連載『食養生の物語』45 『根も葉もカブ』
2017.02.25
春の七草といえば、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。このうち、スズナはカブの葉、スズシロは大根の葉のことです。今回は、カブについてお話しましょう。カブは、カブラ大根とも呼ばれる根の部分が淡色野菜である一方、葉はスズナまたはカブラナとも呼ばれ、緑黄色野菜として、根と葉が別の野菜として分類されています。地中海原産とも中央アジア原産とも言われていますが、日本にも弥生時代には伝来していたようで、『古事記』にも記載があることから、遅くとも7世紀には栽培されていたようです。痩せた土地でも育ち、根も葉も食べられることから、広く普及していったのでしょう。
根には消化酵素のジアスターゼやアミラーゼが含まれ、炭水化物の消化を促すので、食べ過ぎ・飲み過ぎからくる胃腸の不調を整えるのに一役買います。他にもビタミンCやカリウム、抗ガン作用が強いとされるグルコシノレートも含まれています。葉はというと、ビタミンA、B1、B2、Cが多いほか、カルシウム、鉄分、カリウムも豊富です。特にカルシウムは、全ての野菜の中で最も多いと言われるほど。なので、おひたしや浅漬けにしたり、細かく刻んで味噌汁に入れたりして、毎日でも食べたい野菜です。カルシウムの働きで骨・歯を丈夫にするだけでなく、春の始まりに起きがちなイライラ・不安・不眠や自律神経失調症などの予防・改善が期待できます。また、カブの葉には炎症や熱を鎮める働きがあり、特に乳腺炎には軽く塩もみしたものを貼りつけるお手当ても伝わっています。
カブは大抵、葉付きで売られていますが、そのままにしておくと水分や栄養分が葉に奪われてしまうので、買ってきたらすぐに切り分けるといいでしょう。葉はしおれてしまう前にできるだけ早く使い、根も1週間以内には食べたいところです。また、カブといえば、千枚漬がよく知られていますね。作り方は、薄く切ったカブに全体の3%程度の塩をまぶし、昆布と唐辛子を入れてよくかき混ぜてから酢をかけ、ガラス容器などに入れて寒いところに半日ほど置くだけ。その後は冷蔵庫で保存し、4、5日程度で食べきるようにしましょう。漬物にすることでしんなりとしてたくさん食べられますし、パリパリとよく噛むことで唾液の分泌にもつながります。
食養生の「一物全体」は、自然界にあるがままの状態でいただくことが最もバランスが良いという教えです。根も葉も食べられるカブで、胃腸も自律神経のバランスも整えて、春からの活動期に向かいたいものですね。
【連載執筆者】
西下圭一(にしした・けいいち)
圭鍼灸院(兵庫県明石市)院長
鍼灸師
半世紀以上マクロビオティックの普及を続ける正食協会で自然医術講座の講師を務める。