NHK「歴史秘話ヒストリア」で鍼の再現シーン、8日夜放送
2020.01.07
NHKの歴史情報番組、『歴史秘話ヒストリア』の1月8日放送回(22:30~)で、長野仁氏(森ノ宮医療大学大学院教授)によるコメントと、鍼の再現シーンが放送される予定。
同回のテーマは『あらためて知りたい! 明智光秀』。今年の大河ドラマ『麒麟がくる』で主人公となる光秀の、近年の研究で明らかになってきた、医者としての側面にスポットライトを当てた特集を予定している。
NHK「歴史秘話ヒストリア」で鍼の再現シーン、8日夜放送
NHK「歴史秘話ヒストリア」で鍼の再現シーン、8日夜放送
2020.01.07
NHKの歴史情報番組、『歴史秘話ヒストリア』の1月8日放送回(22:30~)で、長野仁氏(森ノ宮医療大学大学院教授)によるコメントと、鍼の再現シーンが放送される予定。
同回のテーマは『あらためて知りたい! 明智光秀』。今年の大河ドラマ『麒麟がくる』で主人公となる光秀の、近年の研究で明らかになってきた、医者としての側面にスポットライトを当てた特集を予定している。
晴眼者のあマ指師課程新設をめぐる裁判 「あはき19条、違憲ではない」
晴眼者のあマ指師課程新設をめぐる裁判 「あはき19条、違憲ではない」
2019.12.25
―東京地裁判決「障害者保護は今なお必要」―
あはき法19条の規定により、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設を国が認めなかったとして、学校法人平成医療学園らがその処分取消を求めた訴訟で、東京地裁(古田孝夫裁判長)は12月16日、19条は視覚障害者の生計維持の保護を図る措置として、「今なお必要性があり、憲法に違反しない」と判断し、平成医療学園の請求を棄却した。大阪、仙台の両地裁でも同様の裁判が現在係争中で、判決は初めて。(次ページに判決要旨)
当日、法廷には、白杖を手にした多くの視覚障害者の姿が目立った。古田裁判長は、「視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計維持が困難とならないようにする目的で定められたあはき法19条1項を、今なお維持する立法府の判断は、国会の裁量の範囲内で著しく不合理だとは言えない」として、原告が主張する「職業選択の自由」(憲法22条1項)に違反しないと述べた。判決の言い渡しを終えると、傍聴席から拍手が湧き起こった。
3年前より裁判が始まり、原告・被告双方から主張のほか、19条制定時の経緯、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師の経済状況や就業状況の変化などを含む資料・データが提出されたが、東京地裁が判断材料としたのは、「視覚障害者の就業率は低く、依然としてあん摩マッサージ関係の業務に就いている者の割合が高い」との点だった。判決文の中で、「昭和30年頃に視覚障害者であるあん摩師が視覚障害者以外のあん摩師にその職域を圧迫されていると言われるようになった」ことが契機となり、視覚障害者の保護のため養成施設の新設を制限した19条が制定された旨が記載されているが、今回の判決結果もその半世紀以上前の理由と全く同様の根拠で下された形となった。
【あはき法19条1項】
当分の間、文部科学大臣又は厚生労働大臣は、あん摩マツサージ指圧師の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設において教育し、又は養成している生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合その他の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マツサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認めるときは、あん摩マツサージ指圧師に係る学校又は養成施設で視覚障害者以外の者を教育し、又は養成するものについての第二条第一項の認定又はその生徒の定員の増加についての同条第三項の承認をしないことができる。
原告の平成医療学園、控訴へ
19条制定以降の50年の歴史が無視されて残念
判決後、原告側が会見を行った。折田泰宏弁護士は「国が提出した視覚障害者の生活状況などのデータは平成18年以前のもので、東京地裁は10年以上前の状況で判断している。年々高齢化が進み、盲学校の生徒も減っており、将来を担う若い視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師は少ない。新設制限以外の規制手段もあり、この50年の変化を無視した判決だ」と控訴する意向を示した。平成医療学園の岸野雅方理事長は「無免許者の跋扈が視覚障害者の生計維持を困難にさせているにもかかわらず、この点の追及が判決でされていない。手技を学び、業としたい学生が多くいるのに残念だ」と語った。
晴眼者のあマ指師課程新設をめぐる裁判の東京地裁判決〈要旨〉
晴眼者のあマ指師課程新設をめぐる裁判の東京地裁判決〈要旨〉
2019.12.25
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事案の概要
本件は、原告・平成医療学園が、運営する横浜医療専門学校について、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あはき師法)に基づき、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師養成施設の認定の申請をしたところ、厚生労働大臣が、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があるとして、同法19条1項に基づき、認定をしない旨の処分をしたため、原告において、19条が憲法22条1項(職業選択の自由)等に違反して無効であるなどとして、処分の取り消しを求める事案である。
あはき師法19条1項制定(昭和39年)後の状況等
【視覚障害者の数、就労状況等】
●視覚障害者数の状況
①昭和30年から平成18年までの視覚障害者の総数(18歳以上の推計値)は、昭和35年が20万2,000人、昭和40年が23万4,000人、昭和62年が30万7,000人、平成18年が31万人である。
②昭和34年から平成26年までの身体障害者手帳交付台帳登載数における「視覚障害」の登載数(18歳未満を含む)は、昭和35年が18万3,530人、昭和39年が24万820人、平成18年が38万9,603人、平成26年が34万9,328人である。平成27年の同登載者数は、18歳以上が33万8,994人、18歳未満が5,044人である。
●視覚障害の就労状況の推移
①昭和30年から平成18年までの視覚障害者の有職者数及び就業率は、昭和35年が7万2,114人(35.7%)、昭和40年が7万5,000人(32.0%)、昭和62年が6万8,154人(22.2%)、平成18年が6万6,340人(21.4%)である。
②昭和40年から平成18年までの視覚障害者の不就業者数及び不就業率は、昭和40年が15万9,000人(68.0%)、昭和62年が23万7,925人(77.5%)、平成18年が22万7,540人(73.4%)である。
●あん摩・マッサージ・はり・きゅう関係の業務の割合
①昭和30年から平成18年までのあん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いている視覚障害者の数及び有職者に占める割合は、昭和35年が2万7,548人(38.2%)、昭和40年が1万8,825人(25・1%)、昭和62年が2万6,989人(39・6%)、平成18年が1万9,637人(29.6%)である。
②平成18年度から平成26年度までのハローワークにおける重度の視覚障害者に対する職業紹介の全体件数の中であん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の免許を基礎とした職業が占める割合は、70.8%から75.0%の間で推移している。
③平成15年の実態調査によると、視覚障害により身体障害者手帳の交付を受けているあん摩マッサージ・はり・きゅう業者の83.8%が、障害等級1級と2級を合わせた重度の視覚障害者である。
●あん摩・マッサージ・はり・きゅう以外の就業状況
①視覚障害者の有職者の就いている職種のうち、農業・林業・漁業の割合は、昭和40年が36.5%、平成18年が8.6%、あん摩・マッサージ・はり・きゅうを除く専門的技術的職業の割合は、昭和40年が2.6%、平成18年が11.1%、事務の割合は、昭和40年が1.7%、平成18年が7.4%である。
②平成27年度のハローワークにおける視覚障害者の就職内訳は、運搬・清掃等の職業が16.5%、事務的職業が13.4%、サービスの職業が8.3%である。
●あん摩マッサージ指圧師の収入状況
①平成25年のあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の年間収入(税込ベース)の平均値は、全体が571万2,000円、視覚障害者以外の者が636万2,000円、視覚障害者が290万円である。このうち、視覚障害者の年間収入の最大値は1,000万円、中央値は180万円、最頻値は200万円であり、年間収入300万円以下の割合は76.3%である。
②平成14年分のあん摩マッサージ・はり・きゅう業者の施術料収入(税込ベース)においては、年間施術料収入300万円未満の業者の割合は、全体で46.7%、視覚障害者で58.0%である。同じ年に、視覚障害者であるあん摩マッサージ・はり・きゅう業者の63.4%が施術料以外の収入を得ており、そのうち84.5%が公的年金による収入である。
●視覚特別支援学校の生徒数及び卒業者の就職状況等
①昭和38年から平成29年までの視覚特別支援学校の在籍生徒数、学校数、高等部学科別生徒数、高等部本科卒業者の進路・就職先等は、高等部本科の保健理療科並びに高等部専攻科の理療科、保健理療科及び理学療法科の生徒数の割合が減少している。
②視覚障害のある新卒者のあん摩マッサージ指圧師国家試験の受験状況は、平成18年が受験者数615名、合格者数521名(合格率84.7%)、平成28年が受験者数355名、合格者数288名(同81.1%)である。同じ年の視覚障害者以外の新卒者の合格率は、平成18年が98.6%、平成28年が97.0%である。
【あん摩マッサージ指圧師の総数及び視覚障害者以外の者が占める割合】
昭和37年におけるあん摩師の総数は5万1,477人であり、このうち視覚障害者以外の者が占める割合は40.1%(2万619人)である。これに対し、平成26年におけるあん摩マッサージ指圧師の総数は11万3,215人であり、このうち視覚障害者以外の者が占める割合は77.0%(8万7,216人)である。
【あん摩マッサージ指圧師の養成施設等の定員及び視覚障害者以外の者が占める割合】
平成9年度から平成27年度までのあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の数及び定員の推移は、平成10年度が1学年の定員3,003人、平成27年度が1学年の定員2,706人である。このうち視覚障害者以外の者の定員が占める割合は、平成10年度が40.3%、平成27年度が45.8%である。昭和39年度のあん摩師の養成施設等の定員における同割合は36・8%である。
【視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置状況】
平成27年度において、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等は、10都府県(宮城県・埼玉県・東京都・神奈川県・静岡県・愛知県・京都府・大阪府・香川県・鹿児島県)に合計21施設あり、その1学年の定員は合計1,239人である。
【あん摩マッサージ指圧師の養成施設等の視覚障害者以外の者の受験者数】
平成27年度の厚生労働省所管の視覚障害者以外の者を対象とする養成施設の定員数に対する受験者数の割合は、あん摩師の昼間養成施設が149・2%、同夜間養成施設が118・6%、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の昼間養成施設が202.3%、同夜間養成施設が296.6%である。
障害者福祉等に関する法令の整備状況
【障害者福祉に関する法律】
昭和24年、最初の障害者福祉の法律として、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)が成立した。同法の目的は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)と相まって、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護し、もって身体障害者の福祉の増進を図ること」(1条)とされている。
【障害者雇用に関する法律】
昭和35年、障害者雇用対策について、身体障害者雇用促進法(昭和35年法律第123号)が成立し(昭和62年に「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改名)、昭和51年には、民間企業の努力義務であった法定雇用率制度を義務化するとともに、法定雇用率を満たしていない事業主から納付金を徴収し、障害者を多く雇用している事業主に対して調整金等を支給する制度が導入された。同法48条1項及び政令の規定により、あん摩マッサージ指圧師は、労働能力はあるが、障害の程度が重いため通常の職業に就くことが特に困難である身体障害者の能力にも適合すると認められる職種である特定職種に、特定身体障害者の範囲を視覚障害者として唯一指定され、国及び地方公共団体は、一定の視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師の職員の採用に関する計画を作成することを義務付けられている。
【障害者施策に関する基本的な法律】
昭和45年、各省庁が所管する障害者関連の個別法律を指導する障害者施策に関する基本的な法律として、心身障害者対策基本法(昭和45年法律第84号)が成立し(平成5年に「障害者基本法」に改名)、政府は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならないとされている。
【障害福祉計画に関する基本指針】
平成17年、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)が成立し(平成24年に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に改名)、他の障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とし、自立訓練(リハビリ等)、就労移行支援等に関する訓練等給付費の給付や市町村又は都道府県が行う障害者等の地域生活支援事業に関することのほか、国が障害福祉計画に関する基本指針を定めることなどが定められている。
【障害者差別の解消に関する法律】
平成25年、障害を理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく共生する社会の実現に資することを目的として、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)が成立した。同法では、国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならないとされ、国民においても、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならないとされている。
【障害年金制度】
国民年金法は、障害等級を障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし、その状態のある者に障害基礎年金を支給する旨を定め、その年金額は、2級が年額78万900円に改定率を乗じて得た額、1級がその100分の125に相当する額とされている(同法33条)。
また、昭和61年度以前は、20歳未満の時に初診日がある傷病による障害者には障害福祉年金が支給されていたが、同年度以後は、障害基礎年金に裁定替えされ、このような無拠出型の基礎年金についても、拠出型の基礎年金とほぼ同様の取扱いとなった。
裁判所の判断(争点・職業選択の自由の適合性について)
■立法の目的
原告は、あはき師法19条1項の制定から50年が経過し、その立法の目的は、正当性を失っている旨主張するので、以下、検討する。
①原告は、19条1項は、昭和22年の同法制定の際に所定の届出をした医業類似行為業者に限っては、期限を定めて医業類似行為の禁止が猶予されていたものが、昭和39年改正において、この期限が外され、猶予が事実上一代限り継続することになったため、これに異議を唱えていた視覚障害者に対する融和策として設けられた規定であり、19条1項の「当分の間」とは、上記の届出医業類似行為業者の高齢、死去等により業が行われなくなるまでと解すべきであるから、19条1項の制定から50年を経過した以上、既に同期間は経過している旨主張する。
しかしながら、19条1項の制定経緯をみると、従前より、国会等において視覚障害者であるあん摩師等の職域の保護を求める意見がみられ、昭和34年頃には、中央審議会の要望を受けて、視覚障害者以外のあん摩師の養成学校等の新設及び生徒の定員増加を抑制する行政措置がとられ、昭和36年のあはき師法改正時において、視覚障害者であるあん摩師の職域優先確保のための法的措置を速やかに検討・実施することが附帯決議されていたこと、その後、中央審議会において、あん摩師を保健あん摩師と医療マッサージ師とに分けた上、保健あん摩師について視覚障害者の職域を優先的に確保するという意見が採択されたが、この意見については一部の関係団体から強い反対があったことから法案提出には至らず、議員提出法案の形で、上記意見に代わる視覚障害者の職域優先措置として、19条1項が制定されたことが認められる。
これらの制定経緯からすれば、19条1項は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先することを専らの目的として制定されたものというべきであり、19条1項の「当分の間」も、視覚障害者に関し、あん摩マッサージ指圧師以外の適職が見出されるか、又は視覚障害者に対する所得保障等の福祉対策が十分に行われることにより、視覚障害者がその生計の維持をあん摩関係業務に依存する必要がなくなるまでの間を意味するものと解するのが相当である。
19条1項の規定に「当分の間」との文言を挿入することが、届出医業類似行為業者に係る禁止猶予期限を撤廃することと関連づけて議論されていた形跡はうかがわれず、原告の主張は採用できない。
②原告は、視覚障害者をめぐる福祉・補償の法制度が整備され、社会のバリアフリー化により職業の選択の幅も広がり、視覚特別支援学校においても生徒数が減少し、あん摩マッサージ指圧を履修する生徒も激減するなど、視覚障害者のあん摩マッサージ指圧師業への依存度は減ってきており、障害年金制度の拡充等により視覚障害者の生計が改善し、国の法律や政策における障害者像も変化した現在では、19条1項の目的は正当性を失っている旨主張する。
確かに、19条1項が制定された昭和39年当時と現在とを比較すると、障害者に対する年金制度(障害年金)が拡充されるなど障害者の福祉等に関する法制度が更に整備され、パソコン等のICT技術の普及により、視覚障害者には、事務的職業等の職業選択の道が開かれるようになるなど、視覚障害者をめぐる社会事情は変化してきていることが認められる。
しかしながら、一方で、視覚障害者の総数は減少しておらず、視覚障害者の就業率は現在も低水準となっており(平成18年で21.4%)、就業者の中ではあん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いている者の割合がなお高い状況にあり(平成18年で29.6%)、重度の視覚障害のある有職者に至っては、7割を超える者があん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いていることが認められる。
また、視覚特別支援学校における生徒数やあん摩マッサージ指圧関係の科目を履修する生徒が減少しているとしても、平成28年において、視覚障害のある新卒者のうちの相当数(355名)があん摩マッサージ指圧師国家試験の受験をしていることが認められる。そうすると、視覚障害者におけるあん摩マッサージ指圧師業の重要度が特別な保護を必要としない程度にまで低下したとみることは相当ではない。
さらに、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の収入をみても、平成25年時点で年収300万円以下の者が約76%を占めており、また、障害年金は必ずしも視覚障害者全員が受給できるものではなく、実際、平成14年時点では視覚障害者であるあん摩マッサージ・はり・きゅう業者のうち約半数が公的年金を受給していなかったことからすれば、障害年金制度の拡充等によっても、視覚障害者の生計が更に特別な保護を必要としない程度にまで改善されたとみることは相当ではない。
これらのことからすれば、19条1項の目的の正当性が、現在において失われたと認めることはできない。
■規制の必要性及び合理性
①規制の内容・程度
19条1項は、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置等について一種の許可制を採用するものであり、養成施設等を設置しようとする者の職業選択の自由を制約する程度の強いものである。一方、養成施設等の設置等を全面的に規制しているわけではなく、諸般の事情を勘案して、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められる場面に限っての規制であるから、規制の必要性に係る厚生労働大臣等の判断が適正に行われている限り、その制限は限定的であるといえる。
また、19条1項は、養成施設等の設置等がされないことにより、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得するために必要な知識・技能を修得する機会が制限されるという意味において、その資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由を制約しているものである。もっとも、資格を取得しようとする視覚障害者以外の者は、現に設置されている養成施設等に通うことによりその取得が可能となることからすれば、その職業選択の自由に対する制約は限定的である。
②規制の必要性
(ア)視覚障害者は、その障害のため、事実上及び法律上、従事できる職種が限られ、転業することも容易ではないところ、就業率も現在も低水準となっており、重度の視覚障害のある有職者のうち7割を超える者があん摩・マッサージ・はり・きゅう関係業務に就いており、現在においても、あん摩マッサージ指圧師業に依存している状況にある。
他方で、視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師は、昭和39年頃より増加し、その収入も、平成25年時点であん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の年間収入が平均636万2,000円と、視覚障害者の290万円を大幅に上回っており、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設の受験者数も平成27年度において定員を大幅に上回っている状況にある。また、19条1項に相当する規定のない隣接業種(はり師、きゅう師及び柔道整復師)においては、柔道整復師養成施設の指定をしない処分を違法として取り消す旨の判決(福岡地裁平成10年8月27日判決)があった平成10年度以降、大幅に養成施設等の施設数及び定員が増加している状況が認められる。
これらのことからすれば、19条1項による制限がなくなれば、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の数及び定員が急激に増加し、視覚障害者以外のあん摩マッサージ指圧師の数も急激に増加することが想定され、このような急激な増加は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の業務を圧迫することになる。
以上によれば、現在においても、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにするという目的を達成するため、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置及び定員の増加を抑制する必要性の存在を認めることができる。
(イ)これに対し、原告は、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が困難であるとすれば、その原因は、19条1項の存在により、需要に対応できるだけの有資格者が養成できないことによる無資格のあん摩師の急増・跋扈にあるから、必要なことは、有資格者の数を抑制することではなく、無資格者を根絶することにある旨主張する。
しかしながら、19条1項の存在と無資格者の増加との関連性の有無及び程度が実証されているわけではなく、また、視覚障害者が置かれている状況は、医業類似行為業者を含む無資格者の取締りが従前より継続的に行われている中での状況であるから、これらの無資格者の取締りと併せて、19条1項のような養成施設等の規制を行うことが、今なお必要であると認められる。したがって、原告の主張は採用できない。
③規制手段の合理性
(ア)上記のとおりの目的を達成するために必要な規制の手段として、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があると認められる場合に限り、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の設置の認定及び定員増加の承認をしないことができるという手段を採用することは、それ自体合理的なものということができる。
そして、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため規制が必要か否かの判断において勘案すべき事情として、あん摩マッサージ指圧師の総数及びあん摩マッサージ指圧師の養成施設等の生徒の総数のうちに視覚障害者以外の者が占める割合を挙げることには合理的な関連性が認められるし、その判断は、その時々における割合のほか、視覚障害者の総数、雇用状況及び医療の状況、社会におけるあん摩マッサージ指圧師に対する需要等の様々な事情に左右されるものであり、その要件や勘案すべき事情を立法者においてあらかじめ詳細に規定することが困難な性質のものであるから、その判断を右記割合のほか諸般の事情に基づく厚生労働大臣等の専門的・技術的な裁量に委ねることとすることも不合理とはいえない。
さらに、あはき師法19条2項は、厚生労働大臣等は、19条1項の規定により認定又は承認をしない処分をしようとするときは、あらかじめ医道審議会の意見を聴かなければならないとしている。これは、学識経験等を有する委員により構成される医道審議会の意見を処分に反映させることを意図したものと解され、その委員の構成や議事の運営が適正なものである限り、処分の適正さを担保するための方策として合理的であるといえる。
以上によれば、19条1項による規制には、手段としての合理性が認められる。
(イ)これに対し、原告は、目的を達成するためには、他の妥当な手段として、台湾での成功事例のように障害者が職業的に自立するような政策・立法を行うことや、昭和39年改正当時の中央審議会において検討されていたように一定の地域ごとに施術所の開設を規制することなども考えられるから、19条1項による規制は不合理である旨主張する。
しかしながら、原告の主張するような各種手段が、19条1項による規制よりも明らかに合理性の点で優れており、その反面として19条1項による規制の合理性に疑いがもたれるというまでの事情は認められず、これらの手段の中からどれを選択するかは、正に立法府の政策的・技術的な判断によるものというべきであるから、原告の主張を採用することはできない。
(ウ)また、原告は、19条1項は、①視覚障害者と他の障害者との間、②既に養成施設等を設置していた者とこれから設置しようとする者との間に差別を生じさせるものであるから、手段として合理性がない旨主張する。
しかしながら、①の点は、視覚障害者の生計維持の困難性に着目してその保護を図ること自体がいかなる意味において他の障害者を差別することになるというのか明らかでなく、②の点は、特定の分野への新規参入を規制する立法が一般にもたらす結果であり、規制自体に合理性が認められる限り、そのような結果が不合理な差別に当たるということはできないから、原告の主張を採用することはできない。
■まとめ
以上を総合的に考慮すると、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の職域を優先し、その生計の維持が著しく困難とならないようにすることを重要な公益と認め、その目的のために必要かつ合理的な措置として19条1項を定め、これを今なお維持している立法府の判断が、その政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であるとはいえない。したがって、19条1項は、視覚障害者以外の者を対象とするあん摩マッサージ指圧師の養成施設等を設置しようとする者及びあん摩マッサージ指圧師の資格を取得しようとする視覚障害者以外の者の職業選択の自由を制約するものとして憲法22条1項に違反するということはできない。
日本鍼灸師会の第15回全国大会in静岡 県下の教員ら交えシンポジウム
日本鍼灸師会の第15回全国大会in静岡 県下の教員ら交えシンポジウム
2019.12.25
―施術者の資質低下に懸念も―
公益社団法人日本鍼灸師会の第15回全国大会が11月23日、24日、静岡県浜松市内で開催された。
シンポジウム『鍼灸の可能性を探る―鍼灸の恩恵をすべての人に』では、同師会の小川卓良会長、仲野弥和監事、中村聡副会長のほか、静岡県下の鍼灸学校関係者として、東海医療学園専門学校、専門学校中央医療健康大学校、専門学校浜松医療学院、常葉大学の4校から教員らが登壇した。
小川氏は、10月末にNHK『クローズアップ現代』が高齢者の多剤服用のリスクを特集し、11月に講談社『フライデー』が100万人以上の患者が服用する帯状疱疹後神経痛治療剤「リリカ」の副作用である眠気やふらつきと、多発する高齢者の事故を関連付けて報じたことを紹介。こうした報道を大々的に行えるようになった事実そのものが、投薬主体の医療からの転換の流れを示しており、そこにどう鍼灸が食い込めるかが鍵となるとした。一方仲野氏は、施術者の激増に伴う資質の低下を指摘。治療体験後のアンケートでも「二度と受けない」という回答が以前より増えているといった厳しい現状のほか、透熱灸の実施率が灸師の中でも2割ほどにとどまる点も問題視した。その背景に、開業施術者はもとより、専門学校教員になるに当たっても、要求される実技の時間数が不足していたことを挙げ、平成30年度から実施されている新カリキュラムの成果への強い期待感を示した。
「試験のための勉強」脱却を
教員らからは、「学生に免許がない在学中にできることにはどうしても限界があるため、卒後も学校付属治療院に所属したり、就職先で出遭った難しい症例を持ち込んで検討できるといった卒後研修制度に力を入れている」「学校教育に理解のある先生の協力の下、無償の実技講習を開いてもらっている」といった取り組みの報告があった。教員から師会役員らに向けた「いま鍼灸教育に不足しているものは何か」との質問には、臨床技術の向上、経営など「国家試験に受かるための勉強からの脱却」が求められたほか、教員ごとに臨床に対する考え方が異なることが無いよう、指導内容の標準化を進めるよう求める声が上がった。
このほか、伊藤和憲氏(明治国際医療大学鍼灸学部長)による『痛みの最新情報』をはじめ一般講座4題、パラリンピック陸上競技日本代表選手の春田純氏による特別講演『私の競技人生』、鍼灸実技講座『実践! 誰にでもできる脉診流経絡治療・実演』(中野正得氏・森ノ宮医療大学非常勤講師)、県民公開講座などが行われた。
催し物案内 第9回「日本鍼灸医術の形成」研究会、鍼の聖地いばらき in OSAKA早春(はやはる)ハラノムシ祭り
催し物案内 第9回「日本鍼灸医術の形成」研究会、鍼の聖地いばらき in OSAKA早春(はやはる)ハラノムシ祭り
2019.12.25
明智光秀所伝『針薬方』などテーマに、大阪で
研究会は令和2年2月8日(土)に大阪府茨木市内(会場未定)で開催。早春ハラノムシ祭りは翌9日(日)に茨木市福祉文化会館(オークシアター)で、公益社団法人大阪府鍼灸師会主催で開催される。
研究会では『明智光秀所伝「針薬方」初探(仮)』(長野仁氏・森ノ宮医療大学大学院教授)や『中世日本金瘡書概括(仮)』(鈴木達彦氏・平成帝京大学准教授)、『越前一乗谷の医薬史と明智光秀(仮)』(石川美咲氏・福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館学芸員)、『明智光秀―牢人医師はなぜ謀反人となったのか(仮)』(早島大祐氏・関西学院大学教授)の講演を予定。
早春ハラノムシ祭りでは矢野忠氏(明治国際医療大学学長)による講演『令和の鍼灸―新時代の可能性』や落語家・桂福丸氏の創作落語『光秀の鍼』などが行われる。
参加費はいずれも無料。問合せは鍼聖茨木元行顕彰会代表の松尾正己氏(メール ibaraki.gengyo@gmail.com)へ。
日本臨床鍼灸懇話会 第58回全国集会大阪大会 鈴木氏、「丁寧な診察を」
日本臨床鍼灸懇話会 第58回全国集会大阪大会 鈴木氏、「丁寧な診察を」
2019.12.25
―故・米山榮氏を偲んで―
日本臨床鍼灸懇話会の第58回全国集会大阪大会が11月30日、12月1日、森ノ宮医療学園専門学校(大阪市東成区)で開催された。
同会理事の鈴木信氏は、診察を丁寧に行うことで患者への病態説明や鍼灸治療が自信を持ってできるようになり、効果が思わしくなかった時の反省材料にもなると説明し、患者負担の最も少ない診察法の一つとして、聴診について概説。腹部の聴診において、腸管の蠕動音が低下・減弱したら麻痺性イレウス、亢進したら機械性イレウスなどが疑われると指摘、丼鉢にサイコロを入れた時のような金属音がしたら腹膜炎の可能性が高いため、直ちに医科での受診を勧めるべきだと説いた。恩師である故・米山榮氏は患者への説明に30分かけていたといい、「患者さんは診察室を出たら話の3分の2を忘れている。しかし内容は忘れても『よく分からないが何か一生懸命に話してくれていた』と記憶に残り、熱意も伝わる」との米山氏の言葉を紹介。自分が丁寧な診察を心掛けるようになったのは、米山氏の影響が大きいと述べた。
また鈴木氏は、痛みや違和感、イガイガなどの喉の症状に対し、顎下リンパ節周縁への刺鍼で症状が改善した10例を提示し、その刺鍼法と、頸肩腕症状への刺鍼の実技を供覧した。
▲鈴木信氏と、その実技の様子
研究発表の実績で集患
まり鍼灸院院長の中村真理氏が、『HOW TO 鍼灸院経営―最高のサクセスストーリーはEBMから』と題して登壇した。中村氏は鍼灸院の経営に注力するとともに、全日本鍼灸学会や日本東洋医学会、日本刺絡学会など複数の学会に所属し、学術大会や学会誌で臨床研究の発表実績を積み重ねてきたと説明。院のホームページにはその実績を掲載して積極的にアピール、それが信頼感を与えて集患につながっていると述べた。また、増毛や子どもの夜泣きへの小児はりなど、特定の治療に対して「最低限、〇回は通ってください」という一定の治療回数を設けていると解説。この回数は自院での統計に基づいていると話した。中村氏は、中途半端な回数で通院をやめて治らなかった患者は、必ずと言ってよいほど治療院や施術者を批判すると指摘。風評被害を防ぐためにも、治療の回数設定は必要であると説いた。
佐野善樹氏(北辰会、さの漢崇院)は、現代医学的病態把握からは座骨神経痛とされたが、東洋医学的病態把握によって「舌根部、腎の部位に黒色に近い灰苔」を認めたことから重篤な疾患を疑った症例を紹介。鍼によって一時的な症状は改善していたが念のため病院での精査を勧めたところ、神経腫瘍だったため緊急手術となったと述べ、病態の重症度と症状の改善は「別物」であるとして注意を呼び掛けた。
ほかに、尾﨑朋文氏による会長講演『鍼灸診断学の再考―本会での鍼灸診断学の歴史と意義』や研究討論『刺鍼手技の違いによる生体の変化―超音波診断装置を用いて』(松下美穂氏・森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科長)、症例報告『左臀部の筋力低下による歩行障害に併発したパーキンソン病の1症例』(中島茂氏・みどりの風鍼灸院)などが行われた。
管鍼術の祖・杉山和一の記念像建立で寄付金募る
管鍼術の祖・杉山和一の記念像建立で寄付金募る
2019.12.20
管鍼術を創始し、盲人鍼医の育成にも努めた杉山和一検校の生誕410年を記念した銅像を建立するため、10月より「杉山和一検校生誕410年記念像建立委員会」が寄付金を募っている。期間は令和2年4月30日まで。
建立される像は 徳川13代将軍・家定の幕府医官・平塚検校が作成させた「鍼と鍼管を持った姿」をモデルとし、杉山検校の眠る江島神社(神奈川県藤沢市)内に安置される。
寄付金の目標額は1,000万円。法人・団体は一口1万円、個人でも可能。同委員会は「あはきを生業とした施術家・関係者だけでなく、杉山検校を敬愛する多くの方々から広く寄付を募りたい」としている。
詳しくは、同委員会(藤沢市鍼灸・マッサージ師会事務所内、TEL 0466-28-8981)、もしくはホームページを。
「伝統医療」と「看護」の連携へ向け、学会発足
「伝統医療」と「看護」の連携へ向け、学会発足
2019.12.19
伝統医療と看護の連携を模索、学術の発展や社会貢献を目指して、『日本伝統医療看護連携学会』(佐竹正延会長)がこのほど発足。昨日12月18日には、第1回の学術大会が仙台市青葉区の赤門短期大学で開催された。
同学会の主だったメンバーは、赤門鍼灸柔整専門学校と昨年設置された系列校で看護学科の赤門短期大学の関係者で構成され、両校のシナジー効果も見込まれる。
同学会の今後の活動、発展が期待される。(今後発行の弊紙で、講演内容などを詳述)
平成30年の政治資金収支報告書、柔整・あはき団体も掲載
平成30年の政治資金収支報告書、柔整・あはき団体も掲載
2019.12.18
総務省が11月29日、毎年定期公表している「政治資金収支報告書」の平成30年分をホームページ上に公開した。柔整・あはき業界の政治団体も掲載されている。
収支の状況を見ると、柔整では、日本柔道整復師連盟(工藤鉄男代表)が収入額約7億85万円で、支出額約9,162万円。あはきでは、日本鍼灸師連盟(仲野弥和代表)が収入額約5,698万円で、支出額約751万円となり、全日本鍼灸マッサージ師連盟(伊藤久夫代表)が収入額約635万円で、支出額約342万円だった。柔整あはきでは、日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会政治連盟(岸野雅方代表)が収入額約960万円で、支出額約61万円となっていた。
11月の広告検討会の議事録、厚労省公表
11月の広告検討会の議事録、厚労省公表
2019.12.17
厚労省が12月12日、第8回あはき師・柔整師等の広告に関する検討会(11月14日開催)の議事録をホームページ上で公表した。厚労省により「広告ガイドライン案」が初めて提示され、この提案をもとに議論が交わされており、「非医業類似行為」との新造語への言及もいくつか見られる。
なお、あはき団体の関係者によると、12月18日に9回目の検討会が予定されていたようだが、調整がつかず開催は見送られたことが分かった。
第8回あはき師・柔整師等の広告に関する検討会の議事録
「19条違憲ではない」、晴眼者のあマ指師課程新設で初の司法判断
「19条違憲ではない」、晴眼者のあマ指師課程新設で初の司法判断
2019.12.16
あはき法19条の規定により、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設を国が認めなかったとして、学校法人平成医療学園がその処分取消を求めた訴訟で、東京地裁は12月16日、視覚障害者の職域優先の観点から19条は憲法に違反しないとし、原告の学園側の訴えを棄却する判決を下した。
主張を退けられた学園側は控訴する構えだ。(今後発行の弊紙で、判決内容などを詳述)
帝国データバンクが整骨院等の経営状況を発表 2018年度収入高が2,000億円超
帝国データバンクが整骨院等の経営状況を発表 2018年度収入高が2,000億円超
2019.12.10
―前年度4.8%増、療術業者含む約2,000社調査―
整骨院・療術・マッサージ業者1,888社の2018年度における収入高合計が2,038億4,800万円で、前年度比4.8%増――株式会社帝国データバンクが、2019年10月時点の同社の企業データファイル(147万社収録)を用い、治療院等の経営実態に関する調査を行った結果を11月11日に発表した。調査対象は整骨院・マッサージ院のほか、療術業者も含まれ、同様の調査は初めてという。
「収入高合計」は、2016年度から3期連続で収入高が判明した1,888社を対象としている。2018年度は2,038億4,800万円で増加傾向(下表参照)を示しており、収入高トップはリラクゼーション大手の「株式会社りらく」で、次いで整体サロン『カラダファクトリー』運営の「株式会社FJG」、整骨・鍼灸院『げんき堂』運営の「株式会社GENKIDO」と続いた。帝国データバンクは「中堅・大手業者は新規出店で増収につなげており、小規模業者では高齢者を中心としたリピーターを確保できた業者が多くみられた」と分析している。
2018年倒産85件
競合激しく、淘汰も
倒産動向についても調査結果を公表。2018年の倒産件数は85件で、2000年以降、最多を記録し、また、ここ10年間で3倍超と増加傾向が続いている。2019年も10月までの倒産件数が既に78件発生しており、2018年に迫るペースで推移しているほか、「負債1,000万円~5,000万円未満」の小規模業者の倒産が目立ったという。帝国データバンクは、自費メニュー(骨盤矯正など)のシェア拡大に注力する整骨院が増える中、今後リラクゼーション業者と競合し、淘汰が加速する可能性を指摘している。
第64回日本生殖医学会学術講演会 JISRAMの徐大兼氏が登壇
第64回日本生殖医学会学術講演会 JISRAMの徐大兼氏が登壇
2019.12.10
―生殖医療「国内最大級」の学会で―
第64回日本生殖医学会学術講演会が11月7日、8日、神戸国際会議場・展示場(神戸市中央区)で開催された。同学会はヒトと動物の生殖医療に関する学術の発展を目的として活動しており、医師や獣医師、研究者など、数千名の会員を擁している。今回の学術講演会は演題数600弱、参加者2,500人以上という「国内最大級」の規模となった。統合医療をテーマとしたシンポジウムではJISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)代表理事の中村一徳氏が医師と共同で座長を担当し、シンポジストの一人として、鍼灸師の徐大兼氏(アキュラ鍼灸院、JISRAM事務局長)が講演を行った。
徐氏は、近年、米国ではART(高度生殖医療)と鍼灸を併用する患者が増えていると説明。マサチューセッツ州の高度生殖医療施設「ボストンIVF(体外受精)」のドマール博士の研究によると、対象患者の30%がIVF前に鍼灸治療を受け、47%がIVF中に利用していたと解説。現在鍼灸を現場で提供している、または鍼灸院と提携している施設は米国の高度生殖医療施設全体の50%以上に上るのではないかとの、博士の推論を紹介した。
反復不成功例でも鍼灸で妊娠率向上
また徐氏は、自身が責任者を務める京野アートクリニック高輪の鍼灸ルームで行った、不妊患者への鍼灸治療の効果についての調査結果を発表した。調査では、2002年にPaulusらが不妊に対する鍼灸治療で有意な結果を示したプロトコールに星状神経節へのレーザー照射を追加。鍼灸を実施しなかった群の妊娠率が33.4%で流産率が28.3%だったのに対し、鍼灸群では妊娠率54.3%と大きく上回り、流産率は15.8%と低く抑えられたと述べた。対象となった患者のうち凍結胚移植3回以上の反復不成功例の患者については、鍼灸を実施しなかった患者の妊娠率は24.8%だったのに対して、実施した患者の妊娠率は54.5%に上ったと説明した。
シンポジウムにはほかに、著書『The Fertility Diet(邦題:妊娠しやすい食生活)』で知られるジョージ・E・チャヴァロ氏(ハーバード大学公衆衛生大学院栄養免疫学准教授)、太田邦明氏(福島県立医科大学産科婦人科学講座ふくしま子ども・女性医療支援センター)、古賀文敏氏(古賀文敏ウイメンズクリニック)が登壇、栄養学などの観点から妊孕性について語った。
日本伝統鍼灸学会第47回学術大会 ICD-11における経脈病証の使用状況
日本伝統鍼灸学会第47回学術大会 ICD-11における経脈病証の使用状況
2019.12.10
―ICD-11における経脈病証の使用状況
最多は膀胱経、次いで胆経など―
日本伝統鍼灸学会の第47回学術大会が11月23日、24日、東京都内で開催された。テーマは『日本伝統鍼灸の確立に向けて―日本の鍼灸の発想と継承』。
JLOM委員会報告では明治国際医療大学大学院特任准教授の斉藤宗則氏が登壇し、国際疾病分類第11版(ICD-11)に伝統医療分野が導入された経緯と現状を概説した。中国や韓国はICD-11の活用のために国を挙げて症例集積を行っていると指摘。日本でもその作業が急務であるとして、昨年10月から12月にかけて行った『国際疾病分類第11版における経脈病証の鍼灸臨床使用状況の調査』の結果を発表した。症例数2,617(調査協力者213名)のうち最も多かったのが膀胱経(811例、31.0%)で、次いで胆経(447例)、腎経(431例)などとなっており、奇経八脈は正経と比べると少ないと説明。主訴は腰痛が447例(17.1%)と最多で、膝痛、肩痛が続いたとし、上位10主訴(49.5%)は「痛み」と「こり」が占めたと述べた。斉藤氏は、このようなデータを集め続ければ鍼灸受療患者の実態を明らかにできるだけでなく、主訴や西洋医学的病名と経脈病証との関連性も追求できるとして、協力を呼び掛けた。
学生限定のセミナーでは同学会会長の形井秀一氏(洞峰パーク鍼灸院院長)、長野仁氏(森ノ宮医療大学大学院教授)、寄金丈嗣氏(六然社)が講演や実技を行った。形井氏は、触診では「圧痛があるということを、圧痛を感じさせる前に分かるのが理想」だと説明。触診の練習の際には、術者側はとにかく手の感覚を磨き、被術者側は常に、左右差などの感覚を言語化して術者に伝えなければならないと学生らに説いた。長野氏は、押手で鍼を回旋させて刺手で送り込む古法による刺鍼法を、寄金氏は散鍼を披露した。
ほかに会頭講演『易と鍼灸』(小林詔司氏・積聚会名誉会長)や教育講演『「黄帝内経」千年の定説を覆す』(松田博公氏・日本内経医学会)、特別対談『脈診と経絡治療について』(篠原孝市氏・日本鍼灸研究会/浦山久嗣氏・経絡治療学会)、実技講演『散ずる鍼を尋ねて』(南谷旺伯氏・旺針療所)、一般口演などが行われた。
現代医療鍼灸臨床研究会 第50回記念大会 現代医学的視点の追求、25年
現代医療鍼灸臨床研究会 第50回記念大会 現代医学的視点の追求、25年
2019.12.10
―設立当初は業界の反発も―
現代医療鍼灸臨床研究会の第50回記念大会が10月27日、東京大学鉄門記念講堂(東京都文京区)で開催された。25周年の節目を記念して、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣の橋本聖子氏が講演を行うなど、盛大に催された。
坂井友実会長(東京有明医療大学教授)は講演で、会の成立を振り返った。現代医学的な視点から病態を把握すること、治療の方針は鍼灸にも現代医学にも限定しないことを特徴とし、平成7年に設立。会の名称は、発足当時は医師からの鍼灸の理解がないだけでなく、鍼灸界にも「病院のメニューに組み込まれるのは業界の不利益」という空気が蔓延していたため、業界内の反発を抑えるため、あくまで臨床研究に限定した会だと説明するために決めたと語った。現在も続く、一つの疾患や症状をテーマと定め「テーマについて解説する基礎講座」「第一線で活躍する鍼灸師を集めたシンポジウム」「専門医による教育講演」を行う三部構成も発足当時からだと説明。テーマの内訳は、節目の記念回を除く45回中、23回が運動器で、うち腰痛が6回と最多。神経内科(6回)、婦人科(5回)、癌(2回)が続くと述べた。
また、小内愛氏(埼玉医科大学東洋医学科)は、平成29年に埼玉県医師会と合同で行った、4地方(北海道、東北、近畿、九州)の医師会会員を対象にした鍼灸への意識調査、及び先に実施した関東での調査結果を報告。「先生の施設で鍼灸治療を実施していますか」には九州・近畿・北海道が3%、東北地方は0%で、関東の7%と比べて低く、「特定の鍼灸施術所と連携している、またはしたことがありますか」には東北4%、九州・近畿6%、北海道16%、関東9%。一方、効果や安全性が理解できれば推奨したいとの回答は、4地方よりも埼玉県内が多いことに触れ、地域による意識差を示唆した。
山口智氏(埼玉医科大学東洋医学科)はこうした歴史的経緯や調査を踏まえ、改めて、鍼灸師には日常の臨床のために現代医学的な視点を身に付け、東洋医学的な視点と併せ持つ必要があると指摘。医療連携の推進は鍼灸師の資質にかかっていると呼びかけ、同研究会の活動を推し進めていくことを宣言した。
このほか、東京有明医療大学学長の本間生夫氏による呼吸機能に関する基調講演、特別企画『専門医が語る鍼灸師との連携の成果』が行われた。
晴眼者のあマ指師課程新設めぐる裁判 仙台地裁も結審で、来年4月に判決
晴眼者のあマ指師課程新設めぐる裁判 仙台地裁も結審で、来年4月に判決
2019.12.10
東京、大阪、仙台の各地裁で争われている、晴眼者のあん摩マッサージ指圧師養成課程の新設をめぐる裁判が終盤を迎えている。12月2日に仙台地裁で15回目となる口頭弁論が開かれ、全ての審理が終了(結審)。判決の言い渡し日時が令和2年4月27日の15時と決まった。これで3地裁全てが結審し、判決を待つのみとなった。12月16日には、他に先立ち、東京地裁で判決が下される。
フレアス、「人材登録サイト」オープン
フレアス、「人材登録サイト」オープン
2019.12.10
―採用活動の強化と、あマ指師の雇用機会増を目的―
往療マッサージ事業を全国展開する株式会社フレアス(澤登拓代表取締役社長)が、スマートフォン等からでも登録できる人材登録サイト「フレアス人材バンク」を開設した。同社の採用活動の強化に加えて、あん摩マッサージ指圧師免許を有しながら就労できていない施術者の雇用機会を増やすことを目的に設置。登録は無料で、勤務地のほか、時短勤務等の「働き方」を希望できる。同社は、3月に東証マザーズに上場し、2019年9月現在、往療マッサージの拠点は38都道府県97(FC含む)。
第8回あはき師・柔整師等の広告検討会 ガイドライン案、厚労省が提示
第8回あはき師・柔整師等の広告検討会 ガイドライン案、厚労省が提示
2019.11.25
インターネットは規制の対象外に
11月14日、8回目となる「あはき師・柔整師等の広告に関する検討会」が開かれ、過去の議論を踏まえて、厚労省が「広告ガイドライン案」を初めて提示した。意見が対立している「治療」「整骨院」の文言使用の可否などは引き続き議論を促し、それ以外は厚労省案に対する意見を聴取する形で話し合いがされた。ただ今回、突如として、「無資格施術・無資格者行為」を一括した「非医業類似行為」という用語 (さらに…)
ハリトヒト。マーケット 「教員、学生を支援できていない」?
ハリトヒト。マーケット 「教員、学生を支援できていない」?
2019.11.25
養成校、教員の在り方で提言など
『ハリトヒト。マーケット』が10月27日、関東鍼灸専門学校(千葉市美浜区)で開催された。
鍼灸業界、鍼灸学生向けウェブマガジン『ハリトヒト。』の製本化第二弾を記念したイベント。これまで掲載してきたロングインタビューのインタビュイーの中から、内原拓宗氏(関東鍼灸専門学校副校長)、赤星未有希氏(鍼灸師、がん情報ナビゲーター)、横山奨氏(アイム鍼灸院)、松田博公氏(鍼灸ジャーナリスト、黄帝内経研究家)が講演や対談を行い、企業や団体などのブースも出展した。
内原氏は業団や各流派、保健所、医師、税務署、メーカーといった就業鍼灸師を取り巻く環境について図説。教員は通常の教育だけでなく、これらに対する理解を深めた上で業界の水先案内人として学生をサポートしなければならないと指摘。しかし実際は学校の中にこもっていることが多く、十分にできていない現状にあると述べた。また、看護師やPTなどの他の医療職に比べ業団の組織率が低いことや、学術団体に所属している鍼灸師の数が全体から見るとわずかに過ぎない点に言及。養成校が、業団や学会と卒業生とをつなげられていないのが要因の一つだと説いた。
学生、色々な流派学びたい
内原氏からの「どんな養成校が望ましいか、養成校に何を求めるか」との主旨の質問に対して複数の参加者から意見が挙がった。教員経験を経て開業したという甲野功氏(あじさい鍼灸マッサージ治療院)は、近年の養成校が国試対策を重要視している実態に触れた一方で、臨床の大切さも強調。「国試に受かりさえすればいい」という生徒向けと、「卒後すぐに開業したいので臨床も充実してほしい」というニーズに応える二つのコースを設けるのはどうかと述べた。小貫英人氏(日本伝統鍼灸学会理事)は養成校では実技教育が不足しているとして、「卒後養成校」を提言。関東圏など同じエリアの複数の養成校が共同で、諸流派の臨床家を招いて実技の授業を行う場を設けるといった案を挙げた。鍼灸学科2年生の学生は、通っている学校は授業時間外のセミナーが豊富だが、スポーツや美容といったカテゴリーの内容が多いと指摘。古今の流派や治療法を学んで、自分に合ったものを見つけたいと訴えた。
▲企業などもブースを出展。施術体験も
AMDA、宮城県で鍼灸支援 台風19号
AMDA、宮城県で鍼灸支援 台風19号
2019.11.25
1週間で延べ142人施術
災害時等に医療・保健衛生分野の支援活動を行う「認定特定非営利活動法人AMDA」(アムダ)が、台風19号で甚大な被害を受けた宮城県丸森町の避難所で、10月23日から31日の間、鍼灸支援を行った。AMDA災害鍼灸ネットワーク代表世話人・今井賢治氏によると、「避難所内で日に日に鍼灸が認知され、自宅の片付けや職場から帰宅した避難者などの夕方以降のニーズも少なくなかった」とし、延べ142人に施術したと話す。また、活動終了後も避難者が鍼灸治療を受けられるように、地元の治療院を訪問し、被災状況などの把握に努めた。鍼灸支援チームが避難所を撤退する31日には、業務を再開した治療院3軒に引き継ぎをしたという。
写真:AMDA提供