Q&A『上田がお答えいたします』 マッサージ療養費は病名によらず症状で支給されるもの
2019.08.10
Q.
療養費審査委員会や保険者から「病名から考えてマッサージの必要性が無いと思われる」として不備返戻されてしまいます。
A.
マッサージの適応は診断名によるのではなく、筋麻痺・関節拘縮等の「症状」です。返戻してきた審査委員会や保険者は明らかに間違っていますね。ご承知の通り、医療上マッサージを必要とする症例については療養費の支給対象とされるため、医師の同意書により確認をすることになっており、現行の同意書では、筋麻痺や筋萎縮の該当局所や関節拘縮の部位を特定した上で、施術の部位まで表示する仕様になっています。しかし、これらの該当箇所を明示して同意書を交付してもらっても、あなたのケースのように「傷病名より見て躯幹や両上肢の施術不可」とか「病名から考えて全身マッサージは認められない」とか、意味不明な理由で返戻してくる審査委員会や保険者が後を絶ちません。病名で判断するものではないにもかかわらず病名から考えていることも愚かですが、そもそも、たかだか審査委員会が療養費の支給を「不可」と決めつけているのが誤りです。療養費の支給決定は保険者の権限であって、不可かどうかを決めるのは審査委員会ではありません。にもかかわらず、「『胸部大動脈瘤』ならば全身マッサージは必要ないだろう」とか、「『変形性膝関節症』なら躯幹や上肢のマッサージは必要ないだろう」という風に、病名から想像して施術局所を限定してくるのです。
傷病名はあくまでも患者さんが抱えている主疾患の記載であって、その傷病名において全身へのマッサージや往療を要するのもよくあること。だからこそ医師の同意書により確認を行っているのに、その内容を無視して「算定不可」などと何を言っているのでしょうか。このような愚かな審査委員会や保険者に対しては、患者の申立書と施術者意見書を作成して、必ず再請求しましょう。返戻を繰り返す審査委員会等には正々堂々と不支給処分にしてもらい、被保険者の協力を得て都道府県の国民健康保険審査会や後期高齢者医療審査会宛てに審査請求をしましょう。医師の同意書に明記された症状に対して医師が丸印を付けた部位に施術をしたのだから、審査請求では必ず被保険者側の言い分が認められます。
勝手な想像で支給を認めないとする暴挙には、徹底的に反論していく必要がありますね。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。