日本東洋医学会第69回学術総会 病院医療、難治性疾患で鍼灸テーマに
2018.07.25
―「医学生への鍼灸体験」呼びかけ―
一般社団法人日本東洋医学会の第69回学術総会が6月8日から10日の3日間、大阪市内で開催された。
シンポジウム『病院医療における鍼灸』では、市立砺波総合病院の古谷陽一氏、東海大学医学部付属大磯病院の髙士将典氏、福島県立医科大学会津医療センターの鈴木雅雄氏、東邦大学医療センター大森病院の田中耕一郎氏が登壇した。
古谷氏は、平成21年度の他科からの鍼灸治療依頼件数59件が平成28年度には112件、入院患者の依頼件数も6件から34件と大きく増加したとした。背景に、平成23年より緩和ケアチームに鍼灸師が参加、依頼時のみでなく毎週のカンファレンスに出席し普段から連携した結果、他職種の関心を得たことを挙げた。また、研修医が臨床研修中に初めて鍼灸に触れ、耳鼻科医となった後も同病院に末梢性顔面麻痺の鍼灸治療を依頼するようになった例に触れ、「まず取り組むべきは、伝統医学に偏見のない研修医・医学生の時期に鍼灸体験の機会を作ってあげること」と呼びかけた。
髙士氏は、診療各科との連携や院内勉強会などを通した東洋医学の啓蒙、臨床における漢方と鍼灸の併療の推進といった取り組みを紹介。大学病院に鍼灸を定着させる意義は「最終的には、医師が適応患者を積極的に紹介してくれるようになること」として、同じ立場で議論するために鍼灸師も積極的に西洋医学を学ぶ必要があるとした。
鈴木氏は、鍼灸治療は非常に有用なツールだが、全国的に鍼灸外来を有する病院が限られていると指摘。同センターにおける鍼灸外来では、開設5年で新患393人(うち202人が内外の病院からの紹介)で主訴は約56%が疼痛、同じく入院治療では388人のうち211人が緩和ケア科、51人が漢方内科、41人が血液内科からの紹介といった傾向を紹介した。
田中氏は通院患者へのアンケートから、「接遇と技術への満足度は関連している」「患者の要求度は非常に高く、治療費や通院距離、施術の専門性を理由に他の鍼灸院に移る例もある」「満足度の高い患者の多くが漢方外来にも通院している」といった結果を報告した。
鍼灸関連領域では他に、難治性疾患をテーマにしたシンポジウムで、『抗がん剤による副作用に対する鍼灸治療の効果』(福田文彦氏・明治国際医療大学教授)、『脳血管障害後遺症に対する鍼灸治療』(粕谷大智氏・東京大学医学部付属病院)、『難治性顔面神経麻痺の鍼治療』(蛯子慶三氏・東京女子医科大学東洋医学研究所)といった発表が行われた。また、『医師と鍼灸師のための鍼灸セミナー』も開かれたほか、JLOM分類・用語及び病名分類委員会・辞書編纂委員会報告会では、ICD-11に向けた漢方薬・鍼灸の証分類についても報告された。このほか、シンポジウム9題、ワークショップ9題、口演発表264題など多くの演題が行われた。




