日本AT学会の第8回学術大会 冷却に「アイシング変数」との考え方を
2019.08.25
昨夏、日本学術会議の登録団体に
一般社団法人日本アスレティックトレーニング学会(広瀬統一代表理事)の第8回学術大会が7月20日、21日、東京都内で開催され、2日間で約380人が参加した。
大会会長・石山信男氏(日本体育大学)は基調講演で、同学会は現在313名の会員数を有し、昨夏に政府の諮問機関である日本学術会議の「協力学術研究団体」に登録されたと報告。根拠に基づくアスレティックトレーニング(EBAT)を踏まえた学問領域を確立させ、その可能性を社会に発信するタイミングに来ていると説いた。
シンポジウム『スポーツ現場における冷却を再考する』では、笠原政志氏(国際武道大学)と鬼頭健介氏(元読売巨人軍トレーナー)、田村優樹氏(日本体育大学)が登壇した。笠原氏は、応急処置の冷却とコンディショニングとしての冷却がスポーツ現場で混同されていると指摘し、まずアスレティックトレーナーが主眼を置くべきは、冷却による生理的反応にはどのようなものがあるかだとした。最近では「RICE」を提唱したゲイブ・マーキン医師でさえ、冷却が外傷発生時のベストな選択肢であるという考え方には消極的な意見を述べており、「トレーニング変数」という言葉が存在するように、アイシングにも目的・状況に応じて「変数」を取り入れる必要があると強調した。鬼頭氏は、昨年まで15年間プロ野球球団に関わってきた中で、試合後に用意するアイシングの数が激減していったと説明。野手や登板しなかった(ブルペン)投手の減少が目立つとし、主な理由として、アイシングで患部が「固まってしまう」という意識が選手に芽生え、それらマイナス面がプラス面を上回ったことなどを挙げた。ただ、慢性疾患への除痛・鎮痛のためのアイシングは、その効果の大きさから積極的に行い、手関節痛、肘関節内側痛、足関節痛、腰痛、ハムストリングスや下腿三頭筋の違和感で特に効果を感じたと語った。田村氏は、分子・細胞生物学の手法を駆使した基礎研究の面から最新の知見を紹介した。
このほか、9月20日に日本で開幕する『ラグビーワールドカップ』を踏まえ、『タックルで生じる外傷予防の取組み』といった関連講演などが行われた。
▲左から笠原氏、鬼頭氏、田村氏