連載『織田聡の日本型統合医療“考”』115 医療の「タスクシフト」を鍼灸でも
2019.05.25
1096-1097号(2019年5月10-25日合併号)、織田聡の日本型統合医療"考"、
1096-1097号(2019年5月10-25日合併号) ほか
突然ですが、クリニックを移転しました。医療機関の移転は、都道府県の定款変更の許可を取るところからスタートです。この作業は行政書士に依頼することもできますが、自分で行うことも可能で、薬学部時代の友人にアドバイスをもらいつつ自ら手続きを行いました。彼女も診療しながら書類をそろえてクリニックを移転した経験を持っています。これがとても大変な作業で、改めて感じたのは、医療機関は社会保障における重要なインフラとして優遇されてはいるものの、開業はおろか移転や廃業も自由にできず、経営もコントロールとまではいかなくとも監視されている状況にあるということです。これは自由診療であっても同じで、保険医療機関となると、日々の診療内容に審査が入り、査定される、いわばガチガチの状態。そこに働き方改革の残業上限「年720時間」が医師には適用されず、「年1860時間」まで容認されるという、「どれだけブラックなのか」との声が聞こえてきます。研修医の頃は月に100時間を超える残業は普通でしたので、驚くこともありませんが。
さて、最近、保険適用外の検査や医薬品の営業をされている方との情報交換で、興味深いことに気が付きました。今までならば保険適用になるよう働きかけるだろう検査を、保険収載を目指さずに自費のサービスとして展開し、公的保険ではなく民間保険の付帯サービス等で給付金の使い道として保険会社と連携して案内する例が出てきたといいます。事業自体は「B to B」であるため、そして採血が必要となるため、医療機関が営業先となるようですが、私はすぐに医療機関ではなく、ヘルスケアサービスを自費で行っている周辺領域への展開を提案しました。自費の検査ですから、薬局や鍼灸院から採血をクリニックへ依頼するようなモデルはどうでしょうか。そういう医療機関との連携もあり得ると思います。例えば、鍼灸院の窓口で患者さんに認知症早期発見の採血検査を案内し、近隣の医療機関に採血だけ依頼する。そして、検査結果は検査会社から個人へ戻されるという流れです。採血だけの依頼を受け付ける医療機関はあるのかと問われそうですが、療養費の同意書を依頼するよりハードルは低い気がします。今まで病院でしか行えなかったことを病院以外でできるようにする、つまり、「タスクシフト」。これが混迷極まる日本の医療を救う最大の手段だと感じています。タスクシフトが、検査の領域でも推し進められることを感じた一件でした。
また、繰り返しの案内になりますが、6月22日にタイのチュラロンコン大学における解剖実習が開催されます。医師、解剖学者、鍼灸師で、実際の人体を観察しながらディスカッションを行うほか、弁護士による法律の講座もあります。問い合わせは、(一社)健康情報連携機構(http://www.health-info.or.jp/)まで。
【連載執筆者】
織田 聡(おだ・さとし)
日本統合医療支援センター代表理事、一般社団法人健康情報連携機構代表理事
医師・薬剤師・医学博士
富山医科薬科大学医学部・薬学部を卒業後、富山県立中央病院などで研修。アメリカ・アリゾナ大学統合医療フェローシッププログラムの修了者であり、中和鍼灸専門学校にも在籍(中退)していた。「日本型統合医療」を提唱し、西洋医学と種々の補完医療との連携構築を目指して活動中。