またはしたことがありますか」には東北4%、九州・近畿6%、北海道16%、関東9%。一方、効果や安全性が理解できれば推奨したいとの回答は、4地方よりも埼玉県内が多いことに触れ、地域による意識差を示唆した。
山口智氏(埼玉医科大学東洋医学科)はこうした歴史的経緯や調査を踏まえ、改めて、鍼灸師には日常の臨床のために現代医学的な視点を身に付け、東洋医学的な視点と併せ持つ必要があると指摘。医療連携の推進は鍼灸師の資質にかかっていると呼びかけ、同研究会の活動を推し進めていくことを宣言した。
このほか、東京有明医療大学学長の本間生夫氏による呼吸機能に関する基調講演、特別企画『専門医が語る鍼灸師との連携の成果』が行われた。
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』128 市販品類似薬の保険除外は、焼け石に水?
連載『織田聡の日本型統合医療“考”』128 市販品類似薬の保険除外は、焼け石に水?
2019.12.10
少子高齢化に伴う社会保障費の急増に対応するため、政府は「全世代型社会保障改革」の一環として、市販医薬品と同様の効果があって、代替が可能な薬(市販品類似薬)について、公的医療保険の対象から「除外」する方向で調整を進めているという報道がなされました。
財務省の資料によると、社会保障給付費は、1990年からの27年間で38.4兆円から94.9兆円へと2.5倍に増加しています。国民医療費の年齢階級別の金額(2016年)を見てみると、0~64歳の平均が一人当たり18.4万円に対し、前期高齢者(65歳~74歳)は平均55.3万円と約3倍で、後期高齢者(75歳以上)に至っては平均91万円と約5倍に跳ね上がります。このうち国庫負担金は、64歳以下の一人当たり2.6万円に比べ、後期高齢者は34.9万円と、負担が13倍も違います。2025年にかけて国庫負担が急増するのは明らかで、いかにその負担を軽減するのかに苦心しているのです。
しかし、医療費の急増は、高齢化のほかにも「医療の高度化」がその要因の一つとして挙げられています。有名なのはオプジーボで、年間で約3,500万円の費用がかかります。また、日本で保険収載されている高額医薬品として、ハーボニー(C型慢性肝炎治療薬)は12週間で約670万円、ステミラック(脊髄損傷に伴う機能障害の改善薬)は一回投与で約1,500万円、キムリア(急性リンパ芽球性白血病治療薬)も一回投与で約3,350万円です。今、承認申請されているゾルゲンスマ(脊髄性筋萎縮症治療薬)に至っては、米国価格で一回投与2億2,700万円。驚きの額です。もちろん、患者さんにとっては希望の光なのですが、国内の全ての罹患者に行き渡るには予算が許しません。そうなると、どう適応を考えるのかが難しいところです。こう考えていくと、冒頭で述べた、市販品類似薬を公的医療保険の対象外にしたところで、「焼け石に水」の感があります。
それよりも、私は最近よく聞かれる「医師の働き方改革」に注目しています。医師の時間外労働上限規制は「現実的でない」「医療崩壊だ」との批判の声も聞かれますが、「タスクシフティング」という考え方をもってすれば、全ての人にWin-Winの政策となり得ると思います。今まで医師でなければできなかったことを、医師以外の単価の低い労働力に担ってもらうことで、医師の報酬はあまり変わらず、仕事量を減らすことが可能となります。病院でしかできなかったことが、病院以外でできるようにする「技術」はたくさんあります。技術が制度を変える時期は、もうすぐそこまで来ているように思います。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。
連載『中国医学情報』177 谷田伸治
連載『中国医学情報』177 谷田伸治
2019.12.10
☆慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する耳穴貼圧併用の効果
海南省海口市第三人民病院・符夢楠らは、COPDで対症支持療法(薬物療法・栄養療法など)と支持療法耳穴貼圧併用療法との治療効果を比較(上海鍼灸雑誌、19年7期)。
対象=同院呼吸器内科の87例(男54例・女33例)、平均年齢約68.5歳(51~86歳)、平均罹患期間約2.9年(1~7年)。これらをランダムに、①支持療法群43例、②耳穴併用群44例に分けた。
治療法=治療期間:9日間。
<耳穴>国家中医薬管理局COPD中医方案(2013年)推奨の穴位(肺・気管支・神門・皮質下)を取穴。王不留行(生薬)の種子を貼り、毎日5回、毎回2分間按圧させ、3日後に取り替える。
観察指標=呼吸機能、血液ガス分析、臨床症状、睡眠状態。
結果=臨床効果は、①支持療法群―治癒(症状消失、臨床検査値正常)1例・著効(症状著明好転、検査値著明改善)23例・有効(症状好転、検査値に改善あり)18例・無効1例・著効以上率55.8%、②耳穴併用群―治癒5例・著効31例・有効8例・無効0例・著効以上率81.8%。
呼吸機能(治療前→後)は、FEV1(L):①群0.89→1.35、②群0.88→1.79、FVC(L):①群1.70→2.16、②群1.69→2.40、FEV1/ FVC(%):①群53.98→80.39、②群54.67→85.84。
☆腰椎椎間板ヘルニアの鍼治療間隔を比較
北京市石景山区中医病院・鍾潤芬らは、腰椎椎間板ヘルニアの鍼治療で3種の治療間隔を比較(中国鍼灸、19年5期)。
対象=180例(男55例・女125例)、これをランダムに①毎日1回(週5回)群、②2日1回(週3回)群、③3日1回(週2回)群各60例に分けた。①群:平均52歳・平均罹患期間26.9カ月、②群:平均51歳・平均罹患期間33.9カ月、③群:平均56歳・平均罹患期間36.1カ月。
治療法=治療期間:3週間。
<選穴>主穴―L3~L5夾脊穴・環跳・委中。配穴―疼痛部位督脈:命門・腰陽関、疼痛部位足太陽経:腎兪・大腸兪・殷門・承山・崑崙、疼痛部位足少陰経:風市・陽陵泉・陽輔・懸鍾・足臨泣、腎虚腰痛:腎兪・太渓、寒湿腰痛:腰陽関、瘀血腰痛:膈兪。
<操作>夾脊穴は、0.30×60mmの毫鍼で40~50mm直刺し、提挿手法で得気後、捻転手法で鍼感を下肢部に放散させる。環跳穴は、0.30×75mmの毫鍼で50~70mm直刺し、電撃様の鍼感を下向きに足部まで伝達させる。その他の穴は、0.30×40mmの毫鍼で10~25mm直刺し、得気後に平補平瀉手法。さらに環跳穴をプラス極、委中穴をマイナス極として通電(疎密波、2Hz)、置鍼20分。
観察指標=視覚的アナログスケール(VAS)、日本整形外科学会(JOA)スコア。
結果=臨床効果は、①群―回復10例・著効41例・好転7例・無効2例・総有効率96.7%、②群―回復9例・著効39例・好転9例・無効3例・総有効率95.0%、③群―回復5例・著効27例・好転21例・無効7例・総有効率88.3%。
JOAスコア(治療前→後)は、①群15.05→26.22、②群15.18→26.15、③群15.97→24.25。
☆前立腺肥大症に三陰交への灸頭鍼
山東省青島療養院・張立志らは、良性の前立腺肥大症患者で、中薬治療と鍼併用治療とを比較(上海鍼灸雑誌、19年7期)。
対象=同院の外来患者74例、平均年齢約61.5歳(50~80歳)、平均罹患期間約6.7年(1~22年)。これをランダムに①中薬群、②鍼灸併用群各37例に分けた。
治療法=治療期間:3カ月間。
<中薬>益腎化瘀方(黄耆・肉蓯蓉・桂枝・桃仁・紅花など12生薬で構成)。毎日食後3回、毎回200mL服用。
<鍼灸>取穴:三陰交(左右)。0.30×40mmの毫鍼で直刺し、提挿捻転手法で得気、患者にだるく・しびれ・腫れぼったい感覚があった後に、2cmの長さの棒灸を鍼柄に装着し、皮膚から2cmの距離で点火燃焼させる。毎回1壮・毎壮6~8分間、置鍼30分間。毎週5回。
観察指標=排尿機能、血清性ホルモン、前立腺体積、不良反応。
結果=臨床効果は、①群―著効8例・有効18例・無効11例・総有効率70.3%、②群―著効24例・有効10例・無効3例・総有効率91.9%。
前立腺体積(治療前→後、㎤)は、①群46.26→38.37、②群45.86→32.33。
【連載執筆者】
谷田伸治(たにた・のぶはる)
医療ジャーナリスト、中医学ウォッチャー
鍼灸師
早稲田鍼灸専門学校(現人間総合科学大学鍼灸医療専門学校)を卒業後、株式会社緑書房に入社し、『東洋医学』編集部で勤務。その後、フリージャーナリストとなり、『マニピュレーション』(手技療法国際情報誌、エンタプライズ社)や『JAMA(米国医師会雑誌)日本版』(毎日新聞社)などの編集に関わる。
晴眼者のあマ指師課程新設めぐる裁判 仙台地裁も結審で、来年4月に判決
晴眼者のあマ指師課程新設めぐる裁判 仙台地裁も結審で、来年4月に判決
2019.12.10
東京、大阪、仙台の各地裁で争われている、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設をめぐる裁判が終盤を迎えている。12月2日に仙台地裁で15回目となる口頭弁論が開かれ、全ての審理が終了(結審)。判決の言い渡し日時が令和2年4月27日の15時と決まった。これで3地裁全てが結審し、判決を待つのみとなった。12月16日には、他に先立ち、東京地裁で判決が下される。
フレアス、「人材登録サイト」オープン
フレアス、「人材登録サイト」オープン
2019.12.10
―採用活動の強化と、あマ指師の雇用機会増を目的―
往療マッサージ事業を全国展開する株式会社フレアス(澤登拓代表取締役社長)が、スマートフォン等からでも登録できる人材登録サイト「フレアス人材バンク」を開設した。同社の採用活動の強化に加えて、あん摩マッサージ指圧師免許を有しながら就労できていない施術者の雇用機会を増やすことを目的に設置。登録は無料で、勤務地のほか、時短勤務等の「働き方」を希望できる。同社は、3月に東証マザーズに上場し、2019年9月現在、往療マッサージの拠点は38都道府県97(FC含む)。
柔整療養費 都道府県別支給状況 厚生労働省『平成30年度 療養費頻度調査』から
柔整療養費 都道府県別支給状況 厚生労働省『平成30年度 療養費頻度調査』から
2019.12.10
調査は平成30年10月の1カ月間に行われた施術に係る療養費支給申請書が対象。支給申請書のうち、全国健康保険協会管掌健康保険で30分の1、国民健康保険で60分の1、後期高齢者医療制度で50分の1の割合で抽出している。1件当たりの平均支給額は約7,179円(昨年度より141円減)だった。調査前の平成30年6月には料金改定が施行され、それに伴う柔道整復運動後療料の新設等のほか、「亜急性」の文言が削除されている。なお、『平成29年度 療養費頻度調査』を基に、昨年度の金額と、そこからの増減比率も掲載した。
Q&A『上田がお答えいたします』 広告ガイドラインの案が出たって本当ですか?
Q&A『上田がお答えいたします』 広告ガイドラインの案が出たって本当ですか?
2019.12.10
Q.
あはき・柔整の施術所広告について厚労省が検討会を開かれているようで、最近、ガイドラインの案が出たと聞きました。ポイントを教えてください。
A.
広告検討会も8回を数え、今までの議論を基にようやく広告ガイドラインの案が11月中旬に提示されました。これは案なのでまだ紆余曲折がありそうですが、私が気になった点は9つ。下記に列挙しますので、参考にしてください。
①新たに「非医業類似行為」が定義付けられた。「医業類似行為に非ず」だから本来の医業行為を指すと思ったら、何と「整体・カイロプラクティック・リラクゼーション他」を指すという。これには二つの狙いがあると考えられる。まず、無資格者も「ガイドラインに適用される」との宣言。もう一つは、あはき・柔整こそが「本来の医業類似行為」だと喧伝したいというものだろう。
②「治療」「診」の文字を使わせない。よって「治療院」もダメ。
③「整骨院」の文字は、患者代表と保険者が反対したものの、医師会と事務局が容認しており、おそらく認められる。
④有資格者が無資格者を装い、広告規制を逃れる実態を改善するため、保健所への「届出名称」しか広告表示を認めない。
⑤あはきと柔整の両方の資格者は看板表記を「〇〇接骨院」「〇〇鍼灸院」と分けさせ、従来の「〇〇鍼灸整骨院」は認めない。
⑥ウェブサイト上の広告は原則規制されない。
⑦保健所が広告違反者に処罰を求めやすくするための警察への告発のマニュアル化・簡素化の提案は無し。
⑧広告を是正しない施術者に対する療養費の受領委任の取扱い5年の中止相当処分の導入も見送り。
⑨保険取扱いについては、何らかの表記を認める(医療保険取扱い、健康保険取扱い、各種保険取扱いなど)。
以上、結局は広告規制の実効性が何ら期待できない内容ですね。
しかも、法令上から見て、本来、整体・カイロプラクティックは「指圧」だから、あん摩マッサージ指圧師の免許を取得せず施術している者は「無免許施術」であり、その上、あはきと柔整は医師法上、医業として限定解除されている「医業の一部」であるとの原則を、今回も行政は完全に無視し、「非医業類似行為」という造語を作り出す始末です。もはやコメントする気も起きません。
広告ガイドライン案自体も、看板表記を改めるというのであれば、既得権はあるのか、また、経過措置はあるのかを併せて明らかにしなければ現場は混乱します。せっかくなのだから、実効性が伴う形で臨床の場に提示されることを切に望みます。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。
連載『汗とウンコとオシッコと…』184 老々介護
連載『汗とウンコとオシッコと…』184 老々介護
2019.12.10
12月に至り、ようやく寒さが本格的になってきた。去年と比べると全体的には暖かいが、寒いことに変わりはない。それにより急激に末梢血管が収縮し、血圧が上がることで、体幹部背面に内臓体壁反射で各臓腑の負担が投影されやすく、頭痛や肩、腰という具合に痛みが出やすい時期だ。これは末梢血管を拡張させて血圧を下げる薬を内服していても避けられない、生理的な動きだといえる。
「先生、足が引きつって、正座が出来ないんです。それと左肩が上がりにくくなってきて……。整形外科には行ってみたんですけど、あまり変わらなくて……」
大腿四頭筋をさすりながら訴える今日の患者さんは、70代の色の白い上品な老婆だ。名を尾野さんといい、茶道を教えている。この年齢層の患者さんの治療は川端が担当するのが常なのだが、今日に限って横転先生が出張っていた。「精神的に幼いお前では厳しい」とポソッとつぶやき、脉を取り出したのだ。苦虫を噛み潰したような顔の川端だったが……。
「これ、尾野さん、あんた、胃の不快感みたいな……今よく言われる、逆流性食道炎のような症状が急に出てきとらんか?」
「えっ、先生、そんなこと分かるんですか?」
「それがワシの仕事や。これ、精神的に何か問題があった時に出てくる時の血の動きをしとるんやけど……」
「え~、そんなことまで……実は90歳の母が急に入院しまして……。もう歳ですから仕方がないんですけど、心配で……私の食事もバラバラで、今病院から帰ってきたばっかりなんですよ」
「足や左肩の痛みはそれから出てきたわけなんやな」
と、横転先生がズバリと聞く。
「そういえば、そうですわ、これ……。胃の具合と関係してるんですか?」
「そう、精神的な問題で胃酸が出にくい型の胃の充血……老々介護の負担の一つでもあるわな。胃が充血するわ。それで足に血が流れにくくなるわ、母親思いのあんたのことやから、心配も過剰になるし、心臓の拍数は上がり血圧は寒さに伴い上がってくるわで調子が狂ってる。仕事でも、茶道やったらこれから新年に向けて色々段取りがあるやろうし、あんたは焦る……まあ、そこから崩れてきた痛みやな。足や肩だけをどれだけ触っても、痛みの原因の根断ちが出来てないからすぐに戻るわけや」
「これ、治りますか?」
心配そうに足をさする尾野さん。
「正座があんたの仕事の一つでもあるからなぁ。胃の不快感の自覚が無くなるにつれて、足は先にましになる。肩は、ワシでもちょいと歳のこともあり時間がかかるな。まあ、あんたの心配症が無くなれば、すぐにでもましにはできるんやけど……」
「結構、それって、精神的なところからの問題と……」
「それだけやないけど、重なっただけや。まあ、来年には間に合うわ」
と、横転先生が治療を始め出した。
これは確かに自分の手には負えなかったと、諦め顔の川端だ。
【連載執筆者】
割石務文(わりいし・つとむ)
有限会社ビーウェル
鍼灸師
近畿大学商経学部経営学科卒。現在世界初、鍼灸治療と酵素風呂をマッチングさせた治療法を実践中。そのほか勉強会主宰、臨床指導。著書に『ハイブリッド難経』(六然社)。
連載『医療再考』10 AR、VRで広がる鍼灸の新しい世界
連載『医療再考』10 AR、VRで広がる鍼灸の新しい世界
2019.12.10
今回からは、新しい技術に着目し、今後の医療や鍼灸を考えていきたいと思います。
最近注目されている最新技術に、AR(Augmented Reality)とVR(Virtual Reality)があります。両者は同じように視覚を利用する技術ですが、ARは「拡張現実」と訳され、現実世界に視覚情報を重複表示させる技術なのに対して、VRは「仮想現実」と訳され、リアリティーを高めた視覚映像をスクリーンに投影する技術です。前者は「実際の風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前の世界を仮想的に拡張させる」もので、『ポケモンGO』で一躍有名になった、現実とバーチャルの融合です。後者は「非現実の世界をあたかも現実のように感じさせる」もので、VRゲームやテーマパークのアトラクションに代表されるような非現実世界での体験を示しています。そして、これらの技術は医療の分野でも活用されつつあります。
例えばARは、画像診断や治療、さらには医療技術のトレーニングに用いられています。CTやMRIなど異なる検査結果の画像から3DCGを構築し、メガネ型のARグラスに投影することで、組織や臓器の3Dモデルを映し出しながら診断・治療ができます。また、腕が切断されているにもかかわらず痛みを生じる幻肢痛患者に対し、ARグラス上で切断された腕に仮想腕を重ね合わせることで、仮想腕が動くという体験をすると幻肢痛が改善することも報告されています。さらに医療教育でも、スクリーニング教育の技術を応用し、画像データを目の前に投影し、タッチペンを使って画像を動かす形で手術や診断の練習に役立てられています。そう考えると、鍼灸においても患者さんのVT・MRI・超音波エコーなどの画像情報を施術中にARグラスに投射することで、神経や筋肉、臓器の位置などを確認しながら治療を行ったり、鍼灸施術の練習として刺鍼部位をARグラスで確認するといった、より高度で安全な治療や教育が可能になるのです。
一方VRは、特に入院患者へのサービスに応用されています。観光地や自宅を再現し、病室にいながら旅行体験や帰宅体験をしてもらうことで、入院中のストレスや不安を軽減させたり、治療や処置の負担から気をそらすといったものです。また、運動できない寝たきりの患者さんでも、VR上で歩行体験することで脳の運動野が活性化することが知られています。お年寄りや患者さんの見ている世界を体験することで、患者さんの気持ちを理解し、医療者と患者さんの距離を縮める試みも行われています。鍼灸治療においてもVR画像を用いることで、患者さんにとって快適な環境で施術することが可能となったり、鍼灸に対する恐怖心や不安感を軽減することが可能となるでしょう。
このように、新しい技術を鍼灸に導入することで、鍼灸師が苦手としていたツボの空間的認識や患者さんが抱いていた鍼への恐怖心などのマイナス面を改善し、新たなる鍼灸の世界が確立できるかもしれません。
【連載執筆者】
伊藤和憲(いとう・かずのり)
明治国際医療大学鍼灸学部長
鍼灸師
2002年に明治鍼灸大学大学院博士課程を修了後、同大学鍼灸学部で准教授などのほか、大阪大学医学部生体機能補完医学講座特任助手、University of Toronto,Research Fellowを経て現職。専門領域は筋骨格系の痛みに対する鍼灸治療で、「痛みの専門家」として知られ、多くの論文を発表する一方、近年は予防中心の新たな医療体系の構築を目指し活動を続けている。
『ちょっと、おじゃまします』 ~不眠専門で一国一城の主に~ 大阪府高槻市<高槻宗八鍼灸整骨院>
『ちょっと、おじゃまします』 ~不眠専門で一国一城の主に~ 大阪府高槻市<高槻宗八鍼灸整骨院>
2019.12.10
「健康の基本は睡眠、栄養、運動。どれが欠けても健康になれるわけがありません」。そう語る、高槻宗八鍼灸整骨院の佐藤太先生。院名の「宗八」の由来はご先祖様の名前。先祖代々、自営業の家系で、幼い頃から「何か自分で事業を興して社長になれ」と祖父に言い聞かされて育ったのだとか。
「事業」を治療家の道に決めたのは高校生の頃。サッカー部の試合中に足を踏まれ骨折、通った整骨院での親身な対応がきっかけでした。柔整師免許取得後、骨折・脱臼の患者が多いという整骨院で、独立を視野に「丁稚奉公」。鍼灸師の免許を取得すると決めたのはこの時期で、10年間片耳が聴こえないという症状を院長が鍼施術で治療し、患者さんが流した感動の涙を見てから。同時期に自身も突発性難聴を治してもらい、患者さんに求められる技術だと確信したといいます。鍼灸の勉強は肌に合い、専門学校を主席で卒業。免許を取得し、いよいよ開業……かと思いきや、なんと渡米。「日本の治療しか知らない、一度海外を見よう」と、語学留学の形を取って2年間、トレーナーとしての活動を続けました。帰国後、グループ院で雇われ院長として経営のノウハウを学びながら開業資金をため、ついに独立します。
目標だった開業を果たした後、治療家として何をしたいかを考え、辿り着いたのが「不眠専門」。当時の患者さんにアンケートしたところ実に7割が睡眠に問題を抱えていた衝撃が決め手になりました。手技と鍼灸で体質を改善し、副交感神経を優位にする治療が中心。睡眠薬に頼るべきではないと減薬を呼びかけており、実際、投薬期間の長い人ほど睡眠状態の改善に時間がかかるとのこと。今後は企業やスポーツチームと提携して、睡眠を見直す機会を作っていきたいという佐藤先生。「栄養、運動の専門家に対し、睡眠の専門家の数は乏しい。とはいえ、雑誌などで睡眠が注目されることも増えてきました」と話し、この機に環境作りを進めたいと意気込みます。
佐藤 太先生
平成19年、明治鍼灸大学柔道整復学科卒業。同年、柔整師免許取得。平成24年、明治鍼灸専門学校卒業。同年、鍼灸師免許取得。35歳
今日の一冊 王家の遺伝子 DNAが解き明かした世界史の謎
今日の一冊 王家の遺伝子 DNAが解き明かした世界史の謎
2019.12.10
王家の遺伝子 DNAが解き明かした世界史の謎
石浦章一 著
ブルーバックス 1,100円
シェイクスピアの手で、醜悪な異形の悪役として描写されたイギリス国王、リチャード三世。2012年、その遺骨と思しき人骨が駐車場から掘り出され、話題となった。人骨は本当にリチャード三世なのか、そしてその死因の不審な点とは――。DNA解析の発達が覆した、英国王室、建国初期のアメリカ、古代エジプトの歴史を紹介。出生前遺伝子診断の是非や、従来の遺伝子組み換えとゲノム編集の違い、「角のない牛」や「身の多い鯛」の誕生など、最新の知見にも触れながら、『DNA歴史学』の可能性を探る。
編集後記
編集後記
2019.12.10
▽日本初の4階級制覇を達成した井岡一翔選手は階級を上げるごとに相手の骨格もパンチ力も変わるので戦い方を変えたそうです。ボクシングは減量という宿命を持つ過酷なスポーツ。井岡選手は試合前にシャドーボクシングをガンガンして1週間で6kgも落としたとか。そして、試合が終わるとがっつり食べる。さて、先日健康診断が終わりました。クールビズの服装はポッコリお腹が目立つので健康診断へ向けて7月から1日1食で3Kgの減量をしました。検査が終われば3食きっちり食べるのでリバウンド。何ともダイエットがうまくいかないようです。今度はポッコリお腹が目立つクールビズの時期に向けて来年3月あたりから減量しようかな。それともボクシングジムに通ってボディを打ってもらうかな。(松)
第8回あはき師・柔整師等の広告検討会 ガイドライン案、厚労省が提示
第8回あはき師・柔整師等の広告検討会 ガイドライン案、厚労省が提示
2019.11.25
インターネットは規制の対象外に
11月14日、8回目となる「あはき師・柔整師等の広告に関する検討会」が開かれ、過去の議論を踏まえて、厚労省が「広告ガイドライン案」を初めて提示した。意見が対立している「治療」「整骨院」の文言使用の可否などは引き続き議論を促し、それ以外は厚労省案に対する意見を聴取する形で話し合いがされた。ただ今回、突如として、「無資格施術・無資格者行為」を一括した「非医業類似行為」という用語 (さらに…)