第4回あはき師・柔整師等の広告検討会 「治療」「診」の使用で議論平行線
2018.12.10
11月22日に都内で開かれた「あはき師・柔整師等の広告に関する検討会」の4回目となる会議では、これまでの議論を踏まえ、事務局である厚労省が7つに論点を絞り、話し合いを行った。
「施術所の名称」や「施術日等の表示」の議論では、これまでと同様、「治療」「診」「院」等の文言を巡って、施術者側とそれ以外の構成員の間で意見が対立した。 (さらに…)
第4回あはき師・柔整師等の広告検討会 「治療」「診」の使用で議論平行線
第4回あはき師・柔整師等の広告検討会 「治療」「診」の使用で議論平行線
2018.12.10
11月22日に都内で開かれた「あはき師・柔整師等の広告に関する検討会」の4回目となる会議では、これまでの議論を踏まえ、事務局である厚労省が7つに論点を絞り、話し合いを行った。
「施術所の名称」や「施術日等の表示」の議論では、これまでと同様、「治療」「診」「院」等の文言を巡って、施術者側とそれ以外の構成員の間で意見が対立した。 (さらに…)
第48回現代医療鍼灸臨床研究会
第48回現代医療鍼灸臨床研究会
2018.12.10
―頸椎、周辺疾患の鍼灸治療テーマに―
第48回現代医療鍼灸臨床研究会が11月3日、東京大学鉄門記念講堂(東京都文京区)で開かれた。
岩井整形外科内科病院院長の高野裕一氏による教育講演のテーマは『頸椎症を含めた広い病態に対する整形外科の診察方法、鑑別、診断、治療』。診察から鑑別に当たっては、痛みなら鬱病、頸椎疾患、癌を、手足のしびれなら糖尿病やビタミン欠乏症、遺伝性の疾患などを含めて、整形外科分野に限定せず、幅広い疾患を想定する必要があると説明。腰部の診察であれば、まず歩様に注意し、次いでフリップテストなど各種の検査を行い、股関節、頸椎など順に可能性を否定していくが、この間に最も意識しているのは厄介な脊髄症を排除することだと説明した。
その後、内視鏡下での整形外科手術件数が全国の10%に及ぶという、同院の治療の流れを解説した。鍼灸治療については、L5神経根障害に対する治療で他の薬物や運動療法と比べて優れた効果を示した報告を紹介した上で、安全な浅い刺鍼でも十分な効果が期待できると評価。一方で、気胸など重篤な医療事故の危険性も示唆し、鍼治療後の違和感、特に麻痺や各種レッドフラッグが確認できた際は、速やかな精密検査が必要だと注意を促した。
このほかに、坂井友実氏(東京有明医療大学教授)による基礎講座『頸部運動器疾患の鍼灸治療』、さらにその内容を踏まえたシンポジウム『頸椎およびその周辺疾患に対する鍼灸治療のup to date』が行われた。今枝美和氏(明治国際医療大学特任講師)、小糸康治氏(東京大学医学部付属病院リハビリテーション部鍼灸部門)、粕谷大智氏(同部門主任)、小井土善彦氏(せりえ鍼灸院)の4人が登壇し、それぞれ、頸部神経根症、胸郭出口症候群、後頭下筋群、軽度外傷性脳損傷の鍼灸治療について成果を報告した。
日鍼会の第14回全国大会in沖縄 「統合ヘルスケアチーム」を紹介
日鍼会の第14回全国大会in沖縄 「統合ヘルスケアチーム」を紹介
2018.12.10
―モクサアフリカの最近の動向も―
公益社団法人日本鍼灸師会(日鍼会)の第14回全国大会が10月27日、28日、那覇市内で開催された。テーマは『時代を支える鍼灸―病に体にそして心に』。
日鍼会で国際委員会委員長などを務める児山俊浩氏が、名古屋大学医学部付属病院総合診療科で統合医療を実践している「統合ヘルスケアチーム」について講演を行った。チームは児山氏も含めた鍼灸師7名、医師5名のほか、芳香療法士や保健師、管理栄養士、臨床心理士、僧侶などのおよそ20名で構成。単に西洋医学と各種療法を組み合わせるのではなく、患者とチームとで一致した目標に向け、様々な療法の中から患者の状態に合ったものを選択していると述べた。会議は円卓式で、メンバーが対等に話し合える場であると説明し、顔の見える関係を築くことができるといった特長を挙げた。また、チームで取り組むことで医師の診察の負担が軽減し、患者にとっては、医師による投薬や検査が無くても「医療から見放されていない」という安心感が与えられ、当初は混乱していた情報を整理して伝えられるようになって、正確な診断につながることがあると話した。
『お灸フェスin沖縄』では「モクサアフリカジャパン」の栢之間理沙代表が、アフリカを中心とした途上国の結核患者への施灸活動を紹介。今年6月にはその集大成として、アフリカ・ウガンダの大学との共同研究『結核に対する補助的な灸療法―無作為化臨床試験による潜在的有効性と安全性の比較の調査』を『European Journal of Integrative Medicine』に発表したと話した。
近年では北朝鮮でも活動しており、足三里への施灸に加え、現地の韓医の協力を得てアフリカではできなかった腰部八点穴への施灸が可能になったと説明。6カ月に及ぶ薬剤耐性結核患者の治療では、灸を併用しなかった患者のうち症状の改善を見せたのは64%にとどまったのに対し、灸併用群では90%が改善したと報告。体重の増減についても、灸併用群が平均2.7kg増だった一方で対照群は同1.2kg減と顕著な差があったと述べた。
経営シンポジウムは中村聡氏(日鍼会業務執行理事・療養費担当)、得本誠氏(大阪府鍼灸師会会長)、斎藤晴香氏(晴香堂針灸院院長)、猪狩賢二氏(IT&鍼灸「クレバースキッド」代表)が登壇した。中村氏は介護事業運営の経験から、鍼灸師が地域包括ケアシステムに参画する際の、ケアマネジャーをはじめとする他職種との連携の重要性を強調。得本氏は、元料理人の腕を生かした料理教室の開催や麻雀などの多彩な趣味を通じて、他業種の人々と親交を深めていると話した。斎藤氏は青年会議所での活動で人脈を広げるとともに、鍼灸の認知度向上にも努めてきたと説明。AcuPOPJ(国民のための鍼灸医療推進機構)のウェブ管理者を務める猪狩氏は、ホームページやSNSで鍼灸や健康にまつわる情報を絶えず発信し続けることで新規の鍼灸ファンや固定ファンを獲得してきたと述べた。座長の小川卓良氏(日鍼会業務執行理事・学術・研修担当)は「四者四様に何らかの形で人とのつながりを大切にしてきたことが、成功の基盤となっている」としてシンポジウムを締めくくった。
ほかに、沖縄県鍼灸師会会長の久場良男氏による鍼灸公開実技『挫刺鍼による久場式跳鍼法』や、三瓶真一氏(福島県鍼灸師会会長、JISRAM副代表)らが登壇した婦人科シンポジウム、日鍼会危機管理委員会委員長の堀口正剛氏が座長を務めた委員会講座『求められる災害時の鍼灸とは』などが行われた。
あマ指師課程新設非認定処分取消裁判・大阪地裁 「藤井調査」、統計学的に全面否定
あマ指師課程新設非認定処分取消裁判・大阪地裁 「藤井調査」、統計学的に全面否定
2018.11.25
―「科学的信頼性が無い」と原告―
晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設申請を認めなかったとして、学校法人平成医療学園らが国を相手取って処分取消を求めている裁判で、11月9日、大阪地裁で口頭弁論があった。今回は、原告側から反論文書が出され、国が「あはき法19条は現在も正当性を有する」との主張の根拠に用いた、筑波技術大学教授・藤井亮輔氏らによる「あん摩業に関する実態調査」(以下、藤井調査)に対し、「科学的信頼性が無い」と否定するなど主張を展開した。
藤井調査は、平成28年秋に実施されたアンケート調査(回答数4,605人)。国は主張の中で、視覚障害者の「1カ月の患者数」や「平成27年分の年収」が、晴眼者と比べ低い水準にある(本紙1080号参照)といった調査結果から、あマ指師養成課程の自由化(新設・増設)をする合理的な理由が見いだせないとしていた。
今回提出された原告の文書は、これに対し、鑑定を依頼した統計学の専門家の意見を交えながら反論。主な指摘として、▽調査に利益相反のバイアスがかかっている、▽調査対象者の属性に偏りがある、等を挙げた。バイアスに関しては、研究代表者である藤井氏が基本的に「新設反対、19条支持」とのスタンスを取っており、その旨を表明している出版物も存在する上、調査自体が国の補助金による研究事業で、被告からの資金提供で実施されたものだと懸念を示した。調査の内容では、調査対象者のうち、あマ指師免許保有者以外が4割にも上回り、国勢調査(総務省が5年ごとに実施)の職業分類「あん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師柔道整復師」と比較すると、男女比や年齢分布に大きな隔たりがあり、現状を反映していないと指摘した。また「患者数・年収」についても、藤井調査は「施術者」ではなく、「事業所」を対象に数値を調査しており、回答者の事業所規模も不明で、視覚障害者・晴眼者1人当たりの収入等の実態を正確に比較するのは不可能と強調。「調査の方法論並びに統計学について十分な訓練を受けていないと推測され、不十分な調査項目に関する標本比率の比較に終始しており、推論に無理があるため、納得的な結論が導出できていない」といった専門家の評価にも触れ、藤井調査を全面的に否定した。
台湾の例を19条廃止後の代替案に
また原告は、視覚障害者の職域の保護という目的を達成する手段として、「台湾」の事例に言及。2008年、あん摩業を視覚障害者の専業と規定する心身障害者保護法が違憲であると判断されたが、その後の各種行われた施策の結果、以前よりも視覚障害者のあん摩業が盛況になっていると説明した。その施策の中には、政府による営業費用の補助のほか、病院、駅、空港、公園、政府機関等の場所は視覚障害者しかあん摩業を行えないという規制なども設けられているとし、たとえ19条を廃止したとしても、この台湾の例が代替政策として具体的な案を提示していると主張した。
当日の口頭弁論では、原告から、視覚障害者の中にも19条に対する多様な意見があることから、証言に立ってもらうことを予定していると述べられた一方、被告は「必要があれば反論する」と話した。次回は、来年2月1日を予定。
イベント『お灸×デザイン』 デザインは問題解決の手段
イベント『お灸×デザイン』 デザインは問題解決の手段
2018.11.25
―「医療職 ≒ デザイナー」―
10月8日に京都市内でセミナー『お灸×デザイン』が開かれた。講師を務めたのは、新町お灸堂(京都市下京区)院長の鋤柄誉啓先生。お灸の普及啓もうのため、お灸にまつわる言葉やイラストをあしらったTシャツなどのグッズを開発したり、お灸の漫画を監修するなど多角的に活動、最近では治療院のブランディングも手掛ける。
「デザインとは、ただ単におしゃれにしたりカッコよくしたりするということではありません」と言う鋤柄先生。課題や問題を解決したり、調整したりする手段だと説明する。デザイン業界には「デザイナーとは医者のようなものである」という言葉があるという。クライアントの課題や問題を発見して共感するのは「診察」。デザインのコンセプトの決定は「治療方針の決定」。そして、実際の作業は「治療」。アフターケアは治療後の生活指導など。これらはみな、鍼灸師にも当てはまる。「デザイナー≒鍼灸師」と表現した。
数年前、あるイベントに出店した際の好評とはうらはらに当時の来院患者数は非常に少なかった。「鍼灸は世の中に必要とされているのに……」。需要と供給との間の溝を埋めるため、鋤柄先生は自身の治療院をデザインし直すことにした。まずはターゲットを明確にしようと、「今の日本の社会で一番悩んでいるのはどんな人なのか」を探った。浮かび上がって来た人物像が、「35歳前後の女性」だ。年齢による体調の変化や子育ての負担、仕事における責任の増大、さらには親の大病や介護などが重なることもあり、ストレスからさまざまな不定愁訴を抱えている。この層を想定して、メニューをお灸のみとシンプルにして来院のハードルを下げる、来院してもらいやすい身近な雰囲気の空間をつくる、定期的な来院が難しい人へのセルフ灸と養生の指導を行う、などに取り組んだ結果、新町お灸堂は軌道に乗ることになったという。
セミナーでは問診票や問診そのもののデザインを試みるなどのグループワークも行われ、「IT技術を活用した問診」といったアイデアが飛び出した。
レポート 美容メディカルエステ コスメトロジー講座
レポート 美容メディカルエステ コスメトロジー講座
2018.11.25
11月11日、全国柔整鍼灸協会より講師依頼をいただき、表題で鍼灸師対象の講座を都内で行った。当日は満席で、熱気で溢れ返るほどの大盛況だった。
講座では、施術のスキームや概論を画像を用いて、美容鍼灸の初心者や現在業務されている方も興味が持てるようフローチャートで説明した。その後、顔のSMASへの刺鍼やリガメントの形成外科での切開術法、牽引箇所の応用でリフトアップ施術、当協会オリジナルの「包帯美容鍼」などは非常に参加者の関心が強かった。特に包帯使用の美容術は、鍼灸柔整師の特長を生かせられる。さらにニキビや丘疹などへの応用について、DDS(ドラッグデリバリーシステム)のビタミンC誘導体経皮吸収などのデモストレーションを行った。実技は参加者各自が交替で行ない、講座終了後は万雷の拍手をもらい気恥ずかしかった。
受講後アンケートでは、「顔の引き上げ効果がとてもあった」「想像していたよりも専門的な美容の話が聞けた」「女性への細かい対応の仕方が勉強になった」など、好評だった。新たな患者層発掘の一助としてほしい。12月9日には第2部となる柔整師も対象とした講座もあり、表情筋のフェイシャルリンパ、静脈マッサージなどでのリフトアップを講義する予定。(一般社団法人日本美容医療協会 理事長 吉田洪先)
あはき療養費の受領委任 スタート時、1249の保険者参加
あはき療養費の受領委任 スタート時、1249の保険者参加
2018.11.25
―協会けんぽは全て、健保組合は25のみ―
各保険者に参加の自由を認める「あはき療養費の受領委任」の来年1月スタートを前に、参加することを決めた保険者が発表された。厚労省保険局医療課が11月8日付で発出した事務連絡と、同省ホームページで計1249の全ての保険者名を公表した。
保険者別でみると、全国健康保険協会(協会けんぽ)が48、健保組合が25、市町村(特別区を含む)が1083、国民健康保険組合が76、後期高齢者医療広域連合が17となった。いずれも来年1月1日の受領委任取扱い開始時より参加する。
あはき療養費検討専門委員会で受領委任導入に強く反対をしていた協会けんぽは47都道府県支部に船員保険部を加えた全てが参加を決めた一方、同じく反対していた健保組合(平成30年4月時点で1389組合)は25のみだった。後期高齢者医療広域連合も参加率は低く、市町村については大阪府、京都府、兵庫県などの近畿を中心に9府県が不参加となった。ただ、来年4月からは参加の追加も始まり、既に受領委任への参加を表明している保険者もいるほか、準備が整い次第、参加に踏み切る保険者も出てくることが見込まれる。厚労省も適宜「参加保険者」情報を更新していく予定としている。
『医心方』、ユネスコ「世界の記憶」登録向け議連発足
『医心方』、ユネスコ「世界の記憶」登録向け議連発足
2018.11.10
―日本最古の医学書、鍼灸の記述も―
鍼博士であった丹波康頼が平安時代に撰集・編纂し、日本で現存する最古の医書とされている国宝『医心方』を、ユネスコ「世界の記憶」に登録しようとする動きが本格化していることが分かった。自民党が10月16日、「世界の記憶」登録を推進する議員連盟の設立総会を衆議院議員会館で開き、申請等に向けた話し合いや意見交換を行ったという。
鍼博士・丹波康頼が撰集・編纂
『医心方』は撰者の丹波康頼により984(永観2)年に宮中に献上された医書。全30巻からなり、宋以前の医書・仙書・仏典・本草書など引用文献は200余といわれる。東洋の先哲たちの医の倫理をはじめ、風土・環境による病理、あらゆる傷病の治療法、薬学の基礎などが載る中、「巻二」では鍼灸療法(孔穴名・壮数・禁鍼・禁灸のツボや主治の対象など)についての記述がある。全て漢文で書かれているが、現在は研究も進み、槇佐知子氏訳の現代語訳版も出版されている(全巻初訳は2012年に完結)。
議連設立に先立ち、2年前に「国宝・医心方のユネスコ『世界の記憶』登録を推進する会」(横倉義武会長)が結成され、各方面に働きかけを行ってきた。当日の議連総会には、議連の鴨下一郎会長や事務局長・羽生田俊氏ら自民党議員のほか、「推進する会」のメンバーや株式会社ツムラの幹部などの関係者が出席。槇氏とともに、オブザーバーとして参加した櫻井瑶子氏(有限会社まなをかし代表取締役、鍼灸師)によると、総会に英国のオックスフォード大学教授のデニス・ノーブル氏が招かれ、海外の視点から医心方の文献的な価値や重要性についての講話も行われた。ノーブル氏からは「医心方には薬効植物の記述が多く、データの宝庫で、研究・治験等で莫大に費用がかかる現在の新薬開発に新たな方向性を提示する可能性を秘めており、そういう点で記憶遺産に値する」との話があり、また教授に随行し来日していたフランスのメディアも取材に入っていたという。申請に向けては、政治的な事情等も絡み、現在ユネスコが新規申請を受け付けておらず、申請の解禁は早くても2020年4月になる見通しで、それまでに啓蒙活動を含めた準備を進めていく方針だ。
鍼灸業界も声を上げ、行動を
今回の設立総会には、鍼灸の業団関係者の姿はなかったという。議連と「推進する会」は今後、幅広い分野から協力団体や会員を募っていく考えで、櫻井氏は「鍼灸業界でも医心方のユネスコ登録を目指す会を立ち上げるなどし、医師会や丹波康頼の出自である京都府福知山市といった地域団体などとお互い連携を取りながら、活動に大きな広がりを作っていってほしい」と話す。
専門職大学の初年度設置、断念多数
専門職大学の初年度設置、断念多数
2018.11.10
―柔整・鍼灸課程持つ4校も―
来年度からの開校を申請していた専門職大学13校について、高知リハビリテーション専門職大学1校のみが認可された。10月5日、文部科学省が発表。
柔道整復・鍼灸の課程を持つ学校として、学校法人日本教育財団、学校法人福岡医療学院が計4校の申請を行っていたが、いずれも申請を取り下げた。実習科目、施設などの準備不足が原因とみられる。
全鍼師会の第17回東洋療法推進大会 同意書・施術報告書の留意点を解説
全鍼師会の第17回東洋療法推進大会 同意書・施術報告書の留意点を解説
2018.11.10
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会(伊藤久夫会長、全鍼師会)の「第17回東洋療法推進大会」が10月14日、15日、鹿児島市内で開催された。
保険推進委員会の分科会では、保険局長の往田和章氏が登壇し、来年1月からスタートの「あはき療養費の受領委任」に伴い10月以降に改正された同意書の取り扱い(再同意書の取得義務化、様式の変更等)と、新設された施術報告書を中心に解説を行った。今回の大きな変更点である「口頭同意の廃止」については、「今後、施術者の先生方には非常に負担が重くなり、申し訳ない気持ちです」と述べた上で、10月1日以降は6カ月に引き延ばされた「同意期間」以内に医師より文書にて再同意書を取得し、申請書に添付するよう説明した。同意書様式の変更では、裏面に「同意書交付の留意点」という医師向けの説明文が新たに設けられ、鍼灸の「併給禁止」をマッサージにも混同させている医師などへの正しい理解を促すものになると強調。ただ、鍼灸の通知内にある「保険医による適当な治療手段がないもの」との表現を初めて知った医師が本来の解釈を理解できず、同意書交付を躊躇することも想定されるとし、この点は注視したいと語った。医師とのコミュニケーションツールとして導入された施術報告書に関しては、マッサージでは可動域の拡大・筋力増強の施術や運動処方による症状の改善度を記載し、鍼灸では施術開始時と再同意予定前の「慢性の疼痛」の状態をペインスケールなどで記載するなど、記載例を挙げて解説した。
受領委任導入も鍼灸は厳しさ増す?
往田氏は、受領委任に絡む動向にも言及し、今年の春の導入決定後に豊田通商とALSOKが訪問マッサージへの参入を発表したとして、「国が定めた制度としてコンプライアンスが高まり、制度面での安定化が図られた結果だ」と推察。しかし、近年の鍼灸は審査請求の場で「保険者判断」が結果に大きく影響し、棄却されるケースが目立ち、6疾患でも不支給になると指摘。今後電子請求化が進み、医科との突合が容易になれば、不支給事案は一層増加するとし、受領委任とは別に、鍼灸は支給要件に関する仕組みに問題があると懸念を示した。
無資格対策委員会と視覚障害委員の合同分科会は、『あはき広告規制と共に考える19条問題』をテーマに開かれた。厚労省医政局医事課医事専門官の松田芳和氏が招かれ、今月までに既に3回開催された「あはき・柔整等の広告検討会」と、現在係争中の「あマ指師課程新設非認定処分取消裁判」についてそれぞれ厚労省の考え方と進捗状況が話された。
災害対策委員会など6分科会のほか、志學館大学人間関係学部教授の原口泉氏による特別講演『西郷隆盛の文明観』が行われた。
講演会『ドイツの鍼灸事情と実技』、森ノ宮で
講演会『ドイツの鍼灸事情と実技』、森ノ宮で
2018.11.10
―独療法士、自身の判断で開業・施術 保険適用の厳しさも―
ドイツで日本式鍼灸による治療を実践するドイツ人鍼灸師、Jene-Peter Salzmann氏(塩人ザルツマン鍼灸院院長)による講演会が10月5日、森ノ宮医療学園専門学校(大阪市東成区)で開催された。同氏は毎年日本に研修旅行に訪れているといい、今回の来日に合わせて講師に招かれた。ドイツの鍼灸事情について紹介したほか、接触鍼や刺鍼の実技も披露した。
同氏によれば、ドイツでは1930年代頃から鍼灸治療が盛んとなった。現在は医師のほかに、療法士国家試験に合格した療法士(ハイルプラクティカー)が、鍼灸を含む補完代替医療を自主的に行うことができる。看護師や介護士といった医療従事者も医師の指導下でなら施術ができるほか、助産師は鍼治療の研修を受けることで自主的な施術も可能だとされた。また、療法士は医師の指導を仰がず、自己の判断のみで施術でき、開業も許されているという。療法士は現在24,000人で、治療は全額自費が一般的。ただし、ドイツの医学界においては、一般に鍼灸治療は科学的な治療とは考えられていないものの、実際に鍼灸治療に携わっているのは療法士よりも医師がはるかに多いとして、東洋医学への潜在的な期待の大きさを示唆した。
一方で、保険適用については厳しい状況で、製薬会社と健康保険会社の意向が影響した治験の結果、収入が低い等の理由で義務健康保険にしか入っていない大半の国民は、鍼灸治療を自費で受けなければならないとした。なお、ドイツにおける鍼灸施術は中国式がほとんどだと説明。その中で日本鍼灸を愛用している理由については、「体質的に優しい刺激の方が合っている人がいるのはドイツ人も同じです」と語った。
病鍼連携連絡協議会が基礎講座 予防や健康増進での連携を模索
病鍼連携連絡協議会が基礎講座 予防や健康増進での連携を模索
2018.11.10
病鍼連携連絡協議会(長谷川尚哉世話人代表)が今秋より3回シリーズの基礎講座をスタートさせた。同会は、病院等の医療機関と開業鍼灸マッサージ施術所の連携の構築を目指して2015年に発足。現在、NPO法人日本HIS研究センターと提携しており、全3講座を受講後に入会した施術者には、全国の同センター加盟病院との連携を含めた支援に取り組むとしている。
9月29日に開かれた1回目の講座では、長谷川氏が登壇し、約4年半の病院勤務と医療法人運営のサテライト治療院での経験を踏まえ、病院との連携の取り方等を解説した。病院では何事も医師のオーダー(指示)から始まるとし、それへの対応が不可欠だと強調。チームで働く力などの「社会人基礎力」はもちろん、検体検査や画像診断の知識も一定程度求められ、また、病院内では患者の投薬情報が電子カルテで全職種に共有されているとの「常識」があり、連携を図ろうと思えば、開業鍼灸マッサージ師も患者の「お薬手帳」のコピーは取っているのが当たり前の時代だと説いた。ただ同会では、エビデンスレベルが高い治療を実践できる鍼灸マッサージ師の養成のみに目的を置いておらず、予防や健康増進にも寄与できる連携の形も模索していると話した。現在、プライマリ・ケアの医師は高リスク群の患者に忙殺され、中・低リスク群には手が回らないのが実態で、この部分に関わっていけると説明。そのためにも、家庭医の藤沼康樹医師が今後の医療で必須と位置付ける「社会的処方」や、故・五十嵐正紘医師が提唱した総合医療の基本要素『五十嵐の10の軸』などの考え方も取り入れ、アプローチを進めていくとした。また、高齢化に伴って増えると見込まれる患者の癌への対処(検診の勧めや徴候のみられる患者の紹介など)にも取り組みたいとも語った。
今後は『治療院でであうかもしれないレッドフラグの知識』、『病歴聴取とマルチモビディティを視野に入れた面接技法とご高診願いの実例、記載法』をテーマに講座が開催される。
2018年秋の叙勲・褒章
2018年秋の叙勲・褒章
2018.11.10
―あはき・柔整業界から4名―
あはき・柔整業界からの秋の叙勲・褒章は以下の通り。
(敬称略・順不同)
◇旭日双光章
吉留義幸(元社団法人鹿児島県柔道整復師会会長)
◇旭日単光章
柳田松三(元公益社団法人愛知県柔道整復師会副会長)
◇黄綬褒章
君和田榮司(君和田マッサージ治療院・茨城県)
◇藍綬褒章
得本 誠(公益社団法人大阪府鍼灸師会会長)
セイリン主催『鍼灸合同企業説明会2018』 鍼灸企業と学生をマッチング
セイリン主催『鍼灸合同企業説明会2018』 鍼灸企業と学生をマッチング
2018.11.10
―31社が出展、131人が来場―
10月14日、セイリン株式会社が大阪市内で開催した企業と専門学校生のマッチングイベント、「鍼灸合同企業説明会2018 in 大阪」。鍼灸院・整骨院などのグループ企業31社が出展し、131人の鍼灸学科在籍の学生が来場。大阪では初の開催となった。
介護、美容、トレーナーなど特色のある多彩な企業が出展。出展社による治療体験もあり、参加者らから好評を博していた。今回は、事前に別会場で企業が「1分間PR」を行う機会もあり、「ほかの合同説明会には無い取り組みで良かった」とある出展社。会場にいた学生も、「詳しい説明を聞きたいと思った」と、ブースに足を運ぶ決め手になったと話した。イベント後の取材では「来年度も出展したい」「後日、早速学生さんが見学に来た」など、出展社は概ね好感触を得たようだ。
企業「社会人としての自覚を」
学生「残業代や賞与を希望」
一方、昨今の就職事情や学生の傾向などもうかがえた。「最近は、ゼロから育て上げても2、3年で辞めて独立してしまう。院長候補として先行投資してきたのが無駄になる」と話したのは、複数の整骨院を運営する企業の幹部。2、3カ月で離職する新人も少なくないといい、「治療家以前に社会人としてどうか」と苦言を呈していた。関東で治療院とともにトレーナー事業を展開している企業の関係者によると、大阪など関西からの就職希望者が増えてきたという。「トレーナー志望者が増加する一方で、関西には受け皿が少ないのではないか」と分析していた。専門学校生の女性は、「企業としてしっかりしているところがいい」と話す。同級生だという女性2人も、残業代や賞与の支給など待遇面の条件を重視していた。あん摩マッサージ指圧師で、鍼灸学科に通いながら往療専門で働いているという男性は「起業を目指しているので参考になるかと思って」と来場の理由を明かしていた。
説明会に先立ち、独自の美容鍼灸で脚光を浴びた角森脩平氏(鍼灸師・柔整師)が講演を行い、実技も披露した。角森氏は、今後は過当競争によって治療院も人材を育成する余裕が無くなり、実務経験の無い人は採用されにくくなっていくだろうと指摘。専門学校に在籍しているうちから鍼灸院や整骨院で働いて、技術を身に付けておくべきだと呼びかけた。また、自身が雇用しているスタッフは練習用の鍼を自腹で購入していると紹介。無駄にはできないからと集中して練習するので刺鍼技術の向上につながり、一本一本のありがたみも分かると説いた。
札幌市、あはき自費施術を助成対象に
札幌市、あはき自費施術を助成対象に
2018.10.25
―新制度の目的「高齢者の健康保持・増進」―
札幌市は10月から、65歳以上の市民を対象とした「はり・きゅう・マッサージ施術料助成事業」を始めた。療養費の支給や医療扶助が適用となる場合は助成の対象外で、自費の施術を想定したもの。運動器疾患の治療にとどまらず、高齢者の健康目的を掲げた、自費の施術を対象とする助成は珍しい。
65歳以上、施術1回に千円
助成額は施術1回当たり千円で、各年度につき1人5回まで。助成を利用できるのは市内で開業している施術所で、事前に市と協定を結ぶ必要がある。協定によれば、標準の施術料金は3千円とされている。
札幌市には昭和37年以来、国保加入者を対象にした鍼灸マッサージ施術の助成制度が存在していたが、今年3月に新規の受け付けを終了。高齢者の健康の保持・増進を目的に、新制度への移行を決めた。
以前の助成制度と比較すると、助成の対象を65歳以上の全市民としたことで、利用できる人数は大幅に増える見込み。市担当者への本紙の取材によれば、「最終的にどの程度の申請があるかはまだ分かりません」としながらも、早速、助成券の申請のため、多くの市民が市役所などを訪れているという。
明治国際医療大学大学院、養生学寄付講座で新構想
明治国際医療大学大学院、養生学寄付講座で新構想
2018.10.25
―5カ年計画で「養生」の社会還元―
明治国際医療大学大学院が、新たに開講した鍼灸学専攻養生学寄付講座を主体に、『養生による新しい医療体系の構築と指導者の育成』を行う構想を進めていることが分かった。セイリン株式会社、オムロンヘルスケア株式会社、サンスター株式会社といった企業が協賛するほか、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)を通じた研究資金の申請も行う。
国、大手企業の支援も募り
構想リーダーは同大学院研究科長で、本紙で『未来の鍼灸師のために今やるべきこと』を連載中の伊藤和憲氏。病気にならないための「予防」にとどまらず、より健康に、美しく、強くなるための「養生」の学問的基盤を構築し、その考えを社会還元するためのシステムを目指す。
具体的には、養生セラピストを育成する「養生スクール構想」、養生学を構築しエビデンスを集積する「養生ラボ構想」、地域や企業と連携して持続可能な養生システムを構築する「養生場構想」の三つを柱に、IoTによる健康管理システムの開発や、利用者が適切な医療情報にアクセスしたり、健康相談や養生の学習もできる「養生アプリ」の開発を行っていく。2022年の構想完成を目指す5カ年計画で、今年7月に前出の寄付講座を開講。現在「養生セラピーテキスト」の制作、養生場の拡大などを進めており、来年度は養生アプリの試作、指導者の育成などに取り掛かるとしている。
大阪で「養生認定セミナー」も
9月23日、24日には、養生スクール構想の一環で、養生セラピストの養成に向けた『養生認定セミナー』がセイリン株式会社大阪営業所(大阪市淀川区)で開催された。
講師を務めた伊藤氏は、国民医療費の逼迫を背景に、医療が治療から予防にシフトしていく中で、予防中心の医療を「第2局」として確立するためには、国民が持っている「病気の物差し」を変化させる必要があるといった考えを解説した。その後、叩き台段階の「養生セラピーテキスト」も用いながら、身体の調べ方、緩め方、温め方といった知識や、その伝え方を指導した。また、討論の時間も設けられ、「養生という言葉は若い人には伝わらないのでは」「鍼灸だけでなく、アロマやヨガといった医療職ではない他職種と医療との橋渡しも必要」など、養生構想の今後を見据えた意見交換が行われた。
今回のセミナー参加者は「最初に参加する人たちには、特にしっかりと養生構想のコンセプトを理解しておいてほしい」との考えから紹介などを通じて集められたが、伊藤氏は、来年度からオープンに参加を募っていくとした。「さらに養生学寄付講座、ならびにその根底にある養生場構想を発展させていくために、今後も多くの企業や業団から寄付の提供を目指していく」とも話し、一般向けの市民公開講座なども予定しているという。
第3回あはき・柔整等の広告検討会 「施術所を医療提供施設に」との提案も
第3回あはき・柔整等の広告検討会 「施術所を医療提供施設に」との提案も
2018.10.25
地方自治体と保険者のヒアリング実施
10月10日、3回目となる『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会』が都内で開かれた。今回は、広告指導を含む施術所管理を行う地方自治体と、療養費の審査・支給決定を行う保険者から広告に関する現状の報告に加え、意見・提案等が示された。
地方自治体からは、奈良県橿原市と愛知県豊橋市の2市。 (さらに…)
あはき療養費、10月1日以降の同意書取扱い等でQ&A(2/2) 施術報告書・支給申請書関連
あはき療養費、10月1日以降の同意書取扱い等でQ&A(2/2) 施術報告書・支給申請書関連
2018.10.25
10月より適用された「同意書の新たな取り扱い」や「施術報告書の新設」などで、判断に迷うケース等での厚労省の具体的な考え方が示されている。以下は、前号で取り上げなかった「施術報告書交付料」「支給申請書」の項目から一部を抜粋。
【施術報告書交付料関係】
(問) 施術報告書の目的はどのようなものか。
(答) 施術が支給対象に当たるかどうかを保険者が判断するため、医師の同意・再同意は重要である。そのため、医師は、再同意に当たり、施術者の作成した施術報告書により施術の内容や患者の状態等を確認するとともに直近の診察に基づき再同意する。また、医師は、施術に当たって注意すべき事項等があれば同意書の「注意事項等」欄に記載し施術者に連絡する。このように、医師と施術者が文書によるコミュニケーションを図り、連携を緊密にすることにより患者に必要な施術が行われる仕組みの一環として、施術報告書の取扱いを導入したところである。
(問) 施術報告書の「施術の内容・頻度」欄及び「患者の状態・経過」欄は、記入する必要があるか。
(答) 施術報告書は、医師の再同意に資するものであり、記入して交付する必要がある。なお、保険者は、支給申請書に添付された施術報告書の写しに当該各欄の記入がない場合、施術報告書交付料を不支給として差し支えない。
(問) はりきゅうとマッサージの施術報告書が毎月交付された場合、施術報告書交付料は、毎月支給できるか。
(答) 毎月の支給はできない。施術報告書交付料は、「一の同意書、診断書により支給可能な期間の施術について、施術報告書を患者に複数回交付した場合であっても、支給は1回に限る」こととされており、具体的な取扱いとしては、6ヶ月以上の期間に対して1回支給するものである。
(問) はりきゅうとマッサージの施術報告書交付料の支給の基準について、「初療若しくは直前の医師による再同意日の属する月の5ヶ月後(初療若しくは再同意日が月の16日以降の場合は6ヶ月後)の月に施術報告書を交付した場合」とはどのような場合か。
(答) はりきゅうとマッサージの施術報告書交付料は、療養費の支給可能期間(6ヶ月)の最終月(暦月)の施術における状況等を施術報告書に記入し同月中に交付した場合に支給できるものであり、例えば平成30年10月初めに医師から再同意を受けた患者について、施術者が支給可能期間の最終月である平成31年3月下旬の施術における状況等を施術報告書に記入し同日以降の同月中に患者に交付した場合に支給できる。
(問) 施術報告書の交付日は、どのような日付を記入するか。
(答) 施術報告書の交付日は、施術を行った日ではなく、実際に施術報告書を交付した日付を記入する。
(問) 施術報告書交付料は、いつから支給できるか。
(答) 施術報告書交付料は、平成30年10月以降の施術における状況等を施術報告書に記入し、同月中に交付した場合に支給できる。そのため、9月以前の施術について施術報告書に記入する場合や9月以前に交付した場合は支給できない。
(問) 施術報告書を交付する月の施術について、複数の施術者がそれぞれ施術を行った場合、施術報告書は、誰が記載するのか。
(答) 患者に対して、中心的に施術を行った施術者が代表して記載する。
(問) 施術報告書の作成について、「やむを得ず、施術報告書を作成しない場合」とあるが、やむを得ず作成しない場合とは、どのような場合か。
(答) 例えば、施術者が視覚障害者であり、施術報告書の作成に係る負担が大きい場合等が考えられる。なお、施術報告書は、施術者と医師の連携を緊密にすることにより患者に必要な施術が行われることを目的とするものであり、特段の事情がない限り、施術者において交付するよう努めるべきものである。また、施術報告書を作成しない場合であっても、施術者は、患者を診察する医師からの施術に関する問い合わせに応じるべきものである。
〈マッサージのみ〉
(問) 変形徒手矯正術の施術報告書交付料の支給の基準とはどのようなものか。
(答) 療養費の支給可能期間(1ヶ月)内の施術における状況等を施術報告書に記入し、当該施術日の同月中に交付した場合に、当該支給可能期間中に1回に限り支給できるものである。
【支給申請書関係】
(問) 平成30年10月1日以降、「一の同意書、診断書により支給可能な期間」内における1回目の請求については、療養費支給申請書に、新しい様式の同意書(又は診断書)の原本を添付する必要があるのか。
(答) 同意書(又は診断書)の交付年月日が平成30年10月1日以降であれば、そのとおり。保険医の同意年月日が平成30年9月以前の場合、従来の取扱いで差し支えない。その場合、療養費の支給可能期間は従来どおり(はり・きゅうは3ヶ月、マッサージは3ヶ月、変形徒手矯正術は1ヶ月)となる。
(問) 平成30年10月1日以降、「一の同意書、診断書により支給可能な期間を超えて更に施術を受ける場合は、当該期間を超えた療養費支給申請については、医師の同意書を添付すること」とされたが、はりきゅうとマッサージの支給可能期間(6ヶ月)の最終月中に保険医より同意書(又は診断書)が交付された場合、どのように取り扱うものであるか。
(答) 当該最終月(暦月)の翌月分の支給申請書に同意書(又は診断書)の原本を添付するものであるが、同意書(又は診断書)の交付により「一の同意書、診断書により支給可能な期間」が変更されるので、当該最終月分の支給申請書に添付しても差し支えないものである。
(問) 療養費支給申請書の様式については、同意書、診断書、施術報告書と異なり、平成30年10月1日以降も参考様式とされているが、従来どおり、必要に応じ保険者において必要な欄を追加することは差し支えないのか。
(答) そのとおり。なお、受領委任の取扱いに係る療養費支給申請書の様式は、参考様式ではない統一の様式であるので留意されたい。
日鍼会の第2回医療連携研修講座
日鍼会の第2回医療連携研修講座
2018.10.25
―整形外科医・内科医の講演や他職種への報告書の書き方等―
公益社団法人日本鍼灸師会(日鍼会)の2回目となる医療連携研修講座が9月16日、17日、日本鍼灸理療専門学校(東京都渋谷区)で開かれた。冒頭、日鍼会理事・研修事業担当の小川卓良氏が登壇し、研修の意義や目的を説明した。近年、無資格者の鍼灸受療層への浸食や鍼灸師激増による資質の低下、患者の受療行動・動機の変化などの要因で、従来型の鍼灸院運営が成り立たなくなっていると解説。日鍼会を含む4団体で構成する『国民のための鍼灸医療推進機構』(AcuPOPJ)の将来検討委員会における現状を打破できる事業モデルについての検討結果では、▽医療機関との連携、▽在宅医療との連携、▽産業鍼灸、▽スポーツ鍼灸、▽介護予防、などの分野が挙がっており、いずれも「医療連携ができること」が求められると述べ、自分の治療技術を向上させればいいという時代ではなくなってきていると説いた。
2日間の会期中には、医療機関への紹介状や医師・他の医療従事者に向けた報告書の書き方を学ぶワークショップが行われた。肩背部痛や嗄声などを主訴とする症例が課題に出され、40名ほどの参加者が所見等の情報も踏まえ、紹介状・報告書の作成に取り組んだ。また医師講演として、整形外科医の立花陽明氏(埼玉医科大学整形外科教授)、神経内科医の武田英孝氏(山王メディカルセンター)、内科医の松原哲氏(呉竹メディカルクリニック名誉院長)の3氏が講演し、異なる視点から外来患者を診る際のポイントや医療連携で鍼灸師に望む知識を伝えた。
「鍼灸師としてのプロフェッショナリズム」をテーマとした津田昌樹氏(日鍼会研修委員長)の講演では、過去の建築耐震構造問題やディオバン事件を例に挙げ、現在、このような事件をきっかけに社会と専門職(建築士や医師)の関係が一気に悪化する時代だと説明。鍼灸業界では、師弟関係によってプロフェッショナリズムの形成が行われてきたが、今後は広く一般に分かるよう「明文化」し、それを鍼灸師個々がいかに自律的に学んでいけるかが課題になるとした。また、そのために業団が鍼灸師という職業のブランディングを図る必要性があることも強調した。
『医療は国民のために』257 「骨太の方針」から療養費廃止を危惧してしまう
『医療は国民のために』257 「骨太の方針」から療養費廃止を危惧してしまう
2018.10.10
今年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」を読むと、保険医療に関して、「必要な保険給付をできるだけ効率的に提供しながら、自助、共助、公助の範囲についても見直していく必要がある」と書かれているのに気づく。いわゆる「骨太の方針」と呼ばれるこの方針は、国の財政を健全化するため、首相が議長を務める経済財政諮問会議での答申を経て決定したもので、関係国務大臣や有識者議員等の意見も十分に反映されている。その中に、「自助、共助、公助の範囲見直し」、つまり健康保険の保険給付範囲を“大胆に”見直すことが示されたのだ。既に薬局での売薬で購入可能な湿布薬や目薬・風邪薬を保険対象外とすることは既定路線になり、「軽度な傷病・負傷」「簡単な医療行為」「軽微で低額廉価」なものを保険から外していくということを読み取ることができる。
さて、私たちが取り扱う療養費は、被保険者や世帯主に帰属する「債権」であり、柔整師や鍼灸師のものではないことから、「請求人」である被保険者等の氏名を申請書に患者自らが請求人として「署名」している。よって、診療報酬が医師に帰属する債権であるのとは法令上の立て付けが違うのだが、実態としては、現物給付化のような保険支払いシステムとして「受領委任の取扱い」が認められている。つまり、柔整療養費とともに、来年1月より受領委任が始まるあはき療養費も、諮問会議が議論の対象としたい「軽度対応」とみなされる可能性は高いといえる。ここに、柔整療養費やあはき療養費の存続の危機を強く感じている。
もちろん、「医科本体における軽度傷病」を保険適用から除外するにあたり、軽度傷病の範囲を明確にする必要があるが、保険対象外へと真っ先に追いやられそうなのが柔整とあはきではないか。医療財源の枯渇によって医科本体のどの業界・分野も生き残りに必死だ。「近い将来、医師など食べていけない」などと評する文献も出ているようだ。そんな中で、柔整やあはきの療養費取扱いだけが温存されるわけがない。しかも、このテーマを考えるには、①混合診療のあり方、②保険給付率のあり方、③自己負担の定額化、などの議論を抱き合わせにして同時進行していくことになろうかと推察している。
ところが、業界はなぜかだんまりを決め込んでいる。まさか、「自民党の先生方が守ってくれる」という言葉をここにきても繰り返すのか。万が一、療養費から施術者取扱い分が除外され、柔整・あはき療養費が廃止となった場合をも想定に入れ、柔整業界は自費取扱いの理論構成を考えねばならないし、あはき業界は受領委任導入後の従来までの自由料金との差について、多くの疑義が生じることの検討をしておく必要があるだろう。
【連載執筆者】
上田孝之(うえだ・たかゆき)
全国柔整鍼灸協同組合専務理事、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会理事長
柔整・あはき業界に転身する前は、厚生労働省で保険局医療課療養専門官や東海北陸厚生局上席社会保険監査指導官等を歴任。柔整師免許保有者であり、施術者団体幹部として行政や保険者と交渉に当たっている。