第2回災害支援鍼灸マッサージ師合同育成講習会 「エコノミー症候群」予防に有効
2019.08.25
発症が疑われたら速やかに医師へ申し送りを
日本鍼灸師会(日鍼会)と全日本鍼灸マッサージ師会(全鍼師会)の共催による『第2回災害支援鍼灸マッサージ師合同育成講習会』が7月21日、大阪市内で開催された。
矢津田善仁氏(日鍼会危機管理委員会)は、被災地で多く見られるエコノミークラス症候群の誘因には、過密な避難所生活や車中泊による運動・体動の制限、トイレ環境・物資不足による水分摂取の不足があると解説。危険因子として、年齢が70歳以上、眠剤を使用している、下腿の腫脹、などを挙げた。エコノミー症候群が疑われる患者に遭遇した場合は速やかに医師・保健師に申し送りをするべきだと注意。鍼灸マッサージ師は、鍼・マッサージによる血流改善や運動指導などにより、その予防にこそ力が発揮できると説いた。
また、避難所に入るのは主に高齢者などの災害弱者で、慢性疾患を抱えている可能性が高いと指摘。さらに、災害の初期は避難所が整備されておらず、「硬くて冷たい床に毛布1枚で寝る」といった状況が想定されると説明。そのような環境下では高齢者はすぐに体調を崩してしまうとして、そのケアにも対応できる鍼灸マッサージ師は、災害初期から必要とされていると呼び掛けた。
災害協定締結の意義、経緯など
府・県単位で行政との災害協定を締結している滋賀県、岡山県、大阪府の師会から、飯塚季也氏(滋賀県鍼灸師会会長)、内田輝和氏(岡山県鍼灸師会会長)、堀口正剛氏(大阪府鍼灸師会、日鍼会危機管理委員会)が登壇。飯塚氏は、被災地での無資格者による健康被害が避難所からの受け入れ拒否につながっていると指摘。協定を締結していれば初期段階から避難所に入ることができ、無資格者による「場荒らし」を防げるとして、協定の意義を説いた。内田氏は、平成27年から始まった「おかやまマラソン」で毎回ボランティアでケアを行ってきた実績が平成30年の協定締結に結実したと説明。堀口氏は、平成26年に大阪府に協定締結の打診をした際はとりあってもらえず、大阪府鍼灸師会の学術講習会に災害対策を組み込んだり、大阪府主催の災害ボランティアの研修会に参加し続けたりするなどして自己研鑽と認知度向上に努めた結果、平成30年の締結にこぎつけたと語った。
このほかに、災害医療ACT研究所のメンバーらによるグループワーク『避難所アセスメント演習』、朝日山一男氏(全鍼師会災害対策委員会)の『西日本豪雨災害活動状況報告』、助産師で、鍼灸師でもある山田真由美氏の講演が行われた。