『医療は国民のために』287 広告ガイドラインの周知徹底は社団らが他団体と連携できるかがカギ!
2020.01.24
「あはき師及び柔整師等の広告に関する検討会」の開催も既に8回を数え、広告適正化に向けた指導等の指針となる「ガイドライン案」も厚労省から提示され、ようやくまとまりつつあるようだ。今回は、施術者の多くがその行方に着目している、ホームページの規制に関する取り扱いに触れてみたい。
ご存じの通り、今やインターネット上での情報発信は、最も効果的な広告戦略といえる。しかも、ホームページの情報は、患者が自分で情報を求めて検索すると位置付けられており、「広告の定義」の3要素の一つである「認知性」に触れない。すなわち、単なる情報提供とみなされるので、法令上は「広告に当たらない」と整理できる。よって、あはき・柔整の施術所を広告規制の対象にするにも、法律改正を行わなければ、施術所のウェブサイト等は広告に該当しない。しかし、広告検討会では、医科の取り扱いと同様にウェブサイト等の表示内容にも切り込んでいかなければならないのは、言うまでもない。そこで、規制の対象外としつつも、法改正が行われるまでの当分の間(3年後となるか、5年となるか?)、「業界内の関係団体による自主的な取組みを促す」という形で、ガイドライン上で仕切ろうとしている。厚労省としてもこうするほか無いのであろう。
私が注目したいのは、昨年11月14日の第8回検討会の議論で、出席した構成員の一人が「関係団体等とは、どこを指しているのか。今日来ている団体を指しているのか?」と質問したところ、事務局を務める厚労省医政局が「“業界全体”でまず自主的な取り組みを行ってほしい」と回答した点だ。
現在、検討会に構成員を出している施術者団体は「日本柔道整復師会・日本鍼灸師会・全日本鍼灸マッサージ師会・日本視覚障害者団体連合」のわずか4団体である。ここは、それら以外の団体にも幅広く働きかけ、実効性の伴う自主的な取り組みをしていかねば、とてもではないがガイドラインの周知などできない。今後、これらの4団体は「我々はきちんと取り組んでいるが、他団体が何もやらないし、やってくれない」と主張するのではなく、むしろ率先して他団体に働きかけていくことが求められるし、厚労省もそれを期待しているのではなかろうか。もしそうでなければ、先の質問に対し、厚労省は「関係団体とは本日、検討会に出席しておられる皆さんの団体です」と即答できたはずである。
またガイドライン案では、無資格者(非医業類似行為?)に関しても、「関係団体等による自主的な取組みを促す」と示されており、検討会に出席の4団体が、他団体との調整や団体に属さない者への対応という点で重要になってくるのは間違いない。相も変わらず、「他の団体や個人施術者のことなど知ったことではない。何か言いたいなら社団会員になればいい」との考えのままであれば、業界全体への周知徹底など全く期待できない。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。